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精神病 ― なぞに包まれた病気目ざめよ! 1986 | 9月8日
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精神病 ― なぞに包まれた病気
イレーヌには何がどうなったのか見当が付きませんでした。「私はそのころ30歳で,二人の子供の世話をしながら働く母親でした。ええ,いろいろ問題はありましたが,特別変わったことはありませんでした」とイレーヌは述懐しています。イレーヌの病気の最初の兆候が現われるまではそうでした。
「ある日のこと,私は全く見知らぬ女性に近づき,あなたは私の死んだ妹だと言い張りました。その顔からも声からも妹であるに違いないと思いました。私が現実から遊離し始めたのはその時からです。
「それから少したち,美容院から歩いて家に帰る途中で泣き出しました。夫が自分のもとを離れ,子供たちを私から連れ去ってしまったことが分かったからです。ところが,家に帰ってみると,夫も子供もまだ家の中にいました。夫は異常に気づいて,私の姉の家に私を連れて行きました。でも私は,姉が私を殺そうとしていると信じ込んでいました。それで夫は病院で私を診てもらうことに決めました」。
こうして,入院,精神分析,ショック療法,薬物治療などを行き巡るイレーヌの放浪の旅が始まりました。イレーヌの生活を大混乱に陥れた,なぞに包まれた病気の治療法を探し求める放浪の旅です。
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精神病のなぞを解く目ざめよ! 1986 | 9月8日
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イレーヌの回想は続きます。「精神病のことを考えると身のすくむ思いがしました。“精神分裂病”とか“うつ病”とかいう語は私とは全く無関係な言葉でした。精神病になるというのは汚名を着せられることです。それは“気違いになること”,あるいは精神病院に“送り込まれる”ことを意味しました。私のことを悪魔につかれてしまった,と考えた友人もいたくらいです」。
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精神病のなぞを解く目ざめよ! 1986 | 9月8日
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精神分裂病 ― 精神病の暗黒部分
入院中のイレーヌは,人間違いをすることが多くなりました。長いこと会わなかった親族だと思って医師や看護婦を抱き締めたり,他の人には感じ取れないのに,いろいろな匂いがするように思えたりしました。さらには,病院の職員が自分を殺しにくると思い込みました。「ベッドに縛りつけられなければならなかったことが一度ありました」と,イレーヌは述べています。
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