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寿命が延びるどんな見込みがあるか目ざめよ! 1995 | 10月22日
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寿命が延びるどんな見込みがあるか
「人は女から生まれ,人生は短く,苦しみは絶えない」―「聖書 新共同訳」のヨブ記 14章1節に記録されているヨブの言葉。
人生の短さは幾度となく詩の題材となってきました。1世紀のある著述家もヨブと同じように,「あなた方は,少しのあいだ現われては消えてゆく霧のようなもの……です」と述べました。―ヤコブ 4:14。
あなたも,人生が惨めなほど短いということに気づいておられますか。およそ400年前のこと,ウィリアム・シェークスピアは次のように書きました。「消えろ,消えろ,つかのまの燈火! 人生は影法師の歩みにすぎぬ」。(永川玲二訳)また,19世紀のアメリカ・インディアンの一酋長は,「人生とは何か」と問いかけ,「それは夜の蛍火のようなものである」と答えました。
人間の寿命はどのくらいでしょうか。預言者モーセはおよそ3,500年前に当時の状況を次のように描写しました。「わたしたちの年の日数そのものは七十年です。そして,特別の力強さのために,たとえそれが八十年であっても,ただ難儀と有害なことが付きまとうだけです。それは必ず速やかに過ぎ去り,わたしたちは飛び去ってしまいます」― 詩編 90:10。
70年,それは2万5,567日にすぎません。80年でも,たったの2万9,219日です。本当にごくわずかです。人間の寿命を延ばすためにできることはあるのでしょうか。
医学は助けになれるか
サイエンス誌は次のように述べました。「[米国における]誕生時の平均余命は,1900年には47年だったものが,1988年には約75年にまで延びた」。医療や栄養状態の改善によって乳幼児の死亡率が減少した結果,現在,米国民はモーセが述べたのと同じくらい生きられるようになりました。それにしても,大半の人の寿命が劇的に延びる見込みはあるのでしょうか。
老化研究の第一人者であるレナード・ヘイフリックが自著「老いの過程と原因」の中で述べた次の言葉は注目に値します。「今世紀における生物医学の研究の進歩と改善された医療の実施は,確かに人間の寿命に影響を及ぼしてきたが,それは人間の寿命の一定の上限に近づく人が増えたということにすぎない」。そのためヘイフリックは,「平均余命は延びてきたが,寿命は延びていない。その違いは決定的である」と説明しています。
人間の寿命の「一定の上限」とは何のことでしょうか。近年は115歳以上の人がいるかどうか定かではない,と言う人がいます。しかし,サイエンス誌は,「1990年現在,確認されている最高齢者の年齢は120歳を少し上回っている」と述べました。また,今年の初めに,フランスの保健相は,大勢の記者やカメラマンが同行する中,フランスのアルルに住むジャンヌ・カルマンのもとを訪れ,彼女の120歳の誕生日を祝いました。モーセも平均寿命をはるかに上回る120歳まで生きました。―申命記 34:7。
科学者は,人は普通120年かそれ以上生きる見込みがある,と述べているでしょうか。ほとんどの科学者はそうは述べていません。デトロイト・ニューズ紙に次のような見出しが載りました。「研究者たちは85歳が平均寿命の上限かもしれないと言う」。この記事の中で,老化研究の権威とされているS・ジェイ・オルシャンスキーは,「人は一旦85歳を超えると,複数の臓器の機能不全で死ぬ。呼吸が停止する。要するに,老齢で死ぬのである。そして,その治療法はない」と述べ,こう付け加えています。「人間の老化を分子レベルで逆行させるのでない限り,もはや平均余命が急激に延びることはない」。
サイエンス誌は,恐らく「寿命はすでに上限に近づいており,死亡率がこれ以上大幅に減少する見込みは薄い」だろうと述べました。死亡証明書に記載される死因をすべてなくすことができたとしても,平均余命は20年足らずしか延びないと言われています。
ですから,多くの科学者は人間の寿命の長さに疑問を抱いていませんし,それが変化し得るとも考えていません。とはいえ,人間はやがて今よりずっと長生きできるようになる,と信じることは道理にかなっています。それはなぜでしょうか。
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永遠に生きるように造られている目ざめよ! 1995 | 10月22日
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永遠に生きるように造られている
人体の造りは驚嘆すべきものです。その発育と成長は奇跡以外の何ものでもありません。古代の一著述家は感嘆の声を上げ,「わたしは畏怖の念を起こさせるまでにくすしく造られている」と述べました。(詩編 139:14)現代の科学者の中には,人体の驚異に精通しているゆえに,老化や死を不可解に思う人もいます。あなたはいかがですか。
ハーバード大学の生物学者スティーブン・オースタッドは,「老化は,……絶えずわれわれの前に立ちはだかるのだから,なぜもっと多くの人がそれを生物学上の主要な謎とみなさないのか,不思議に思う」と書きました。オースタッドは,だれもが年老いるので,「[老化は]それほど不可解なことに思えなくなる」と述べています。そうは言っても,実際に老化と死について考えるとき,それらは道理にかなっているでしょうか。
昨年,レナード・ヘイフリック博士は自著「老いの過程と原因」の中で,人間の生命と成長の驚異を認めて次のように書きました。「自然は,人間を受胎から誕生に,またその後,性的な成熟と成人期に至らせる奇跡を行なった後,そうした奇跡を永遠に維持するというだけの,もっと初歩的と思えるメカニズムを考案しないことにした。この洞察は,バイオジェロントロジスト[生物学的側面から老化を研究する人たち]を何十年もの間悩ませてきた」。
あなたも老化と死のことで悩まされていますか。老化と死は何のためにあるのでしょうか。ヘイフリックはこう述べています。「受胎から成熟にいたるまでの生物学的事象のほとんどすべてには目的があるように思える。しかし,老化にはそれがない。老化の生じる理由ははっきりしていない。わたしたちは老化の生物学について多くのことを学んできたが,……今なお,無目的な老化とそれに続く死がもたらす避けがたい結末に直面せざるを得ない」。
人間が年老いて死ぬことなく,地上で永遠に生きることは可能でしょうか。
生きたいという願望
年老いて死ぬことに大抵の人が憤りを覚えることはきっとご存じでしょう。実際,そうなることを恐れる人も少なくありません。医学博士のシャーウィン・B・ヌーランドは自著「いかに死ぬか」の中で次のように書きました。「自分自身の死の有様,空間も真空もなく,全く何も存在しない永続的な無意識状態について考え,心理的にそれを克服できる人は一人もいないように思える」。あなたは,年老い,病気になって,死ぬことを望んでいる人をだれかご存じですか。
しかし,老齢と死が自然なことで,なんらかのマスタープランの一部であるのであれば,人はそれを歓迎するのではないでしょうか。ところが,実際には歓迎したりしません。なぜでしょうか。その答えは,人の造りにあります。聖書には,「[神]は[わたしたち]の思いに永遠をさえ置かれた」と記されています。(伝道の書 3:11,バイイングトン訳)終わることのない将来に対するこの願望ゆえに,人々は長い間,いわゆる回春の泉を探し求めてきました。永遠に若さを保ちたいのです。このことから次のような質問が生じます。人間にはもっと長く生きられる可能性があるのでしょうか。
自己修復を行なうように造られている
生物学者のオースタッドはナチュラル・ヒストリー誌上で,一般的な見方を次のように示しました。「人間はついつい自分や他の動物のことを機械と同じように考えてしまう。消耗して当然だと思うのである」。しかし,そうではありません。「生物の体は機械とは根本的に異なる」とオースタッドは述べています。「生物の体は自己修復を行なう。傷は癒え,骨はつながり,病気は治る」。
ですから,なぜ人は老化するのか,という質問には好奇心をそそられます。オースタッドが問いかけているように,「では,なぜ[生物の体]は機械のように摩滅しなければならないのか」というわけです。体の組織は新陳代謝を行なうのですから,永遠にそれを続けることはできないのでしょうか。
進化生物学を研究するジャレド・ダイヤモンドはディスカバー誌の中で,生物の体に備わっている,自己修復というすばらしい能力について論じ,次のように書きました。「人体に働くダメージコントロールの最も顕著な例は,傷の治癒である。それによって,人間は皮膚のダメージを修復する。人間よりはるかにすごいことをやってのける動物も少なくない。トカゲのしっぽは切れてもまた生えるし,ヒトデの腕やカニの脚,ナマコの腸も再生する」。
ダイヤモンドは歯の生え替わりについて,「一生のうち,人間は2度生え,象は6度生え,サメは何度でも生える」と述べ,次のように説明しました。「定期的な更新は顕微鏡的なレベルでも行なわれる。腸の内壁を覆っている細胞は数日に一度,膀胱の内壁を覆っている細胞は2か月に一度,赤血球は4か月に一度新しくなる。
「分子レベルでは,人体のタンパク質分子は個々のタンパク質に特有の割合で絶えず更新されている。それによって,傷ついた分子が蓄積しないようにするのである。したがって,あなたの恋人の今日の容貌は1か月前と同じように見えるかもしれないが,恋人の体を形成している個々の分子の多くは以前のものではない。マザーグースのハンプティー・ダンプティーは王様の馬や兵隊が総出でがんばっても元通りの姿にならなかったが,自然は毎日のようにわれわれをばらばらにし,元通りにしているのである」。
体の細胞のほとんどは,新しく形成された細胞と定期的に入れ替わります。しかし,脳の神経細胞のように決して入れ替わらない細胞もあります。とはいえ,ヘイフリックは次のように説明しています。「もし細胞のすべての部分が入れ替わるなら,その細胞は元の細胞と同じものではなくなってしまう。持って生まれた神経細胞は今でも同じ細胞に見えるかもしれないが,実際には誕生時にそれらを構成していた分子の多くは,……新しい分子と入れ替わっているかもしれない。だから結局のところ,非分裂の細胞も,人が持って生まれたのと同じ細胞ではなくなっているかもしれないのだ」。これは,細胞の構成要素が入れ替わるからです。このように,体の構成要素が入れ替わるので,理論的に言えば,人間は永遠に生き続けることができるはずです。
ヘイフリック博士の述べた,「人間を受胎から誕生に……至らせる奇跡」のことを思い出してください。それにはどんなものがありますか。それらを簡単に調べ,博士の言う,「そうした奇跡を永遠に維持するというだけの,もっと初歩的と思えるメカニズム」の実現が可能かどうかを考慮してみましょう。
細胞
成人の体は約100兆個の細胞でできており,その一つ一つは想像を絶するほど複雑です。この複雑さを説明するために,ニューズウィーク誌は一個の細胞を城壁で囲まれた都市に例えて,次のように述べました。「発電所は細胞に必要なエネルギーを生み出す。種々の工場は,化学物質流通の重要な単位であるタンパク質を生産している。複雑な輸送機構は,特定の化学物質を細胞内外の要所から要所に運ぶ。バリケードの所では番兵が,物資の出入りを制御し,外からの危険な徴候を監視する。鍛えられた生物学的軍隊は,侵略者をいつでも取り押さえる態勢を整えている。中央で統轄して,遺伝をつかさどる政府は,全体の秩序を維持している」。
あなた,つまり,あなたの約100兆個の細胞がどのようにして存在するようになったのか考えてみてください。その始まりは,父親の精子が母親の卵子と結合したときに形成された1個の細胞でした。その結合の際に,新しく形成されたその細胞のDNA(デオキシリボ核酸の略称)の中では,やがてあなたとなるもの ― 全く新しい独特な一個の人間 ― を作り出すために様々な計画が立てられました。DNAに収められている指示を「もし書き出すとすれば,600ページの本1,000冊にもなるであろう」と言われています。
やがて,その最初の細胞は分裂し始め,2個,4個,8個といった具合に増えてゆきました。最終的に,約270日 ― その間に母親の胎内では多種多様な幾十億もの細胞が発達し,赤ちゃんを形成する ― の後に,あなたは生まれました。あたかも,最初の細胞に大きな部屋があって,あなたをどのように作るかに関する詳細な指示の書かれた本がいっぱいつまっていたかのようです。しかし同様にすばらしいのは,これらの複雑な指示がその後のすべての細胞に伝達されたということです。そうです。驚くべきことに,あなたの体の個々の細胞は最初の受精卵に含まれていたのと全く同じ情報を持っているのです。
このことも考えてみてください。それぞれの細胞はあらゆる種類の細胞を作るための情報を持っていることからすると,例えば,心臓の細胞を作る時が来たら,その他のすべての細胞を作る指示はどのようにとどめられたのでしょうか。細胞は,まるで赤ちゃんを作るための青写真の詰まったキャビネットを持つ請負人のように,ファイルキャビネットから心臓の細胞を作るための青写真を選び出しました。別の細胞は神経細胞を作るための指示が載せられた別の青写真を選び出し,さらに別の細胞は肝臓の細胞を作るための青写真を取り出す,といった具合です。確かに,特定の種類の細胞を作るのに必要とされる指示を選択し,同時に,他のすべての指示をとどめるという,細胞のこの未解明の能力は,「人間を受胎から誕生に……至らせる」数多くの「奇跡」の一つなのです。
しかし,それよりもずっと多くのことが関係しています。例えば,心臓の細胞は律動的に収縮するための刺激を受ける必要があります。そこで,心臓内には電気的な刺激を発生させるための複雑なメカニズムが組み込まれました。それによって,心臓は状況に応じた間隔で鼓動し,様々な活動に携わる体を支えることができます。本当に,驚嘆すべき設計です。医師たちが心臓について,「それは,人間がこれまでに考案したいかなる機械よりも効率的である」と言ったのも不思議ではありません。
脳
さらに一層不思議なのは,人間の奇跡の中でも最も神秘的な部分である脳の成長です。受胎後3週間で,脳の細胞は形成され始めます。やがて,ニューロンと呼ばれる約1,000億の神経細胞 ― 銀河系の星の数ほどある ― が人間の脳に詰め込まれます。
「これらの各々は脳の他の約1万の神経細胞から情報を受け取り,さらに1,000の神経細胞にメッセージを送る」とタイム誌は伝えました。神経科学を研究するジェラルド・エーデルマンは,考えられる組み合わせの可能性に注目し,「脳のマッチの頭ほどの部分には,およそ10億もの連接が含まれている。そうした連接の作る組み合わせは,天文学的としか言いようがない数になる。10の後に0が何百万個も並ぶのだ」と述べています。
このことは脳にどのような潜在能力を与えるでしょうか。天文学者のカール・セーガンは,人間の脳は「およそ2,000万冊,すなわち世界最大の図書館に収められているのと同じ数の本を満たすほどの」情報を収納することができると述べています。作家のジョージ・レナードは感嘆して,さらに次のように述べました。「実際,われわれは今や信じ難い仮説を提出することができるかもしれない。それは,脳の究極の創造力は実際には無限かもしれない,という仮説である」。
ですから,次のような発言があっても驚くべきではありません。DNAの物理的な構造の共同発見者である,分子生物学者ジェームズ・ワトソンは,「脳はわれわれが宇宙でこれまでに発見したもののうち,最も複雑である」と述べ,神経学者のリチャード・レスタクは,脳がコンピューターに例えられたことに憤慨し,「脳の特異性は,既知の宇宙にはそれにわずかに似たものさえ全くないことにある」と言いました。
神経科学者たちによると,人間は現在の寿命では脳の潜在能力のわずかな部分しか使いません。ある推定によれば,約1万分の一,つまり1%の百分の一しか使っていないのです。考えてみてください。十分に使うはずのないものであれば,人間にそうした奇跡的な可能性を持つ脳が与えられているのは道理にかなったことでしょうか。際限なく学習する能力を持つ人間は,実際には永遠に生きるように造られたと考えるほうが,道理にかなっているのではないでしょうか。
もしそれが本当であれば,人はなぜ年を取るのでしょうか。何が間違っていたのでしょうか。人体は永遠に持続するものとして造られているように思えるのに,なぜ人間は70年か80年ほどで死ぬのでしょうか。
[7ページの図]
(正式に組んだものについては出版物を参照)
細胞 ― 奇跡的な造り
細胞膜
細胞の中に入って来るものと,そこから出て行くものとを制御する皮膜
核
細胞のさまざまな活動を統御する管理センターで,二重の皮膜に包まれている
リボソーム
種々のアミノ酸を組み合わせてタンパク質を造るための組織
染色体
遺伝の基本設計図ともいうべきDNAを収めている
仁
リボソームを組み立てる場所
小胞体
幾層かの皮膜で,それと結びついているリボソーム(細胞内を浮遊しているリボソームもある)で造られたタンパク質を貯蔵したり輸送したりする
ミトコンドリア
細胞にエネルギーを供給する分子であるATPの製造センター
ゴルジ体
細胞によって造られたタンパク質を包装して配送する場所で,一群の平たい膜の袋からなっている
中心小体
核の近くにあり,細胞の増殖において重要な働きをしている
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人が年老いて死ぬのはなぜか目ざめよ! 1995 | 10月22日
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人が年老いて死ぬのはなぜか
「老化は個々の細胞内で生じるという発見があったことを除けば,われわれが老化の根本原因に関して現在知っていることは1世紀前に知っていたこととたいして変わらない」。レナード・ヘイフリック博士はそのように告白しています。いや,それどころか,「老化の生じる説得力のある理由は知られていない」とさえ述べています。
約30年前に行なわれた科学実験で明らかになったことですが,胎児から取られた人の正常細胞は,最善の状況下で培養された場合,細胞分裂を約50回繰り返した後に死にます。一方,非常に高齢の人から取られた細胞は,2ないし10回分裂しただけで死にます。それで,米国地理学協会発行の「信じ難い機械」という本は次のように述べました。「実験から得られた証拠は,死は個々の人間の誕生時に組み込まれるという見解を裏づけている」。
しかし,細胞分裂の停止は避けられないものなのでしょうか。いいえ,そうではありません。老化に関する二人の専門家,ロバート・M・サポルスキー教授とカレブ・E・フィンチ教授は,「確かに,地上の生物は本来,不老長寿[年を取らないこと]の状態にあったようだ」という意見を述べました。皮肉なことに,現代人の異常細胞の中にさえ老化しないものがあります。
初めて人体心臓移植を行なったクリスティアーン・バーナード博士の編集による「人体という機械」と題する本は次のように説明しています。「“不死の細胞”の発見は,後にそうした細胞が異常であることが明らかになるまで,老化に関心を持つ生物学者の大きな悩みの種であった」。そうです。ある種のガン細胞は,継代培養によって,無限とも思える細胞分裂を繰り返して生き続けることができます。ワールドブック百科事典は,「そうした異常な細胞がどうやって生き続けるのかを見極められるなら,科学者は細胞の老化過程に対する洞察を得られるかもしれない」と述べています。ですから,今日,一部のガン細胞は研究室で限りなく増殖できるようですが,正常な細胞の培養組織は年老いて死ぬのです。
欠陥を持つメカニズム
人間の老化と死は,「人体という機械」が言うように,「[正常]細胞群の増殖能力が失われること」の結果なのでしょうか。この本は,もしそうであれば,「この限りある反復能力を制御しているメカニズムを操作し,人間の寿命を延ばすためには,そのメカニズムを突き止め,理解することが重要だ」と述べています。
前の記事にあったように,ヘイフリック博士は,「人間を受胎から誕生に,またその後,性的な成熟と成人期に至らせる奇跡」について述べてから,「そうした奇跡を永遠に維持するというだけの,もっと初歩的と思えるメカニズム」に言及しました。
科学者は長年の間,力を合わせて努力してきたにもかかわらず,命を永遠に維持するメカニズムを発見していません。「信じ難い機械」という本は,「老化の原因はいまだに謎である」ことを認めています。
とはいえ,老化と死の原因は実際には秘密でも何でもありません。その答えを得ることは可能なのです。
その答えとはなにか
その答えを持っておられる方は,「人間を受胎から誕生に……至らせる奇跡」の原因であられる方,すなわち,人間を創造された全能者エホバ神です。聖書はエホバについて,「命の源はあなたのもとにあ(る)」,また,「エホバが神であることを知れ。わたしたちを造ったのは神であって,わたしたち自身ではない」と述べています。―詩編 36:9; 100:3。
エホバ神が胎内でのあなたの発育をどのようにすばらしくプログラムされたかを考えてみてください。あなたを独特な一個の人間にするための,いわば指示書のようなものを記されたのです。詩編作者は次のように書きました。「あなたご自身がわたしの腎臓を造り出された(の)です。あなたはわたしをわたしの母の腹の中に,仕切られた状態にして保たれました。……わたしがひそかに造られたとき,……わたしの骨はあなたから隠されてはいませんでした。あなたの目は胎児のときのわたしをもご覧になりました。あなたの書にそのすべての部分が書き記されていました」。(詩編 139:13,15,16)驚嘆すべき造りの人体が単なる偶然の所産でないことは明らかです。
しかし,エホバ神が人間を完全なものとして創造し,永遠に生きられるようにしてくださったのであれば,人間はなぜ年老いて死ぬのでしょうか。その答えは最初の人間であるアダムに課された禁止命令から知ることができます。神はアダムを地上の美しい住みかに置き,次のようにお命じになりました。「園のすべての木から,あなたは満ち足りるまで食べてよい。しかし,善悪の知識の木については,あなたはそれから食べてはならない。それから食べる日にあなたは必ず死ぬからである」― 創世記 2:16,17。
どんなことが生じたでしょうか。アダムは天の父に従う代わりに,不従順になり,妻エバに加わってその木から食べました。二人は利己的にも,反逆したみ使いの偽りの約束にすがったのです。(創世記 3:1-6。啓示 12:9)それで,神が警告しておられたとおり,二人は死にました。アダムとエバは永遠に生きる可能性を持つ者として造られていましたが,その見込みは神に従順であることにかかっていました。不従順になることにより,二人は罪をおかしました。その後,罪人であった二人はすべての子孫に自らの体の致命的な欠陥を伝えました。「こうして死が,……すべての人に広がった」のです。―ローマ 5:12。ヨブ 14:4。
しかし,だからといって,老化と死を征服する希望がないわけではありません。人間を創造された全能者がいかなる遺伝的な異常をもいやし,わたしたちの命を永遠に存続させるためのエネルギーを供給できると信じるのはむずかしいことではないはずです。それにしても,神はどのようにこのことを行なわれるのでしょうか。また,永遠の命という神の約束を享受するために,わたしたちは何をしなければなりませんか。
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どうすれば永遠に生きられるか目ざめよ! 1995 | 10月22日
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どうすれば永遠に生きられるか
人体に今よりずっと長生きできる可能性が備わっていることは明らかなので,一部の人は,科学の力で永遠に生きる方法を発見できると信じています。アルビン・シルバースタイン博士は,「体を構成する種々の化学物質とその相互作用に関するより完全な知識が得られるにつれ,生命の本質が解明されるだろう。われわれは……老化の実態を理解することになる」と書きました。
どのような結果がもたらされますか。「人類史における新たな時代」が到来する,とシルバースタインは言いました。「“年老いた”人はもはやいなくなる。死を征服することを可能にする知識は,永遠の若さをももたらすからである」。
人間はこうしたことを成し遂げるでしょうか。聖書は次のように促しています。「高貴な者にも,地の人の子にも信頼を置いてはならない。彼らに救いはない。その霊は出て行き,彼は自分の地面に帰る。その日に彼の考えは滅びうせる」。(詩編 146:3,4)これまで見てきたとおり,人間は老化と死をもたらしている生来の欠陥を特定することも,ましてやそれを正すこともできていません。そうすることができるのは,人間の創造者だけです。
とはいえ,人間が地上で永遠に生きることは本当に神の目的なのでしょうか。
神の目的
エホバ神が最初の人間夫婦を住まわせたのはどこでしたか。それは地上の楽園でした。そして,二人は,「子を生んで多くなり,地に満ちて,それを従わせよ」と命じられました。(創世記 1:28)そうです。神の目的は,やがて地球全体に義なる人間家族を住まわせ,平和と幸福のうちにともに生活させることでした。―イザヤ 45:18。
アダムは自らの不従順さのゆえに死の宣告を受けましたが,人間を地上の楽園で永遠に生活させるという神の最初の目的は変わりませんでした。(創世記 3:17-19)神は,「わたしはそれを話したのである。わたしはまた,それをもたらすであろう」と言っておられます。(イザヤ 46:11; 55:11)神は地球に関するご自分の目的が変わっていないことを示し,次のように言われました。「義なる者たちは地を所有し,そこに永久に住むであろう」― 詩編 37:29。
神は人間の創造者として,人間に老化と死をもたらしている欠陥を正す立場におられます。どのような根拠に基づいてそうなさるのですか。その欠陥は最初の人間アダムから受け継がれたものだったので,神はみ子イエス・キリストの完全な人間の命を贖いの犠牲として備えることによって,「だれでも彼に信仰を働かせる者が滅ぼされないで,永遠の命を持てるように」されました。―ヨハネ 3:16。マタイ 20:28。
こうして,イエス・キリストは実際には最初のアダムに代わって,わたしたちの父,つまり命の与え主になられます。それゆえ,イエスは聖書の中で,「最後のアダム」と呼ばれているのです。(コリント第一 15:45)こうして,従順な人間は罪人アダムの子供として死の宣告を受ける代わりに,「とこしえの父」であられるイエス・キリストの子供として,永遠の命を受けるにふさわしい者とみなしていただけるようになります。―イザヤ 9:6。
もちろん,「とこしえの王」また「わたしたちの主イエス・キリストの父」は,エホバ神です。(テモテ第一 1:17。啓示 15:3。コロサイ 1:3)しかし,イエス・キリストはわたしたちの「とこしえの父」また「救い主」として備えられただけでなく,「平和の君」でもあられます。(ルカ 2:11)キリストはみ父を代表する者として,君としての権威を行使し,地に平和をもたらします。―詩編 72:1-8; 110:1,2。ヘブライ 1:3,4。
イエス・キリストの支配のもとで,失われた地上のパラダイスが回復されます。このことは,「再創造のさい,人の子が自分の栄光の座に座るとき」に起きる,とイエスは言われました。(マタイ 19:28)全部で14万4,000人を数える,キリストの忠実な追随者たちはキリストとともに,パラダイスとなった地上を支配します。(テモテ第二 2:11,12。啓示 5:10; 14:1,3)数え切れないほど多くの人がその義なる支配から益を得て,地上のパラダイスでの生活を享受します。その中には,イエスの傍らで死んだ犯罪者も含まれていることでしょう。イエスはその人に対し,「あなたはわたしと共にパラダイスにいるでしょう」と約束されたからです。―ルカ 23:43。
こうして,不義な死者でさえよみがえらされ,地上での永遠の命にふさわしい者となる機会を与えられます。(使徒 24:15)聖書は病気や老化や死が除き去られることを美しく描写して,次のように述べています。「神の天幕が人と共にあり,神は彼らと共に住み,彼らはその民となるであろう。そして神みずから彼らと共におられるであろう。また神は彼らの目からすべての涙をぬぐい去ってくださり,もはや死はなく,嘆きも叫びも苦痛ももはやない。以前のものは過ぎ去ったのである」― 啓示 21:3,4。
永遠に生きる方法
あなたもきっと,地を所有し,そこに永久に住む人たちの一人になりたいと思われることでしょう。そう望むのであれば,パラダイスで永遠に生きるための要求を満たさなければなりません。イエス・キリストは天の父に対する祈りの中で,基本的な要求について次のように言われました。「彼らが,唯一まことの神であるあなたと,あなたがお遣わしになったイエス・キリストについての知識を取り入れること,これが永遠の命を意味しています」― ヨハネ 17:3。
エホバの証人は,命を与えるこの知識をあなたが取り入れるのを喜んでお手伝いします。証人たちに一言お伝えくだされば,証人たちは無償でご都合の良い時間にお訪ねし,神がどのように人類を霊的また身体的に完全な状態へと高めてくださるかをご説明します。人間の全能の創造者が,老化と死をもたらしている生来の欠陥を完全に正すことがおできになるというのは確かです。その時はまもなく訪れようとしています。その時が来れば,人生はもはやそれほど短いものではなくなるでしょう。エホバは「定めのない時に至る命」をもって,ご自分の民を祝福してくださるのです。―詩編 133:3。
[10ページの図版]
キリストの,君としての支配の下で,老化と死は征服される
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