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人々はメシアを待ち望んでいたものみの塔 2011 | 8月15日
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人々はメシアを待ち望んでいた
「民衆はメシアを待ち望んでいて,ヨハネについて,もしかしたら彼がメシアではないかと,皆心の中で考えていた」。―ルカ 3:15,「新共同訳」,共同訳聖書実行委員会。
1. ある羊飼いたちは,み使いからどんな知らせを聞きましたか。
ある夜のことです。羊飼いたちが戸外で群れの番をしていると,エホバのみ使いがそばに立ち,神の栄光が彼らの周りにきらめきます。羊飼いたちはどれほど驚いたことでしょう。み使いはこう告げます。「恐れることはありません。見よ,わたしはあなた方に,民のすべてに大きな喜びとなる良いたよりを告げ知らせているのです。今日,……あなた方に救い主,主なるキリストが生まれたからです」。メシアとなられる方に関する,胸の躍るような知らせです。その赤子は近くの町にいて,飼い葉おけの中に寝かされているとのことです。突然,「大勢の天軍」がエホバを賛美し始め,こう言います。「上なる高き所では栄光が神に,地上では平和が善意の人々の間にあるように」。―ルカ 2:8-14。
2. 「メシア」とはどういう意味ですか。メシアがだれかはどうすれば分かりますか。
2 もちろん,ユダヤ人の羊飼いたちは,「メシア」すなわち「キリスト」が神の「油そそがれた者」を指すことを知っていました。(出 29:5-7)しかし,み使いが述べた赤子がエホバに任命されたメシアとなることについてさらに学び,そのことを他の人に納得してもらうには,どうしたらよいでしょうか。ヘブライ語聖書中の預言を調べ,その子の人生や活動と照らし合わせることができます。
人々が待ち設けていたのはなぜか
3,4. ダニエル 9章24,25節はどう理解できますか。
3 何年も後にバプテスマを施す人ヨハネが現われたとき,ある人たちはその言葉や行ないを見聞きし,メシアが到来したのだろうかと考えました。(ルカ 3:15を読む。)メシアに関する「七十週」の預言を正しく理解している人もいたかもしれません。そうであれば,メシアがいつ現われるかを特定できたでしょう。その預言はこう述べています。「エルサレムを修復して建て直せという言葉が発せられてから指導者であるメシアまでに,七週,そしてさらに六十二週があるであろう」。(ダニ 9:24,25)多くの学者は,この「週」が週年を指すという見方を支持しています。例えば「改訂標準訳」(英語)は,「七十週の年が定められている」としています。
4 今日,エホバの僕たちは,ダニエル 9章25節の69週つまり483年間が,西暦前455年に始まったことを理解しています。その年,ペルシャの王アルタクセルクセスが,エルサレムを修復して建て直す許可をネヘミヤに与えました。(ネヘ 2:1-8)483年後の西暦29年,69週は終わります。その時,ナザレのイエスがバプテスマを受け,聖霊によって油そそがれ,メシアとなりました。―マタ 3:13-17。a
5. これからどんな預言について考えますか。
5 メシアに関する預言はほかにも数多くあります。これから,イエスの誕生,幼少期,宣教に関連して成就した預言を幾つか考えてみましょう。そうすることにより,神の預言の言葉に対する信仰が強まるに違いありません。また,イエスが確かに待望のメシアであったという明確な裏づけが得られます。
幼少期について予告されていた事柄
6. 創世記 49章10節はどのように成就しましたか。
6 メシアはイスラエルのユダの部族に生まれる。族長ヤコブは,臨終の床で息子たちを祝福した際,こう予告しました。「笏はユダから離れず,司令者の杖もその足の間から離れることなく,シロが来るときにまで及ぶ。そして,もろもろの民の従順は彼のものとなる」。(創 49:10)古代の多くのユダヤ人学者は,この言葉をメシアと結びつけました。ユダのダビデ王の統治に始まり,笏(王としての主権)と司令者の杖(命令する権能)はユダ族と共にありました。「シロ」とは,「それが自分のものである者」,「それが属する者」という意味です。神がユダの最後の王ゼデキヤに告げたように,支配権は法的権利を持つ者に与えられ,ユダの王統は恒久的な王なる相続者である「シロ」で終わります。(エゼ 21:26,27)イエスは,ゼデキヤ以降のダビデの子孫の中で王権を約束された唯一の方でした。イエスが生まれる前,み使いガブリエルはマリアにこう言いました。「エホバ神はその父ダビデの座を彼に与え,彼は王としてヤコブの家を永久に支配するのです。そして,彼の王国に終わりはありません」。(ルカ 1:32,33)ですからシロは,ユダとダビデの子孫であったイエス・キリストにほかなりません。―マタ 1:1-3,6。ルカ 3:23,31-34。
7. メシアはどこで生まれましたか。それが注目に値するのはなぜですか。
7 メシアはベツレヘムで誕生する。預言者ミカはこう書いていました。「ベツレヘム・エフラタ,ユダの幾千の中に入るには小さすぎる者よ,イスラエルにおいて支配者となる者があなたの中からわたしのために出る。その者の起こりは遠い昔から,定めのない昔の日からである」。(ミカ 5:2)メシアは,ユダヤのベツレヘムという町で生まれることになっていました。その町はかつてエフラタと呼ばれていたようです。イエスの母マリアと養父ヨセフはナザレに住んでいましたが,登録を命じるローマの布告によりベツレヘムへ行くことになり,イエスはそこで西暦前2年に生まれました。(マタ 2:1,5,6)驚くべき仕方で預言が成就したのです。
8,9. メシアの誕生とその後の出来事について,どんなことが予告されていましたか。
8 メシアは処女から生まれる。(イザヤ 7:14を読む。)ヘブライ語には「処女」を意味するベトゥーラーという言葉がありますが,イザヤ 7章14節ではアルマーという別の語が用いられており,「乙女[ハーアルマー]」が男の子を産むと預言されています。アルマーという語は他の箇所で,結婚前の乙女リベカを指して使われています。(創 24:16,43)マタイは霊感のもとに,イザヤ 7章14節がイエスの誕生に関連して成就したことを示す際,「処女」を意味するギリシャ語(パルテノス)を用いました。福音書を書いたマタイとルカは,マリアが処女であって,神の霊の働きにより妊娠したと述べています。―マタ 1:18-25。ルカ 1:26-35。
9 メシアの誕生後,幼い子どもたちが殺される。同じようなことが,幾世紀も前に起きました。エジプトのファラオが,ヘブライ人の男の子をナイル川に投げ込むよう命じたのです。(出 1:22)しかし,特筆すべきなのはエレミヤ 31章15,16節です。そこには,ラケルが「敵の地」に連れて行かれた子どもたちのことで泣いている,とあります。その嘆きは,エルサレムの北のベニヤミンの領地にあった,遠くのラマで聞かれました。マタイによれば,ヘロデ王がベツレヘムとその周辺地域の男の子の殺害を命じた時に,エレミヤの言葉が成就しました。(マタイ 2:16-18を読む。)その地域の人々はどれほど悲嘆したことでしょう。
10. ホセア 11章1節は,どのようにイエスに成就しましたか。
10 イスラエル人のように,メシアはエジプトから呼び出される。(ホセ 11:1)ヘロデが男の子の殺害を命じる前に,み使いの指示により,ヨセフとマリアとイエスはエジプトへ行きました。そして,「ヘロデの死亡まで」そこにとどまります。「これは,エホバがご自分の預言者[ホセア]を通して,『エジプトからわたしは自分の子を呼び出した』と語られたことが成就するため」でした。(マタ 2:13-15)当然ながらイエスは,自分の誕生や幼少期に関する予告が実現するよう仕向けることなどできませんでした。
メシアは活動を開始する
11. エホバの油そそがれた者の前にどのように道が備えられましたか。
11 神の油そそがれた者の前に道が備えられる。マラキは,「預言者エリヤ」がその業を行ない,メシアの到来のために人々の心を備えさせると予告していました。(マラキ 4:5,6を読む。)イエス自ら,この「エリヤ」はバプテスマを施す人ヨハネであると述べました。(マタ 11:12-14)また,マルコは,ヨハネの宣教がイザヤの預言の言葉の成就であると指摘しました。(イザ 40:3。マル 1:1-4)ヨハネが前駆者としてエリヤのような業を行なうよう,イエスが事を運んだのではありません。予告されていた「エリヤ」の活動は,神のご意志と調和したもので,メシアを見分けるための手だてでした。
12. どんな任務は,メシアを見分ける助けになりますか。
12 神からの任務はメシアを見分ける助けになる。イエスは自分が育ったナザレの会堂でイザヤの巻き物を朗読し,次の言葉を自分に当てはめました。「エホバの霊がわたしの上にある。貧しい者に良いたよりを宣明させるためわたしに油をそそぎ,捕らわれ人に釈放を,盲人に視力の回復を宣べ伝え,打ちひしがれた者を解き放して去らせ,エホバの受け入れられる年を宣べ伝えさせるために,わたしを遣わしてくださったからである」。イエスはまさしくメシアだったため,「あなた方がいま聞いたこの聖句は,きょう成就しています」と言うことができました。―ルカ 4:16-21。
13. イエスのガリラヤでの公の宣教は,どのように予告されていましたか。
13 メシアのガリラヤでの公の宣教が予告されていた。イザヤは,「ゼブルンの地とナフタリの地……諸国民のガリラヤ」についてこう書いていました。「闇の中を歩んでいた民は大いなる光を見た。深い陰の地に住んでいた者たちには,光がその上に照り輝いた」。(イザ 9:1,2)イエスはカペルナウムに住み,ガリラヤで公の宣教を開始しました。その結果,ゼブルンとナフタリの多くの住民が,イエスのもたらした霊的な光から益を得ました。(マタ 4:12-16)イエスはガリラヤで示唆に富む山上の垂訓を語り,使徒たちを選び,最初の奇跡を行ないました。復活後に500人ほどの弟子たちの前に現われたのもガリラヤだったと思われます。(マタ 5:1–7:27; 28:16-20。マル 3:13,14。ヨハ 2:8-11。コリ一 15:6)こうしてイエスは「ゼブルンの地とナフタリの地」で宣べ伝え,イザヤの預言を成就しました。言うまでもなく,イスラエルの他の場所でも王国の音信を宣べ伝えました。
予告されていた他の活動
14. 詩編 78編2節はどのようにイエスに成就しましたか。
14 メシアは例えを使って話す。詩編作者アサフは,『わたしは格言的なことばをもって口を開く』と歌いました。(詩 78:2)この言葉が預言的にイエスに当てはまると言えるのはなぜでしょうか。マタイがそのことを示しているからです。マタイは,イエスが王国をからしの種粒やパン種に例えたことについて記し,さらにこう述べています。「[イエスは]例えを用いないでは話そうとされなかった。それは預言者を通して,『わたしは例えをもって口を開き,世の基が置かれて以来隠されてきた事柄を言い広める』と語られたことが成就するためであった」。(マタ 13:31-35)格言的なことば,つまり例えを用いることは,イエスの効果的な教え方の一つでした。
15. イザヤ 53章4節はどのように成就しましたか。
15 メシアはわたしたちの病を負ってくださる。イザヤはこう予告していました。「まことに,わたしたちの病は彼が担い,わたしたちの痛みは彼が負ったのである」。(イザ 53:4)イエスはペテロのしゅうとめを治した後,他の人たちをいやしました。マタイが指摘しているように,それは「預言者イザヤを通して,『彼は自らわたしたちの病を取り去り,わたしたちの疾患を担った』と語られたことが成就するため」でした。(マタ 8:14-17)イエスが病気の人を治したという記録は,ほかにも数多くあります。
16. 使徒ヨハネは,イエスがイザヤ 53章1節を成就したことをどのように示しましたか。
16 メシアは良いことをたくさん行なうが,多くの人は信じようとしない。(イザヤ 53:1を読む。)使徒ヨハネはこの預言が成就したことを示し,こう書いています。「[イエスが]彼らの前で非常に多くのしるしを行なってこられたのに,彼らがイエスに信仰を持たなかったので,預言者イザヤの言ったこの言葉が成就した。『エホバよ,わたしたちの聞いたことにだれが信仰を置いたでしょうか。そして,エホバのみ腕は,だれに表わし示されたでしょうか』」。(ヨハ 12:37,38)使徒パウロが宣教を行なった時も,メシアであるイエスについての良いたよりに信仰を置いた人はわずかでした。―ロマ 10:16,17。
17. 詩編 69編4節はどのように成就しましたか。
17 メシアはいわれなく憎まれる。(詩 69:4)使徒ヨハネによれば,イエスはこう語りました。「もしわたしが,ほかのだれも行なわなかった業を[人々]の間で行なっていなかったなら,彼らには何の罪もなかったことでしょう。しかし今,彼らはわたしもわたしの父をも見,そのうえ憎んだのです。しかしそれは,彼らの律法の中に書かれているこの言葉が成就するためなのです。『彼らはいわれなくわたしを憎んだ』」。(ヨハ 15:24,25)「律法」は,しばしば聖書全体を意味します。(ヨハ 10:34; 12:34)福音書の記述は,イエスがとりわけユダヤ人の宗教指導者たちから憎まれたことを裏づけています。キリストはこうも言いました。「世があなた方を憎む理由はありません。しかし,わたしのことは憎みます。わたしが世に関し,その業が邪悪であることを証しするからです」。―ヨハ 7:7。
18. イエスがメシアであるという確信を強めるため,次の記事では何を学びますか。
18 イエスの1世紀の追随者たちは,イエスがメシアであることを信じて疑いませんでした。イエスは確かにヘブライ語聖書中のメシアに関する預言を成就したからです。(マタ 16:16)これまで見てきたように,そうした預言の幾つかは,ナザレのイエスの幼少期や宣教において成就しました。次の記事では,メシアに関する他の預言を調べます。祈りのうちにそれらの預言を思い巡らすなら,イエス・キリストがまさしく天の父エホバに任命されたメシアであるという確信が強まることでしょう。
[脚注]
a 「七十週」に関して詳しくは,「ダニエルの預言に注意を払いなさい」の本の第11章を参照。
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彼らはメシアを見つけたものみの塔 2011 | 8月15日
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彼らはメシアを見つけた
「わたしたちはメシアを見つけた」。―ヨハ 1:41。
1. どのようないきさつで,「わたしたちはメシアを見つけた」という言葉が語られましたか。
バプテスマを施す人ヨハネが,自分の弟子二人と一緒に立っています。イエスが歩いてくるとヨハネは,「見なさい,神の子羊です!」と言います。アンデレともう一人の弟子はすぐにイエスのあとに付いて行き,共に一日を過ごします。後にアンデレは自分の兄弟シモン・ペテロを見つけ,「わたしたちはメシアを見つけた」という胸の躍るような知らせを告げてから,イエスのところへ連れて行きます。―ヨハ 1:35-41。
2. メシアに関する預言をさらに調べるなら,どんな益が得られますか。
2 その後,アンデレやペテロや他の弟子たちは,時間をかけて聖書を詳しく調べたに違いありません。そして,ナザレのイエスが約束のメシアであると,はばかりなく宣明するようになります。わたしたちも,メシアに関する預言をさらに調べましょう。そうするなら,神の言葉と神の油そそがれた者に対する信仰が強められます。
『見よ,あなたの王が来る』
3. イエスがエルサレムに勝利の入城をした際,どんな預言が成就しましたか。
3 メシアはエルサレムに勝利の入城をする。ゼカリヤはこう預言していました。「シオンの娘よ,大いに喜べ。エルサレムの娘よ,勝利の叫びを上げよ。見よ,あなたの王があなたのもとに来る。義にかなった者,救われた者である。謙遜であり,ろばに,しかも成熟した,雌ろばの子に乗っている」。(ゼカ 9:9)詩編作者は,「エホバのみ名によって来る方がほめたたえられるように」と書きました。(詩 118:26)預言の成就として,群衆の間で自然に歓喜の叫び声が上がりました。イエスが群衆にそうするよう促したわけではありません。その記述を読みながら,喜びの声がわき起こる光景を想像してみてください。―マタイ 21:4-9を読む。
4. 詩編 118編22,23節の成就として,どんなことが生じましたか。
4 イエスは,メシアである数々の証拠にもかかわらず大勢に退けられるが,神の目には貴重。予告どおり,イエスは証拠を信じようとしない人々から『さげすまれ,取るに足りない者とみなされ』ました。(イザ 53:3。マル 9:12)しかし,神の霊感を受けた詩編作者はこう書いていました。「建築者たちの退けた石が隅の頭となった。これはエホバご自身から出たものとなった」。(詩 118:22,23)イエスはこの言葉に宗教上の反対者たちの注意を引き,ペテロはそれがキリストに成就したと述べました。(マル 12:10,11。使徒 4:8-11)イエスはクリスチャン会衆の「土台の隅石」となられたのです。不信仰な人々からは退けられましたが,「神にとっては選ばれた貴重な」方です。―ペテ一 2:4-6。
裏切られ,捨てられる
5,6. メシアを裏切る者に関するどんな予告が成就しましたか。
5 メシアは不誠実な友に裏切られる。ダビデはこう預言していました。「わたしと平和な関係にあり,わたしが信頼した人,わたしのパンを食べていたその人が,わたしに向かってそのかかとを大きくしました」。(詩 41:9)一緒にパンを食べる人は,友とみなされました。(創 31:54)ですから,ユダ・イスカリオテがイエスを裏切ったことは,最悪の背信でした。イエスは,自分を裏切る者について使徒たちに話した際,次のように述べてダビデの預言的な言葉の成就に注意を引きました。「わたしはあなた方のすべてについて語っているのではありません。わたしは自分が選んだ者たちを知っています。しかしそれは,『常々わたしのパンを食していた者が,わたしに向かってかかとを挙げた』と述べる聖書が成就するためなのです」。―ヨハ 13:18。
6 メシアを裏切る者は,奴隷の代価に相当する銀30枚を受け取る。マタイはゼカリヤ 11章12,13節に言及し,イエスがそのような端金で裏切られたことを示しました。しかし,そのことが「預言者エレミヤを通して」予告されていた,と述べたのはなぜでしょうか。当時,聖書の中でエレミヤ書は,ゼカリヤ書を含む一群の書の最初に置かれていたようです。(ルカ 24:44と比較。)ユダは不実な仕方で得た金を使うことはありませんでした。その金を神殿に投げ込み,去って行って自殺したからです。―マタ 26:14-16; 27:3-10。
7. ゼカリヤ 13章7節はどのように成就しましたか。
7 弟子たちでさえメシアのもとを去る。「牧者を打って,群れのものたちを散らせ」と,ゼカリヤは書いていました。(ゼカ 13:7)西暦33年ニサン14日,イエスは弟子たちにこう告げました。「今夜,あなた方は皆わたしに関してつまずくでしょう。『わたしは牧者を打つ。すると,群れの羊は散り散りになるであろう』と書いてあるからです」。まさにそのとおりになりました。マタイが伝えているように,「弟子たちはみな[イエス]を捨てて逃げて行った」のです。―マタ 26:31,56。
訴えられ,打ちたたかれる
8. イザヤ 53章8節はどのように成就しましたか。
8 メシアは裁判にかけられ,有罪とされる。(イザヤ 53:8を読む。)ニサン14日の明け方に,サンヘドリン全体が集まり,イエスを縛り,ローマ総督ポンテオ・ピラトに引き渡しました。ピラトはイエスに質問しますが,有罪とすべき理由は何も見つかりません。しかし,ピラトがイエスの釈放を提案すると,群衆は「杭につけろ!」と叫び,犯罪者のバラバを自由にするよう求めます。ピラトは群衆を満足させようとバラバを釈放し,イエスをむちで打たせ,杭につけるために渡しました。―マル 15:1-15。
9. 詩編 35編11節に予告されていたどんなことがイエスの時代に起きましたか。
9 メシアに不利な偽証がなされる。詩編作者ダビデは,「暴虐な証人たちが立ち上がり,わたしの知らなかったことを問い立てます」と述べていました。(詩 35:11)この預言にたがわず,「祭司長たちおよびサンヘドリン全体は,イエスを死に処するため,彼に対する偽証を探し求めて」いました。(マタ 26:59)実際,「大勢の者が彼に不利な偽証をしていたのであるが,その証言は一致していなかったのである」と述べられています。(マル 14:56)イエスを亡き者にしようとしていた冷酷な敵たちにとって,証言は嘘でも構わなかったのです。
10. イザヤ 53章7節はどのように成就しましたか。
10 メシアは,訴える者たちの前で沈黙を守る。イザヤはこう預言していました。「彼は激しい圧迫を受け,苦しめられるままに任せていた。彼はそれでも口を開こうとはしなかった。彼はほふり場に向かう羊のように連れて行かれ,毛を刈る者たちの前で黙っている雌羊のように,自分も口を開こうとはしなかった」。(イザ 53:7)イエスは,『祭司長と年長者たちから訴えられている間,何の答えもされませんでした』。ピラトから,「彼らがあなたに不利な証言をいかに多く行なっているか,あなたには聞こえないのか」と言われても,「一言もお答えにならなかった」ため,「総督はたいへん不思議に」思いました。(マタ 27:12-14)イエスは訴える者たちをののしったりもしませんでした。―ロマ 12:17-21。ペテ一 2:23。
11. イザヤ 50章6節とミカ 5章1節の成就として,どんなことが起きましたか。
11 イザヤはメシアが打ちたたかれることを預言していた。こう書いています。「わたしは打つ者たちに背を与え,髪を引き抜く者たちにほほを与えた。わたしは屈辱的なことやつばから顔を覆い隠さなかった」。(イザ 50:6)ミカは,「彼らは杖をもってイスラエルの裁き人のほほを打つ」と予告していました。(ミカ 5:1)福音書筆者マルコは,これらの預言が確かに成就したことを示し,こう記しています。「ある者たちは[イエス]につばをかけ,また彼の顔をすっぽり覆ってこぶしで殴り,『預言せよ!』などと言い始めた。そして,廷吏たちは彼の顔を平手で打ってから,彼を連れて行った」。さらに,兵士たちが「葦で彼の頭をたたいたり,つばをかけたり,ひざをかがめて敬意のしぐさをしたりするのであった」とも述べています。(マル 14:65; 15:19)もちろん,イエスは相手を挑発するようなことは何もしませんでした。
死に至るまで忠実
12. 詩編 22編16節とイザヤ 53章12節はどのようにイエスに当てはまりましたか。
12 メシアが杭につけられることや,その時の状況が予告されていた。詩編作者ダビデはこう述べていました。「悪を行なう者たちの集まりがわたしを囲い込みました。彼らはライオンのようにわたしの手と足に攻めかかります」。(詩 22:16)福音書筆者マルコは,聖書の読者がよく知っている出来事についてこう記しています。「時はすでに第三時[午前9時ごろ]であり,彼らはイエスを杭につけたのである」。(マル 15:25)メシアが罪人たちと共に数えられることも予告されていました。『彼は自分の魂を死に至るまでも注ぎ出し,違犯者と共に数えられた』とイザヤは書いています。(イザ 53:12)この言葉のとおり,「二人の強盗が[イエス]と一緒に杭につけられ,一人はその右に一人はその左に置かれ」ました。―マタ 27:38。
13. 詩編 22編7,8節はどのようにイエスに成就しましたか。
13 ダビデはメシアがののしられることを預言していた。(詩編 22:7,8を読む。)イエスは杭の上で苦しんでいた時にののしられました。マタイはこう伝えています。「通行人たちは彼のことをあしざまに言いはじめ,頭を振ってこう言った。『神殿を壊して三日でそれを建てると称する者よ,自分を救ってみろ! 神の子なら,苦しみの杭から下りて来い!』」祭司長や書士や年長者たちもイエスを愚弄し,こう言いました。「ほかの者は救ったが,自分は救えないのだ! 彼はイスラエルの王だ。今,苦しみの杭から下りて来てもらおうではないか。そうしたら我々も彼を信じよう。彼は神に頼ったのだ。神が彼を必要とされるのなら,いま神に救い出してもらうがよい。『わたしは神の子だ』と言ったのだから」。(マタ 27:39-43)それでも,イエスは取り乱したりせず,すべてに耐えました。なんと立派な模範でしょう。
14,15. メシアの衣服や,酢を与えられることに関する預言は,どのように成就しましたか。
14 メシアの衣服のためにくじが引かれる。詩編作者はこう書いていました。「彼らはわたしの衣を彼らの間で配分し,わたしの衣服の上でくじを引きます」。(詩 22:18)まさにそのとおりになり,「イエスを杭につけてから,[ローマの兵士たち]はくじを引いてその外衣を分配」しました。―マタ 27:35。ヨハネ 19:23,24を読む。
15 メシアは酢と胆汁を与えられる。「彼らは食物として毒草をわたしに与え,わたしの渇きのために酢を飲ませようとしました」と,詩編作者は述べていました。(詩 69:21)マタイはこう記しています。「彼らは胆汁を混ぜたぶどう酒をイエスに与えて飲ませようとした。しかし,その味を見たのち,飲もうとはされなかった。[後に]彼らの一人が……走って行って海綿を取り,それに酸いぶどう酒を含ませ,葦の先に付けて彼に飲ませようとした」。―マタ 27:34,48。
16. 詩編 22編1節の預言的な言葉はどのように成就しましたか。
16 メシアは神に見捨てられたように見える。(詩編 22:1を読む。)預言のとおり,「第九時[午後3時ごろ]に,イエスは,『エリ,エリ,ラマサバクタニ』と大声で呼ばわられ」ました。「これは,訳せば,『わたしの神,わたしの神,なぜわたしをお見捨てになりましたか』という意味」です。(マル 15:34)イエスは天の父への信仰を失ったわけではありませんでした。神は,キリストの忠誠が十分に試されるよう,保護を取り去ることによっていわばイエスを見捨て,敵たちの手に渡しました。イエスは上の言葉を叫ぶことにより,詩編 22編1節を成就しました。
17. ゼカリヤ 12章10節と詩編 34編20節はどのように成就しましたか。
17 メシアは刺し通されるが,骨は折られない。エルサレムの住民は,『自分たちが刺し通した者を見つめる』ことになっていました。(ゼカ 12:10)また,詩編 34編20節はこう述べていました。「神はその者のすべての骨を守っておられる。その一つも折られなかった」。これらの点の成就について,使徒ヨハネはこう書いています。「兵士の一人が[イエス]の脇腹を槍で突き刺した。すると,すぐに血と水が出た。そして,それを見た者[ヨハネ]が証しをしたのであり,その証しは真実である。……これらの事は次の聖句が成就するために起きたのである。『その骨は一つも砕かれないであろう』。そしてまた,別の聖句は言う,『彼らは自分たちが刺し通した者を見つめるであろう』」。―ヨハ 19:33-37。
18. イエスはどのように富んだ者たちと共に埋葬されることになりましたか。
18 メシアは富んだ者たちと共に埋葬される。(イザヤ 53:5,8,9を読む。)ニサン14日の午後遅くに,「ヨセフという名で,……アリマタヤのある富んだ人」がピラトにイエスの体を頂きたいと願い出,許可されました。マタイの記述はこう続いています。「ヨセフは体を受け取り,それを清い上等の亜麻布に包み,自分の新しい記念の墓の中に横たえた。それは彼が岩塊にくりぬいたものであった。そして,その記念の墓の戸口のところに大きな石を転がしてから去って行った」。―マタ 27:57-60。
メシアなる王をたたえよ!
19. 詩編 16編10節の預言的な言葉と調和して,どんなことが生じましたか。
19 メシアは復活させられる。ダビデは,「あなた[エホバ]はわたしの魂をシェオルに捨て置かれない」と書いていました。(詩 16:10)イエスの体が横たえられた墓にやって来た女たちが,どれほど驚いたか想像してみてください。人の姿で現われたみ使いに,こう告げられたのです。「ぼう然とすることはありません。あなた方は,杭につけられたナザレ人のイエスを捜しています。彼はよみがえらされました。ここにはいません。見なさい,彼を横たえた場所です」。(マル 16:6)西暦33年のペンテコステの日に,エルサレムにいた群衆に対し,使徒ペテロはこう言いました。「[ダビデは]キリストの復活を先見し,それについて,彼がハデスに見捨てられず,その肉体が腐れを見ることもないと語ったのです」。(使徒 2:29-31)神は,愛するみ子の肉体が腐るままにはされませんでした。それだけでなく,イエスを奇跡的に霊者としてよみがえらせました。―ペテ一 3:18。
20. 支配を行なうメシアに関してどんなことが予告されていましたか。
20 予告どおり,神はイエスがご自分の子であると宣言された。(詩編 2:7; マタイ 3:17を読む。)さらに,群衆はイエスと来たるべき王国をたたえました。わたしたちも,イエスとその祝福された支配について,喜びのうちに語ります。(マル 11:7-10)キリストは間もなく『真理と謙遜と義のために乗り進み』,敵を滅ぼします。(詩 2:8,9; 45:1-6)その後,キリストの王権により,全地球的な平和と繁栄が実現します。(詩 72:1,3,12,16。イザ 9:6,7)エホバの愛するみ子は,すでにメシアなる王として天で統治しています。エホバの証人として,こうした真理をふれ告げることができるのは,なんと素晴らしい特権でしょう。
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