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第14部 ― 西暦622年以降 ― 神の意志に服する目ざめよ! 1989 | 7月22日
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確かに,マホメットの死後100年も経過しないうちに,最盛期のローマ帝国よりも広い領土を有するようになったアラビア帝国は,インドから北アフリカを超えてスペインにまで拡大し,西洋文明を豊かにした発明品の伝播に一役買いました。とりわけ,法学,数学,天文学,歴史学,文学,地理学,哲学,建築学,医学,音楽,社会科学の諸分野などに大きく貢献しました。
すぐに衰える流星のように
「アラブ人の行なった征服は,マホメットによる布教の直接の産物であった」と,「コリンズ図表世界史」は述べています。もちろん,他の要素もイスラム世界の拡大に貢献しました。例えば,ビザンティウムのキリスト教徒とペルシャのゾロアスター教徒は,互い同士の宗教紛争にかまけていたため,アラブ人の進出が目に入りませんでした。
宗教によって広範囲にわたる帝国を結束させようという努力は,新しいものではありませんでした。しかし,「イスラム教徒は,自分たちが,コーランの中に,論争の余地のない最終的な真理の言葉を有していると確信していた」と,作家のデズモンド・スチュワートは説明しています。イスラム教徒は,「知る価値のあることはすべて知らされており,非イスラム教の考えは取るに足りないと信じて」,満足しきっていました。変化に対しては,「頑強な抵抗があり」ました。
その結果,11世紀までに,帝国はすでに衰退しつつありました。スチュワートはそのことを,「夜空にきらめいても,……すぐに活力が衰える流星」になぞらえました。こうして,兄弟意識を持たせ,個人的に神に近づく比較的容易な方法を提示したこの宗教は,かつては帝国建設に役立ったにもかかわらず,その同じ帝国が滅びる要因にもなったのです。その興隆が急速だったのと同様,滅亡も突然に生じました。帝国は廃れましたが,その宗教は残りました。b
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第14部 ― 西暦622年以降 ― 神の意志に服する目ざめよ! 1989 | 7月22日
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b イスラム教は純然たるアラブ人の宗教である,という一般的な見解は正しくありません。今日のイスラム教徒の大半は非アラブ人です。イスラム教国の中で最も人口の多いインドネシアには,1億5,000万人の信者がいます。
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