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ガンの現状目ざめよ! 1986 | 10月8日
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ガンの現状
ガンに関するこの一連の記事は,読者の方々に,この病気の治療面で成し遂げられた進歩に対して現実的な見方をするのに役立てていただくために書かれました。ここ何十年かの間に,ガンの幾つかの原因については理解が進みました。現在では予防に関する良い助言も得られます。また早期診断も以前にくらべると容易になり,治る可能性も大きくなりました。米国厚生省はそのことを次のように要約しています。
「良いニュース: すべての人がガンにかかるわけではない。アメリカ人3人のうち二人はガンにかからない。さらに良いニュース: ガンにかかって治る人が年々増えている。最も良いニュース: ガンから身を守るのに役立つ事柄を毎日何か行なえる」。
わたしたちはこの問題をバラ色の眼鏡で見るつもりはありません。結局のところ米国だけでも「いま生きている米国人5,800万人がついにはガンにかかる」ことを,医学関係のある資料は示しているからです。同じような割合の国はほかにもたくさんあります。したがって,間違った楽観は保証の限りではありません。しかし,事実に基づく楽観は,すべての人が希望をもって現実に立ち向かう助けになり,ガン患者にとっても,より効果的な闘いを行なう励みになります。
ガンは治るか
専門家はこの質問にどう答えるでしょうか。以下はその答えです。
「ガンの治療は成功する可能性がある。多くの場合完全に治すことができる。ガンの治療を受けた人が,ガンの症状の全くないまま,長年健康な生活を送った例は無数にある。……ガンは確かに治る」― ベンジャミン・F・ミラー博士著「医療案内全書」。
「ガンにかかった人の半分近くが治り,治らない人でも適正な治療を受ければ,快適で生産的な生活を何年も続けてゆけるという事実は,この病気に対する恐れで覆い隠されてきた」― エール大学外科部教授,チャールズ・F・マックハン博士著「ガンに関する事実」。
「ガンの中には容易に治せるガンもあり,ガンと診断されたときには必ずといってよいほど完全に治療不可能になっているガンもある。……三つの器官(肺,乳房,大腸)のガンは,現在のところ米国におけるガンによる死亡の半数を占めているので,とりわけ重視されている」― リチャード・ドール卿,リチャード・ピートー共著「ガンの原因」,オックスフォード大学,英国。
しかし,この状況には依然として楽観できない面もあります。科学ライターのエドワード・J・シルベスターは,「標的: ガン」という本の中で,「この殺し屋は確かにつかまってはいない。アメリカで最も凶悪なガンは,肺ガン,閉経後の乳ガン,結腸と直腸のガンであるが,これらが治りにくいことは,今でも三,四十年前と変わっていない。……もっとも,これらのガンにかかっても,以前にくらべて長く生きる人たちは出てきた」と述べています。
ガンの研究に毎年膨大なお金が費やされているものの,ガンは,知られている病気の中で最も征服しがたい命取りの病気の一つです。しかし,前述の3種類のガンについては,「以前にくらべて長く生きる」人たちが出てきたという明るい要素もあります。
ガンとなると,わたしたちはみな偶然の犠牲者なのでしょうか。それとも予防策として自分にできることが何かあるのでしょうか。食べ物や生活様式はガンの発生と何らかの関連があるのでしょうか。
つづく一連の記事では,知られているガンの原因,予防法と治療法,ガンの克服に成功した例などを幾つか取り上げます。最後の記事では,ガンが間もなく征服されることを知る方法が説明されています。
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ガンとは何か その原因は?目ざめよ! 1986 | 10月8日
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ガンとは何か その原因は?
当然のことかもしれませんが,「ガン」という言葉は,何年かの間に非常に暗い含みを持つようになりました。「致命的で,油断のならないガンのように広がる」といった表現が使われるせいか,多くの人はガンという言葉をこばみ,その言葉の真の重大性を考えようとしませんでした。
しかし今日ではこの問題は,個人的な感情を交えずに事実がそのままあからさまに持ち出されても,以前ほどには恐ろしいという感じを与えなくなりました。ガンは「致命的」と決まっているわけではなくて,「治る」こともよくあり,必ず「広がる」わけではなくて,局部的なもので終わることも少なくないからです。では,ガンとは実際に何なのでしょうか。ガンは何が原因でできるのでしょうか。
英国の専門家,リチャード・ドール卿とリチャード・ピートーはこう説明します。「人間にできる種々のガンは,人体をつくり上げている多くの細胞の一つに異変が起こり,異常な複製を繰り返して,同様の欠陥を持ちかつ自らも複製する何百万という子孫細胞をつくり出す病気である。その子孫細胞の一部が体の他の部分に広がって,ついには体を破壊してしまうこともある」―「ガンの原因」。
そこで起きる大きな疑問は,なぜそうなるのかということです。どうしてある細胞は正常な姿から逸脱して,異常に増殖するのでしょうか。
生活様式は影響するか
ガン研究の現在の段階では,ガンに対する医師たちの対策は完ぺきというにはまだほど遠いものです。ガンが増えているという事実は,ジョン・C・ベイラー3世,イレイン・M・スミス両博士によって証明されています。両博士は最近,「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」の中で,「1973年から1981年までの発生率を概算すると,すべての新生物[ガン]をひっくるめて13%上昇している。……全体的に見て,ガンが減っていると考える理由は何もない」と述べました。
ガンの専門家は,一方では悪性腫瘍の適切な治療法を見つける必要を抱え,他方では真の原因をたどって予防を励ます必要に大いに迫られています。原因の追究が進むとさまざまな説が生まれ,複雑になっていきます。ガンの原因はウイルス,遺伝子,免疫反応,化学薬品,環境,体内の有毒物質に,またこれらが組み合わさったものにあるのでしょうか,それともほかのところにあるのでしょうか。また,細胞はどんな過程をたどって悪性になり,転移するのでしょうか。
ガンの専門家,ステファン・タンネベルガー教授はこう述べています。「これが幾つかの段階を含む過程であることは,今では既定の事実である。ある特定の構造の遺伝子を持つ正常な細胞が幾つかの要素の影響を受け,これらの段階を経て腫瘍細胞に変わるのである。我々はウイルスや放射線,化学物質などがそうした要素を成していることを知っている。しかし幾つかのそうした要素の相互作用があるときにのみ,ガン細胞は多段階の過程においてつくり出されると言うのが安全である」―「プリスマ」。
ではこれは,わたしたちの日常生活において何を意味するでしょうか。アメリカ・ガン協会の会長シャルル・A・ラメーストル博士によると,日常生活の習慣はガンの原因と関係があります。「日常の習慣,つまり何を食べ何を飲むか,たばこを吸うか吸わないか,どれほど度々太陽にあたるかなどが,いろいろなガンにかかる危険の有無を大方決定すると,今ではほとんどの科学者が信じている」―「エボニー」誌。
この見解は,オックスフォード大学の専門家,ドールとピートーの研究によって確証されています。二人はこう述べています。「人間の気まぐれな行動を観察していると,実験室の研究者には思いもつかないような考えが浮かぶことがある。歴史的に見ると,すべてのガン研究の大半は,石炭が燃焼する際に生じる物質,太陽光線,X線,石綿,また種々の化学物質などをあびることに伴う危険を,そうした観察によって指摘されたことが出発点になっている。キンマとたばこと石灰をいろいろに組み合わせたものをかむこと,たばこを吸うことなどに伴う危険も,観察によって注意を促された」。
生活様式や環境は国によって異なります。ですから,ある国にはあるタイプのガンが多くて他のガンが少ないという傾向が生じます。例えば,何十年もの間たばこを広く使用してきた英国は,肺ガンでは1位を占めています。喫煙の習慣にとらわれなかったナイジェリアでは,この病気の発生率は現在のところずっと低い状態です。米国のコネチカット州は結腸ガンと膀胱ガンで1位ですが,ナイジェリアは最下位です。
生活様式がどのようにガンの発生を助長しうるかを示す別の例はカポジ肉腫です。これは普通ならばめったにないガンです。過去数年の間に同性愛者がエイズに感染した結果これにかかっています。エイズにかかると患者の免疫機構は弱くなり,種々の感染症やこの肉腫の危険にさらされるのです。
カリフォルニア大学医学部のケニス・R・ペルティエー博士は,ガンを引き起こす可能性のある付加的要素を示唆しています。「動物と人間を対象にした数々の実験的研究により,ストレス,心理的抑欝状態,それに他の心理的・社会的要素が,ガンのような病気の誘発や蔓延を防止し制限する生体の能力を弱めることが実証された」―「全体論的医学」。
他の医師たちもやはり,過度のストレスは免疫機構に影響し,人をガンや他の病気の危険にさらす恐れがあると見ています。では,ガンのもっと明らかな原因について少し詳しく調べてみましょう。
たばこ ― 命取りの敵
ここ何十年かの間,たばことガンの因果関係が叫ばれてきました。ですから,「世界保健機関は,たばこの使用が原因とみなせる死亡者は毎年約100万人に上るという報告を引用し,喫煙とたばこの使用を強く戒めた」といった新聞発表を読んでも,人々はあまり驚きません。ニューヨーク・タイムズ紙に載ったその記事はさらに,「肺ガン全体の90%,慢性気管支炎および肺気腫全体の75%,虚血性心疾患の25%,また他の種類のガン,妊娠合併症,呼吸器系の病気などは喫煙に起因する」と述べています。
たばこがガンの発生に非常に重要な役割を果たすので,テキサス州立大学医学部のバイロン・J・ベイリー博士は,たばこの常用はたばこ中毒<タバコイズム>と呼ぶべきで,その結果はガンであると信じています。そしてJAMA(「アメリカ医師会ジャーナル」)の中で次のように述べています。「我々は,今日,たばこ中毒が麻薬中毒としては米国における最も致命的なものであること,さらにそれが,コカインやヘロイン,後天性免疫不全症候群,交通事故,殺人,テロリストの襲撃などをすべて合わせたよりも多くの人命とお金を代価として要求しているという事実を自覚しなければならない」。
では,いま世界中の多くの人の間で人気のある,“無煙たばこ”という名で知られているものを用いたり,たばこをかいだり,かんだりするのはどうでしょうか。「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン」誌は,「インド,中央アジアの一部,東南アジアなどでは,口腔ガンがアメリカよりはるかに多い。事実,それらの地域で一番多いのはそのガンである」と述べています。また,「かむ無煙たばこは,それだけをかんだり,ビンロウジの実やキンマの葉,石灰などを混ぜてかんだりするが,これは口腔ガンの危険を大いに増すことが分かっている」と伝えています。
たばことアルコール ― 関連があるか
では,喫煙と飲酒との組み合わせについては何が言えるでしょうか。ドール,ピートー両博士はこう断言しています。アルコールと「喫煙は相互に作用し,互いに他の効力を高める。アルコールがガンの発生に関係があるのではないかという疑いは,過去60年の間存在していた。口腔ガン,咽頭ガン,喉頭ガン,食道ガンなどが,酒を大量に飲む機会の多い仕事の従業員に平均より多く発生したからである」。
この結論を確証したのはドイツのガン専門家,タンネベルガー教授です。「喫煙と飲み過ぎは,危険な要素としては第一級である。……人の生活の仕方とガンの発生とには因果関係があるという事実から逃れることはできない」と,同教授は述べました。
“罪がなさそうに見える”殺し屋
毎年何百万という人々が,とても気持ちがよくて罪がなさそうに見える,しかしだれかれの見境なく襲う殺し屋 ― 太陽光線 ― に身をさらします。過度の日光浴は,青年期の人がひどく日焼けした場合は特に,黒色腫,つまり黒い色の皮膚ガンの誘因になることがあります。医学関係のある資料には,「日に焼けていない肌を急に太陽の光にさらすことは,危険度を最高に高める条件と言えるかもしれない」と説明されています。―「ガンの原因」。
この原因を軽く見るのは禁物です。今年は米国だけでも,新しい患者2万3,000人,死者5,600人が予想されているからです。一番影響を受けやすいのは,肌が白くて目の青い,ブロンドか赤い髪の,そばかすの多い人です。
医療検査の際の過度のX線被曝も,ガンの“罪がなさそうに見える”誘因と言えるかもしれません。例えば,「甲状腺ガンの発生率が……他のどのタイプの腫瘍よりも急激に上昇しているのは,医療の際のX線使用によって誘発される,命取りとはならない甲状腺のガンの流行が理由の一つなのかもしれない」と言われています。―「ガンの原因」。
わたしたちが食べる食物さえも,嫌疑はかけられないものの,ガンの原因となることがあります。「種々の研究は,特定の食品,またそれらの食品に含まれる栄養素のあるものがガンの発生に関係しているらしいことを示唆している。調査結果によると,食物脂肪の大量摂取は危険な要素の一つである。……
「科学者たちは,特定のビタミン ― AとC ― の不足とガンとの間になんらかの関係があることを発見した。例えば,ビタミンAの少ない食事は,前立腺ガン,子宮頸部のガン,皮膚ガン,膀胱ガン,結腸ガンと関連づけられている」― 米国厚生省。
変わった例はアフラトキシンです。これは「アスペルギルス・フラブスというカビが生産するもので,暑くて湿潤な気候のところに貯蔵されるピーナツその他の炭水化物の主要食糧がよくこれに汚染され」ます。ドール,ピートー両博士によると,「熱帯地方のある国々では」このアフラトキシンが,「肝臓ガン発生の主因となっている」ということです。
原因と結果 ― その次は?
実は,ガンには少なくとも200の異なったタイプがあり,原因も,独特のものや相互に関連のあるものなど,数多く存在します。幾つかのガンの場合は,原因がまだ確実には分かっていません。工業汚染物質だけでなく,食物に使われている化学物質も原因と考えられることが指摘されています。年を取って最初の子供を産み,そのために自然の乳汁の分泌が遅れるということも,どういうわけか,乳ガンの発生といくらか関係があります。ガンの原因に関する他の情報については6ページの囲み記事をご覧ください。
多くのガンが人間の行動や生活環境内の諸要素に起因することを科学者が立証したのであれば,次にはガンの問題の解決に重要な予防と治療について考えなければなりません。次の記事ではその点が取り上げられています。
[5ページの囲み記事]
ガンに関する用語の定義
腫瘍 ― 異常な組織のかたまり。病的なはれもの。新生物とも呼ばれる。良性のものと悪性のものがある。
良性 ― 他の組織を侵したり他の組織に浸潤したりしない細胞。しかし,良性腫瘍も圧迫するので危険である。
悪性 ― 周囲の組織を侵し,周囲の組織に浸潤する細胞。つかまえなければ最後には患者を殺す。
ガン ― 悪性腫瘍。肉腫とガン腫の二つのグループに大別される。
肉腫 ― 骨,軟骨,脂肪,筋肉を含む結合組織にできるガン。
ガン腫 ― 皮膚,腸,肺,乳房などの器官を包む,あるいは器官の内側を包む組織を侵すガン。
発ガン物質 ― ガンの原因になる物質。
転移 ― 病気が原発部位から他の場所に飛び火すること。
リンパ液 ― 体を循環している透明の液。白血球,抗体,不純物,栄養素などを含む。
リンパ腺 ― リンパ節ともいう。リンパ腺はふつう体から不純物をろ過する。リンパ系は体が感染を防ぐのに肝要なもの。
(イワン・カメロン,ライナス・ポーリング博士共著「ガンとビタミンC」; チャールズ・F・マックハン著「ガンに関する事実」より。)
[6ページの囲み記事]
人間にできるガンの誘因と確定しているものの一部
原因 ガンのできる場所
アフラトキシン(カビの生えたピーナツに発生する)_肝臓
酒の飲み過ぎ___________________口腔,咽喉,食道,肝臓
石綿_______________________肺,肋膜,腹膜
キンマ,たばこ,石灰をかむこと__________口腔
家具(堅木)___________________副鼻孔
皮革製品_____________________副鼻孔
栄養過剰(太り過ぎの原因)____________子宮内膜,胆嚢
年を取ってからの初妊娠______________乳房
子供がいない,あるいは出産数が少ない_______卵巣
寄生虫感染:
ビルハルツ住血吸虫,アフリカ__________膀胱
肝吸虫,中国__________________肝臓
乱交_______________________子宮頸部,皮膚
ステロイド____________________肝臓
たばこ______________________口腔,咽喉,肺
ウイルス(B型肝炎) _______________肝臓
(「ガンの原因」より)
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あなたはガンを克服できるか目ざめよ! 1986 | 10月8日
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あなたはガンを克服できるか
「したがって人間のガンの大半は予防できる可能性があるようだ」―「ガンの原因」。
「患者の生活様式や,いやす働きに参加しようとする患者の意欲は,患者の健康状態に重要な影響を及ぼしうる」―「全体論の医学」。
どうすればガンを克服できるでしょうか。この病気の治療に,あるいはこの病気の破壊的猛威から身をかわすのに,どんなことが行なわれているのか調べてみることにしましょう。しかし,予防は治療に勝るということわざがありますから,まず食餌による予防の可能性について考えましょう。
食餌は影響するか
わたしたちが食べる食物の中に,ガンを誘発するものがあるのでしょうか。「マリグナント・ネグレクト」という本には,「アメリカに結腸ガンと乳ガンが多い理由の大半は食べ物にあるとみなされている」とあります。ですから何年も食べている物は,発ガンの可能性に影響を及ぼすこともあるのです。したがって,健康でありたいと思う人は,飲食物の適,不適をよく識別しなければなりません。
食餌には液体の摂取も含まれます。アルコールの飲み過ぎは種々のガンの誘因になりうるので,これに対する助言は明らかに,適度な量を決して過ごさないということです。しかし,医師はどのくらいを“適度”とみなすのでしょうか。「特にたばこを吸う人の場合には1日に2杯かそれ以下」という答えに,自分は適度に飲んでいると信じている多くの人たちは驚くかもしれません。(「食餌,栄養,そしてガン予防」)この定義によれば,1日に2杯以上は,ガン予防となると,もはや適度ではないわけです。
重要な点は,もし個々の人が自分で予防措置を取れば,何らかの対処が可能であるということです。しかし,一般の人々に予防措置の重要性を印象づけるには何が必要でしょうか。ガンの外科医,ブレーク・キャディーは,「脂肪の多い肉をやめて脂肪の少ないもの,コレステロールの少ないものを食べる方向に人々を導く大衆教育計画は,医学が介入してガンを減らそうとすること以上に効果があるだろう」と率直に述べています。(「標的:ガン」)その場合,どんな食べ物がガンの予防に役立つのでしょうか。
ある政府の保健衛生局は,1日に少なくとも25ないし35㌘の食物繊維を食餌に取り入れることを勧めています。これは腸を自然な方法で掃除するのに役立ちます。しかしせんいをどのように食事に取り入れますか。果物,野菜,エンドウ,インゲン,玄麦パン,穀類食などを十分に食べることです。ジャガイモ,リンゴ,ナシ,モモなどを皮のまま食べます。キャベツの仲間の野菜も,結腸ガンの危険を少なくするかもしれません。
動物脂肪を避けることも勧められています。赤い肉より魚や家禽の肉が勧められています。ですから肉を選ぶときには,外側にも中にも脂肪が少ないことを確かめます。乳製品も低脂肪のもの,あるいは脱脂乳でつくられたものを選びます。濃緑色の野菜のような,ビタミンAとCを含む食品 ― ブロッコリ,ケール,ホウレンソウ,チコリ,クレソン,ビーツ,タンポポの葉 ― も含めます。黄色がかったオレンジ色も,食物の色としてはビタミンAとCを含むことを示す良い色です。野菜では,ニンジン,サツマイモ,カボチャ。果物では,アンズ,カンタロープ,パパイヤ,モモ,パイナップル,メロンなどがあります。
「食餌,栄養,そしてガン予防」という本はまた,「(飽和脂肪,不飽和脂肪を問わず)脂肪を食べ過ぎると,結腸ガン,乳ガン,前立腺ガン,子宮内膜のガンにかかる危険が増すかもしれない」と述べています。ではどんな結論になるでしょうか。それは多くのガンの場合,食べ物が問題になりうるということです。
ガンの危険を少なくしたければ,ほかにどんな物を避けるべきでしょうか。この勧めはある人々には歓迎されないかもしれませんが,たばこの役割も調べなければなりません。
彼らがたばこについて言うことは真実
オックスフォード大学の専門家,ドールとピートーは次のように書いています。「たばこの使用量を減らすことほど,ガンに起因する死亡数に大きな影響を与える単一の対策はない。……おもな影響を受けるのは肺ガンの発生率である。中年も後半になると,肺ガンは,それまでずっとたばこを吸わずにきた人たちよりも,喫煙者のほうに10倍以上多い」。
喫煙を完全にやめると他のガンの発生率も低くなります。「口腔,咽頭,喉頭,食道,膀胱,たぶん膵臓,そして恐らく腎臓のガンの発生率にも大きな影響があるだろう」―「ガンの原因」。
死を招く化学物質
あなたは職場で化学物質を吸い込むことがありますか。あるいはそうしたものが肌に触れることがありますか。ある化学物質がガン反応を引き起こしうることは最近の研究で証明されています。米国の全国毒物学計画の指導者,デイビッド・P・ロールによると,「18の化学物質は人間にガンを起こさせる能力があり,他の18にもその疑いがあることを」証拠は示唆しているということです。米国の保健関係の出版物「発見の十年」は,「一つの化学物質がイニシエーター(発ガンの開始役)とプロモーター(発ガンの促進役)の二役をするか,あるいは二つかそれ以上の化学物質が相互に作用するかして一個の腫瘍をつくる」と述べています。そういうことであれば,危険な化学物質また職業にはどんなものがあるのでしょうか。
「ガンの原因」という本には,アルキル化剤,芳香族アミン,石綿,ベンジン,塩化ビニル,ある種の化合物つまり酸化した状態のヒ素,カドミウム,クロム,ニッケルなどが挙げられています。また,堅木の家具や皮革製品の製造,イソプロピルアルコールの生産なども,危険を伴う職業であることを示唆しています。では,もしこのうちのどれかが,あなたの仕事と関係していたらどうすればよいでしょうか。
責任感のある雇用者ならば,汚染の危険を除去する措置をとるのが普通です。換気をよくしたら仕事場から蒸気が速く出ていくようになった例もあります。危険な区域では従業員を短時間しか働かせないところもあります。保護になる作業着,ガスマスクなども使用されます。しかし,ここで一つ警告の言葉を聞くのがよいかと思います。
「大半の会社はそうした化学物質が存在することを知らないでいることさえある。あるいは,存在することは知っていても,発ガン物質といったようなものがあることなど少しも考えない」。(「発見の十年」)そのような場合はどうすればよいでしょうか。雇用者にあなたを保護する気持ちがなければ,職を変えるべきかどうかを検討するのがよいかもしれません。結局,健康は最も貴重な財産の一つです。
では,ガンを克服するのにあなたに何かできることがあるでしょうか。まず,次の質問に答えを出してみましょう。あなたは命を愛し,健康や活力を大切にしますか。健康体というすばらしい賜物のありがたさを感じていますか。ガンを克服したいと思いますか。もし,はい,という答えであれば,生活様式を変える,つまり体の中でガンの発生する機会が少なくなるような生活様式に変える十分の動機を培うことができます。(6ページの表をご覧ください。)
早期診断 ― 治療の第一歩
もし予防が遅すぎたらどうでしょうか。科学ライターのエドワード・J・シルベスターは,「ガンにかかるのを心配している人にもまだ良い知らせはある。……しかし……ガン治療に最も有利なのは早期診断である」と述べています。ですから,この分野の専門家はすべて,ガンの兆候らしきものに油断しないようにと忠告します。では,どんな初期の兆候に注意すべきなのでしょうか。その中には次のようなものがあります。
1. 排便や排尿の傾向または習慣の変化。
2. 治らないただれ。
3. 異常出血,または分泌や排泄。
4. 乳房その他の場所のしこりまたは腫瘍。
5. 習慣的な消化不良,または食物の通りが悪い。
6. いぼ,あざ,またはほくろに明らかな変化が見られる。
7. 絶えず出るしつこいせき,かれ声。
8. 説明のつかない体重の減少。
こうした症状のどれかに気づいたらすぐに医師の診断を受けます。もちろんそれはガンの症状ではないかもしれません。それでも早く発見するに越したことはありません。
腫瘍の早期発見の方法は進歩し,マンモグラフィー(乳房撮影),サーモグラム,ソノグラム(超音波検査図),CTスキャン(コンピューター断層撮影),パパニコロウ塗抹標本,分泌物と排泄物の検査などによる方法が用いられるようになりました。現在の専門技術者はMRI(核磁気共鳴断層撮影装置)と呼ばれるさらに正確な早期診断システムを開発しました。著述家のジョン・ボールが説明しているように,MRIスキャンは,「健康な組織を冒さず,放射線もなく,痛みも伴わない方法」です。それは非常に効果的な方法で,「最近,ハンチントン・メディカルで行なわれた研究で,CTスキャンでは脳の異常が発見されなかった93人の患者に脳腫瘍が見つかった」ということです。(「アメリカン・ウェイ」)非常に高価な装置ですが,1986年の終わりまでには米国の病院に300基ほど設置されることが期待されています。
あなたの態度と医師の提案
ガンと診断された人は大抵それを否定し,信じようとしません。「ガンに関する事実」の中でマックハン博士は,その否定的な態度は「命を脅かす状態に対する極めて重要で,正常で,かつ健康的な防御機構である。これは“魂のモルヒネ”と言われていて,耐え難い苦悩を排除する方法である。実際のところ,わたしたちはそのようにして,現実に立ち向かうための感情的な力を結集する時間をかせぐのである。それによって現実の訪れが遅くなり,それに圧倒されなくてすむ場合が多い」と述べています。
しかしこのようにも警告しています。「いつまでもしつように否定しつづけるなら,早期治療の機会を失うか,あるいは診断を否定して医師の忠告や治療を拒絶することになるかもしれない」。
別の反応は恐怖と怒りです。「怒りの対象となるのは……家族,神,運命,医師,看護婦,病院,あるいは病気そのものかもしれない」ということを関係者全員が理解しておくと助けになるでしょう。
罪悪感がガン患者の思いを襲うこともよくあります。病気の夫は,もはや家族をきちんと養ってゆけないということで罪悪感を感じ,妻ならば,以前のように家庭を守ってゆけないということで罪悪感を感じます。マックハン博士は,「何かができないからといって罪悪感を抱くよりも,そのことを残念に思うほうがずっと気が楽になる」と助言しています。
うつ状態もガン患者によく見られる反応で,これは絶望感や暗い気持ちに患者を陥れがちです。マックハン博士は以上のような反応をどう見ているでしょうか。「不愉快ではあるが,こうした反応は全く正常なものである。……病気に対する反応であって,病気そのものの一部ではない」。
博士はこう勧めています。「ガンにかかったら多くの闘いが要求される。ある程度勝利を収めるであろうが,ある程度の敗北を被ることも予期すべきである。……闘いに必要な事柄を理解するには,敵を研究しなければならない。これは,ガンはどのようにあなたの体を襲うかを学ぶことであるが,さらに重要なことは,ガンはあなたという人間,つまり真のあなたをどのように襲うかを学ぶことを意味する」。
ガンの治療に取り組む
ガンとの闘いはある面で徐々に成果をあげており,ここ何十年かの間に励みになる結果が見られています。医師や科学者,研究者たちはトンネルの向こうに小さな光が見えてきたと感じています。これはガンとの闘いに重要な要素 ― 希望 ― が取り入れられたことになります。「ガンとの共存に最も重要な一つの必要条件は恐らく希望であろう。これは極めて不思議な,そして体に活力を与える非常に価値の高いものの一つである」。回復は希望を糧とし,ガンは失望を糧として栄えます。しかし,ガン患者はどこから希望が得られるでしょうか。
希望の源はいくつかありますが,際立ったものを三つ挙げると,(イ)同情心に富み楽観的な医師と看護婦,(ロ)積極的な見方をする愛する者たち,とりわけ配偶者,(ハ)事実に立脚した信仰。このシリーズの最後の記事は,信仰の面と,将来に対する希望の真の根拠に触れています。a
医学的にいえば,希望の確実な根拠はおもに三つの正統的なガン治療法 ― 手術,化学療法,放射線療法にあります。この三つはどんな療法でしょうか。
手術による治療法では,腫瘍と,もしかしたら周囲の組織を一部,外科的処置によって切除します。
化学療法というのは,体内に広がってガン細胞を攻撃する薬剤を用いる療法です。「50を超える化学薬品がガン治療に使われているが,ある腫瘍は治せる」―「ガンに関する事実」。
放射線療法とは,悪性細胞を破壊するために,X線,コバルト,ラジウムなどの高エネルギー放射線を利用する方法です。
副作用に対処する
ガン治療の成功について語る際に,治療に伴う危険や副作用に触れないのは片手落ちでしょう。それは,ごく簡潔な言葉に言い換えるとすれば,「化学療法の薬は毒」,「この薬による治療法の中にはあまりにも有毒なため副作用で患者が死亡するものがある」ということになります。(「標的:ガン」)そのようなわけで,化学療法は人体組織にとって有害ですから,両刃の剣です。望ましいのは,この方法が健康な細胞ではなく,悪性の細胞を多く破壊することです。しかし実際には,吐き気,おう吐,一時的な脱毛など,他の猛烈な副作用をも引き起こすことになりかねません。ところが,多くの患者は,望ましくない一時的な副作用のほうが,若くして死ぬよりはまし,と考えます。
放射線療法とは,事実上放射線に触れた細胞をすべて破壊する焼却法のことですが,放射線を腫瘍のある正確な場所に集中させることは可能です。それでも,ある権威者は,「放射線療法は後のガンの発生に強い影響を及ぼす」と述べています。そのため,患者は取り引きにも似た事態に直面して,決定を下さなければなりません。
ある医師たちは,自分たちの観点からすれば患者に回復の希望がないような場合でも,時々この療法を用いるという点を認めています。チリの外科医,ビラー博士が認めているように,「ガンの治療は,心理療法の極めて高価な,極めて高価な一形態となる場合が時にはある」のです。科学ライターのシルベスターが指摘しているように,「助けになるという証拠がないにもかかわらず甚だしく有毒な治療法までが勧められていることを懸念する多くのガン専門医も,このビラーの洞察に共鳴している」のです。では,どうしてそのような治療法が勧められているのでしょうか。「それは,医師というものが,ある批判力のある腫瘍学者の言葉を借りれば,『かわいそうなご婦人をただ死なせるに忍びない』と感じているから」です。―「標的:ガン」。
しかし,多くの人は,苦しみを長引かせるだけの治療は避けて,何とか生き抜くことのほうを選びます。その療法が助けにならず,苦しみを増し加えることにさえなりかねない場合はなおのことです。
乳ガンは克服できるか
その死亡率だけではなく,美的な面,心理的な面に及ぼす影響のゆえに,女性にも,一部の男性にも最も恐れられているガンの一つは,乳ガンでしょう。マステクトミーとして知られる,乳房の切除を避けるためには何ができますか。重要な要素となるのは早期診断です。
女性に対しては,少しでもしこりがないかどうか,乳房を自分で調べることが勧められていますが,乳房の大きめな女性には,年に一度マンモグラフィー,つまり乳房のエックス線検査を行なうことが提案されています。なぜでしょうか。単なる触診では,組織の深いところにあるしこりを見つけるのは難しいからです。コリー・セルバース博士が忠告している通りです。「35歳ないしは40歳になったなら,最初のマンモグラフィーを行なってもらう。そうすれば,幸いな人々の一人に数えられる確率はずっと高くなる」。なぜそう言えるのでしょうか。「ほとんどどんなタイプの乳ガンでも,ステージ1で発見されたなら,5年生存率は85%を超える」のです。
今は放射線のレベルを大幅に抑えてマンモグラフィーを行なえるエックス線の機械が使えます。この機械を使えば,過度の放射線がガンを新たに発生させる可能性は最小限に抑えられます。
ごく初期の診断にとって助けとなる別の方法は,サーモグラムつまり乳房の温度分布の検査です。「腫瘍は独自の血液供給を発達させ,成長のために血液の酸素エネルギーを大量に必要とする。……[腫瘍]は熱点を形成し,正常な細胞よりもはるかに多くのエネルギーを放出している」。(「標的:ガン」)それでサーモグラムにより,「熱点」を早期に発見できるのです。
以前,乳ガンの手術には根治乳房切除,つまり乳房と周囲の筋肉組織,およびリンパ腺を除去し,胸部の形を崩してしまう方法がしばしば採用されました。今でもこの方法は不可欠なものとみなされているのでしょうか。乳ガンの分野の専門家であるバーナード・フィッシャー博士は,根治乳房切除が必ずしも正当とは言えないばかりか,「乳房の組織全体を除去してしまう単純乳房切除も,放射線治療を併用する,あるいはしない単なる腫瘤摘出術[しこりだけを除去する方法]に比べて,手術後に生き延びる割合を高めたとは言えそうもない」と,結論しています。
ほかに治療法があるか
ここまではガン治療の医学的に正統な方法を考慮してきたにすぎません。ほかの方法に頼った患者の成功や失敗の程度は,さまざまに異なっていると言うのが妥当でしょう。その例としては,レトリル(ビタミンB17 )療法,薬草と特定の化学物質を用いるホクシー療法,歯科医のウイリアム・D・ケリーが,ガンは「ある活性膵臓酵素の不足を意味する」という信念に基づいて確立した方法などがあります。―「ガンに対する一つの答え」。
それに加えて,「標的:ガン」が述べている通り,次の点も挙げることができます。「一部の医師を含め,ガンや他の病気の原因,治療,予防に関して“全体論的な”考えを取り入れる人は非常に多い。それは,ガンとは,人間の全体的な調子が悪くなることによって“引き起こされる”病気であり,人間の側が意識的に努力すれば,健康を回復できるという学説である。高名な人でこの説を信じている人は少なくない。また,健康に関して,還元主義者の考えではなく,全体論的な考えに基づく処方に従った結果,病が治癒したと断言する元ガン患者も少なくない」。
その元患者の一人に,カナダのブリティッシュ・コロンビア州に住む50代の快活な女性,アリスがいます。アリスは36年前,手に小さな悪性の腫瘍ができ,最初の手術を受けました。6年後には卵巣ガンの手術,その後の1960年には子宮摘出術を受けました。
1965年にはガンが再発し,もう一度手術を受けるよう勧められました。アリスはこう述べています。「病院のほうでは,人工肛門形成術と乳房切除術を施したいと言いましたが,私はそれを望みませんでした。それまでにいやというほど手術を受けてきたからです。それで,ホクシー療法を受けるためメキシコへ出かけてゆきました。11年間,その方法に従ってやっています。ほかの人たちにも必ず効くとは言えないと思いますが,私には効きました。それ以来,ガンは再発していません」。
ローズ・マリーも,ガンと闘って成功を収めた人の一人です。次に,ローズ・マリーが自分の経験を語ります。
[脚注]
a 「目ざめよ!」誌の10月22日号には,医療関係者と親族が果たす支える役割を取り上げた記事が載ります。
[13ページの囲み記事]
「目ざめよ!」誌はこれらさまざまな方法について述べていますが,その効果性について明確な立場を取るものではありません。ケリー博士が認めている通り,「選択するどんなプログラム[正統的であってもなくても]にも,またどんなプログラムの組み合わせにも大きな危険が伴うということを常に銘記しなければならない」のです。ですから,私たちは,現在の状況をお伝えしますが,みなさん一人一人が研究され,資格のある医師と相談の上,ご自分でお決めになるようお勧めします。
[10ページのグラフ]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
男性喫煙者のガンによる死亡者数と,非喫煙者の推定死亡者数との対比の例b
一人の人は100人の死者を表わす
肺ガン
非喫煙者 推定死亡者数 231
喫煙者 実際の死亡者数 2,609
口内のガンおよび喉頭ガン
非喫煙者 推定死亡者数 65
喫煙者 実際の死亡者数 452
[脚注]
b 1950年代に喫煙していた米国の男性で,1970年代半ばまでに死亡した人の数に基づいています。―「ガンの原因」,1221ページをご覧ください。
[9ページの図版]
これらの食品はガンの予防になる食物繊維やビタミン類を供給する
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「ガン ― 私は負けてはいません」目ざめよ! 1986 | 10月8日
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「ガン ― 私は負けてはいません」
ローズ・マリーは米国テキサス州に住む60代の婦人で,たいへん明るい外向的な人です。ローズ・マリーが自分に腫瘍のあることを初めて発見したのは1964年のことで,更年期に入ったころでした。彼女は励みになる経験を次のように語ります。
乳房にしこりがあるのに初めて気づいた時,それが何なのか気掛かりでした。それで検査のために主人が病院へ連れて行ってくれました。診察の結果を待って座っているあの時間といったら,気が気ではありませんでした。そしてついに,乳ガンかもしれないと言われた時,腹部をけられたかのように感じたのを覚えています。それから,どの治療法を採るか,思案に暮れる期間が始まりました。手術を強く勧める医師もいれば,手術に代わる療法を勧める医師もいました。主人と私はどのように決定したでしょうか。
主人が医師である友人に話したところ,乳房にできるしこりはほとんどが良性のものだが,悪性腫瘍の可能性もあるということでした。それで,成り行きを見て手術を遅らせるか,あるいは気になるそのしこりを直ちに切除するかの選択の問題になりました。私は主人と相談し,手術を受けることに決めました。そのしこりは切除され,悪性ではないと診断されました。私は安堵の胸をなでおろしました。
1965年になって同じ乳房に別のしこりを発見しました。これはある意味で後退でしたが,敗北ではありませんでした。私はもう一度手術を受けに行きましたが,そのしこりも良性ということでした。言ってみれば,その2年間は,事がすべて順調に行くのをかたずをのんで見守っていた形でした。その後,1967年にまたもや同じ乳房にしこりができました。医師たちは注意深い生検をするよう手配し,やっと悪性であることが分かりました。乳房を切除しなければなりません。こうして1か月後,“単純”乳房切除手術を受けました。
その後何の問題もないまま8年が過ぎました。私はガンに勝ったと考え始めました。ところが,1975年にもう一方の乳房にしこりがあるのが分かりました。医師たちは私の病歴が病歴なので,その乳房の切除手術を選びました。さらに,そのガンが転移しないようにするために,一連の放射線療法をも勧めました。私は正直言ってこの治療法を恐ろしく感じました。どうしてでしょうか。
私は毎回,同じように放射線治療を受けていた他の人々と一緒に待合室にいなければなりませんでした。その人たちの顔や体には,放射線の照射を受ける部分に赤い染料で印が付けられているので,それを見ると心は乱れました。そして自分ひとりで,その特別の放射線治療室へ入って行かねばなりませんでした。目に見えないその力が自分の肉体を悪性の部分も健全な部分も同時に破壊していることを知っていましたから,全く薄気味悪い気持ちでした。とにかく,15週間ほどの過程で30回の放射線治療を受けました。それ以後は,背中と頭部にできた良性の腫瘍のために小さな手術をする必要が2度あっただけです。
生き抜くための強さ
最初に腫瘍が現われてから22年後の今も自分が生きていることを私は本当に感謝しています。こうした試練を耐え抜く助けになったのは何でしょうか。まず第一に,主人が支えになってくれたことです。主人は,放射線治療の全過程を含めて毎回病院へ付き添って行ってくれました。病院へ行く時には,親切な友達か親戚の人に付き添ってもらうことがどうしても必要だと思います。でも,付き添いは感傷的な人ではなく,強く積極的な人でなければなりません。私はすぐに泣くほうなので,その面ではだれかに刺激してもらう必要はありません。
また,お医者さんたちが大いに助けになってくださいました。私たちにとって,その時の一番よい支えの一人としてジェームズ・トムソン博士がいてくださったことは大変ありがたいことでした。トムソン博士は手術室の中でさえ温かい態度で患者に接する方でした。病状については率直に話されましたが,荒々しいところや,ぶっきらぼうなところはありませんでした。
私は自分の状態をくよくよ考えてはならないことを学びました。常に自分の思いと生活を関心事と活動で満たすようにしました。私は読書が好きです。といっても,その内容は楽しい事柄をテーマにしたものでなければなりません。病気に関する問題をあれこれ考えたくありませんし,テレビ番組の病院ものには我慢できません。
私が病気だった時,助けになったのは何だったでしょうか。うれしかったのはあの見舞いのカードや手紙でした。非常に多くの方が私のことを気遣ってくださっていることを知ってとても励まされました。病気の時というのは,必ずしもいろいろな人に訪ねて来てもらいたいという気持ちでいるとは限りません。でも,見舞い状なら大歓迎です。もちろん,見舞いに来てくださった方々には,築き上げる積極的な言葉に感謝しました。3年前にガンで死んだ親族のだれかのことなど知りたいと思う人はいません。ですから,病気の人を見舞う際には,その人の気持ちに敏感であれば感謝されます。
言うまでもなく,エホバの証人としての私の信仰は大きな支えとなってきました。できる限りクリスチャン宣教に忙しく携わるようにもしました。神の新秩序に関する希望と復活のことを宣べ伝え,教えることは,自分の信仰を深めるのに役立ちました。1986年の今もなお生きており,エホバへの奉仕における活動で生活を満たすことができるのは,私にとって幸せなことです。―寄稿。
[近年のガン治療における進歩のおかげで,患者によっては単純腫瘤摘出だけですむようになりました。しかし,治療法の選択には多くの要素が関係します。―編集者。]
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ガンがなくなる時目ざめよ! 1986 | 10月8日
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ガンがなくなる時
「西暦2100年までに,生物学に関する基礎研究は,現在では全く予測もつかないような方法でガンの予防を可能にするかもしれない」―「ガンの原因」。
聖書の預言によれば,ガンのなくなる日はもっと早く訪れ,しかもそれは,上に引用した本の著者が述べているように「現在では全く予測もつかないような方法」で確実にもたらされるでしょう。なぜそのように断言できるのでしょうか。
なぜなら,今から1,900年以上も前に地上に遣わされたキリスト・イエスには,人類に命と健康を回復させるための力が付与されていたからです。ある時ローマ人の士官の下男が「まひして家にこもったまま,ひどく苦しんで」いましたが,イエスはその患者と会うことさえせずに病気をいやされました。(マタイ 8:5-13)別の機会に,イエスは,ご自分の弟子ペテロの,熱病にかかっていた義理の母親をいやされました。どんな方法でいやされたのでしょうか。『イエスは彼女の手にお触りになった。すると熱は引き,彼女は起き上がった』のです。―マタイ 8:14-17。
イエスの宣教を調べてみると,イエスは,男女を問わず,異なる年齢層の人々のさまざまな病気をいやされたことが分かります。イエスは,足の不自由な人,不具者,盲人,口のきけない人,てんかん患者,まひ患者,出血を患っていた女性,手のなえた男性,そして水腫にかかっていた男性などの健康を回復されました。さらに,人を死から復活させることも行なわれました。どんな方法でそれを行なわれたでしょうか。それはなにか特殊な治療法によるものでしたか。
実際のところ,それは催眠術療法でも,心理療法でも,あるいは他のいかなる種類の医療方法でもありませんでした。またそれは,イエスの有しておられた個人的な知恵や知識また力によるものでもありませんでした。それは,超自然的な源からもたらされた奇跡的ないやしでした。(マタイ 8:17。イザヤ 53:4)そのいやしを成し遂げたのは,み父の持つ霊と力でした。とはいえ,そのいやしの力が適用されたのはキリストの時代に生きていた病人のうち少数の人々にすぎませんでした。さらにそれは,いやされた人々がその後に死ぬことを防ぐものとはなりませんでした。では,いやしは実際にどのような役割を果たしたのでしょうか。
イエスの行なわれたいやしは,神から与えられた健康と命という賜物が回復されることによって従順な人類すべてが益を受けるようになる,ある時代を指し示していました。そのためわたしたちには,霊感を受けた聖書による次のような約束があります。「見よ! 神の天幕が人と共にあり,神は彼らと共に住み,彼らは[この地上で]その民となるであろう。……また神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」― 啓示 21:3,4。
過ぎ去る以前のものの中には,ガンとその原因も含まれています。キリストによる神の王国政府の支配のもとでは,死をもたらすような環境的な要因はぬぐい去られるでしょう。身体を衰弱させるような圧力は取り除かれて,体に備わっている免疫機構は所期の機能を果たし,健康な体は,真に霊的価値のある事柄を中心とした健全な思いと協調することでしょう。―イザヤ 33:24; 35:5,6。
これらすべては,事実として受け取るにはあまりにもすばらしすぎるでしょうか。しかし,聖書が述べる通り,わたしたちには神による次のような保証の言葉があります。「そして,み座に座っておられる方がこう言われた。『見よ! わたしはすべてのものを新しくする。……書きなさい。これらの言葉は信頼できる真実なものだからである』」。(啓示 21:5)この保証の言葉は,体をむしばむガンに,ときには死に至るまでも耐えるエホバの証人たちを支える生きた希望です。それらの人々は,エホバ神が「新しい天と新しい地」を約束しておられることを知っています。―イザヤ 65:17,18。
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