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創造物に備わっている,目に見えない“時計”目ざめよ! 1986 | 6月8日
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a 生物時計,あるいは概日リズムを,通常,バイオリズムと呼ばれるものと混同してはなりません。バイオリズムの記事に関しては,「目ざめよ!」誌,1979年7月22日号,16-19ページをご覧ください。
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創造物に備わっている,目に見えない“時計”目ざめよ! 1986 | 6月8日
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創造物に備わっている,目に見えない“時計”
「時計に縛られるなんてごめんだ」。時にはそのように感じることがありますか。もしそうでしたら,恐らく,「時計のことなど忘れて,時を刻む絶え間ない音や目覚ましの音にもう二度と再び煩わされないとしたら,どんなによいだろう」と考えたことがおありかもしれません。
しかし,この惑星のどこへ行こうとも,人間が決して逃れられないある種の時計があります。それはわたしたちが子宮の中でほんの小さな胎児だった時から時を刻み始めました。それが止まるのは,わたしたちが息を引き取る時だけです。
科学者はそれを生物時計,あるいは概日(英語はサーカディアンで,「約1日」の意)リズムと呼んでいます。この時計の予定についてゆかないと,たいてい問題が起きます。
生物時計
創造者は賢明にも人間の体内に,体の一定の作用を調整する時計を組み込まれました。夜になると,あなたは眠くなりますか。その一つの理由は,体温が一定の型もしくはリズムに従って上がったり,下がったりしているからです。夜になると,体温は下がり始めます。しかし朝が近づくにつれ,体温は再び上がり,ほどなくして目を覚ますと,活動する準備ができています。食事の時間が近づくと,おなかがすきますか。そうです,脈拍,血圧,そして糖度の変動はある生物学的リズムに従って決められているのです。a
実際,医学の研究者は目に見えない時計が人体の100以上の異なるサイクルを制御していることを発見しました。また,興味深いことに,これらの時計の多くはさらに別の複雑な計時機構と連動しています。例えば,惑星である地球の自転があります。わたしたちの惑星が地軸を中心にして回転すると,地球上のすべての生物は一定の温度周期や光の変化に従います。一著述家が述べるとおりです。「ほとんどの生物の行動や代謝が24時間のスケジュールに従っていることを発見しても……驚くには当たらない」。
しかし,研究者たちは,温度,光,食物,そして音が一定に保たれる実験環境に生物を置くことにより,それらの体内時計を狂わせようと試みました。ところが,24時間のリズムは,一向に変わりませんでした! これは概日時計が体内時計であることを示しています。とはいえ,いくらかの外部の影響がこの時計にある程度,作用を及ぼしたり,狂わせたりする場合もあります。
時計を狂わせる
今,読者の体内時計はご自分の住んでおられる場所の時間帯に恐らく合っていることでしょう。しかし,アメリカのカリフォルニア州が午後なら,ヨーロッパは夜です。それで,この二つの地点の間をジェット機で飛ぶと,頭痛,機能低下,睡眠不足といった,普通,時差ぼけとして知られる症状を経験することがあります。
何が起きたのでしょうか。生物時計が混乱してしまったのです。それは,あなたが郷里にいた時の予定を必死に守ろうとします。(昼夜交替制で働く人はたいてい同様の不快な症状を経験します。)仕事の計画,会議,また休暇の楽しみさえ,時差ぼけがしばしばもたらす頭痛,不眠症,過敏症,消化不良や疲労などのために悪影響を受ける場合があります。
興味深いことに,そのような問題はもっと遅い輸送手段が使われていた時代には起きませんでした。体内時計には旅行者が目的地に着かないうちに新たな時間帯に適応する時間的余裕がありました。しかしジェット機で旅行する場合,ほんの数時間のうちに四つか五つの時間帯を横切ることがあります。これは食事や睡眠の予定をすっかり狂わせる恐れがあります。ご想像のとおり,これは特に航空会社の人々にとって厄介な問題です。国際線で働いていた元パイロットは「目ざめよ!」誌に次のように語りました。
「いわゆる12時間往復スケジュールの時は,また同じ24時間以内に帰国できるので,時間帯をいくつ通過しても問題はありませんでした。ところが,バンクーバー[カナダ]からアムステルダムやローマまでの途中下車の行なわれる五日間の特定の飛行の時には,問題が起こります。体全体の調子が狂うように思えます。問題を克服しようとして,体が大変疲れて眠らなければならなくなるまで歩いたものです。五日後には私の体はヨーロッパ時間にすっかり合っていました。そしてバンクーバーへ戻るのに,また同じことを一から全部やりなおすのです。鎮静剤は解決策にはなりませんでした。それは大変つらいことでした」。
経験の示すところによると,西から東へ向かう旅行者が最も厳しい調整問題で苦しむようです。東から西へ行く人は,1日が長くなるだけですから,体を調整しやすいので,あまり苦労しません。バンクーバー-東京間の飛行を担当させられた一パイロットは,どの都市にいる時でもいつも東京の時間にとどまっていることにより問題を最小限に抑えました。しかし,概日リズムは普通,南北両方向の飛行の場合,あまり影響を受けません。なぜなら,せいぜい一つか二つの時間帯の範囲内で飛ぶからです。
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