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  • 50年前の世界はどうなっていたか
    目ざめよ! 1995 | 9月8日
    • 50年前の世界はどうなっていたか

      あなたは,1945年当時の世界の様子を覚えておられる年齢ですか。当時の世界は,1939年,英国とフランスがナチスのポーランド侵攻を理由にドイツに宣戦布告をして始まった第二次世界大戦からようやく立ち直ろうとしていたさなかでした。あなたが若くてそのことを覚えておられないとすれば,1950年に勃発した朝鮮戦争を覚えておられるでしょうか。あるいは,1950年代から1975年まで続いたベトナム戦争はどうですか。1990年にイラクが引き起こしたクウェートでの戦争はどうでしょうか。

      第二次世界大戦後の歴史を振り返るとき,無数の人々に窮状や苦難をもたらし,そのほかにも数え切れない人命を奪ったおびただしい数の戦争のことがいやおうなく思い起こされるというのは,極めて異常な事態だと思われませんか。第二次世界大戦は当時の人々にどんな遺産を残したのでしょうか。

      第二次世界大戦が及ぼした影響

      第二次世界大戦では約5,000万人が命を落とし,1945年の時点で多数の難民がヨーロッパ中をさまよっていました。爆撃を受けて荒れ果てた故郷の都市や町へ戻り,めちゃめちゃになった自分たちの生活を建て直そうとしていたのです。とりわけロシアやドイツでは,侵攻軍にレイプされた幾十万もの婦人や少女が,その精神的衝撃から立ち直ろうとしていました。ヨーロッパではほとんどどこでも配給制度が敷かれていました。食糧や衣料はほんのわずかしかなかったのです。何十万もの復員兵は職を探し回り,何百万もの未亡人や孤児は,夫や親の死を嘆いていました。

      ユダヤ人は依然として,幾百万もの仲間のユダヤ人と,続く世代を生み出す可能性をぬぐい去ったホロコースト(大虐殺)という現実を受け止める努力をしていました。数え切れないほどの人々 ― アメリカ,英国,フランス,ドイツ,ロシア,その他さまざまな国の人々 ― がその戦争で命を落としました。世界強国とその支配者たちの政治的および商業的利益を増進するために,潜在していた巨大な遺伝子プールが失われました。

      多くの国では第二次世界大戦で受けた打撃が大きかったため,経済の回復を最優先させなければなりませんでした。戦後数年たっても,ヨーロッパの各地で食糧不足が続いていました。第二次世界大戦中,スペインは公式には中立の立場をとっていたものの,内戦(1936-1939年)と通商停止が大きな影響を与えていたため,1952年6月までは依然として食糧配給帳が用いられていました。

      極東に目を向けると,ビルマ,中国,フィリピンをはじめ,東洋の国々の人々の脳裏には,日本人による残虐行為の記憶が依然として焼きついていました。戦勝国である米国も,軍の人員を約30万人失いました。そのうちの半数近くは太平洋の交戦地帯で失われました。日本の一般市民は,貧困や結核に苦しみ,食糧配給の長い列に並ばなければなりませんでした。

      行動をかきたてるチャーチルの呼びかけ

      ヨーロッパにおける第二次世界大戦終結に際して,英国の首相ウィンストン・チャーチルは,1945年5月13日,同国の人々に向けて行なった勝利の演説の中で次のように述べました。「骨折りと苦悩はすべて終わった,と今宵諸君に告げられたらよいのだが。……私は諸君にこう警告せねばならない。まだなすべきことは多い。ゆえに,心身両面でのさらなる刻苦精励と,崇高なる大義のためのさらなる犠牲を目指して準備せねばならないのである」。先見の明があったチャーチルは,共産主義の広がりを予期して,「ヨーロッパ大陸において我々は,『自由』,『民主主義』,『解放』という言葉の意味が,これまで理解してきたとおりの真の意味からそれていないことを今後確かめねばならなくなる」と語りました。同首相は次いで,意欲をかきたてる呼びかけを行ない,「ひるまず,揺るがず,不屈の精神をもって前進せよ。すべての務めが成し終えられ,全世界が安全で清い所となるまで」と述べました。―下線は本誌。

      紛争と死の半世紀

      国連事務総長ブトロス・ブトロス・ガリは,1992年に行なった演説の中で,「1945年に国際連合が創設されて以来,世界中で100件を超える大きな紛争があり,約2,000万人の死者を出した」ことを認めました。ワールド・ウォッチ誌は死者数をさらに引き上げ,「今世紀は史上で最も不穏な一世紀である」と述べました。同誌は,ある研究者の次のような言葉を引用しました。「今世紀に起きた戦争で死亡した人の数は,これまでの人類史における死者の総数を上回る。そのうちの約2,300万人は,第二次世界大戦以降に死亡している」。

      しかし,ワシントン・ポスト紙は,さらに別の推定値を挙げ,「第二次世界大戦終結以来,世界中で160ほどの戦争が起こり,700万人を超える戦死者,および3,000万人に及ぶ一般市民の死者を出す結果となった。それに加え,負傷者,レイプされた人々,難民にさせられた人々もいる」と伝えています。この数には,過去50年間に世界中で起きた暴力犯罪によるおびただしい数の犠牲者は含まれていないのです。

      1995年の今でも,激しい憎しみにかき立てられた致命的な紛争が行なわれています。アフリカ,バルカン諸国,中東,ロシアにおけるこうした紛争では,死を覚悟で入隊した兵士だけでなく,多数の一般市民までが無差別に殺害されます。

      では,1945年から50年を経た今日,『全世界は安全で清い所である』と言えるでしょうか。地球を住まいに適した安全な場所にする点で,人間はどんな進歩を遂げてきましたか。50年の間にわたしたちは何を学びましたか。人間は本当に重要なこと ― 価値規準,道徳,倫理 ― に関して進歩を遂げてきたでしょうか。続く二つの記事は,これらの質問に答えています。4番目の記事は,この地球村に住むわたしたちすべての将来の見込みについて論じています。

      [4ページの囲み記事]

      第二次世界大戦後の時代の思い出

      現在60代の英国人の男性は次のように回顧しています。「1940年代後半と言えば,家にテレビはなく,想像力をかき立てるものはおもにラジオでした。まだ学校に通っていたころで,頭の中は読書や宿題のことでいっぱいでした。それでも月に一度くらいは映画館に出かけましたし,土曜日になると自転車を数キロこいで,好きなサッカーチームを見に行ったものです。車や電話の買える家庭は比較的わずかでした。我が家には独立したバスルームはありませんでしたが,英国ではそういう家が普通でした。我が家のトイレは外にあり,湯船は台所にあって,そこがバスルームを兼ねていました。戦時中は,卵やじゃがいもを粉末にしたものや粉ミルクなど,乾燥食品でできた食事で何とか食いつなぎました。みかんやバナナといった果物はたまにしか手に入らないぜいたく品で,地元の八百屋に果物が入荷するや,だれもかれもが我先に配給の列に殺到しました。多くの女性は,軍需工場で働かなければなりませんでした。当時の人々は,前途に控えていた信じられないほどの変化,つまり,テレビ,ビデオ,コンピューター,電脳空間,ファックス通信,宇宙飛行,遺伝子工学の世界のことなど,予想だにしていませんでした」。

  • 1945年から1995年 ― 進歩の50年?
    目ざめよ! 1995 | 9月8日
    • 1945年から1995年 ― 進歩の50年?

      過去50年の間に,あなたの生活の質は幾らかでも向上しましたか。a 医学について考えてみてください。英国,カナダ,キューバ,スウェーデンといった国々では,福祉国家制度が導入され,その公営医療制度のおかげで,患者の経済状態のいかんを問わず,だれでも医師や病院の世話を受けられることが保障されるようになりました。

      発展途上国の中にも,国民の健康の基準を向上させることのできた国々があります。アメリカ医師会ジャーナル誌は,「第三世界の一部の厚生省が,国費によって賄える範囲内で国民全体に基本的な医療を施すことに成功を収めており,……中国,コスタリカ,スリランカ,インドのケララ州では,乳幼児の死亡率の減少という点で驚くべき進歩が見られた」ことを認めています。

      物質面での進歩

      1945年当時の経済状況と比べると,1995年の多くの人の暮らしは物質面で,はるかに豊かになっています。50年前にはぜいたく品を買えなかった多くの人も,今では車,テレビ,ビデオデッキ,CDプレーヤー,冷蔵庫,携帯電話その他の現代的な製品を持っています。あなたも,そうした物質的恩恵にあずかっている大勢の人の一人かもしれません。

      「私生活の歴史」という双書の著者たちが述べるとおり,「第二次世界大戦後の30年間,フランス[をはじめ西ヨーロッパ諸国]は着実な経済発展を経験しており,その発展は階級差別を排除することはなかったものの,社会のあらゆる階層に新たな繁栄をもたらし,“そこそこ”の家や“人並み”の車,テレビ,それに福祉国家や現代医学から受ける付加的な恩恵のおかげで,だれもが,地上のパラダイスとはいかないまでも,少なくともまずまずの暮らしを楽しむことができた」のです。

      しかし,ここで疑問となるのは,物質的により豊かになれば,人々の暮らしはあらゆる面でより良いものになるかということです。物質的利益を蓄積すれば,生活は自動的により良いもの,より安全なものになるでしょうか。一部の人の持ち物が増えても,多くの貧しい人には物がありません。そうした状況では窃盗,強盗,詐欺などのほか,さらに暴力的な犯罪が誘発されやすくなります。財産を持たない人々の中には,どんな手段を講じてでも,物持ちになろうと決意している人もいます。例えばニューヨーク市では,年間10万台余りの車が盗まれます。物質的利益は,より安全な生活を保障するものではありません。

      他の分野でも進歩向上が見られました。もっともそれは,ある人々が望んでいたほどではありませんでした。

      女性 ― 当時と今

      第二次世界大戦を契機として,一部の女性が新たな役割を担うようになりました。夫は稼ぎ手,多くの女性は母親で主婦というかつての状況が,第二次世界大戦によって一変してしまいました。男性が戦争に召集されたため,妻たちは期せずして,軍需工場で働いたり,男性が行なっていた他の仕事に就いたりするようになったのです。もっと最近では,軍務に就いて人殺しを学ぶようになった女性もいます。数え切れないほどの女性が賃金労働者となり,経済的な独立の伴う,今までとは違った生活様式をかいま見ることになりました。それが小さな発端となって,今日の“解放された女性”への道が少しずつ開かれるようになりました。それでも,ある女性たちに言わせれば,多くの国々で平等を勝ち得る闘いに勝利を収めるのは,まだまだ先のことです。これらの女性は,多くの職種において女性の昇進を妨げる,“ガラスの天井(グラスシーリング)”があると言います。

      集団移住によって引き起こされる問題

      過去50年に起こった別の大きな変化は,都会でのより良い暮らしを求めて,村での生活や農業を捨てるということです。この夢がかなった人もいますが,他の多くの人にはどんな結果が及んだでしょうか。

      毎年,何百万もの人が,すでに人口の過密な都市へ移住します。それらの都市では住宅が不足しており,住むにはかなりの費用がかかります。その結果の一つとして,病気,犯罪,政情不安の温床となる貧民街が生まれます。ボール紙や木や波形鉄板のくずを集めて作ったこれら貧民街の手製の住まいは,スペイン語でバラカスもしくはチャボラスと呼ばれるあばら屋で,生活苦と闘い,貧困にあえぐ,世の下層階級の住みかです。これらの貧民街 ― ポルトガル語でファベラ,トルコ語でゲジェコンドゥ(「一晩で建てられた」の意)― は,アフリカ,インド,南アメリカ,また他のどんな場所においても,無視できない現実なのです。

      アフリカのある国々の現在と将来

      アフリカについては何と言えるでしょうか。アメリカ医師会ジャーナル誌に寄稿した二人の医師は,その記事に「窮地に立たされるアフリカ ― まだ絶望的ではないが不穏な将来」という見出しを付しました。二人は,アフリカのほとんどの国の政治および社会情勢が,一触即発の様相を呈していることに気づいていました。この医師たちはこう書いています。「サハラ以南のアフリカ[45か国を包含する地域]にとって,過去20年は悲惨な年月だった。同地域は飢きん,干ばつ,内戦,政治家の汚職,エイズ,人口の激増,食糧生産高の低下,自然環境の悪化……などに悩まされてきた。……専門家は口をそろえて,少なくとも短期間は,経済の衰退,貧困,苦難が深刻化することは必至であろうと予言している」。その記事は,世界で最も貧しい40か国のうちの32か国が,サハラ以南のアフリカにあると伝えています。

      さて,道徳に関する最近の世界の風潮についてはどうでしょうか。この点に関する世界の“進歩”については,次の記事の中で手短に考慮されます。

      [脚注]

      a 誌面が限られているため,この記事は過去半世紀における進歩や変化のあらゆる面を網羅してはいません。

  • 今日の世界はどうか
    目ざめよ! 1995 | 9月8日
    • 今日の世界はどうか

      あなたが1945年当時のことを覚えておられる年齢なら,規範や道徳の面で何らかの変化を目にしてこられましたか。より大きな自由を提供するはずの“新しい道徳”を受け入れた人はおびただしい数に上ります。しかし,その代償はどんなものだったでしょうか。

      第二次世界大戦中,米国海軍にいた70歳の男性は,次のように述べました。「1940年代には,今よりもずっと強い信頼関係があって,隣近所は互いに助け合っていました。カリフォルニア州の私たちが住んでいた場所では,戸締まりの必要もなかったほどです。街で犯罪に遭うこともないし,凶器を使った学校での暴力沙汰も全くありませんでした。あの時期以降,信頼関係は事実上消え去ってしまいました」。あなたが住んでおられる所では,現在どんな状況が見られますか。ニューヨーク市では,14歳を過ぎたティーンエージャーの半数が武器を携帯していると報告されています。ナイフ,カッターナイフ,銃などが持ち込まれないようにするため,金属探知機を使用している学校もあります。米国では毎年,十代の少女約100万人が妊娠し,そのうちの3人に一人が中絶をしています。まだ若い十代の少女がもう母親なのです。まさに,赤ちゃんを持った子供です。

      ゲイとレスビアンを擁護する強力な圧力団体が自分たちの生き方を広める点で非常な効果を上げてきたため,そうした生き方を大目に見たり,受け入れたりする人はますます多くなりました。しかし,他の人々と同様,こうした人たちもエイズなどの性感染症が原因で病気や死を経験するという,高い代償を払わされました。エイズという流行病は,同性愛者ではない人々や麻薬を乱用する人々の間にも広まり,アフリカ,ヨーロッパ,北アメリカを薙ぎ倒しました。その勢いはとどまるところを知りません。

      「私生活の歴史」は,「暴力,アルコール依存症,麻薬。これらは,スウェーデン社会における逸脱した行動の主要な形態である」と述べています。この記述は,ほとんどの西洋諸国に当てはまります。宗教的な価値規準が崩壊したため,道徳の退廃は僧職者の多くにも洪水のように押し寄せています。

      麻薬の乱用 ― 当時と今

      1940年代には,西洋諸国の一般の人々の間では麻薬の乱用などほとんど知られていませんでした。確かに,人々はモルヒネ,アヘン,コカインなどについて耳にしたことはありましたが,これらの麻薬を乱用していたのは比較的少数のグループにすぎませんでした。今日知られているような,麻薬密売組織の大物,あるいは麻薬の売人などはいませんでしたし,街角に麻薬密売者がいることもありませんでした。では,1995年の状況はどうでしょうか。読者の多くは,身の回りで生じている事柄を通してその答えをご存じでしょう。世界の主要都市の多くでは,麻薬のからんだ殺人事件が日常茶飯事となりつつあります。政治家や裁判官は麻薬密売組織の大物実力者に操られています。これら大物は,自分たちに協力しない,影響力のあるどんな人物をも抹殺するよう命じ,実行させることができるからです。このことは,近年のコロンビアの歴史および同国の麻薬とのかかわりによって実証されています。

      米国だけでも,毎年約4万人が麻薬禍によって命を失います。確かに,こういう問題は1945年には存在しませんでした。ですから,政府の麻薬乱用撲滅運動が何十年も繰り広げられた後,元ニューヨーク市警察本部長パトリック・マーフィーが,「麻薬との戦いは終わった ― 麻薬の勝利!」という見出しの記事をワシントン・ポスト紙に寄稿したのも驚くには当たりません。彼は,「麻薬取り引きは……今や[米国]でも指折りの花形産業に数えられており,今年は1,500億㌦(約13兆5,000億円)にも上る収益を上げている」と述べています。問題は極めて大きく,解決策はないように思われます。麻薬の乱用という悪徳についている顧客は数を増しており,他の多くの悪徳と同様,その顧客は中毒にかかっています。それは,幾つかの国の経済を支える産業なのです。

      経済学の教授ジョン・K・ガルブレースは,自著「充足の文化」の中で,「麻薬売買,無差別銃撃,その他の犯罪,および家族の混乱また崩壊 ― それらすべてが現在,日常生活を形造っている」と記しました。ガルブレースは,アメリカの多くの主要都市に存在する少数者社会が,「今では恐怖と絶望の中心になっている」と述べ,「今後もっと激しい憤りや社会不安が生じることを予期すべきだ」と記しています。なぜでしょうか。ガルブレースが言うには,金持ちはますます金持ちになり,増える一方の貧しい人々,つまり「下層階級」はますます貧しくなるからです。

      国際犯罪の魔の手

      現在,犯罪組織が全世界にその影響を及ぼしている証拠は増大しています。これまで長年の間,組織犯罪とその“犯罪結社”は,イタリアおよび米国とつながりがありました。しかし現在,国連事務総長ブトロス・ブトロス・ガリは,「国際規模の組織犯罪は……国境をあざ笑い,全世界的勢力となっている」と警告しています。ガリは,「暗黒の勢力はヨーロッパ,アジア,アフリカ,アメリカで活動しており,いかなる社会もそれを免れられない」と述べ,さらに「国境なき犯罪は……国際的民主主義体制の土台そのものを揺るがす。[それは]実業界の趨勢を毒し,政治指導者を腐敗させ,人権を侵害する」と語りました。

      地図が変わる

      チェコ共和国の大統領バツラフ・ハベルは,米国のフィラデルフィアで行なった演説の中で,20世紀後半の二大政変とは,植民地制度の崩壊と,東ヨーロッパにおける共産主義の崩壊である,と述べました。1945年当時の地図と1995年の地図を比較してみると,世界中,特にアフリカ,アジア,ヨーロッパで大変動の起きたことが容易に明らかになります。

      この二つの年の政情を比較してみてください。共産主義はこの50年の間に全盛を極めたものの,結局は,以前共産主義体制を敷いていた大多数の国々において,名誉を剥奪されました。それらの国々では,一党独裁主義の支配が何らかの形の“民主主義”へと道を譲りました。しかし多くの人は,自分たちの社会が市場経済へと移行したことに伴う弊害に苦しんでいます。失業の風が吹きまくり,多くの場合,貨幣の値打ちはありません。1989年当時,ロシアの1ルーブルは1.61米㌦の価値がありましたが,この記事を書いている時点では,1㌦に相当する額を支払うために,何と4,300ルーブル余りが必要です。

      モダン・マチュリティー誌は,現在約4,000万人のロシア人が貧乏線以下で暮らしている,と伝えています。あるロシア人女性は,「うかうか死ぬこともできません。葬式を出す費用がないんです」と言いました。安い葬式でさえ,約40万ルーブルもかかるのです。埋葬されなかった遺体が,死体公示所にどんどん山積みにされています。同時に,米国で3,600万人余りのアメリカ人が貧乏線以下で生活していることにも注意を向けなければなりません。

      ガーディアン・ウィークリー紙の経済部記者ウィル・ハットンは,東ヨーロッパの諸問題について書き,「不安の時代へ突入」という主題でこう述べました。「共産主義の崩壊,およびロシアの領土が18世紀以後では最小になったことの意味については,いまだにほとんど理解されていない」。旧ソ連に代わって,25ほどの新たな国家が誕生しました。ハットンは,「共産主義の崩壊は歓喜をもって迎えられたが,その歓喜は,今や将来についての深まりつつある不安へと変化している。……経済的および政治的混乱へと転落する可能性がますます高まっており,西ヨーロッパ諸国も影響を受けずにいることは期待できない」と述べています。

      前途がそれほど悲観的なものであれば,ハットンが次のように記事を結んでいるのも,少しも不思議ではありません。「世界は,単に民主主義や自由市場に訴えるよりも,さらに価値ある指針を必要としている。しかし,それは手の届くところにはない」。それでは,諸国家はどこに解決策を求めることができるでしょうか。続く記事にその答えが載せられています。

      [10ページの囲み記事/図版]

      1945年以降の国連

      1945年に設立された国連が,これほど多くの戦争を阻止できなかったのはなぜでしょうか。事務総長ブトロス・ブトロス・ガリは,「平和のための協議事項」と題する演説の中で次のように述べました。「国際連合は安全保障理事会で発動された拒否権 ― 279回に及ぶ ― のゆえに,これらの危機の多くに対処する点で無力であった。これら拒否権の行使は,[資本主義政権と共産主義政権との間の冷戦]の期間に分裂が存在したことを如実に物語っていた」。

      では,国連は国家間の平和維持を図ってこなかったということですか。その努力は払われました。しかし,高い代償が支払われました。「1945年から1987年までの間に13の平和維持活動が組織され,それ以降,さらに13の活動が組織された。1992年1月までに,軍,警察,民間を合わせて推定52万8,000人の人員が国際連合の旗のもとで働き,そのうちの,43か国を代表する800人余りが同連合の務めを遂行して死亡した。1992年までにこれらの活動に充てられた費用は,総額約83億㌦である」。

      [クレジット]

      戦車とミサイル: U.S. Armyの写真

      [11ページの囲み記事]

      テレビは人を教育するか,あるいは堕落させるか

      1945年当時,テレビのある家庭は比較的わずかでした。そのころのテレビはまだ出始めで,単純な白黒画面でした。今のテレビは,先進国のほとんどすべての家庭に,また発展途上国のどんな村にも大っぴらにやって来る泥棒であり侵入者です。教育的で建設的な番組も少数あるとはいえ,大多数の番組は,道徳的価値観を弱め,大衆の一般的な最低規準に迎合するものです。映画ビデオの人気が高いので,ポルノ作品や成人向け映画が売り込まれていることも,品位や健全な道徳規準の低下を速める別の要素と言えます。

      [9ページの図版]

      1945年以来,ベトナム戦争のような数々の戦争で2,000万余りの人命が犠牲となった

  • 1995年 ― 将来はどうなるか
    目ざめよ! 1995 | 9月8日
    • 1995年 ― 将来はどうなるか

      「世界は,単に民主主義や自由市場に訴えるよりも,さらに価値ある指針を必要としている。しかし,それは手の届くところにはない」― ウィル・ハットン,ガーディアン・ウィークリー紙。

      人間の見地からすると,この記述は真実のように思えるかもしれません。世界は,平和,安全,公正,公平,優れた政府などの方角を指し示す,信頼できる羅針盤を持ち合わせていないようです。人間は,君主制から共和制,独裁制から民主制に至るまで,ほとんどすべての統治機構を試みてきましたが,いまだに人間の世界は統治不能に近い状態にあります。では,人間はどの道に向かったらよいのでしょうか。

      それには,選択が必要なようです。一つは,暴力行為,犯罪,腐敗,不正,宗教的および政治的偽善,国家主義的な憎しみ,貧しい人々の搾取などがさらに激しくなる世界へと下って行く道です。この道は,一部の人の言う,無政府状態に至る道です。

      もう一つは,より良い世界へと上ってゆく,険しい,自己犠牲の求められる道です。その世界は,聖書に記されている,政府に関して神が意図された解決策に基づくものです。それは険しい道です。なぜなら,道徳上の勇気,個人としての犠牲,霊的な人生観,目的を持たれる神に対する信仰が求められるからです。しかも,その道を首尾よく上るために,人間は謙虚になること,つまり,創造者の前で謙虚になることも必要です。義の支配を求めて,神に頼らなければなりません。クリスチャンの使徒ペテロは次のように助言しました。「それゆえ,神の力強いみ手のもとにあって謙遜な者となりなさい。そうすれば,神はしかるべき時にあなた方を高めてくださるのです。同時に,自分の思い煩いをすべて神にゆだねなさい。神はあなた方を顧みてくださるからです」― ペテロ第一 5:6,7。啓示 4:11。

      憎しみのスイッチを入れるのはだれか

      人間は,自力でこの世界を良い方向へ恒久的に変化させることはできません。利己的で邪悪な分子はあまりにも多く,あまりにも強力だからです。預言者エレミヤが,「エホバよ,地の人の道はその人に属していないことをわたしはよく知っています。自分の歩みを導くことさえ,歩んでいるその人に属しているのではありません」と記したのは当を得たことです。(エレミヤ 10:23)人間は,神の助けなしに,自分の歩みを首尾よく導いて人間家族全体の益を図ることはできません。なぜでしょうか。なぜなら,わたしたちの受け継いだ不完全さに加え,あの目に見えない敵,サタンが常に存在しているからです。サタンには,いつでもスイッチを入れる用意があり,ルワンダで行なったように,人々が好きなだけ流血紛争に携われるようにするのです。―創世記 8:21。マタイ 4:1-11。

      サタンは,人々の心と思いの中の偏見,憎しみ,殺人のスイッチを入れるため,ある国家,ある部族,ある宗教が優越するという概念を諸国家に吹き込んできました。こういう根深い憎しみを植えつける教育は,憎しみに凝り固まった親により,また多くの場合,長年の伝統によって,幼い時から行なわれます。次いでこの伝統は,学校制度や宗教的な教えによって強化されます。こうして,幾百万という人々が,憎しみや偏見を心に抱きつつ成長します。人々は,良心のかけらもない政治的,宗教的な民衆扇動者の指令で仲間を攻撃するよう,幼い時から慣らされ,洗脳されています。不合理なスローガンを乱発し,政治家の発言などをニュース番組で短く引用すれば,スイッチを入れ,野火を起こすことができます。それが最後には“民族浄化”,すなわち大虐殺という結果になるのです。

      イスラエルの軍事史家マーティン・ファン・クレフェルドは,近い将来に待ち受けていると思われる事柄を示し,「戦争の移り変わり」の中で,「現代の見地から見ると,武力紛争を引き起こす動機の中で,宗教的……熱狂が果たす役割は」,欧米世界では,「過去300年間」のどの時代よりも「大きくなる可能性が高いように思われる」と書きました。ですから宗教は,平和を促進したり,人間の霊性を高めたりする力になるどころか,憎しみや紛争や殺人を引き起こすという,歴史的に旧態依然として変わらない役割を果たしています。

      異なった将来が約束されている

      人類が公正な新しい世で生きる資格にかなう者となるためには,イザヤの次の預言の成就にあずからなければなりません。「神[エホバ]はご自分の道についてわたしたちに教え諭してくださる。わたしたちはその道筋を歩もう。……そして,神は諸国民の中で必ず裁きを行ない,多くの民に関して事を正される。そして,彼らはその剣をすきの刃に,その槍を刈り込みばさみに打ち変えなければならなくなる。国民は国民に向かって剣を上げず,彼らはもはや戦いを学ばない」― イザヤ 2:3,4。

      今日,全世界でこの壮大な預言を心に留めているのはだれでしょうか。ルワンダで,違う部族の仲間の信者を殺害するよりも,自らの命を落としたのはだれですか。ヒトラーの軍で兵役に就くよりも,ナチスの強制収容所で死んでいったのはだれですか。戦いを学ぶよりも,多くの国々で刑務所生活を送ったのはだれでしょうか。それは,「あなたの子らは皆エホバに教えられる者となり,あなたの子らの平安は豊かであろう」というイザヤ 54章13節の成就にあずかってきた人たちです。

      全世界のエホバの証人には今,その平安があります。証人たちは,み言葉聖書から得られる,エホバの教えを受け入れたからです。そして,キリスト・イエスの教えと模範に従っています。そのイエスは何と言われたでしょうか。「わたしはあなた方に新しいおきてを与えます。それは,あなた方が互いに愛し合うことです。つまり,わたしがあなた方を愛したとおりに,あなた方も互いを愛することです。あなた方の間に愛があれば,それによってすべての人は,あなた方がわたしの弟子であることを知るのです」。(ヨハネ 13:34,35)エホバの証人は,北アイルランドで以前はカトリック教徒,プロテスタント信者でしたが,今では一致して共に活動するほどに,この愛を実践しています。イスラエルやレバノンをはじめいろいろな国や地域で,宗教上のかつての敵同士が,今ではクリスチャンとして協力し合っています。証人たちはもはや戦いを学びません。世界中のすべての人がイエスの言葉を心に留め,それらを生活に当てはめるなら,どんなにか大きな違いが生まれることでしょう。

      エホバの証人は,神の約束された新しい世,つまり,天の政府が支配する世界が間もなく訪れることを信じています。そうした積極的な希望を抱けるどんな根拠があるのでしょうか。

      神の約束された決定的な処置

      神は,ご自分のみ言葉聖書の中で,従順な人間すべてのための義にかなった支配を約束されました。神は,ご自分の預言者ダニエルを通して,この現在の体制の終わりの時に,永続する義にかなった政府を立てる,と預言なさいました。「それらの王たちの日に,天の神は決して滅びることのないひとつの王国を立てられます。そして,その王国はほかのどんな民にも渡されることはありません。それはこれらのすべての王国を打ち砕いて終わらせ,それ自体は定めのない時に至るまで続きます」。(ダニエル 2:44)これは,キリストがご自分の有名な祈りの中で信者たちに求めるよう教えられた王国の支配と同じものです。「天におられるわたしたちの父よ,あなたのお名前が神聖なものとされますように。あなたの王国が来ますように。あなたのご意志が天におけると同じように,地上においてもなされますように」― マタイ 6:9,10。

      わたしたちはその祈りの中で,義にかなった支配に関するご自分の約束を果たされるよう,神に求めているのです。そしてわたしたちは,神は偽ることができないということを知っています。パウロは,『偽ることのできない神が,久しく続いた時代の前に約束された永遠の命』について語りました。(テトス 1:2。ヘブライ 6:17,18)神はどんな約束をされたのでしょうか。使徒ペテロはこう答えています。「神の約束によってわたしたちの待ち望んでいる新しい天と新しい地があります。そこには義が宿ります」― ペテロ第二 3:13。イザヤ 65:17。啓示 21:1-4。

      この地上で人々が義にかなった支配を完全に享受できるようになるには,その前に大規模な浄化が行なわれなければなりません。聖書の預言はそろって,サタンとその邪悪な勢力を世界から一掃するというこの処置が間もなくとられることを示しています。(マタイ 24章; ルカ 21章; マルコ 13章をご覧ください。)この最終的な清めの処置は,ハルマゲドンの戦い,すなわち「全能者なる神の大いなる日の戦争」と呼ばれています。―啓示 16:14,16。

      多くの人は,西暦2000年を重要な年と考えるかもしれません。しかし実際にはそうではありません。結局のところ,その年はキリスト教世界でしか意味をなしません。ほかの文化にはそれぞれ独自の年代の数え方があるからです。真に重要なのは,今は,神とみ言葉に心を向け,「神の善にして受け入れられる完全なご意志」が何かを自分で確かめる時であるということです。(ローマ 12:1,2)大切なのは,今はあなたにとって選択の時だということです。それは,神に祝福される将来に向かって歩むか,それともサタンの世が提供する挫折の道を下りつづけるかの選択です。わたしたちは,あなたが神の道を選ばれるよう強くお勧めします。命を選んでください!―申命記 30:15,16。

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      「神の約束によってわたしたちの待ち望んでいる新しい天と新しい地があります」― ペテロ第二 3:13

      [13ページの図版]

      神の王国の支配のもとで,はじめて諸国民は本当に剣をすきの刃に打ち変えることができる

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