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マスタード ― ぴりっとしたスパイスの話目ざめよ! 1996 | 8月8日
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小さな巨人
この激しい気性を秘めた,あどけなく見える黄色い花は,よく菜種,つまり油菜と間違えられます。からし菜と菜種はどちらもアブラナ科に属します。アブラナ科は,4,000種から成ると言われており,そのうちの40種がカラシナです。最も広く利用されているのが,シロガラシ(Brassica hirta),セイヨウカラシナ(Brassica juncea),そしてクロガラシ(Brassica nigra)です。これらのからしのエッセンスは特に刺激が強く,皮膚に水泡を生じさせることがあるほどです。
野生のクロガラシは,アフリカ,インド,ヨーロッパの石の多い土地や道端,川の岸辺などに繁茂し,イスラエルでは,ガリラヤ湖に臨む,草木で覆われた丘陵地の斜面にも自生しています。クロガラシは正しく栽培されると生長が速く,「東洋では,時には南フランスでも,果樹ほどの高さ」にまで生長することがあります。―ビグルーの「聖書辞典」。
黒い「からしの種粒」は驚くほど非常に小さく,イエスの時代には,イスラエルで一般にまかれていた種の中で一番小さなものでした。(マルコ 4:31)種の直径は約1㍉。タルムードの中で最小の測定単位を表わすのに使われているのも当然と言えます。―ベラホット 31a。
からしの種粒と,十分に成長した植物との著しい違いは,天の鳥たちに宿り場を与えるようになる「天の王国」の成長についてのキリストの教えを一層意味あるものにします。(マタイ 13:31,32。ルカ 13:19)キリストはまた,励ましとなる例えによって,ほんのわずかな信仰でもいかに大きな事柄を成し遂げるかを強調し,「あなた方に真実に言いますが,からしの種粒ほどの信仰があるなら,……何事もあなた方にとって不可能ではないのです」とおっしゃいました。―マタイ 17:20。ルカ 17:6。
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マスタード ― ぴりっとしたスパイスの話目ざめよ! 1996 | 8月8日
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用途の多い素朴な植物
かつて薬屋を飾っていた大変印象的な壺には,治療用のからし粉が入れられていました。壊血病を中和する効力があると考えられていたため,航海に出るオランダ船の船倉には必ずこれが積まれていました。からしは,風呂に入れたり,湿布薬としても使われました。
シロガラシの葉は,サラダにして食されますが,貯蔵牧草にもなります。その種から搾った食用油は簡単には腐敗しません。アジアでは,その油は,工業の分野では照明用の燃料として用いられ,また,いろいろな料理に風味を添えるものともなっています。
この素朴な田舎の花は,幾つかのことわざに出てきます。ネパールやインドでは,「からしの花を見る」とは,ショックを受けた後のぼうっとしている状態を意味します。フランスでは,「からしが鼻につんと来る」とは,かんしゃくを起こすことを意味します。花,香辛料,種,油,粉 ― どんな形にせよ,からしは,あなたの生活をスパイスの効いたものにすることができます。
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