-
ケニアとその近隣諸国1992 エホバの証人の年鑑
-
-
アスマラでは,ゲリラが横行している田舎の地域から来た特別開拓者の兄弟に警官たちが近づいて来て呼び止めました。警官たちは兄弟の身体検査をし,野外奉仕報告の用紙を見つけました。その用紙には手書きの略号が書いてあり,警官たちはそれを見て怪しいと思いました。それから,都市の監督ゲブレグシャブヘル・ウォルデットナシーの所まで兄弟に無理やり先導させました。ゲリラのリーダーを逮捕できると思って,武装した兵士たちを乗せた数台のトラックが轟音と共にゲブレグシャブヘル兄弟fの仕事場に向かいました。兵士たちは兄弟の事務所を包囲し,ライフルを構えて突入しました。彼らはゲブレグシャブヘル兄弟の名前を呼び,逮捕して連れ去りました。同僚たちはもう二度と兄弟に会えないだろうと思いました。
軍の本部で兵士たちはゲブレグシャブヘル兄弟を尋問しました。兄弟は彼らの質問に率直に答え,伝道活動について証言し,“mags,rv,B.S.”などの奇妙な略号について説明しました。それは特別開拓者がその月の野外宣教で成し遂げた事柄,つまり配布した雑誌,行なった再訪問,司会した研究などの数を記した純然たる記号にすぎませんでした。兵士たちは兄弟に質問を浴びせました。「何だと! これは武器や弾薬には関係ないというのか。だれがそんなことを信じられるか。なぜこんな略号にするんだ」。
ゲブレグシャブヘル兄弟の誠実さと協力的な態度は感銘を与えましたが,疑いは晴れませんでした。結局,上官がこう尋ねました。「お前が本当にエホバの証人だという証拠はどこにあるのだ」。兄弟は自分の所持品を調べましたが,身元を証明するのにふさわしいものが何もありません。でも,ちょっと待ってください。ほかの持ち物に紛れて,「輸血しないでください」という言葉の印刷されたカードがありました。上官はそれを見て,「よし,それで十分だ。帰ってもよろしい」と言いました。事務所に戻ると,同僚たちは兄弟が復活したのではないかと思いました。
-
-
ケニアとその近隣諸国1992 エホバの証人の年鑑
-
-
その年の4月,アスマラの都市の監督ゲブレグシャブヘル・ウォルデットナシーが,包囲されていた田舎の兄弟たちを訪問しに行く途中,悲しいことに,事故で亡くなりました。
-
-
ケニアとその近隣諸国1992 エホバの証人の年鑑
-
-
[169ページの図版]
死に至るまで自分の全精力を使い尽くした監督ゲブレグシャブヘル・ウォルデットナシー
-