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生物から分かること目ざめよ! 2021 | No. 3
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単細胞生物のイースト菌について考えてみましょう。イースト菌の細胞は,人間の細胞に比べると単純な造りに見えますが,実際にはとても複雑です。細胞の中には,DNAが収納された精巧な造りの細胞核があります。また,小さな“マシン”もあって,分子を選別し,組み立て,運んでいます。こうした働きはイースト菌が生きていくのに欠かせません。イースト菌は栄養が不足すると,化学変化が生じ,細胞の活動が低下して休眠状態に入ります。このようにして保管されたイースト菌は,パン作りの時に再び活性化します。
科学者たちは,人間の細胞についてよく理解するためにイースト菌の細胞を長年研究してきました。でも,分からないことがまだまだたくさんあります。「イースト菌の働きを解明するには多くの実験が必要ですが,現状は,それを行える生物学者の数が足りません」。そう語るのはスウェーデンのチャルマース工科大学,機械知能工学のロス・キング教授です。
イースト菌の細胞は単純に見えますが,驚くほど複雑な造りになっています。この仕組みは偶然にできたのでしょうか。それとも,誰かが考えたのでしょうか。
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