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アブラハム聖書に対する洞察,第1巻
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カナンでのとう留生活 今や75歳になったアブラハムは,自分の家の者たちと共にハランからカナンの地への移動を開始しました。そのカナンの地でアブラハムは生涯の残りの100年間,周期的に移住する外人居留者として天幕生活を送りました。(創 12:4)アブラハムは父テラの死後,西暦前1943年にハランを出てユーフラテス川を渡りました。それは後にニサンという呼び名で知られるようになった月の14日であったと思われます。(創 11:32; 出 12:40-43,七十訳)エホバとアブラハムとの契約が有効になったのはこの時であり,イスラエルとの律法契約が立てられるまでの430年という一時的居留期間もその時に始まりました。―出 12:40-42; ガラ 3:17。
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宿営,陣営聖書に対する洞察,第1巻
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イスラエルの宿営 イスラエルのエジプト脱出は騒々しい混乱のうちにではなく,『エホバの軍』にふさわしい秩序立った「戦闘隊形」を成して行なわれました。(出 12:41; 13:18; 6:26)その種の戦闘隊形は,前衛もしくは先遣隊,本隊,後衛,および両翼の五つの部分から成る軍隊のそれに似たものであったかもしれません。当時,イスラエル人はまだ族長制のもとにあったので,部族や家族に行進の順番を割り当てる際にもそれが反映されたことでしょう。そのような習慣によれば,家族に付属する僕や家来,その他の者たちは,家の者の一部とみなされたので,エジプトを去った「入り混じった大集団」は恐らく様々な部族や氏族や家族に混じって入っていたと思われます。―出 12:38; 民 11:4; 申 29:11。
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年代計算,年代学,年代記述聖書に対する洞察,第2巻
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聖書の記録に関しては,ある年を起点としてそれ以後のすべての出来事の年代を定める紀元の取り決めで,はっきり説明されているものは何もありません。このこと自体は,過去の出来事を時の流れの中で明確に,また正確に位置づけるための時間表がなかったことを意味するものではありません。聖書の筆者たちが特定の出来事について述べる際,数世紀もの期間が関係している精確な数字を挙げることができた事実は,イスラエル民族やその先祖の間に年代計算に関する関心が欠けていなかったことを実証しています。例えば,モーセは,「四百三十年[これはアブラハムがカナンの地へ向かう途中,ユーフラテス川を渡った時から数えた年数で,川を渡ったこの年に神がアブラハムとの契約を発効させたものと思われる]の終わったちょうどその日に,エホバの全軍はエジプトの地を出たのであった」と書くことができました。(出 12:41。「出エジプト(エジプト脱出)」を参照。ガラ 3:16,17と比較。)また,列王第一 6章1節の記録も,ソロモン王がエルサレムで神殿の建造を開始したのは「イスラエルの子らがエジプトの地を出てから四百八十年目」だったと述べています。とはいえ,アブラハム契約が発効したことも,エジプト脱出という事件も,他の出来事を記録するための紀元の起点として一般に用いられるようにはなりませんでした。
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年代計算,年代学,年代記述聖書に対する洞察,第2巻
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西暦前1943年からエジプト脱出まで 出エジプト記 12章40,41節はこう述べています。「エジプトに住んだイスラエルの子らのその居住の期間は四百三十年であった。そして,四百三十年の終わったちょうどその日に,エホバの全軍はエジプトの地を出たのであった」。大抵の翻訳のこの40節は,430年がすべてエジプトに住んだ期間に当てはまるような表現で訳されていますが,元のヘブライ語は上記のように翻訳することもできます。その上,パウロはガラテア 3章16,17節で,430年の期間をアブラハム契約が有効にされた時から律法契約が設けられた時までの期間と結び付けています。ですから,アブラハム契約は,アブラハムが神の約束に基づいて行動し,カナンに向かう途中,西暦前1943年にユーフラテス川を渡り,神に導かれてその「国」に実際に入った時に有効なものとされたようです。(創 12:1; 15:18-21)この出来事から正確に430年たった後,西暦前1513年にアブラハムの子孫はエジプトから救い出され,その同じ年に彼らと律法契約が結ばれました。出エジプト記 12章40,41節で指摘されている期間については,昔から,この国民の先祖がカナンに移動した時から起算されると解されていました。その証拠に,ギリシャ語セプトゥアギンタ訳では,「しかし,イスラエルの子らがエジプトの地とカナンの地に住んだその居住[の期間]は四百三十年[であった]」と訳されています。
アブラハムがカナンに移った時からヤコブがエジプトに下った時までの期間は215年でした。この数字は次の諸事実から得られます。アブラハムがハランを去った時からイサクが生まれた時までは25年(創 12:4; 21:5),それからヤコブが生まれた時までは60年(創 25:26),さらにエジプトに入った時のヤコブは130歳(創 47:9)だったので,合計215年(西暦前1943年から1728年まで)となります。これは,その後,イスラエル人がエジプトで過ごした期間がやはり215年間(西暦前1728年から1513年まで)だったことを意味しています。イスラエル人の人口は215年間で60万人の「強健な男子」を含むほど十分増えたと考えられますが,この点は「出エジプト(エジプト脱出)」の見出しのもとで証明されています。―出 12:37。
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契約聖書に対する洞察,第1巻
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アブラハムとの契約 アブラハムとの契約はアブラム(アブラハム)がカナンに向かう途中,ユーフラテス川を渡った時に発効したようです。それから430年後に律法契約が結ばれました。(ガラ 3:17)エホバはアブラハムがメソポタミアのカルデア人のウルに住んでいた時,彼に話しかけ,ご自分が示す国に行くよう告げておられました。(使徒 7:2,3; 創 11:31; 12:1-3)出エジプト記 12章40,41節(七十訳)によれば,エジプトで奴隷の身となっていたイスラエルはエジプトとカナンの地に住んだ430年の期間の終わりに,「ちょうどその日に」出国しました。彼らがエジプトから救出された日は西暦前1513年のニサン14日,過ぎ越しの日でした。(出 12:2,6,7)このことはアブラハムがカナンに向かう途中,ユーフラテス川を渡ったのが西暦前1943年のニサン14日であったことを示しているように思われます。そして,アブラハム契約が発効したのはその時であったようです。アブラハムがカナンに入ってシェケムまで進んだ後,神は再びアブラハムに現われ,「あなたの胤にわたしはこの地を与えよう」と述べてその約束の範囲を拡張されました。神はそのようにして,この契約がエデンでの約束と結び付いていることを示し,「胤」が人間としての経路をたどる,つまり人間の家系を通して来ることを啓示されたのです。(創 12:4-7)創世記 13章14-17節,15章18節,17章2-8,19節,22章15-18節に記されているように,ほかにもエホバによってその約束の範囲が広げられたことが後に明らかにされました。
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出エジプト(エジプト脱出)聖書に対する洞察,第1巻
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430年の期間 出エジプト記 12章40,41節の次のような言葉の中に別の計算方法が示されています。「そして,エジプトに住んだイスラエルの子らのその居住の期間は四百三十年であった。そして,四百三十年の終わったちょうどその日に,エホバの全軍はエジプトの地を出たのであった」。出エジプト記 12章40節の脚注は,「住んだ」という表現について,「ヘブライ語でこの動詞は複数形。関係代名詞アシェルに導かれるこの部分は,『居住』にではなく,『イスラエルの子ら』にかかると思われる」と述べています。ギリシャ語セプトゥアギンタ訳は,40節をこう訳しています。「しかし,イスラエルの子らがエジプトの地とカナンの地に住んだその居住[の期間]は四百三十年[であった]」。サマリア五書では,「カナンの地とエジプトの地に……」となっています。これらの訳はいずれも,430年の期間が,エジプトでのイスラエル人の居住期間よりも長い期間であることを示唆しています。
使徒パウロは,この430年の期間(出 12:40の)がアブラハム契約の発効時に始まり,エジプト脱出と共に終わったことを示しています。パウロはこう述べています。「さらに,わたしはこの点を述べます。神によって以前に有効にされていた[アブラハム]契約について言えば,四百三十年後[エジプト脱出と同じ年]に存在するようになった律法は,これを無効にしてその約束を廃棄するのではありません。……ところが神は約束によってそれをアブラハムに親切にお与えになったのです」― ガラ 3:16-18。
では,アブラハム契約が発効してからイスラエル人がエジプトに移るまでの期間はどれほどありましたか。創世記 12章4,5節によれば,アブラハムは75歳の時にハランを去り,カナンに向かう途中でユーフラテス川を渡ったことが分かります。その時,以前にカルデアのウルでアブラハムに対してなされた約束,すなわちアブラハム契約が効力を発しました。さらに,創世記 12章4節,21章5節,25章26節で系図に言及している箇所,および創世記 47章9節でヤコブが述べている事柄からすれば,アブラハム契約が発効した時から,ヤコブが家族と共にエジプトに移った時までに215年経過したことが分かります。これは,イスラエル人がエジプトで実際には215年間(西暦前1728-1513年)住んでいたことを示すものです。この数字は他の年代計算に関する資料とも一致しています。
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