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    ものみの塔 1993 | 11月1日
    • 一人の王がエホバの聖なる所を汚す

      「自分たちの神を知っている民は,優勢にな(る)」― ダニエル 11:32。

      1,2 2,000年余りの間,どんな劇的な闘争が人類史の特色となってきましたか。

      敵対する二人の王が,覇権を求める全面的な闘いに閉じ込められています。戦闘は2,000年余り続いており,片方が優勢になったかと思えば,次にはもう一方が優勢になります。現代においてこの闘いは地上のほとんどすべての人に影響を与え,神の民の忠誠を試みるものとなってきました。その闘いはどちらの勢力にも予見できない出来事をもって終わります。前もって記されたこの劇的な歴史は,古代の預言者ダニエルに啓示されました。―ダニエル 10章から12章。

      2 この預言は北の王と南の王との間に存在し続ける敵意を扱ったもので,その詳細は「御心が地に成るように」という本aの中で説明されています。同書では,最初の北の王はイスラエルの北にあったシリアであることが示されています。後にその役割はローマに引き継がれました。南の王の一番手はエジプトでした。

      終わりの時の闘争

      3 み使いによれば,北の王と南の王に関する預言は,いつ,どのように理解されるようになりますか。

      3 これらのことをダニエルに啓示したみ使いはこう言いました。「ダニエルよ,あなたは終わりの時までこれらの言葉を秘し,この書を封印しておくように。多くの者が行き巡り,真の知識が満ちあふれる」。(ダニエル 12:4)確かにこの預言には,1914年から始まった期間である終わりの時が関係しています。その顕著な期間に,多くの者が聖書の中を「行き巡り」,聖霊の助けによって,聖書預言の理解を含め,真の知識が満ちあふれるようになります。(箴言 4:18)その期間が経過するにつれ,ダニエルの預言のますます多くの詳細な点が明確にされてゆきました。では,「御心が地に成るように」が出版されてから35年が経過した1993年の今,北の王と南の王に関する預言をどのように理解すべきでしょうか。

      4,5 (イ)北の王と南の王とに関するダニエルの預言の中で,1914年はどこに位置していますか。(ロ)み使いによれば,1914年にはどんなことが生じますか。

      4 1914年における終わりの時の始まりを特色づけたのは,イエスが予告しておられたとおりの最初の世界大戦と他の世界的な苦難でした。(マタイ 24:3,7,8)ダニエルの預言の中にその年を見いだすことができるでしょうか。確かにできます。終わりの時の始まりはダニエル 11章29節で言われている「定めの時」です。(「御心が地に成るように」,269,270ページをご覧ください。)それはダニエルの時代にエホバによってすでに定められていた時でした。ダニエル 4章の預言的に重要な出来事の中で示されていた2,520年の終わりに到来したからです。

      5 ダニエルが若者だった西暦前607年に生じたエルサレムの滅びから西暦1914年までの2,520年は,「諸国民の定められた時」と呼ばれました。(ルカ 21:24)政治上のどんな出来事がその期間が終わったしるしとなるのでしょうか。一人のみ使いがそれをダニエルに啓示しました。み使いはこう言いました。「定めの時に彼[北の王]は戻って行き,南に向かってまさに攻め寄せる。しかし,後の時は初めの時と同じにはならないであろう」― ダニエル 11:29。

      王は戦争に負ける

      6 1914年に北の王だったのはだれですか。南の王はだれでしたか。

      6 1914年までにはカイゼル・ウィルヘルムを指導者とするドイツが北の王の役割を引き継いでいました。(“カイゼル”はローマの称号“カエサル”から派生。)ヨーロッパにおける戦争行為の勃発は,北の王と南の王が行なう一連の対決のうちの一つでした。後者,つまり南の王の役割は今や英国が担うようになり,同国は最初の南の王の領土であったエジプトを直ちに占領します。戦争が進むうちに英国に加わったのが,同国の以前の植民地であったアメリカ合衆国です。南の王は英米世界強国,史上最強の帝国となりました。

      7,8 (イ)最初の世界大戦では,どのような意味で物事は「初めの時と同じ」ようになりませんでしたか。(ロ)最初の世界大戦はどんな結末を迎えましたか。しかし預言によれば,北の王はどのように反応しましたか。

      7 以前の二人の王の闘争では,北の王であったローマ帝国が一貫して勝利を収めました。しかし,この度の『物事は初めの時と同じではなかった』のです。なぜでしょうか。北の王が戦争に負けたからです。敗戦した理由の一つは,「キッテムの船」が北の王に攻め寄せたことにありました。(ダニエル 11:30)この船は何だったのでしょうか。ダニエルの時代にはキッテムとはキプロスのことでした。そして最初の世界大戦の初期にキプロスは英国に併合されました。さらに,「ゾンダーバン図解聖書百科事典」によると,キッテムという名称の「意味は拡大されていて,西[洋諸国]一般,特[に]海に生きる西[洋諸国]をも含む」とされています。新国際訳は「キッテムの船」という表現を「西部の沿岸地帯の船」と訳出しています。最初の世界大戦ではキッテムの船は,ヨーロッパの西部沿岸沖に浮かぶ英国の船でした。後に英国海軍は,西に位置する北アメリカ大陸の船によって強化されました。

      8 この襲撃に遭って北の王は「失意させられ」,1918年に敗北を認めました。しかしそれで終わったのではありません。「それでも彼はまさに戻って行って聖なる契約をひぼうし,効果的に行動する。また戻って行って,聖なる契約を離れる者たちに考慮を払う」。(ダニエル 11:30)み使いはそのように預言し,実際にそのようになりました。

      王は効果的に行動する

      9 アドルフ・ヒトラーの台頭を促したものは何ですか。彼はどのように「効果的に行動」しましたか。

      9 戦後の1918年,勝利を収めた連合国はドイツに懲罰的な平和条約を押し付けましたが,その目的はドイツ国民を不定の将来に至るまで飢餓に近い状態に追い込むことにあったようです。その結果,ドイツは極度の貧困の中で何年かの間よろめき続け,アドルフ・ヒトラー台頭の機が熟します。彼は1933年に最高の権力を手中に収め,イエス・キリストの油そそがれた兄弟たちによって代表される「聖なる契約」に対して直ちに悪らつな攻撃を始めます。そのようにしてヒトラーはそれら忠節なクリスチャンたちに効果的に行動し,彼らの多くに残忍な迫害を加えます。

      10 ヒトラーは支援を求めてだれに言い寄りましたか。どんな結果になりましたか。

      10 ヒトラーは経済面でも外交面でも成功を収め,その分野でも効果的に行動しました。彼は数年もたたないうちにドイツを侮りがたい強国に仕立てましたが,その面で「聖なる契約を離れる者たち」の援助を受けました。それはだれのことですか。それは神との契約関係にあると主張しながら,ずっと昔にイエス・キリストの弟子であることをやめてしまった,キリスト教世界の指導者たちであると考えられます。ヒトラーは「聖なる契約を離れる者たち」の支援を取り付けることに成功しました。ローマ法王は彼と政教条約を結び,ローマ・カトリック教会もドイツのプロテスタント教会も,12年に及ぶ恐怖政治の間ずっとヒトラーを支援しました。

      11 北の王はどのように『聖なる所を汚し』,「常供のものをも除き去(り)」ましたか。

      11 ヒトラーは大成功を収めたので,み使いの正確な予告に違わず,戦争に赴きます。「また,彼から出る腕があって立ち上がる。そうして彼らは聖なる所を,要害をまさに汚し,常供のものをも除き去る」。(ダニエル 11:31前半)古代イスラエルにおいて,聖なる所はエルサレムの神殿の一部でした。しかしユダヤ人がイエスを退けた時,エホバは彼らと彼らの神殿を退けられました。(マタイ 23:37–24:2)西暦1世紀以降,事実上エホバの神殿と言えば,至聖所が天にあり,霊的な中庭が地上にある霊的な神殿です。大祭司イエスの油そそがれた兄弟たちは,その地上の中庭で奉仕しています。1930年代から,大群衆は油そそがれた残りの者と交わって崇拝を行なってきました。したがって,彼らは『神の神殿』で奉仕していると言われています。(啓示 7:9,15; 11:1,2。ヘブライ 9:11,12,24)この神殿の地上の中庭は,北の王が支配する国々で,油そそがれた残りの者や彼らの仲間たちに対する冷酷な迫害により,汚されました。迫害が余りに厳しかったため,常供のもの ― エホバのみ名を賛美する公の犠牲 ― は除き去られました。(ヘブライ 13:15)歴史の示すところによると,それでも,忠実な油そそがれたクリスチャンはひどい苦しみにもめげず,「ほかの羊」と共に地下へ潜って宣べ伝える業を続けました。―ヨハネ 10:16。

      「嫌悪すべきもの」

      12,13 「嫌悪すべきもの」とは何でしたか。忠実で思慮深い奴隷が予見していたように,それはいつ,またどのように,再興しましたか。

      12 第二次世界大戦の終わりが見えてきたころ,別の進展がありました。「また彼らは荒廃をもたらす嫌悪すべきものを必ず据える」。(ダニエル 11:31後半)イエスも言及しておられたこの「嫌悪すべきもの」が国際連盟,すなわち啓示の書によると,底知れぬ深みに下っていった緋色の野獣であることはすでに分かっていました。(マタイ 24:15。啓示 17:8。「光」[英文]第2巻,94ページをご覧ください。)そのことは第二次世界大戦が勃発した時に生じました。しかし,1942年に開かれたエホバの証人の「新しい世神権大会」では,ものみの塔聖書冊子協会の3代目の会長ネイサン・H・ノアが啓示 17章の預言について論じ,この野獣が底知れぬ深みから再び上ってくることを予告しました。

      13 歴史はノア会長の言葉の真実さを確証しています。アメリカ合衆国のダンバートン・オークスで1944年の8月から10月にかけて,後に国際連合と呼ばれるようになる組織の憲章に関係した仕事が始まりました。その憲章は旧ソ連を含む51か国によって採択され,それが発効した1945年10月24日に,消滅していた国際連盟が底知れぬ深みから事実上出てきました。

      14 北の王の実体はいつ,またどのように変化しましたか。

      14 二つの世界大戦の間,南の王の主要な敵はドイツでした。第二次世界大戦後,ドイツの一部は再編成されて南の王の同盟国となりました。しかしドイツの他の部分は別の強力な帝国と提携します。ドイツの一部を包含するようになった共産主義陣営は,英米の提携に強力に対抗して立ち上がり,二人の王の敵対関係は冷戦に発展します。―「御心が地に成るように」,264-284ページをご覧ください。

      王,そして契約

      15 「契約に対してよこしまな行動をしている者たち」とはだれですか。彼らは北の王とどのような関係にありましたか。

      15 み使いは今度はこのように言います。「また,契約に対してよこしまな行動をしている者たちを,彼は滑らかな言葉で背教に導き入れる」。(ダニエル 11:32前半)契約に対してよこしまな行動をしているこれらの者たちはだれですか。これも,クリスチャンであると主張しながら,行動においてはキリスト教の名前そのものを汚している,キリスト教世界の指導者たちにほかなりません。二度目の世界大戦の間,「ソ連政府は母国を守るため,諸教会に物質面と道徳面での援助を求める努力を払った」のです。(ワルター・コラーズ著,「ソ連の宗教」)戦後,教会の指導者たちは,今や北の王となった強国の無神論的な政策にもかかわらず,その友好関係を保持することに努めました。b こうしてキリスト教世界は以前にもまして,この世の一部となりました。それはエホバの目に嫌悪すべき背教でした。―ヨハネ 17:14。ヤコブ 4:4。

      16,17 「洞察力のある者たち」とはだれですか。彼らは北の王の支配下でどのように生活してきましたか。

      16 では,真のクリスチャンはどうですか。「自分たちの神を知っている民は,優勢になり,効果的に行動する。そして,民のうち洞察力のある者たちは,多くの者に理解を分かつ。また彼らは,剣と炎により,捕らわれと強奪とによって幾日かのあいだ必ずつまずきに渡される」。(ダニエル 11:32後半,33)北の王の支配下で生活するクリスチャンは,正しく「上位の権威に服し」ながらも,この世のものではありませんでした。(ローマ 13:1。ヨハネ 18:36)注意深くカエサルのものをカエサルに返しますが,「神のものは神」に返します。(マタイ 22:21)そのため,彼らの忠誠は試みられました。―テモテ第二 3:12。

      17 どんな結果になったでしょうか。彼らは『優勢になる』と同時に「つまずき」ました。迫害されて激しい苦痛を味わい,ある人たちは殺されたという意味において,彼らはつまずきました。しかし,ほとんどの場合,忠実を保ったという意味において,彼らは優勢になりました。そうです,彼らはちょうどイエスが世を征服したように,世を征服したのです。(ヨハネ 16:33)さらに彼らは,投獄されたり,強制収容所に入れられたりしても,宣べ伝えることを決してやめませんでした。そのようにして「多くの者に理解を分かつ」ことをしたのです。北の王の支配する国のほとんどで,エホバの証人の数は,迫害にもかかわらず増加しました。「洞察力のある者たち」の忠実さのおかげで,それらの国にも「大群衆」が登場し,その人数は常に増え続けています。―啓示 7:9-14。

      18 北の王の支配下で生活している油そそがれた残りの者は,どんな「多少の助け」を与えられてきましたか。

      18 み使いは神の民の迫害について述べ,「しかし,つまずきに渡されている時,彼らは多少の助けによって助けられる」と予告します。(ダニエル 11:34前半)このことはどのように生じたのでしょうか。一つには,二度目の世界大戦で南の王が勝利を得たことによって,ライバルである王の支配下で生活するクリスチャンに大きな安堵がもたらされました。(啓示 12:15,16と比較してください。)その後,北の王の後継者となった王に迫害された人たちは時折救助を経験し,冷戦が緩和するにつれて,多くの指導者たちは,忠実なクリスチャンが脅威とならないことを理解するようになり,それゆえに彼らに法的な認可を与えました。c また,大群衆の数が膨れ上がったことによっても大きな助けが得られました。彼らは油そそがれた者たちの忠実な宣べ伝える業にこたえ応じ,マタイ 25章34節から40節に記されているように,彼らを助けてきました。

      神の民を清める業

      19 (イ)ある人々はどのように「滑らかさによって彼らに加わ(り)」ましたか。(ロ)「こうしてついに終わりの時に至る」という表現には,どんな意味がありますか。(脚注をご覧ください。)

      19 この時期に神に仕えることに関心を示した人たちすべてが,良い動機を抱いていたわけではありません。み使いはこのように警告しました。「多くの者が滑らかさによって彼らに加わる。そして,洞察力のある者たちの中にもつまずかされる者がいる。それらの者のゆえに精錬を行ない,清めを行ない,白くすることを行なうためであり,こうしてついに終わりの時に至る。それはなお定めの時に臨むのである」。d (ダニエル 11:34後半,35)ある人たちは真理に関心を示しましたが,純粋な献身をして神に仕えることを渋りました。また,良いたよりを受け入れるかに見えて,実際は当局のスパイだった人たちもいました。ある国からは次のような報告が寄せられました。「これら無節操な人物の中には,共産主義者であることを公言した者たちがいました。彼らは主の組織の中にひそかに入り込み,大いに熱意を示し,奉仕の高い立場にも任命されていました」。

      20 ある忠実なクリスチャンが,偽善的な潜入者たちのゆえに『つまずく』のを神が許されたのはなぜですか。

      20 潜入者たちは忠実な何人かの人たちが当局の手に陥るように仕向けました。エホバはなぜそのようなことを許されたのでしょうか。それは精錬のため,清めるためです。ちょうどイエスが「苦しんだ事柄から従順を学ばれ(た)」ように,それら忠実な魂も自分たちの信仰の試練から忍耐を学びました。(ヘブライ 5:8。ヤコブ 1:2,3。マラキ 3:3と比較してください。)そのようにして彼らは『精錬され,清められ,白くされ』ました。彼らの忍耐が報われる定められた時が到来する時,そのような忠実な者たちには大きな歓びが待ち受けています。そのことはダニエルの預言をさらに検討すれば分かります。

      [脚注]

      a 1958年,ものみの塔聖書冊子協会により,エホバの証人の『神の御心』国際大会で英語版が発表されました。

      b ワールド・プレス・レビュー誌の1992年11月号は,トロント・スター紙に掲載されたある記事を特集記事にしました。同紙はこう述べていました。「過去数年にわたってロシア人は,以前なら攻め立てることのできなかった,自国の歴史に関する幻想が,種々の事実の前に崩れ去るのを幾十となく見てきた。しかし,教会と共産主義政権との協力関係が発覚したことは,最も破壊的な衝撃であった」。

      c 「ものみの塔」誌,1991年7月15日号,8-11ページをご覧ください。

      d 「こうしてついに終わりの時に至る」とは,「終わりの時の間に」という意味かもしれません。ここで「ついに……に至る」と訳されている語は,ダニエル 7章25節のアラム語本文に出ており,そこでは「……の期間に」もしくは「……の間」を意味します。この語は列王第二 9章22節,ヨブ 20章5節,裁き人 3章26節のヘブライ語本文にもあり,それも同様な意味を持っています。しかし,ダニエル 11章35節の大半の翻訳においてこの語は「ついに……に至る」という意味に訳されており,もしこれが正しい理解であれば,この場合の「終わりの時」とは,神の民が示す忍耐の終わりの時であるに違いありません。―「御心が地に成るように」,285,286ページと比較してください。

  • 大いなる君ミカエルの最後の勝利
    ものみの塔 1993 | 11月1日
    • 大いなる君ミカエルの最後の勝利

      「その時に,あなたの民の子らのために立つ大いなる君ミカエルが立ち上がる」― ダニエル 12:1。

      1 多くの世界支配者たちはエホバの主権に対してどんな態度を示してきましたか。北の王もその点でどのように異なるところがありませんでしたか。

      「エホバが何者だというので,わたしはその声に従ってイスラエルを去らせなければいけないのか」。(出エジプト記 5:2)これはファラオがモーセに突き付けた挑戦的な言葉です。ファラオはエホバの至上の神性を認めようとせず,イスラエルを奴隷状態にとどめておくことを決意していました。他の支配者たちもエホバを侮蔑する同様な態度を示しましたが,ダニエルの預言に出てくる王たちも例外ではありませんでした。(イザヤ 36:13-20)実際に北の王はそれ以上のことを行なってきました。み使いはこう言います。「その王は……自分を高め,自分を大いなるものとしてあらゆる神の上に高める。また,神々の神たる者に向かって驚くべきことを語る。……また彼は自分の父たちの神に何の考慮も払わない。女たちの願いにも,他のすべての神にも考慮を払わず,すべての者に勝って自分を大いなるものとする」― ダニエル 11:36,37。

      2,3 北の王はどのように「自分の父たちの神」を退け,他の「神」への崇拝を支持しましたか。

      2 北の王は上記の預言の言葉を成就し,ローマの異教の神々であれ,キリスト教世界の三位一体の神であれ,「自分の父たちの神」(または「自分の先祖の神々」,新英訳聖書)をすべて退けました。ヒトラーは自分の目的を達成するためにキリスト教世界を利用しましたが,同世界に代えて新しいゲルマン民族の教会を据えることを計画したようです。彼の後を継いだ北の王はあからさまな無神論を奨励しました。こうして北の王は自分自身を神とし,『自分を大いなるものとしてあらゆる者の上に高め』ました。

      3 預言は続きます。「要害の神に対しては,自分のその地位からも栄光を帰する。その父たちの知らなかった神に対して,金により,銀により,宝石により,望ましい物によって栄光を帰する」。(ダニエル 11:38)事実,北の王は現代の科学的軍国主義,すなわち「要害の神」に信頼を置きました。彼は終わりの時の間ずっとこの「神」による救いを求め,その神の祭壇に莫大な富を犠牲としてささげてきました。

      4 北の王はどんな成功を収めてきましたか。

      4 「彼は,異国の神と共になって,最強の防備の施されたとりでに対しても効果的に行動する。彼はだれでも自分を認めた者を栄光に富ませ,それらの者を多くの者の中で支配させる。また,代価を取って土地を配分する」。(ダニエル 11:39)北の王は軍事的な「異国の神」に信頼を置き,非常に「効果的に」行動し,「終わりの日」における恐るべき軍事強国であることを示してきました。(テモテ第二 3:1)この王のイデオロギーを支持した者たちには,政治面,経済面,時には軍事面での報いが与えられました。

      「終わりの時に」

      5,6 南の王はどのように『押して』きましたか。北の王はどのように反応しましたか。

      5 ダニエル 11章40節の前半には,「終わりの時に,南の王は彼と押し合う」と記されています。この部分と続く数節は,なお将来の時代に成就するものとみなされてきました。しかし,もしこの節の「終わりの時」がダニエル 12章4節と9節にある「終わりの時」と同じものを意味するのであれば,上記の言葉が終わりの日に成就することを予期しなければなりません。南の王はこの時代に北の王を『押して』きたでしょうか。確かにそうしてきました。最初の世界大戦後の懲罰的な平和条約は確かに「押し」であり,報復措置を誘発しました。南の王は二度目の世界大戦で勝利を収めた後,ライバルである北の王を恐ろしい核兵器の標的にし,北の王に対して,強力な軍事同盟である北大西洋条約機構を設けました。年の経過と共に,南の王の「押し」には,先端技術を駆使したスパイ活動や外交および軍事面での攻勢が含まれるようになりました。

      6 北の王はどのように反応しましたか。「これに対して北の王は兵車と騎手と多くの船とをもって強襲する。彼は必ず多くの土地に入り,みなぎりあふれて通り行く」。(ダニエル 11:40後半)終わりの日の歴史を特色づけてきたのは,北の王の領土拡張主義です。二度目の世界大戦中,「王」としてのナチは,自国の国境からみなぎりあふれて周囲の国々に入り込みました。その戦争が終結した時,後を継いだ「王」は自国の境界の外に強力な帝国を築きました。冷戦中には北の王が代理戦争の形で,さらにはアフリカ,アジア,ラテンアメリカ諸国で生じた暴動の際に,ライバルの南の王と戦いました。北の王は真のクリスチャンを迫害し,彼らの活動を制限しました。(しかしその活動をとどめることは決してありませんでした。)また,彼の軍事面および政治面での攻勢の結果,幾つもの国が彼の支配下に置かれました。まさにみ使いが預言したとおりです。「彼はさらに飾りの地[神の民の霊的な地所]にも入り,多くの土地がつまずきに渡される」― ダニエル 11:41前半。

      7 北の王の領土拡張主義にはどんな限界がありましたか。

      7 とはいえ,ライバルの目に北の王が脅威的な存在に映ったとしても,北の王が世界征服を遂げることはありませんでした。「これらは,すなわち,エドム,モアブ,またアンモンの子らの主立った部分はその手から逃れ出る」のです。(ダニエル 11:41後半)古代において,エドム,モアブ,またアンモンは大ざっぱに言ってエジプトとシリアの中間に位置していました。これらの名は,北の王が標的としながらも,自分の影響下に置くことのできなかった今日の諸国家や諸組織を表わすと考えることができます。

      『エジプトは逃れ出ない』

      8,9 北の王の主要なライバルでさえ,どのように北の王の影響力を感じてきましたか。

      8 み使いは続けてこう述べます。「彼はそれらの土地に向かってしきりにその手を突き出す。エジプトの地は逃れ出るものとはならない。そして彼は隠された金銀の宝をまさに支配し,またエジプトのすべての望ましい物を支配する。そしてリビア人とエチオピア人は彼の歩みに付く」。(ダニエル 11:42,43)南の王であった「エジプト」でさえ,北の王の領土拡張主義者たちの政策が及ぼす影響から逃れ出ることができませんでした。南の王は被害を受け,例えばベトナムで手痛い敗北を被りました。では「リビア人とエチオピア人」についてはどうですか。古代エジプトと隣り合っていたこれらの人々は,地理的に言って現代の「エジプト」と隣り合っていて,時々北の王の信奉者となり,その『歩みに付いて』きた諸国民を予示しているのかもしれません。

      9 北の王は『エジプトの隠された宝』を支配してきましたか。確かに彼は南の王を征服してきませんでした。また,世界情勢から判断すると,1993年に至るまで,北の王がこれから南の王を征服するという気配は見られませんでした。しかし,北の王は南の王の経済資源の用い方に強力な影響を及ぼしてきました。南の王はライバルに対する恐れのゆえに,膨大な規模の陸海空軍を維持することに毎年巨額のお金をつぎ込んできました。北の王はその程度にまで,南の王の富の配備を「支配」してきた,つまり左右してきたと言えるでしょう。

      北の王の最後の作戦行動

      10 み使いは二人の王の敵対関係の終わりをどのように描いていますか。

      10 二人の王の敵対関係はいつまでも続くのでしょうか。そうではありません。み使いはダニエルにこう告げました。「彼[北の王]をかき乱す知らせがあって,日の出る方から,また北から来る。そのため彼は非常な激怒を抱き,滅ぼし尽くすため,多くの者を滅びのためにささげようとして出て行く。そして彼は自分の宮殿のような天幕を,壮大な海と聖なる飾りの山との間に設ける。それでも,彼は必ず自分の終わりに至る。これを助ける者はいない」― ダニエル 11:44,45。

      11,12 最近の政治情勢は,北の王と南の王の間の敵対関係にどのようにかかわっていますか。どんな事柄は今後知ることになりますか。

      11 これらの出来事はまだ将来のことなので,預言がどのように成就するかを詳しく述べることはできません。二人の王に関する政治的な状況は最近変化しました。アメリカ合衆国と東ヨーロッパ諸国との厳しい敵対関係は緩和されています。さらにソ連は1991年に解体し,もはや存在していません。―「ものみの塔」誌,1992年3月1日号,4,5ページをご覧ください。

      12 では,現在の北の王はだれでしょうか。旧ソ連を構成していた国々の一つがそれに相当すると見るべきでしょうか。それとも,これまで何回もあったように,北の王は完全に実体を変えつつあるのでしょうか。何とも言えません。ダニエル 11章44節と45節が成就する時にはだれが北の王になるのでしょうか。二人の王の敵対関係は再び激化するのでしょうか。幾つかの国に今も存在する膨大な量の核備蓄についてはどうですか。こうした質問に対する答えは時間がたたなければ分かりません。

      13,14 二人の王の将来について,どんなことが分かりますか。

      13 確実に分かっている事柄が一つあります。間もなく北の王は,『日の出る方から,また北から来る,彼をかき乱す知らせ』が引き金となって,攻撃的な軍事行動に出るでしょう。この軍事行動の直後に北の王の「終わり」が到来します。他の聖書預言を考慮すれば,これらの「知らせ」についてさらに多くのことを学べます。

      14 しかし,まず最初に,北の王のそうした行動が南の王に向けられるとは述べられていないことに注目してください。北の王は自分の強力なライバルの手にかかって終わりを迎えるわけではないのです。同様に,南の王も北の王によって滅ぼされるのではありません。南の王(他の預言では,野獣の頭部にある最後の角によって表わされている)は,「人手によらずして」,神の王国によって滅ぼされます。(ダニエル 7:26; 8:25)事実,地上の王は皆,最終的にはハルマゲドンの戦闘で神の王国によって滅ぼされます。北の王にはそうしたことが生じるものと考えられます。(ダニエル 2:44; 12:1。啓示 16:14,16)ダニエル 11章44節と45節には,その最終戦に至るまでの出来事が描かれています。北の王が終わりを迎える時に『助ける者がいない』のも不思議ではありません。

      15 まだどんな重要な質問の討議が残っていますか。

      15 では,「多くの者を滅びのためにささげ(る)」ことに着手するよう北の王を動かす「知らせ」の解明に役立つ他の預言とはどんなものですか。また,彼が滅ぼすことを望む「多くの者」とはだれですか。

      日の出る方からの知らせ

      16 (イ)ハルマゲドンの前にどんな顕著な出来事が生じなければなりませんか。(ロ)「日の昇る方角から来る王たち」とはだれですか。

      16 ハルマゲドンにおける最終戦の前に,真の崇拝の強敵,つまり偽りの宗教の世界帝国である,娼婦のような大いなるバビロンが滅ぼされなければなりません。(啓示 18:3-8)彼女の滅びは,神の怒りの第六の鉢が象徴的なユーフラテス川に注がれることによって予示されています。その川は水がかれますが,それは「日の昇る方角から来る王たちのために道が備えられるため」です。(啓示 16:12)それらの王たちとはだれですか。エホバ神とイエス・キリストにほかなりません。a

      17 (イ)大いなるバビロンの滅びについて,聖書は何と述べていますか。(ロ)『日の出る方から来る』知らせは何であると考えられますか。

      17 大いなるバビロンの滅びは啓示の書に生き生きと描かれています。「あなたの見た十本の角[終わりの時に支配する『王たち』],また野獣[国際連合機構を表わす緋色の野獣],これらは娼婦を憎み,荒れ廃れさせて裸にし,その肉を食いつくし,彼女を火で焼き尽くすであろう」。(啓示 17:16)確かに諸国家は『多くの肉を滅ぼし』ます。(ダニエル 7:5)しかし,北の王を含む支配者たちが大いなるバビロンを滅ぼすのはなぜでしょうか。なぜなら「神は,ご自分の考えを遂行することを彼らの心の中に入れ(る)」からです。(啓示 17:17)『日の出る方から来る』知らせは,宗教上の大娼婦を絶滅させようとする考えを神がご自分のお選びになる方法で人間の指導者たちの心に入れる時の,エホバのこの行動のことを言っているのかもしれません。―ダニエル 11:44。

      北から来る知らせ

      18 北の王にはほかにもどんな標的がありますか。そのため,北の王が終わりに至る時,その王はどこにいますか。

      18 しかし,北の王の怒りの標的となるものがもう一つあります。み使いは北の王が「自分の宮殿のような天幕を,壮大な海と聖なる飾りの山との間に設ける」と述べています。(ダニエル 11:45)ダニエルの時代,壮大な海は地中海であり,聖なる山は神の神殿の敷地となっていたシオンの山でした。したがって,預言の成就において,激怒した北の王は神の民に対して軍事行動を取ります。『壮大な海と聖なる山との間』とありますから,今日北の王は,霊的な意味において,神の油そそがれた僕たちの霊的地所の中にいます。それら僕たちは神から離れている人類の「海」から出て来て,イエス・キリストと共に天のシオンの山で支配する希望を抱いています。―イザヤ 57:20。ヘブライ 12:22。啓示 14:1。

      19 エゼキエルの預言に示されているように,ゴグの攻撃を促す知らせを何と見ることができますか。(脚注をご覧ください。)

      19 ダニエルと同時代の人エゼキエルも,「末の日に」神の民が攻撃されることを預言しました。エゼキエルの言葉によると,そうした戦争行為は,悪魔サタンを表わすマゴグのゴグによって起こされます。(エゼキエル 38:16)ゴグは象徴的に言って,どの方角から来るのでしょうか。エホバはエゼキエルを通してこのように言われます。「あなたは,必ずあなたの場所から,北の最果てからやって来る」。(エゼキエル 38:15)ですから,「北から来る」知らせとは,エホバの民を攻撃するよう北の王と他のすべての王を促すサタンの宣伝と言えるかもしれません。b ―啓示 16:13,14; 17:14と比較してください。

      20,21 (イ)神の民を攻撃するよう,ゴグが北の王を含む諸国民を促すのはなぜですか。(ロ)その攻撃は成功しますか。

      20 ゴグは「神のイスラエル」の繁栄のゆえに,この全面的な攻撃を計画します。「神のイスラエル」も,共にいるほかの羊の大群衆も,もはや世のものではありません。(ガラテア 6:16。ヨハネ 10:16; 17:15,16。ヨハネ第一 5:19)ゴグは「諸国民の中から集められた民,すなわち[霊的な]富や財産をためている民」を横目で見ます。(エゼキエル 38:12。啓示 5:9; 7:9)今日エホバの民はこの言葉の成就として,かつてない程の繁栄を経験しています。今彼らは,ヨーロッパ,アフリカ,アジアなど,以前は禁令下にあった多くの国で,自由に崇拝を行なっています。1987年から1992年にかけて,100万を優に超える「望ましいもの」が諸国民の中から出て,エホバの真の崇拝の家にやって来ています。彼らは霊的に富んでおり,平和を楽しんでいます。―ハガイ 2:7。イザヤ 2:2-4。コリント第二 8:9。

      21 ゴグはクリスチャンの霊的地所が,征服の容易な「無防備の田園の地」であるとみなし,人類を全面的に支配する上でのこの障害を除去するため,最大限の努力を払います。(エゼキエル 38:11)しかしゴグは失敗します。地の王たちがエホバの民を攻撃する時,王たちは『必ず自分たちの終わりに至り』ます。どのようにでしょうか。

      第3の王

      22,23 ゴグが攻撃を加える時,だれが神の民のために立ち上がりますか。どんな結果になりますか。

      22 ゴグの攻撃を合図として,エホバ神はご自分の民のために立ち上がり,「イスラエルの山々で」ゴグの勢力を滅ぼす,とエゼキエルは述べています。(エゼキエル 38:18; 39:4)このことはみ使いがダニエルに述べている事柄を思い起こさせます。「その時に,あなたの民の子らのために立つ大いなる君ミカエルが立ち上がる。そして,国民が生じて以来その時まで臨んだことのない苦難の時が必ず臨む。しかしその時,あなたの民,すなわち書に記されている者はみな逃れ出る」― ダニエル 12:1。

      23 天の戦士なるミカエルつまりイエスは,1914年に神の天の王国の王となられました。(啓示 11:15; 12:7-9)それ以来,イエスは『ダニエルの民の子らのために』立って来られました。しかし間もなく,イエスは無敵の戦士なる王として,エホバのみ名において「立ち上が(り)」,「神を知らない者と,わたしたちの主イエスについての良いたよりに従わない者に報復」をもたらします。(テサロニケ第二 1:8)ダニエルの預言にある王たちを含め,地のすべての諸国民は「嘆きのあまり身を打ちたたき」ます。(マタイ 24:30)彼らは『ダニエルの民』に対する邪悪な考えがまだ心の中にあるので,「大いなる君ミカエル」の手にかかって永久に滅びうせます。―啓示 19:11-21。

      24 ダニエルの預言に関するこの研究は,わたしたちにどんな影響を及ぼすはずですか。

      24 わたしたちはミカエルと,ミカエルの神エホバの壮大な勝利を見たいと思うのではないでしょうか。その勝利は真のクリスチャンにとって「逃れ出る」こと,生き残ることを意味するからです。(マラキ 4:1-3と比較してください。)ですから,わたしたちは熱烈な期待を抱いて将来を見つめ,「み言葉を宣べ伝え,順調な時期にも難しい時期にもひたすらそれに携わり(なさい)」という使徒パウロの言葉を思いに留めます。(テモテ第二 4:2)命の言葉をしっかりつかみ続け,順調な時期が続く間,エホバの羊を勤勉に探しましょう。わたしたちは命を目指す競走のホームストレッチに入っています。報いは見えています。すべての人が終わりまで耐え忍び,そのようにして救われる人たちの一人となる決意を抱けますように。―マタイ 24:13。ヘブライ 12:1。

      [脚注]

      a ものみの塔聖書冊子協会発行,「啓示の書 ― その壮大な最高潮は近い!」の229,230ページをご覧ください。

      b あるいは,「北から来る」知らせは,エホバから発せられる可能性もあります。それはゴグに対する次のエホバの言葉から分かります。「わたしは必ず……あなたのあごに鉤を掛け,あなたを……連れ出す」。「わたしはあなたを……北の最果てから上って来させ,イスラエルの山々の上に連れて来る」。―エゼキエル 38:4; 39:2。詩編 48:2と比較してください。

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