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第6部 ― 西暦前1513年以降 ― 宗教上のベストセラー目ざめよ! 1989 | 3月22日
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一方,ヒンズー教の場合は,受け入れられている正典と,神聖な書物に準ずる地位を与えられている他の資料とが区別されています。“聞いて学ぶ”という意味のシュルティと呼ばれる,ヒンズー教の神聖な著作は,基本を成す啓示のことで,ベーダとウパニシャッドを含んでいます。
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第6部 ― 西暦前1513年以降 ― 宗教上のベストセラー目ざめよ! 1989 | 3月22日
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ウパニシャッドは,西暦前8ないし4世紀ころ世に出てサンスクリット語で編纂されたベーダの延長部分ですが,この書物は聖書とは対照的に,「西暦1656年に初めて文字になった」と,宗教百科事典は述べています。とはいえ,怠惰ゆえにそうなったのではありません。それには意図がありました。歴史家のウィル・デュラントは,「ベーダと叙事詩は,それらを暗唱した人たちの世代と共に発展した歌である。それらは見るためのものではなく,聞くためのものだった」と説明しています。
ヒンズー教徒と仏教徒の中には,口頭で暗唱して初めて,聖典は最大限の意味と意義を帯びるようになる,といまだに主張する人たちがいます。彼らはマントラ,つまり救いを得させる力が本来備わっているとされる言葉や信条をことのほか強調します。新ブリタニカ百科事典は,「正確な方法でマントラを発音すると,ほかの方法では得られない魔術的かつ霊的な力を信者に付与するよう,神を動かすことも神に圧力を加えることもできる,と信じられている」と述べています。
だれの言葉か,どれほど多くの人のためか
すべての聖典が,神による著作であると主張したり,広く頒布されて,あらゆる人が入手できるようになることを求めたりしているわけではありません。例えば,ヒンズー教のウパニシャッド(“近くに座る”の意)がそのように呼ばれるようになったのは,宗教上の教師たちが,“近くに座る”人たち,つまり最も優秀で気に入った生徒たちに秘密の教理をこっそり知らせる習慣があったためです。宗教百科事典は,「そのため,ウパニシャッドという語は秘伝をこととする分子を指す」と説明してから,「事実,ウパニシャッドの信奉者たちは,そうした課程は一般の人々を対象にしたものではなく……選ばれた耳だけが聞くべきものであると公言している」と付け加えています。
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