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「会衆を強くした」神の王国について徹底的に教える
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15章
「会衆を強くした」
旅行する監督の訪問によって会衆の人たちの信仰が強まる
1-3. (ア)パウロの宣教旅行に誰が同行することになりましたか。どんな人ですか。(イ)この章ではどんなことを学びますか。
次の町に向かって起伏の多い道を進みながら,使徒パウロは横を歩く若者に目をやります。若者の名前はテモテです。おそらく10代後半か20代前半で,若くて元気にあふれています。道のりを進むごとに,テモテの故郷からどんどん離れていきます。ルステラとイコニオムが後ろに遠ざかっていきます。どんな旅になるのでしょうか。パウロは1度宣教旅行をしているので,ある程度予想がつきます。きっと危険な目にも遭うでしょう。この若者はやっていけるでしょうか。
2 テモテなら大丈夫だ,とパウロは思っています。テモテには,本人が思っている以上に可能性があります。パウロはこれまで以上に,信頼できる人に旅行に同行してほしいと感じています。いろいろな会衆を訪問して兄弟たちを力づけるには,こちらの側が気持ちを強く持ち,団結していなければいけません。パウロがそう感じていたのは,最近バルナバと意見がぶつかって,別れることになったからかもしれません。
3 この章では,人と意見がぶつかったときにどうするとよいかを学べます。また,パウロがどうしてテモテを選んだのかに注目し,現代の巡回監督の役割についても学びます。
「戻って兄弟たちを訪ね……ましょう」(使徒 15:36)
4. パウロは2度目の宣教旅行でどんなことをしようと思っていましたか。
4 前の章で見たように,パウロ,バルナバ,ユダ,シラスの4人は,割礼についての統治体の決定をアンティオキアの会衆に知らせ,励ましました。パウロは次にどうするでしょうか。別の旅行の計画について,バルナバにこう話します。「さあ,エホバの言葉を広めた全ての町に戻って兄弟たちを訪ね,どうしているかを見てみましょう」。(使徒 15:36)パウロは,兄弟たちにただ会いに行っておしゃべりしたかったわけではありません。2度目の宣教旅行の目的が「使徒の活動」にきちんと書かれています。まず,統治体の決定を守るよう会衆に伝えるためです。(使徒 16:4)さらに,旅行する監督として兄弟たちを力づけ,信仰を強めるためです。(ロマ 1:11,12)現代のエホバの証人はこの例にどのように倣っているでしょうか。
5. 現代の統治体は,どのようにして世界中の会衆に指示を与え,温かく励ましていますか。
5 現代も,キリストはエホバの証人の統治体を通してクリスチャン会衆を導いています。統治体は,手紙,電子版と印刷版の出版物,集会などの方法で世界中の会衆に指示や指針を与え,温かく励ましています。各会衆のことを知り,コミュニケーションを取りたいとも思っています。そのためにあるのが,旅行する監督たちの訪問です。統治体は,世界各地にいる何千人もの経験を積んだ長老たちを巡回監督に任命しています。
6,7. 巡回監督はどんなことをしますか。
6 旅行する監督は会衆を訪問する時,一人一人に気を配り,みんなが楽しく奉仕を続けられるよう助けます。どのようにしてでしょうか。パウロなど1世紀の兄弟たちに倣います。パウロは,同じく監督として働くテモテにこう勧めました。「神の言葉を広めなさい。順調な時にも困難な時にも熱心に伝道しなさい。いつも辛抱強く,教える技術を駆使して,戒め,忠告し,励ましなさい。……福音伝道者として働き……なさい」。(テモ二 4:2,5)
7 この言葉の通り,巡回監督は(結婚していれば妻も)会衆の人たちと一緒にいろいろなタイプの野外宣教に参加します。宣教への情熱があり,聖書を教えるのが上手なので,一緒に働く兄弟姉妹は自分も頑張ろうという気持ちになります。(ロマ 12:11。テモ二 2:15)巡回監督は自分のしたいことを後回しにして,兄弟姉妹に愛情を注ぎます。天候が悪かったり危険が伴ったりしても会衆を訪ね,兄弟たちのために時間と体力を費やします。(フィリ 2:3,4)聖書に基づく講話をして教え,元気づけ,取り組める点を伝えます。旅行する奉仕をする人たちの姿勢から学び,信仰に倣うと,クリスチャンとして成長できます。(ヘブ 13:7)
「怒りが激しくぶつかって」(使徒 15:37-41)
8. パウロの提案を聞いて,バルナバはどうしましたか。どんなことを決めていましたか。
8 「兄弟たちを訪ね……ましょう」というパウロの提案にバルナバは同意します。(使徒 15:36)2人はこれまで協力し合いながら一緒に旅行したので,行く先の地方や兄弟たちのことをよく知っていました。(使徒 13:2–14:28)再び一緒に出掛ければ,良い宣教旅行になるはずです。でも,あることで話がもつれます。使徒 15章37節にあるように,「バルナバは,マルコと呼ばれるヨハネを連れていくことに決めて」いました。いとこのマルコを連れていくことを提案したわけではありませんでした。「決めて」いました。
9. パウロが賛成しなかったのはどうしてですか。
9 パウロは賛成しませんでした。こう書かれています。「しかしパウロは,パンフリアでマルコが一緒に行動するのをやめてしまったことがあるので,彼を連れていくことに賛成できなかった」。(使徒 15:38)1度目の宣教旅行で,マルコはパウロとバルナバに同行しましたが,途中までしか一緒にいませんでした。(使徒 12:25; 13:13)旅の初め頃,パンフリアにいた時に,マルコは宣教旅行をやめてエルサレムに帰ってしまいました。その理由は聖書に書かれていませんが,パウロはマルコが無責任だと感じたようです。マルコを信用できなくなっていたのかもしれません。
10. 2人がどちらも譲らなかったため,どうなりましたか。
10 しかしバルナバはマルコを連れていくと言って譲りません。パウロも,連れていかないと言って譲りません。使徒 15章39節には,「そこで怒りが激しくぶつかって,2人は別れることになった」とあります。バルナバはマルコを連れて,船で故郷のキプロス島に向かいます。パウロは予定通り旅に出ます。「パウロはシラスを選び,出発した。出掛ける前に,兄弟たちは,パウロがエホバの惜しみない親切を受けるようにと祈った」と書かれています。(使徒 15:40)旅を始めたパウロとシラスは「シリアとキリキアを通って会衆を強くし」ました。(使徒 15:41)
11. 友情に亀裂が入ったとき,仲直りするためにどんなことが大切ですか。
11 人間にはみんな弱いところがある,ということをあらためて感じます。パウロもバルナバも統治体に遣わされ,統治体の代わりにメッセージを伝える人たちでした。パウロはやがて統治体の1人になったようです。そういう人たちでも自分の弱さに負けてしまいました。2人の友情は完全に終わってしまったのでしょうか。2人とも弱さはありましたが,キリストに倣おうとしていました。謙虚になって自分を見つめ直せる人たちでした。やがて友情を取り戻し,許し合ったはずです。(エフェ 4:1-3)しばらくして,パウロとマルコはまた一緒に働きました。a (コロ 4:10)
12. 長老たちも巡回監督も,どのようにパウロとバルナバに倣えますか。
12 一度感情をあらわにしたとはいえ,バルナバもパウロももともと怒りっぽい人だったわけではありません。バルナバは優しくて心の広い人でした。本名のヨセフではなく,「慰めの子」を意味するバルナバという名前で呼ばれていたほどです。(使徒 4:36)パウロも物腰が柔らかく,優しい人でした。(テサ一 2:7,8)会衆の長老たちも巡回監督も,パウロとバルナバのように,謙虚になって自分をいつも見つめ直すことが大切です。仲間の長老や会衆の兄弟姉妹に優しく接しましょう。(ペテ一 5:2,3)
「良い評判を得ていた」(使徒 16:1-3)
13,14. (ア)テモテはどんな人でしたか。パウロはどのようにしてテモテに会いましたか。(イ)テモテがパウロの目に留まったのはどうしてですか。(ウ)テモテはどんな仕事を任せられましたか。
13 2度目の宣教旅行でも,パウロはローマの属州ガラテアに行きます。そこには幾つかの会衆がつくられていました。パウロは「デルベに,次いでルステラに着」きます。そして,こう書かれています。「そこにテモテという弟子がいた。信者であるユダヤ人女性の息子で,ギリシャ人の父親を持[っていた]」。(使徒 16:1)b
14 47年ごろ,パウロは初めてその地方に行った時に,テモテと家族に会っていたようです。それから2,3年たって2度目に訪れた今回,若者テモテが目に留まります。テモテが「兄弟たちから良い評判を得ていた」からです。地元の兄弟たちから高く評価されていただけでなく,ほかの会衆にまで評判が伝わっていました。ルステラでも,30㌔ほど離れたイコニオムでも,テモテのことが知られていました。(使徒 16:2)長老たちは聖なる力に導かれて,責任の重い仕事をテモテに任せます。パウロとシラスの宣教旅行に同行してサポートする仕事です。(使徒 16:3)
15,16. テモテの評判が良かったのはどうしてですか。
15 若いテモテがそれほど高く評価されていたのはどうしてでしょうか。容姿が良かったのでしょうか。頭が良く,才能にあふれていたのでしょうか。人間はそういうところに注目しがちです。預言者サムエルもそうでした。それでエホバからこう言われました。「人間の見方と神の見方は違う。人間は目に見えるものを見るが,エホバは心の中を見る」。(サム一 16:7)テモテの評判が良かったのは,生まれつき持っていたものが優れていたからではありません。内面が磨かれていたからです。
16 使徒パウロはしばらく後に書いた手紙の中で,テモテの内面の美しさに触れています。テモテの気立ての良さ,見返りを求めない愛,奉仕に打ち込む姿勢を褒めています。(フィリ 2:20-22)テモテの「偽善のない信仰を思い出す」とも言っています。(テモ二 1:5)
17. 現代の会衆の若い人たちは,どのようにテモテに倣っていますか。
17 現代の会衆の若い人たちも,テモテに倣ってより良い人になろうと頑張っています。そうする姿を見て,エホバも周りの人も喜び,誇らしく思っています。(格 22:1。テモ一 4:15)裏で悪いことをしたりせず,エホバを真っすぐに愛している若者たちは,本当によくやっています。(詩 26:4)テモテのように,会衆にとってとても貴重な存在です。毎年,そういう若い人たちが成長して伝道者になり,エホバのために生きると約束してバプテスマを受けています。とてもうれしいことです。
「信仰を強められ……た」(使徒 16:4,5)
18. (ア)パウロとテモテはどんな責任を果たしましたか。(イ)会衆はどのようにして大きくなっていきましたか。
18 パウロとテモテは何年も一緒に働きました。旅行する奉仕をし,統治体に遣わされていろいろな仕事をしました。こう書かれています。「一行は幾つもの町を通って,エルサレムにいる使徒や長老たちが下した決定を守るように伝えた」。(使徒 16:4)どの会衆も,エルサレムの使徒や長老たちからの指示に協力したようです。その結果,「会衆は信仰を強められ,日々,人数が増えて」いきました。(使徒 16:5)
19,20. 「教え導いている人たち」の指示に協力することが大切なのはどうしてですか。
19 現代でも,「教え導いている人たち」の指示に協力すると,物事がうまくいきます。(ヘブ 13:17)今は変化の多い時代なので,「忠実で思慮深い奴隷」が出す最新の情報に付いていくことが大切です。(マタ 24:45。コリ一 7:29-31)そうすれば,悪い影響から身を守り,エホバに喜ばれる生き方を続けられます。(ヤコ 1:27)
20 クリスチャンの監督たちは,統治体の兄弟たちも含め,完璧ではなく弱さがあります。パウロやバルナバやマルコと同じです。(ロマ 5:12。ヤコ 3:2)それでも,統治体は神の言葉にしっかり従い,1世紀の例に倣っているので,信頼できます。(テモ二 1:13,14)そのおかげで,会衆の兄弟姉妹の信仰は強くなっています。
a 「マルコ いろいろな仕事を任された人」という囲みを参照。
b 「テモテ 『一生懸命良い知らせを広め』た人」という囲みを参照。
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「マケドニアへ渡ってきて……ください」神の王国について徹底的に教える
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16章
「マケドニアへ渡ってきて……ください」
必要とされる所に喜んで出掛け,前向きな気持ちで迫害に耐えると,うれしい経験ができる
1-3. (ア)パウロの一行はどのように聖なる力に導かれましたか。(イ)これから何を見ていきますか。
マケドニアの町フィリピから,女性たちが出ていきます。少し歩くと,ガンギテスという細い川に着きます。いつものように川岸に座り,イスラエルの神に祈ります。エホバは天からその様子を見ています。(代二 16:9。詩 65:2)
2 そこから800㌔以上東では,男性たちがガラテア南部の町ルステラを出ていきます。数日後,西に延びるローマの街道に着きます。アジア州の人口が多い地域につながる舗装された道です。パウロ,シラス,テモテの3人は,その道を通ってエフェソスなどの町に行こうと考えています。そこの人たちにキリストについて伝えたいと思っています。ところが,旅を始めようとすると,聖なる力によって止められます。どう止められたかは聖書に書かれていませんが,いずれにしてもアジア州での伝道を禁じられました。どうしてでしょうか。イエスには考えがありました。聖なる力によってパウロたちを小アジアの先に導こうとしていました。エーゲ海を越えて,ガンギテスという小川の岸辺にまで行かせたいと思っていたのです。
3 イエスがパウロたちをどのようにマケドニアに導いたかを調べると,大切なことを学べます。では,49年ごろに始まったパウロの2度目の宣教旅行の様子を見てみましょう。
「神が私たちを招いた」(使徒 16:6-15)
4,5. (ア)ビチニアの近くで,パウロたちにどんなことがありましたか。(イ)パウロたちはどうすることにしましたか。それでどうなりましたか。
4 アジアでの伝道を禁じられたパウロたちは,北に向かうことにし,ビチニアの町々で伝道しようと考えます。そこへ行くために,フリギアとガラテアの人口が少ない地域を通り,舗装されていない小道を何日も歩いたかもしれません。しかし,ビチニアに近づくと,イエスが再び聖なる力によってパウロたちを止めます。(使徒 16:6,7)パウロたちは戸惑ったはずです。何について伝道するか,どのように伝道するかは分かっています。でも,どこで伝道したらよいか分かりません。アジアへの扉をたたきましたが,駄目でした。ビチニアへの扉をたたきましたが,それも駄目でした。それでも,パウロは諦めません。開く扉が見つかるまでたたき続けるつもりです。どうしたでしょうか。パウロたちは一見合理的とは思えないルートを選びます。西に進路を変えて550㌔歩き,次から次へと町を通り過ぎていきます。そしてトロアスの港に着きます。マケドニアへの船が出ている港です。(使徒 16:8)そこでパウロは3つ目の扉をたたきます。扉はついに大きく開きます。
5 トロアスでパウロの一行に加わったルカは,こう書いています。「パウロは夜に幻を見た。マケドニアの男性が立っていて,『マケドニアへ渡ってきて私たちを助けてください』と頼むのだった。パウロがその幻を見てからすぐ,私たちは,彼らに良い知らせを広めるために神が私たちを招いたのだと結論して,マケドニアへ行こうとした」。a (使徒 16:9,10)ついに,どこで伝道したらよいかが分かりました。パウロは,途中で諦めなくて本当によかったと思ったことでしょう。4人はすぐに出発し,船でマケドニアに向かいます。
「それで,私たちはトロアスから船に乗っ[た]」。使徒 16:11
6,7. (ア)パウロの旅からどんなことを学べますか。(イ)パウロが経験したことから,私たちもどんなことを期待できますか。
6 ここから何を学べるでしょうか。注目したいポイントがあります。聖なる力の働き掛けがあったのは,パウロがアジアに向けて出発した後でした。イエスの考えが分かったのも,パウロがビチニアの近くに行った後でした。イエスがマケドニアに行くよう導いたのも,パウロがトロアスに着いた後でした。会衆のリーダー,イエスは,現代でも私たちを同じように導きます。(コロ 1:18)開拓者になりたい,伝道者が多く必要とされている地域で奉仕したいと願っている人もいます。でも,願っているだけでは目標は達成できません。行動を起こした後に,イエスが聖なる力によって導いてくれます。これは車の運転に似ています。運転手は行きたい方向に車を運転できますが,車が動いていなければ右にも左にも曲がれません。同じように,私たちが動いていなければ,つまり目標に向かって行動していなければ,イエスは私たちを導けません。
7 行動してもなかなか目標が実現しないとしたら,どうでしょうか。聖なる力に導かれていないと考えて,諦めた方がよいのでしょうか。いいえ,諦めてはいけません。パウロも,何度も壁にぶつかりました。でも,開く扉を探し続け,ついに見つけました。私たちも「活動への大きな扉」を探し続けましょう。そうすれば,パウロのようにきっと見つけられます。(コリ一 16:9)
8. (ア)フィリピはどんな町でしたか。(イ)パウロが「祈りの場所」で伝道したことにより,どんなうれしいことがありましたか。
8 マケドニア州に着いたパウロたちはフィリピに向かいます。フィリピの人たちは,ローマ市民であることを誇りに思っていました。フィリピは退役したローマ兵が住むイタリア風の町で,まるで小さなローマでした。パウロたちは,町の外を流れる細い川のそばに「祈りの場所」がありそうだと考えます。b 安息日にそこに行き,神に祈るために集まっている女性たちを見つけます。そこに座って話し掛けます。聞いていた人の中に「ルデアという女性」がいて,「エホバは彼女の心を大きく開」きました。ルデアはパウロたちの話を聞いてとても感動し,ルデアも家の人たちもバプテスマを受けました。その後ルデアは,パウロたちを家に招いて泊めてあげました。c (使徒 16:13-15)
9. パウロに倣っているどんな人たちがいますか。どんな良い経験をしていますか。
9 ルデアがバプテスマを受けて,パウロたちはどんなにかうれしかったことでしょう。「マケドニアへ渡ってきて……ください」という呼び掛けに応じて本当によかった,と思ったはずです。信仰のあつい女性たちの祈りに答えるために,エホバが自分たちを遣わしてくれたのです。現代でも,たくさんの兄弟姉妹が,伝道者が多く必要とされている地域に引っ越しています。若い人もいれば,年配の人もいます。独身の人もいれば,結婚している人もいます。そうやって引っ越すには,もちろん苦労が伴います。でも,ルデアのように聖書を学ぼうとする人に出会えると,苦労などなかったかのようにうれしい気持ちになります。あなたも「渡って」いけますか。きっと素晴らしい経験ができます。中央アメリカの国に移住した20代のアーロンは,こう言っています。「外国で奉仕するようになって,クリスチャンとして成長できました。エホバとの絆が強くなりました。ここでの伝道は最高です。8件の聖書レッスンをしています」。アーロン以外にも,同じような経験をしている人がたくさんいます。
あなたも「マケドニアへ渡って」いけますか。
「群衆は2人に対していきり立った」(使徒 16:16-24)
10. パウロたちは,邪悪な天使たちが起こしたどんな出来事に巻き込まれましたか。
10 サタンは激怒していたでしょう。邪魔者のクリスチャンがこれまでいなかった地域で,良い知らせが広まり始めていたからです。そのため,邪悪な天使たちがある出来事を起こし,パウロたちが巻き込まれます。祈りの場所に通っていたパウロたちはある日,邪悪な天使に取りつかれた召し使いの女性に付きまとわれます。主人たちはこの召し使いに運勢占いをさせて金もうけをしていました。女性はこう叫び続けます。「この人たちは至高の神の奴隷で,救いの道を広めています」。邪悪な天使は,占いをする女性にそう叫ばせて,パウロの教えも彼女の占いと特に変わりがないと人々に思わせたかったのかもしれません。これにより,周りの人たちはクリスチャンたちの話に興味を持たなくなったかもしれません。そこでパウロは,女性から邪悪な天使を追い出して,叫ぶのをやめさせました。(使徒 16:16-18)
11. パウロが女性から邪悪な天使を追い出した後,どんなことがありましたか。
11 召し使いの女性の主人たちは金もうけの手段を失い,激しく怒ります。パウロとシラスを捕まえて,広場まで引きずっていきます。行政官(ローマを代表する役人)たちが裁判をする場所です。主人たちは,裁判官たちの愛国心と優越感をくすぐる訴えをします。「このユダヤ人たちは,私たちローマ人には受け入れられない習慣を教えて,騒動を起こしている」というような訴えです。するとすぐに,「[広場にいた]群衆は2人[パウロとシラス]に対していきり立」ち,行政官たちは2人を「棒で打ちたたくようにと命令し」ます。その後,2人は牢屋まで引きずっていかれます。牢番は,傷を負った2人を奥の牢屋に入れ,足かせをはめます。(使徒 16:19-24)牢番が戸を閉めると,監房は真っ暗になり,お互いの顔も見えません。でも,エホバは見ていました。(詩 139:12)
12. (ア)キリストの弟子たちは迫害されたとき,どう考えますか。どうしてですか。(イ)サタンはどんな手を使って反対をあおりますか。
12 イエスは弟子たちに,「人々[は]あなたたちをも迫害します」と言っていました。(ヨハ 15:20)パウロたちはマケドニアに来た時,迫害を覚悟していたはずです。迫害に遭ったとき,エホバから見放されていると考えるのではなく,怒り狂ったサタンから攻撃を受けていると考えました。現代でも,サタンにいいように使われている人たちは,フィリピの人たちと同じような手を使います。学校や職場で私たちについて事実ではないことを言って,反感をあおります。国によっては,宗教家たちが裁判でエホバの証人を訴えて,こういうようなことを言います。「このエホバの証人たちは,代々信仰を守ってきた私たちには受け入れられない習慣を教えて,騒動を起こしている」。エホバの証人が捕まり,打ちたたかれて刑務所に入れられている国もあります。でも,エホバは見ています。(ペテ一 3:12)
「すぐにバプテスマを受けた」(使徒 16:25-34)
13. どんなことがあって,牢番は「救われるには何をしなければなりませんか」と尋ねましたか。
13 波乱の一日を終え,パウロとシラスの気持ちはまだ高ぶっています。でも,真夜中になる頃にはいくらか落ち着き,「祈ったり歌で神を賛美したりして」いました。すると突然,地震が起き,監房が揺れます。目を覚ました牢番は,戸が開いていることに気付き,囚人たちが逃げてしまったと思い込みます。責任を問われて処刑されると思った牢番は,「剣を抜いて自殺しようとし」ます。しかしパウロが叫びます。「やめなさい。皆ここにいます!」取り乱した牢番は尋ねます。「先生方,救われるには何をしなければなりませんか」。パウロとシラスには救えません。救えるのはイエスだけです。それでパウロたちはこう答えました。「主イエスを信じなさい。そうすれば救われます」。(使徒 16:25-31)
14. (ア)パウロとシラスは牢番にどんなことをしてあげましたか。(イ)前向きな気持ちで迫害に耐えた2人に,どんなうれしいことが待っていましたか。
14 「何をしなければなりませんか」と聞いた牢番は,本当に知りたくてそう尋ねたのでしょうか。パウロは牢番の誠実さを感じ取りました。牢番は異国人で,聖書の知識がありませんでした。クリスチャンになるには,基本的な教えを学び,信じなければいけません。それでパウロとシラスは時間を取って,「牢番……にエホバの言葉を語」りました。熱中して教えるあまり傷の痛みも忘れてしまっていたかもしれません。でも,牢番は2人の背中の深い傷に気付き,手当てしてあげます。その後,牢番と家の人たちは「すぐにバプテスマを受け」ました。前向きな気持ちで迫害に耐えた2人に,こんなにもうれしいことが待っていました。(使徒 16:32-34)
15. (ア)多くのエホバの証人はどのようにパウロとシラスに倣っていますか。(イ)会衆の区域の人を繰り返し訪問することが大切なのはどうしてですか。
15 現代でも,パウロとシラスのようにしている兄弟たちがいます。信仰を貫いたために刑務所に入れられた多くのエホバの証人が,そこで良い知らせを伝え,聞いた人たちがクリスチャンになっています。例えば,活動が禁止されていたある国では,刑務所で聖書を学んだ人がエホバの証人全体の40%を占めていた時期があります。(イザ 54:17)ほかにも注目したいポイントがあります。牢番が学ぶ姿勢を示したのは,地震があった後でした。同じように,これまでは良い知らせに関心がなかった人も,生活を揺るがすようなショッキングな事が起きた後,学ぼうとすることがあります。家の人が関心を持った時にいつでも聖書を学べるよう,会衆の区域の人を繰り返し訪ねるのはとても大切なことです。
「今,ひそかに出そうというのですか」(使徒 16:35-40)
16. パウロとシラスが打ちたたかれた翌日,どのように形勢が逆転しましたか。
16 棒で打ちたたかれた日の翌朝,行政官たちはパウロとシラスの釈放を命じます。でもパウロはこう口を挟みます。「あの人たちはローマ市民である私たちを,有罪の宣告もせずに人前で打ちたたき,牢屋に入れました。それを今,ひそかに出そうというのですか。それはなりません! 彼らが出向いてきて,私たちを連れ出すべきです」。行政官たちはパウロたちがローマ市民であることを知って,「恐ろしく」なります。2人の権利を侵害してしまっていたからです。d 形勢逆転です。パウロとシラスは人前で打ちたたかれました。今度は,行政官たちが人前で謝罪しなければいけません。行政官たちは,フィリピから去るようにと2人に懇願します。2人はそれに応じますが,その前にまず,新しくクリスチャンになった人たちを訪ね,励ますことにします。その後,町を出ていきました。
17. 新しい弟子たちは,パウロとシラスの手本からどんな大事なことを学んだはずですか。
17 パウロとシラスは,自分たちがローマ市民であることを早めに伝えていれば,打ちたたかれることはなかったかもしれません。(使徒 22:25,26)でもそうすると,フィリピの弟子たちはどう感じたでしょうか。2人がキリストのために苦しまなくて済むよう市民権を利用した,という印象を持ったかもしれません。フィリピのローマ市民ではない弟子たちは,ローマ法で守られてはいません。2人が早めに市民権を行使したら,そういう弟子たちは,2人の信仰を手本にしにくく感じたかもしれません。パウロたちは自ら罰に耐えることで,新しいクリスチャンたちに大事なことを教えました。キリストの後に従う人たちは迫害に遭っても信仰を貫ける,ということです。さらに,その後パウロとシラスは市民権を行使し,行政官たちが違法行為を公に認めざるを得ないようにしました。そうすることで,この先クリスチャンたちはひどい扱いを受けにくくなり,法的に守られやすくなったかもしれません。
18. (ア)現代の監督たちはどのようにパウロに倣いますか。(イ)エホバの証人は,「良い知らせを……広める法的権利を得るため」にどんなことをしますか。
18 現代の監督たちも,自ら手本になって教えます。兄弟姉妹にこうしてほしいと思うことがあれば,自分もそれを実践します。さらに,パウロに倣って,いつどのように法的手段を取るかを慎重に判断します。必要であれば,法的な保護を受けるために裁判所に訴えます。国際裁判所に訴えることもあります。目的は,世の中を変えることではありません。パウロが10年ほど後にフィリピの会衆に書いた通り,「良い知らせを擁護し,その知らせを広める法的権利を得るため」に,そうします。(フィリ 1:7)もちろん,裁判の結果がどうであろうと,パウロたちのように,聖なる力が導いてくれる場所で「良い知らせを広め」続けます。(使徒 16:10)
a 「ルカ 『使徒の活動』を書いた人」という囲みを参照。
b フィリピには退役軍人が多く住んでいたため,ユダヤ人は町の中に会堂を設けることを禁じられていたのかもしれません。あるいは,この町ではユダヤ人の男性が10人(会堂の設立に必要な最低人数)に満たなかったのかもしれません。
c 「ルデア 紫布を売る人」という囲みを参照。
d ローマ法によれば,市民には常に正当な裁判を受ける権利があり,有罪の宣告もせずに市民を人前で処罰するようなことをしてはなりませんでした。
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