-
聖書の11番目の書 ― 列王記第一『聖書全体は神の霊感を受けたもので,有益です』
-
-
1 (イ)イスラエルの輝かしい繁栄はどのように衰退し,損なわれましたか。(ロ)それにもかかわらず,どうして列王記第一は『霊感を受けたもので,有益』であると言えますか。
ダビデは何度か征服を行なって,イスラエルの領土を天与の境界線まで,つまり北はユーフラテス川から南はエジプトの川まで拡張しました。(サムエル第二 8:3。列王第一 4:21)ダビデが死んで,その子ソロモンが彼に代わって支配するころまでには,「ユダとイスラエルは,おびただしさの点で海辺にある砂粒のように多くて,食べたり飲んだりして,歓んで」いました。(列王第一 4:20)ソロモンは大いなる知恵,すなわち古代ギリシャ人のそれをはるかにしのぐ知恵をもって支配しました。彼はエホバのために壮大な神殿を建てました。しかし,ソロモンでさえ堕落して,偽りの神々を崇拝するようになりました。その死に際して,王国は二つに分裂し,張り合うイスラエルとユダの両王国の歴代の邪悪な王たちは滅びをもたらすことを行ない,サムエルが予告した通り,民に苦難をもたらしました。(サムエル第一 8:10-18)ソロモンの死後,ユダとイスラエルで支配した14人の王たちのうち,列王記第一の書で回顧されている通り,エホバの目に正しいことを首尾よく行なえたのは,ただ二人の王だけでした。では,この記録は『霊感を受けたもので,有益』ですか。まさしくその通りです。というのは,その訓戒,その預言や型,および「聖書全体」の王国という主要な主題とのその関係からも,それが分かるからです。
2 列王記第一および第二の記録はどのようにして二つの巻き物の形を取るようになりましたか。それらはどのようにして編集されましたか。
2 列王記は元々一つの巻き物,つまり一巻でできており,ヘブライ語で「メラキーム」(「王たち」)と呼ばれていました。セプトゥアギンタ訳の翻訳者たちはそれをバシレイオーン,つまり「王国」と呼び,それを初めて便宜上二つの巻き物に分けました。これらの書は後に列王記第三および第四と呼ばれるようになり,この名称は今日でもカトリックの聖書で引き続き用いられています。しかし,これらの書は今では一般に列王記第一および第二として知られています。これらの書は,以前の記録を編集者のための資料として挙げている点で,サムエル記第一および第二とは異なっています。その一人の編集者は,この二つの書の中で,「ユダの王たちの時代の事績の書」に15回,そして「イスラエルの王たちの時代の事績の書」に18回言及し,また「ソロモンの事績の書」にも言及しています。(列王第一 15:7; 14:19; 11:41)これらほかの昔の記録は完全に失われてしまいましたが,霊感を受けて編集された書 ― 列王記第一および第二という有益な記述 ― は残っています。
3 (イ)列王記の書を書いたのは疑いもなくだれでしたか。どうしてそう答えますか。(ロ)それはいつ書き終えられましたか。列王記第一はどんな期間を扱っていますか。
3 列王記の書を書いたのはだれですか。これらの書の中で預言者たち,特にエリヤやエリシャの業が強調されていることは,筆者がエホバの預言者であることを示しています。言葉遣い,文章構成,および文体に見られる類似性は,エレミヤ書と同じ筆者であることを示唆しています。列王記やエレミヤ書にだけ出ていて,聖書のほかの書には出て来ないヘブライ語の言葉や表現は少なくありません。しかし,もしエレミヤが列王記を書いたのなら,どうしてエレミヤのことがその中で述べられていないのでしょうか。そうする必要はありませんでした。なぜなら,彼の業はその名の付されている書の中で扱われていたからです。その上,列王記はエレミヤの評判を高めるためではなく,エホバとその崇拝を大いなるものとするために書き著わされたのです。実際のところ,列王記とエレミヤ書は大半の部分で互いに補い合っており,一方が省いている点を他方が埋め合わせています。その上,例えば列王第二 24章18節から25章30節とエレミヤ 39章1節から10節; 40章7節から41章10節; 52章1節から34節の場合のように,並行記述もあります。ユダヤ人の伝承はエレミヤが列王記第一および第二の筆者であることを確証しています。確かに,筆者はこの両書の編集をエルサレムで開始し,第二の書は西暦前580年ごろにエジプトで書き終えられたようです。というのは,筆者はその記録の結論の箇所でその年の出来事に言及しているからです。(列王第二 25:27)列王記第一は,サムエル記第二の終わりから始めて,エホシャファトが死んだ西暦前911年に至るまでのイスラエルの歴史をたどったものです。―列王第一 22:50。
4 一般の歴史と考古学は,列王記第一をどのように確証していますか。
4 列王記第一はすべての権威者によって受け入れられているので,聖書の正典の中で正当な場所を占めています。その上,列王記第一の中の出来事はエジプトやアッシリアの一般の歴史によっても確証されています。考古学もまた,この書の中の陳述の多くを支持しています。例えば,列王第一 7章45節と46節には,ヒラムがソロモンの神殿のための銅の器具を鋳造したのは,「ヨルダンの地域,スコトとツァレタンの間で」あったと記されています。昔のスコトの遺跡を発掘した考古学者たちは,そこで製錬活動がなされていたことを示す証拠を発見しました。a その上,カルナク(古代テーベ)の神殿の壁の浮き彫りには,列王第一 14章25節と26節で言及されている,エジプト人の王シェションク(シシャク)によるユダ侵攻について誇らしげに述べた言葉が記されています。b
5 霊感を受けたどんな証言が列王記第一の信ぴょう性を証拠立てていますか。
5 聖書の他の筆者たちによる言及と預言の成就は,列王記第一の信ぴょう性を裏付けています。イエスはエリヤやザレパテのやもめにまつわる出来事を歴史的事実として述べられました。(ルカ 4:24-26)イエスはバプテスマを施す人ヨハネについて話し,「彼こそ,『来ることに定められているエリヤ』なのです」と言われました。(マタイ 11:13,14)ここでイエスは,これまた将来の時代について,「見よ,エホバの大いなる,畏怖の念を抱かせる日の来る前に,わたしはあなた方に預言者エリヤを遣わす」と語ったマラキの預言に言及しておられました。(マラキ 4:5)さらにイエスは,ソロモン,それに南の女王に関して列王記第一に記されている事柄に言及することにより,この書の正典性を保証されました。―マタイ 6:29; 12:42。列王第一 10:1-9と比較してください。
列王記第一の内容
6 ソロモンはどんな事情のもとで王位につきますか。彼はどのようにしてその王国で堅く立てられるようになりますか。
6 ソロモンが王となる(1:1-2:46)。列王記第一の記録は,40年にわたる治世の終わりに近づいて,死期の迫ったダビデのことで始まります。その子アドニヤは,軍の長ヨアブと祭司アビヤタルの助けを得て,王権を引き継ぐために陰謀を企てます。預言者ナタンはそのことをダビデに知らせ,その死に際してはソロモンを王とするよう既に指名していたことを遠回しに思い起こさせます。そこで,ダビデは,陰謀を企てる者たちがアドニヤの即位を祝っているにもかかわらず,祭司ザドクを用いてソロモンに油をそそがせてこれを王とします。さて,ダビデはソロモンに,強くあって,男らしくし,その神エホバの道に歩むよう命じます。その後,ダビデは死んで,「ダビデの都市」に葬られます。(2:10)やがて,ソロモンはアビヤタルを追放し,いざこざを起こす人物であるアドニヤとヨアブを処刑します。後に,シムイはその命を容赦するために設けられた憐れみ深い取り決めに対する不敬の態度を示したために処刑されます。今や,王国はソロモンの手に堅く立てられます。
7 エホバはソロモンのどんな祈りに答えられますか。その結果,イスラエルはどうなりますか。
7 ソロモンの賢明な支配(3:1-4:34)。ソロモンはファラオの娘と結婚して,エジプトと姻戚関係を結びます。彼は識別力をもってエホバの民を裁くために,従順な心をエホバに祈り求めます。彼は長寿や富を願い求めなかったので,エホバは彼に識別力のある賢い心と共に富や栄光をも与えることを約束されます。ソロモンはその治世の初めのころ,二人の女がその前に出て,同じ子供をそれぞれ我が子だと主張した時,その知恵を示します。ソロモンは,「生きている子供を二つに断ち切り」,各々の女に半分ずつ与えるよう部下に命じます。(3:25)ここで,本当の母親はその子のために助命を請い,その子を相手の女に与えて欲しいと言います。こうして,ソロモンはその正当な母親がだれかを見分け,母親はその子を取り戻します。神から与えられたソロモンの知恵のゆえに,全イスラエルは繁栄し,幸福で安全な生活を営みます。人々はソロモンの賢い言葉を聞こうとして多くの国々からやって来ます。
8 (イ)ソロモンはどのようにして神殿の建築を行ないますか。その特徴の幾つかを述べなさい。(ロ)さらにどんな建築計画を遂行しますか。
8 ソロモンの神殿(5:1-10:29)。ソロモンはその父ダビデに対するエホバの次のような言葉を思い起こします。「わたしがあなたの代わりにあなたの王座に就かせるあなたの子が,わたしの名のために家を建てるであろう」。(5:5)そこで,ソロモンはそのための準備をします。ティルスの王ヒラムは,レバノンから出る杉やねずの素材を送ったり,熟練した働き人を提供したりして援助します。それらの人たちと,ソロモンが徴用した働き人たちが一緒になって,イスラエル人がエジプトを去ってから480年目,ソロモンの治世の第4年にエホバの家の工事を始めます。(6:1)建築現場では,つちや斧,あるいは他のどんな鉄製の道具も使用されません。というのは,石はみな,組み立てるために神殿の敷地に運ばれる前に,石切り場で用意され,寸法に合わせて整えられたからです。神殿の内部全体は,まず壁は杉で,床はねず材で覆われ,それから金が美しくかぶせられます。ケルブの姿を刻んだ二つの像が油の木で造られます。それらは各々高さが10キュビト(4.5㍍),翼の端から翼の端までがやはり10キュビトあって,一番奥の部屋に置かれます。ほかにも,やしの木の模様や花と共にケルブが神殿の壁に刻まれます。ついに,7年余りにわたる工事の後,壮大な神殿が完成します。ソロモンはその建築計画を続行します。つまり,自分自身のための家,レバノンの森の家,柱の玄関,王座の玄関,およびファラオの娘のための家を建てます。彼はまた,エホバの家の玄関のための2本の大きな銅の柱,中庭のための鋳物の海と銅の運び台,それに銅の水盤と金の器具を造ります。c
9 エホバのどんな顕現やソロモンのささげたどんな祈りが,契約の箱を運び入れた日を特色づけていますか。
9 さて,祭司たちはエホバの契約の箱を運び上って,それを一番奥の部屋,つまり至聖所のケルブの翼の下に置く時が来ます。祭司たちが出て来ると,「エホバの栄光がエホバの家に満ち」て,祭司たちはもはや立って奉仕することができなくなります。(8:11)ソロモンはイスラエルの会衆を祝福し,エホバをほめたたえ,エホバを賛美します。彼はひざをかがめ,そのたなごころを天に伸べて,天の天もエホバを入れることはできないので,まして自分の建てた地上の家など,なおさらであると祈りの中で認めます。彼は,エホバを恐れる人たちがその家に向かって祈るとき,それらすべての人の祈りを聴いてくださるようエホバに祈ります。そうです,遠い国から来る異国の人の祈りをさえ聴いてくださるよう祈ります。「それは,地のすべての民があなたのみ名を知って,あなたの民イスラエルと同じようにあなたを恐れるようにな(る)ためです」― 8:43。
10 エホバはどんな約束と預言的な警告の言葉をもってソロモンの祈りに答えられますか。
10 それに続く14日間の宴の間,ソロモンは牛2万2,000頭と羊12万頭を犠牲としてささげます。エホバは,ソロモンの祈りを聞き届けられたことと,『定めのない時までもその名をそこに』置いて,神殿を神聖なものとされたこととをソロモンにお告げになります。さて,もしソロモンがエホバのみ前に廉直さをもって歩んで行くなら,その王国の王座は存続するでしょう。しかし,もしソロモンとその後の子らがエホバの崇拝を捨てて,ほかの神々に仕えるなら,その時にはエホバはこう言われます。「わたしもまた,彼らに与えた土地の表からイスラエルを断とう。わたしの名のために神聖なものとした家を,わたしはわたしの前から投げ捨てるであろう。イスラエルは確かにすべての民の中で語りぐさとなり,嘲弄されるものとなろう。それにこの家も,廃虚の山となろう」。―9:3,7,8。
11 ソロモンの富と知恵はどれほど大きなものとなりますか。
11 ソロモンは二つの家,つまりエホバの家と王の家を完成させるのに20年を要しました。今や,彼はその領地の至る所に多くの都市を建て,遠い国々と交易を行なうために使う船も建造しはじめます。こうして,シェバの女王はエホバがソロモンに与えられた大いなる知恵について聞き,難問で彼を試そうとしてやって来ます。彼女はソロモンが話すのを聞き,その民の繁栄と幸福な状態を見,「私はその半分も告げられていませんでした」と叫びます。(10:7)エホバは引き続きイスラエルに対して愛を示されるので,ソロモンは「富と知恵とにおいて,地のほかのどんな王よりも偉大」な者となります。―10:23。
12 (イ)ソロモンはどんな点で失敗しますか。どんな反逆の種が現われはじめますか。(ロ)アヒヤはどんなことを預言しますか。
12 ソロモンの不忠実な行ないと死(11:1-43)。ソロモンはエホバの命令に反して,ほかの国々から多くの妻 ― 700人の妻と300人のそばめたち ― をめとります。(申命記 17:17)彼の心は引き離され,ほかの神々に仕えるようになります。エホバは,王国がソロモンの時代ではなく,その息子の時代に彼から裂き取られることをソロモンにお告げになります。けれども,その王国の一部,つまりユダのほかにもう一つの部族がソロモンの子らによって支配されることになります。神は近隣の諸国民の中からソロモンに対する反抗者を起こしはじめられます。エフライムの部族のヤラベアムも王に逆らって身を起こします。預言者アヒヤはヤラベアムがイスラエルの10部族を治める王となることを彼に告げ,ヤラベアムは命を守るためにエジプトに逃げます。ソロモンは40年の治世の後に死に,その子レハベアムが西暦前997年に王となります。
13 レハベアムがその統治をはじめた時,その王国にはどのように分裂が生じますか。ヤラベアムはどのようにしてその王権を確保しようとしますか。
13 王国は分裂する(12:1-14:20)。ヤラベアムはエジプトから戻り,民と共に上って行き,ソロモンが彼らに課したすべての重荷を軽減するようレハベアムに頼みます。レハベアムはイスラエルの長老たちの賢明な助言の代わりに,若者たちの言うことに聞き従い,その苦難を増大させます。イスラエルは反乱を起こし,ヤラベアムを北の10部族の王とします。ただ,ユダとベニヤミンを残すのみとなったレハベアムは,軍勢を集めて反抗者たちと戦おうとしますが,エホバの命令に従って帰って行きます。ヤラベアムはシェケムを自分の首都として築きますが,それでもなお不安に感じます。彼は,民がエホバを崇拝するためにエルサレムに戻って,再びレハベアムのもとに行きはしまいかと恐れます。そうさせないようにするため,彼はダンとベテルにそれぞれ金の子牛を立て,レビ族からではなく,一般の民の間から祭司たちを選んで,崇拝を指導させます。d
14 ヤラベアムの家に対してどんな預言的な警告が知らされますか。どんな逆境が生じるようになりますか。
14 ヤラベアムがベテルに設けられた祭壇で犠牲をささげている時,エホバは一人の預言者を遣わして,偽りの崇拝のためのその祭壇に対して強硬な措置を取る,ヨシヤという名の王をダビデの家系から起こすことを警告されます。その一つの異兆として,祭壇はその時,その場で二つに裂けます。その預言者自身は,任務を帯びている間は食べたり飲んだりしてはならないというエホバの指図に従わなかったため,1頭のライオンによって殺されます。今や,逆境がヤラベアムの家に災いをもたらしはじめます。エホバからの裁きとしてその子供は死に,神の預言者アヒヤは,イスラエルで偽りの神々を立てたその大いなる罪のゆえにヤラベアムの家が完全に断たれることを予告します。ヤラベアムは22年間統治した後に死に,その子ナダブが彼に代わって王となります。
15 ユダでは次の3代の王の治世中,どんな出来事が生じますか。
15 ユダで: レハベアム,アビヤム,およびアサ(14:21-15:24)。一方,レハベアムのもとでユダもまた偶像崇拝を行なって,エホバの目に悪いことをします。そして,エジプトの王が侵入し,神殿の宝物の多くを運び去って行きます。レハベアムは17年間支配した後,その子アビヤムが王となります。彼もまたエホバに対して罪をおかし続け,3年間治めた後に死にます。今度は,その子アサが支配し,それまでとは対照的に,全き心をもってエホバに仕え,その国から糞像を除き去ります。イスラエルとユダの間には絶えず戦いが行なわれます。アサはシリアから助けを得,イスラエルは撤退を余儀なくされます。アサは41年間支配し,その子エホシャファトが跡を継ぎます。
16 今や,イスラエルではどんな不穏な出来事が生じますか。それはどうしてですか。
16 イスラエルで: ナダブ,バアシャ,エラ,ジムリ,ティブニ,オムリ,およびアハブ(15:25-16:34)。何という邪悪なやからなのでしょう。バアシャはわずか2年間治めたばかりのナダブを暗殺し,ヤラベアムの全家を完全に根絶やしにします。彼は偽りの崇拝を続け,ユダとの戦いを続けます。エホバはヤラベアムの家に対して行なった通りに,バアシャの家を完全に一掃することを予告されます。バアシャが24年間治めた後,その子エラが跡を継ぎますが,彼は2年後,その僕ジムリによって暗殺されます。ジムリは王座を奪うとすぐ,バアシャの家のすべての者を討ち倒します。人々はそれを聞くと,軍の長オムリを王として,ジムリの首都ティルツァに攻め上ります。ジムリは見込みがなくなったのを見ると,我が身の上に王の家を焼いて,自分も死にます。今度はティブニが対抗する王として治めようとしますが,しばらくして,オムリの追随者たちに圧倒され,殺されます。
17 (イ)オムリの治世はどんなことで知られていますか。(ロ)アハブの治世中に,真の崇拝はどうして衰微の極に達しますか。
17 オムリはサマリアの山を買い,そこにサマリア市を建てます。彼はすべてヤラベアムの道を歩み続け,偶像崇拝を行なってエホバを怒らせます。実際,オムリは彼より前のほかのすべての者に勝って悪い王です。12年治めた後にオムリは死に,その子アハブが王となります。アハブはシドンの王の娘イゼベルと結婚し,サマリアにバアルのための祭壇を立てます。アハブの邪悪さは彼より前のすべての王の邪悪さをしのいでいます。ベテル人ヒエルがその長子と末の子を失ってエリコの都市を再建したのはこのころのことです。真の崇拝は衰微の極に達します。
18 エリヤはイスラエルでどんな宣告を述べて,預言の業を始めますか。彼はイスラエルが問題に陥っている真の理由を,どのように正確に指摘しますか。
18 イスラエルにおけるエリヤの預言の業(17:1-22:40)。突然,エホバからの一人の使者が登場します。それはティシュベ人エリヤです。e アハブ王に対する次のようなエリヤの宣告の冒頭の言葉はまさに驚くべきものです。「わたしがまさしくその前に立っているイスラエルの神エホバは生きておられます。わたしの言葉の命令によらなければ,ここ何年間かは露も雨もないでしょう!」(17:1)同様に突如として,エリヤはエホバの命令に従ってヨルダンの東の渓谷に退きます。干ばつがイスラエルに生じますが,渡りがらすがエリヤのもとに食物を運びます。その渓谷の水流が干上がると,エホバはその預言者をシドンのザレパテへ派遣して,そこに住まわせます。あるやもめがエリヤに親切を示したので,エホバはそのやもめのわずかな麦粉と油の蓄えを奇跡的に保持させて,彼女とその息子は飢え死にを免れます。後日,その息子は病気になって死にますが,エリヤが嘆願すると,エホバはその子供の命を回復させます。次いで,干ばつの3年目に,エホバは再びエリヤをアハブのもとに派遣されます。アハブは,イスラエルをのけ者にならせているとしてエリヤを非難しますが,バアルに従っているがゆえに「あなたとあなたの父の家がそうしたのです」と,エリヤは大胆にアハブに告げます。―18:18。
19 神性に関する争点はどのように明示され,エホバの至上権はどのように立証されますか。
19 エリヤはバアルの預言者たちを皆カルメル山に集めるようアハブに求めます。もはや二つの意見の間でふらつくことはできなくなります。争点が明示されます。すなわち,エホバかバアルかという問題です! 民すべての前で,バアルの450人の祭司たちは1頭の雄牛を整え,それを祭壇の薪の上に置き,火を下らせてその供え物を焼き尽くすよう祈ります。彼らは朝から昼まで,エリヤの嘲弄の言葉を浴びながら,むなしくバアルを呼びます。彼らは絶叫したり,身を傷つけたりしますが,何の答えもありません! 次に,ただ一人の預言者エリヤがエホバの名によって一つの祭壇を築き,犠牲をささげるための薪と雄牛を整えます。それから,民にその供え物と薪に3度水を掛けてびしょぬれにさせます。それから,彼はエホバにこう祈ります。「私に答えてください。エホバよ。私に答えてください。この民が,エホバなるあなたこそまことの神であ(る)ことを知るようにしてください」。すると,天から火がきらめき,その供え物と薪と祭壇の石と塵と水とを焼き尽くします。民は皆それを見ると,直ちに顔を伏せてひれ伏し,「エホバこそまことの神です! エホバこそまことの神です!」と言います。(18:37,39)バアルの預言者たちは死刑に値します! エリヤは自らその殺害を引き受けるので,だれひとり逃れることはありません。それから,エホバは雨を与えて,イスラエルの干ばつを終わらせてくださいます。
20 (イ)エホバはホレブでどのようにしてエリヤに現われますか。どんな指図と慰めをお与えになりますか。(ロ)アハブはどんな罪をおかし,どんな犯罪を行ないますか。
20 バアルが辱められたという知らせがイゼベルのもとに届くと,彼女はエリヤを殺させようとします。恐れたエリヤは,従者と共に荒野に逃げ,エホバはこれをホレブに導かれます。エホバはそこで,風や震動や火の中で華々しい仕方ではなく,「穏やかな低い声」をもってエリヤに現われます。(19:11,12)エホバはハザエルをシリアの王,エヒウをイスラエルの王,またエリシャをエリヤの代わりの預言者として,それぞれ油そそぐよう彼に命じます。エホバはイスラエルの7,000人の者がバアルに身をかがめなかったという知らせをもってエリヤを慰めます。それから,エリヤは早速自分の職服をエリシャの上に投げかけて,彼に油をそそぎます。さて,アハブはシリア人に対して二つの勝利を得ますが,彼らの王を殺さずにこれと契約を結んだことでエホバから叱責されます。それから,ナボテの事件が起こります。アハブはナボテのぶどう園を自分のものにしたいと考えます。イゼベルは偽りの証人によってナボテを罪に陥れ,処刑させるので,アハブはそのぶどう園を奪うことができるようになります。何という許し難い犯罪なのでしょう。
21 (イ)エリヤはアハブとその家に,またイゼベルにどんな最期を宣告しますか。(ロ)アハブの死に際してどんな預言が成就しますか。
21 再びエリヤが現われます。彼はアハブに,ナボテが死んだ所で,犬がアハブの血をもなめ尽くすことになり,その家はヤラベアムやバアシャの家のように完全に滅ぼし絶やされることを告げます。犬はエズレルの小地所でイゼベルを食らい尽くすことになります。こう記されています。「例外なく,だれひとりとして,身を売ってエホバの目に悪いことを行なったアハブのような者はいなかった。その妻イゼベルが彼を唆したのである」。(21:25)しかし,アハブはエリヤの言葉を聞くと,へりくだったので,その災厄は彼の時代ではなく,その息子の時代に臨むことになるとエホバは言われます。さて,アハブはシリアに対する戦いでユダの王エホシャファトと協力し,エホバの預言者ミカヤの助言に反して戦いに出かけて行きます。アハブは戦いの際に受けた傷がもとで死にます。その戦車がサマリアの池の傍らで洗われるとき,エリヤが預言した通り,犬がその血をなめ尽くします。やがて,その子アハジヤが彼に代わってイスラエルの王となります。
22 ユダのエホシャファトとイスラエルのアハジヤの治世はそれぞれ何によって特色づけられていますか。
22 ユダではエホシャファトが治める(22:41-53)。アハブに同伴してシリアとの戦いに加わったエホシャファトは,その父アサのようにエホバに対して忠実な人ですが,偽りの崇拝の行なわれる高き所を完全に一掃するまでには至りません。彼は25年間支配した後に死に,その子エホラムが王となります。北のイスラエルでは,アハジヤがその父の歩みに従って,バアル崇拝を行ない,エホバを怒らせます。
なぜ有益か
23 列王記第一は祈りに関してどんな保証と励ましを与えるものとなりますか。
23 列王記第一に収められている神聖な教えからは,大きな益が得られるはずです。まず,この書の中で再三にわたり前面に出てくる祈りという事柄を考えてみてください。ソロモンは,イスラエルで王権を執るという途方もなく大きな特権に直面した時,子供のような仕方で謙遜にエホバに祈りました。彼はただ分別と従順な心だけを求めましたが,エホバはあふれるほどの知恵に加えて,富や栄光をもお与えになりました。(3:7-9,12-14)今日,わたしたちも,エホバへの奉仕において知恵と導きを求めるわたしたちの謙遜な祈りが聞き届けられずに終わることはないという確信を持てますように!(ヤコブ 1:5)ソロモンが神殿の献納式でしたように,わたしたちもエホバの善良さのすべてに対する深い感謝の念を抱いて,常に心から熱烈な祈りをささげる者でありますように!(列王第一 8:22-53)エリヤが試練の時や悪霊を崇拝する一国民と相対した時に行なった祈りのように,わたしたちの祈りも常に,エホバに対する絶対的な信頼と確信のしるしを帯びたものでありますように! エホバは祈りのうちにご自分を求める人たちのために,すばらしい仕方で必要なものを備えてくださいます。―列王第一 17:20-22; 18:36-40。ヨハネ第一 5:14。
24 列王記第一の中には警告となるどんな実例が載せられていますか。特に,監督たちはなぜ注意すべきでしょうか。
24 さらに,エホバの前にへりくだることをしなかった人たちの例はわたしたちにとって警告となるはずです。『神はそのようなごう慢な者に』,何と激しく『敵対なさる』のでしょう。(ペテロ第一 5:5)その中には,エホバの神権的な任命を無視することができると考えたアドニヤ(列王第一 1:5; 2:24,25),境界線を越えて出ても再び戻ることができると考えたシムイ(2:37,41-46),自分の不従順のために反抗する者たちをエホバから招くことになった晩年のソロモン(11:9-14,23-26),偽りの宗教を行なって悲惨な結果に陥ったイスラエルの王たち(13:33,34; 14:7-11; 16:1-4)などがいます。その上,アハブの王座の陰の権力者であった邪悪なまでに貪欲なイゼベルがいますが,その悪名高い実例は1,000年も後に,テアテラの会衆に対する警告の中で次のように用いられました。「とはいえ,わたしにはあなたを責めるべきことがある。あなたがかの女イゼベルを容認していることである。彼女は自ら女預言者と称し,わたしの奴隷たちを教えて惑わし,淫行を犯させ,偶像に犠牲としてささげられた物を食べさせる」。(啓示 2:20)監督たちは会衆を清い状態に保ち,イゼベルのような影響を一切受けないようにしなければなりません。―使徒 20:28-30と比較してください。
25 列王記第一のどんな預言は驚くべき成就を見てきましたか。今日,これらの預言を覚えておけば,わたしたちはどのように助けられますか。
25 エホバの預言の力は,列王記第一の中で述べられている数多くの預言の成就によって明らかに示されています。例えば,ヨシヤがベテルにあるヤラベアムの祭壇を引き裂く者になることを300年以上も前に予測した,驚くべき言葉があります。ヨシヤはその通りにしたのです。(列王第一 13:1-3。列王第二 23:15)しかし,大変際立っているのは,ソロモンによって建てられたエホバの家に関する預言です。堕落して,偽りの神々を支持するならば,エホバは土地の表からイスラエルを断ち,その名のために神聖なものとした家をご自分の前から投げ捨てる結果になることを,エホバはソロモンにお告げになりました。(列王第一 9:7,8)歴代第二 36章17節から21節には,この預言がどのようにして完全に的中したかが記されています。その上,イエスは,ヘロデ大王によってその同じ場所に建てられた後代の神殿が全く同じ理由で同様の非運に遭うことを示されました。(ルカ 21:6)これもまた何と正確に的中したのでしょう。わたしたちはこれらの大惨事とその理由を覚えて,常にまことの神の道を歩むことの大切さを思い起こすべきでしょう。
26 列王記第一は,エホバの神殿やその王国のことを前もって描いた,人を鼓舞するどんな光景を示していますか。
26 シェバの女王は遠い国からやって来て,エホバの壮大な家を含め,ソロモンの知恵やその民の繁栄やその王国の栄華に接して驚嘆しました。しかし,ソロモンでさえエホバに向かって,「天も,いや,天の天も,あなたをお入れすることはできません。まして,私の建てたこの家など,なおさらのことです!」と告白しました。(列王第一 8:27; 10:4-9)ところが,何世紀も後に,キリスト・イエスは特にエホバの偉大な霊的な神殿における真の崇拝の回復と関係のある,霊的な築く業を遂行するために来られました。(ヘブライ 8:1-5; 9:2-10,23)ソロモンよりも大いなるものであられるこの方にとって,「わたしもまた……あなたの王国の王座をイスラエルの上に定めのない時までも本当に確立するであろう」と言われたエホバの約束は引き続き当てはまります。(列王第一 9:5。マタイ 1:1,6,7,16; 12:42。ルカ 1:32)列王記第一は,エホバの霊的な神殿の栄光や,キリスト・イエスによるエホバの王国の賢明な支配のもとで生活するようになる人々すべての繁栄と歓喜と喜ばしい幸福を前もって描いた,人を鼓舞する光景を示してくれます。真の崇拝や,胤による王国に関するエホバのすばらしい備えの重要性に対するわたしたちの認識は,引き続き深められてゆくことでしょう。
[脚注]
a 「国際標準聖書百科事典」(英文),第4巻,1988年,G・W・ブロミリ編,648ページ。
b 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,149,952ページ。
c 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,750,751ページ。
d 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,947,948ページ。
e 「聖書に対する洞察」(英文),第1巻,949,950ページ。
-
-
聖書の12番目の書 ― 列王記第二『聖書全体は神の霊感を受けたもので,有益です』
-
-
聖書の12番目の書 ― 列王記第二
筆者: エレミヤ
書かれた場所: エルサレムおよびエジプト
書き終えられた年代: 西暦前580年
扱われている期間: 西暦前920年ごろ-580年
1 列王記第二では,どんな歴史が述べられていますか。それは何を立証するものですか。
列王記第二の書は,引き続きイスラエルとユダ王国の不穏な進路をたどって行きます。エリシャはエリヤのマントを取り上げ,エリヤの霊の二つの分に恵まれて,エリヤの八つの奇跡とは対照的に16の奇跡を行ないました。彼は背教したイスラエルの滅びを預言しつづけました。そのイスラエルでは,ただエヒウだけがエホバに対する熱心さを短いせん光のように示したにすぎません。イスラエルの歴代の王はますます邪悪の深みに沈んで行き,最後にはこの北の王国は西暦前740年にアッシリアの前に崩壊してしまいました。南のユダ王国では,少数の傑出した王たち,とりわけエホシャファト,エホアシュ,ヒゼキヤ,およびヨシヤが,しばらくの間,背教の風潮を押し戻しましたが,ついにネブカドネザルが西暦前607年にエルサレムとその神殿,およびユダの地を荒廃させることによってエホバの裁きを執行しました。こうして,エホバの預言は成就し,そのみ言葉の正しさはまさしく立証されました。
2 列王記第二の筆者や正典性については何と言えるでしょうか。どんな期間のことが扱われていますか。
2 列王記第二は元々,列王記第一と同一の巻き物の一部だったので,列王記第一の正典性や信ぴょう性を示す証拠の場合と同様,エレミヤが筆者であることに関してすでに述べられた事柄が,ここでも同じように当てはまります。この書は西暦前580年に書き終えられており,西暦前920年ごろにイスラエルのアハジヤの治世をもって始まり,西暦前580年におけるエホヤキンの流刑の37年目で終わる期間のことが取り扱われています。―1:1; 25:27。
3 どんな驚くべき考古学上の発見が列王記第二を支持していますか。
3 列王記第二の記録を裏付ける考古学上の諸発見はこの書の真正さをさらに裏付ける証拠を提供しています。例えば,有名なモアブ碑石がありますが,その碑文はモアブとイスラエルの間の戦争についてモアブ人の王メシャの見解を示しています。(3:4,5)また,今ではロンドンの大英博物館に展示されている,アッシリアのシャルマネセル3世の黒い石灰岩のオベリスクがありますが,それにはイスラエルの王エヒウのことが名を挙げて指摘されています。アッシリアの王ティグラト・ピレセル3世(プル)の碑文もあって,それには,メナヘム,アハズ,およびペカハを含め,イスラエルとユダの数人の王たちの名が挙げられています。―15:19,20; 16:5-8。a
4 列王記第二が霊感を受けた聖書の肝要な一部分であることを何が証明していますか。
4 この書の信ぴょう性を明らかに示す証拠は,エホバご自身の民に対するその裁きの執行をこの書が極めて正直に述べている点に見られます。まずイスラエル王国が,次いでユダ王国が崩壊し,廃虚と化してゆくにつれ,申命記 28章15節から29章28節にあるエホバの預言的な裁きの威力のほどを痛感させられます。それら両王国の滅亡に際し,「エホバの怒りがこの地に対して燃え,この書に記される呪いをそっくりそこに臨ませられた」のです。(申命記 29:27。列王第二 17:18; 25:1,9-11)列王記第二に記録されているほかの出来事は,聖書のほかの箇所でも説明されています。ルカ 4章24節から27節で,イエスはエリヤとザレパテのやもめに言及した後,エリシャとナアマンについて語って,ご自分がなぜ郷里で預言者として受け入れられないのかを示しておられます。このように,列王記第一および第二は共に聖書の肝要な一部であることが分かります。
列王記第二の内容
5 エリヤはアハジヤにどんな戒めと宣告を伝えますか。それはなぜですか。
5 イスラエルの王アハジヤ(1:1-18)。アハブのこの息子は自分の家で転落して,病気になります。そこで彼はエクロンの神バアル・ゼブブに人をやって,自分が回復するかどうかについて尋ねさせます。エリヤはその使者たちを途中で止めて,彼らを王のもとに送り返し,まことの神に伺おうとしなかったことで彼を責め,イスラエルの神に頼らなかったために,彼は必ず死ぬであろうと告げます。王は一人の長を50人の部下と共に遣わし,エリヤを捕らえて王のもとに連れて来させようとしますが,エリヤは天から火を降らせて,それらの人を食らい尽くさせます。2番目の長とその50人の者たちにも同様のことが生じます。3番目の長と50人の者たちが遣わされると,この度は,その長の敬意のこもった嘆願のゆえに,エリヤは彼らの命を容赦します。エリヤは彼らと共に王のもとに行き,再びアハジヤに死の宣告を下します。王はエリヤが述べた通り死にます。それから,アハジヤの兄弟エホラムがイスラエルの王となります。アハジヤには彼に代わる息子がいないからです。
6 エリヤはどんな状況のもとでエリシャから別れますか。「エリヤの霊」がエリシャの上にとどまっていることは,ほどなくしてどのように示されますか。
6 エリシャはエリヤの跡を継ぐ(2:1-25)。エリヤの取り去られる時がやって来ます。エリシャはギルガルからベテルへ,そしてエリコへ向かう旅でエリヤに付き従い,最後にヨルダンを渡りますが,エリヤはその職服でヨルダンの水を打ち,その水を二分します。エリシャは火の戦車と火の馬が自分とエリヤの間にやって来て,エリヤが風あらしに乗って上って行くのを見ると,エリヤの霊の約束の二つの分を受けます。エリシャはほどなくして,「エリヤの霊」が自分の上にとどまっていることを示します。(2:15)エリシャは落ちたエリヤの衣を拾い上げると,それを用いて再び水を分けます。それから,彼はエリコで悪い水をいやします。その後,ベテルに行く途中で,小さい少年たちがエリシャをやじりはじめ,「はげ頭,上って行け! はげ頭,上って行け!」と言います。(2:23)そこでエリシャがエホバを呼ぶと,森の中から2頭の雌熊が出て来て,それら非行少年たちのうち42人を殺します。
7 エホバはどうしてエホシャファトとエホラムを救出されますか。
7 イスラエルの王エホラム(3:1-27)。この王はヤラベアムの罪に付き従って,エホバの目に悪いことを行ない続けます。モアブの王はイスラエルに貢ぎを納めていましたが,今や反抗します。そこでエホラムはモアブを攻めるためにユダの王エホシャファトとエドムの王の助けを得ます。その攻撃に向かう途中で,彼らの軍隊は水のない地域に行き,今にも滅びうせそうになります。3人の王たちはエリシャのもとに下って行って,その神エホバに伺うことにします。エホバは忠実なエホシャファトのゆえに彼らを救出し,彼らにモアブに対する勝利を得させます。
8 エリシャはさらにどんな奇跡を行ないますか。
8 エリシャがさらに行なった奇跡(4:1-8:15)。預言者の子らのある人のやもめは,その債権者たちが彼女の二人の息子を捕らえて奴隷にしようとしているため,エリシャの助けを求めます。エリシャは彼女の家にあるわずかな油の蓄えを奇跡的に増やし,こうして彼女はそれを売って,その負債を支払うに足るお金を得られるようになります。あるシュネム人の婦人はエリシャがまことの神の預言者であることを認め,彼女とその夫は,エリシャがシュネムにいる時に使うための一つの部屋を用意します。エホバはこの婦人の親切さのゆえに彼女に一人の男の子を恵まれます。何年かたった後,その子は病気になって死にます。その婦人は直ちにエリシャを探します。エリシャは彼女に同伴してその家に行き,エホバの力によってその子供をよみがえらせます。エリシャはギルガルにいる預言者の子らのもとに戻ると,毒のあるうりを無害なものに変えることにより,『なべの中の死』を奇跡的に除去します。それからエリシャは,大麦のパン20個で100人の人々に食べさせますが,それでも『なお余ります』。―4:40,44。
9 ナアマンや斧の頭に関連してどんな奇跡が行なわれますか。
9 シリアの軍隊の長ナアマンはらい病人です。とりこになったイスラエル人のある少女が,サマリアにはナアマンをいやすことのできる一人の預言者がいることをその妻に告げます。ナアマンはエリシャのもとに旅をしますが,エリシャは彼を個人的に世話する代わりに,ヨルダン川へ行って七度身を洗うよう,ただ伝言しただけです。ナアマンは敬意に欠けているように見えるこの取り扱い方に憤慨します。ダマスカスの川のほうがイスラエルの水よりも勝っているのではありませんか。しかし彼はエリシャの言うことに従うよう説得され,そしていやされます。エリシャは報酬としての贈り物を受け取ることを拒みますが,後にその従者ゲハジがナアマンの後を追いかけて行き,エリシャの名で贈り物を求めます。ゲハジは戻って来て,エリシャを欺こうとしますが,逆にらい病に襲われます。さらに,エリシャは斧の頭を浮かばせて,もう一つの奇跡を行ないます。
10 エホバの優勢な軍勢のことがどのように示されますか。エリシャはどのようにシリア人を引き返させますか。
10 エリシャがイスラエルの王に,王を殺そうとするシリア人の陰謀のことを警告すると,シリアの王は軍勢をドタンに送り,エリシャを捕らえさせようとします。その都市がシリアの軍隊によって囲まれているのを見たエリシャの従者は,恐れを抱きます。エリシャは,「恐れてはならない。わたしたちと共にいる者は,彼らと共にいる者よりも多いからだ」と言って,彼を安心させます。それから,エリシャは,自分の周りにいる大いなる軍勢を従者に見させていただきたいとエホバに祈り求めます。すると,『見よ,山地はエリシャの周囲の火の馬と戦車で一杯です』。(6:16,17)シリア人が攻めて来ると,預言者は再びエホバに祈り,シリア人たちは精神的に盲目にされ,イスラエルの王のもとに導かれて行きます。ところが,彼らは殺されるどころか,エリシャは,彼らに食事を与えてから彼らを送り返すよう王に命じます。
11 シリア人とベン・ハダドに関するエリシャの預言はどのように成就しますか。
11 後に,シリアの王ベン・ハダドはサマリアを攻め囲み,大飢きんが生じます。イスラエルの王はそれをエリシャのせいにしますが,この預言者は,翌日,食物が豊かになることを予告します。その夜,エホバはシリア人に大軍勢の音を聞こえさせ,そのために彼らは逃げ去り,自分たちの食糧をすべてイスラエル人のために残して行きます。しばらく後に,ベン・ハダドは病気にかかります。彼はエリシャがダマスカスに来たという報告を聞くと,ハザエルを遣わして,病気が治るかどうかを伺わせます。エリシャの答えは,王が死んで,ハザエルがその代わりに王となることを示唆しています。ハザエルは自ら王を殺して王権を引き継ぎ,その言葉通りになるよう事を運びます。
12 エホシャファトの子エホラムはどのような王となりますか。
12 ユダの王エホラム(8:16-29)。一方,ユダでは,今やエホシャファトの子エホラムが王となっています。彼はイスラエルの王たち同様,エホバの目に悪いことを行ないます。彼の妻はアハブの娘アタリヤで,イスラエルでは,これまたエホラムという名の彼女の兄弟が治めています。ユダのエホラムの死に際して,その子アハジヤがエルサレムで王となります。
13 エヒウは油そそがれて後,どんな電撃的な作戦に従事しますか。
13 イスラエルの王エヒウ(9:1-10:36)。エリシャは預言者の子らの一人を送って,エヒウに油をそそいでイスラエルの王とし,アハブの全家を討ち倒すよう彼を任命します。エヒウは機を失することなく,戦いで受けた傷の回復をエズレルで図っていたイスラエルの王エホラムの跡を追って出かけて行きます。見張りの者は近づいて来る人々の波打つ大軍を見,ついに王にこう報告します。「あの車の駆り方は,ニムシの孫エヒウの車の駆り方のようです。気が狂ったように車を駆っているからです」。(9:20)イスラエルのエホラムとユダのアハジヤはエヒウの意図について尋ねます。エヒウは次のように質問をして答えます。「あなたの母イゼベルの淫行とその多くの呪術とがある限り,どんな平安があり得ようか」。(9:22)エホラムが向きを変えて逃げようとすると,エヒウは矢を射て彼の心臓を貫きます。その遺体は,アハブによって流された罪のない者たちの血のためにさらに支払うものとして,そこ,ナボテの野に投げ捨てられます。その後,エヒウとその部下たちはアハジヤを追跡し,これを討ち倒し,こうして彼はメギドで死にます。エヒウの最初の電撃的な作戦で,二人の王が死にます。
14 イゼベルに関するエリヤの預言はどのように成就しますか。
14 さて,今度はイゼベルの番です! エヒウが意気揚々とエズレルに乗り込むと,イゼベルは極めて魅力的な化粧を施して,窓に姿を現わします。エヒウは感銘を受けるどころか,従者たちに向かって,「その女を落とせ!」と呼びかけます。彼女は落ちて行き,その血は壁や馬にはね掛かり,馬はその女を踏みつけます。人々が彼女を葬ろうとして行ってみると,ただ頭蓋骨と両足とその両手のたなごころしか見つかりません。これはエリヤの預言の成就で,『犬がその女を食らい,彼女はエズレルの一続きの土地で肥やしのようになりました』。―列王第二 9:33,36,37。列王第一 21:23。
15 サマリアに行く途中で,エヒウはどんな異なった出会いを経験しますか。
15 次いで,エヒウはアハブの70人の息子たちの殺りくを命じ,彼らの首をエズレルの門の所に積み重ねます。エズレルにいたアハブの追従者たちは皆討ち倒されます。今度は,イスラエルの首都サマリアへ向かいます! その途中で彼は,何が起きているかも知らずにエズレルに向かって旅をしているアハジヤの42人の兄弟たちに出会います。彼らは捕らえられて討ち殺されます。しかし,今度は,それとは違った思いがけない出会いが起こります。レカブの子エホナダブが出て来てエヒウを迎えます。「わたしの心があなたの心と共にあるように,あなたの心は,わたしと共にあって廉直ですか」というエヒウの質問に対して,エホナダブは,「そうです」と答えます。するとエヒウは,「エホバと張り合う関係を一切認めていない」ことを直接見て,知ってもらうため,自分の兵車にエホナダブを同乗させます。―列王第二 10:15,16。
16 アハブの家とバアルとに対するエヒウの処置はどのように徹底したものですか。
16 サマリアに着いたエヒウは,エリヤに対するエホバの言葉に従って,アハブの者で残っている者を根絶やしにします。(列王第一 21:21,22)しかし,バアルの忌むべき宗教についてはどうですか。エヒウはこう宣言します。「アハブはバアルを少ししか崇拝しなかったが,エヒウはこれを大いに崇拝するであろう」。(列王第二 10:18)それら悪霊崇拝者すべてをバアルの家に呼んで,エヒウは彼らに身分を証明するものとなる服を着けさせ,彼らのうちにエホバの崇拝者がひとりもいないことを確かめます。それから,彼は部下を送り込んで,ただの一人も逃れさせることなく,彼らを討ち倒させます。バアルの家は破壊されて,その場所は屋外便所に変えられ,エレミヤの時代までそのまま残ります。『こうして,エヒウはイスラエルからバアルを滅ぼし尽くします』― 10:28。
17 エヒウはどんな点で失敗しますか。エホバはどのようにしてイスラエルに罰をもたらし始めますか。
17 しかし,熱心なエヒウでさえ失敗します。どんな点ででしょうか。それは,ヤラベアムがベテルとダンに立てた金の子牛になおも従っているという点においてです。彼は「心をつくしてイスラエルの神エホバの律法にしたがって歩むよう注意」するのを怠ります。(10:31)しかし,アハブの家に対して取ったその措置のゆえに,エホバはエヒウの子孫が4代にわたってイスラエルを治めることを約束されます。エヒウの時代に,エホバはその王国の東部を切り取り始め,シリアのハザエルにイスラエルを攻めさせます。エヒウは28年間治めた後に死に,その子エホアハズが彼の跡を継ぎます。
18 ユダにおけるアタリヤの陰謀はどのようにしてくじかれますか。エホアシュの治世についてはどんなことが注目に値しますか。
18 ユダの王エホアシュ(11:1-12:21)。皇太后アタリヤは,肉においても,霊においてもイゼベルの娘です。その子アハジヤの死について聞いた彼女は,王族の者を全部処刑するよう命じて,王座を引き継ぎます。ただアハジヤの子である赤子のエホアシュだけがかくまわれて,死を免れます。アタリヤの治世の第七年に,祭司エホヤダはエホアシュに油をそそいで王とさせ,アタリヤを殺させます。エホヤダはエホバの崇拝の点で民を導き,その年若い王に神の前におけるその務めを教え,エホバの家を修理するよう取り決めます。エホアシュはシリアの王ハザエルによる攻撃を贈り物によって阻止します。エホアシュはエルサレムで40年間支配した後,その僕たちによって暗殺され,その子アマジヤが彼に代わって王として支配しはじめます。
19 (イ)イスラエルのエホアハズおよびエホアシュの治世中,どんな偽りの崇拝が存続しますか。(ロ)エリシャはエホバの預言者としての歩みをどのように終えますか。
19 イスラエルの王,エホアハズとエホアシュ(13:1-25)。エヒウの子エホアハズは引き続き偶像崇拝を行ない,イスラエルはシリアの支配下に置かれますが,エホアハズは廃位させられません。エホバはやがてイスラエル人を解放されますが,彼らは引き続きヤラベアムの子牛崇拝を行ないます。エホアハズが死ぬと,その子エホアシュが彼に代わってイスラエルの王となりますが,その間,ユダではもうひとりのエホアシュが治めています。イスラエルのエホアシュはその父の偶像崇拝を続けます。彼が死ぬと,その子ヤラベアムが王となります。エホアシュの治世中のことですが,エリシャは,エホアシュがシリアを3回討ち倒すことを述べた最後の預言を語った後,病気になって死にます。そして,その預言はしかるべき時に成就します。エリシャの最後の奇跡とみなされる事柄がその死後に生じます。つまり,ひとりの死人がその同じ埋葬所に投げ込まれますが,その人はエリシャの骨に触れるや否や,生き返って立ち上がります。
20 ユダのアマジヤの治世について述べなさい。
20 ユダの王アマジヤ(14:1-22)。アマジヤはエホバの目に廉直なことをしますが,崇拝のために用いられた高き所を破壊しそこないます。彼はイスラエルのエホアシュに戦いで破れます。彼は29年間統治した後,陰謀に遭って殺されます。その子アザリヤが彼に代わって王とされます。
21 イスラエルではヤラベアム2世の治世中,どんなことが起きますか。
21 イスラエルの王ヤラベアム2世(14:23-29)。イスラエルの王となった2番目のヤラベアムはその父祖の行なった偽りの崇拝を続けます。彼はサマリアで41年間治め,イスラエルの失った領地を取り戻すことに成功します。その子ゼカリヤが後継者として王座に就きます。
22 ユダのアザリヤの治世に関してどんなことが述べられていますか。
22 ユダの王アザリヤ(ウジヤ)(15:1-7)。アザリヤは52年間支配します。彼はエホバの前に廉直な人ですが,高き所を破壊しそこないます。後に,エホバはらい病の災いを彼に臨ませ,その子ヨタムが王の務めを取り扱い,アザリヤの死に際して王となります。
23 アッシリアの脅威が高まる中で,イスラエルはどんな害悪で悩まされますか。
23 イスラエルの王,ゼカリヤ,シャルム,メナヘム,ペカフヤ,およびペカハ(15:8-31)。エホバの約束にしたがって,イスラエルの王座はエヒウの家に,第4代のゼカリヤの時までとどまります。(10:30)したがって,彼はサマリアで王となり,6か月後,一人の暗殺者により討ち倒されます。その王位さん奪者シャルムはわずか1か月しか持ちこたえません。偽りの崇拝,暗殺,および陰謀が引き続きイスラエルを悩まし,その間に,メナヘム,ペカフヤ,およびペカハが相次いで去ります。ペカハの治世中に,アッシリアが押し寄せて来て,これを討ち取ろうとします。次いでホシェアがペカハを暗殺し,イスラエルの最後の王となります。
24 ヨタムの後,ユダのアハズは崇拝に関してどのように罪をおかしますか。
24 ユダの王,ヨタムとアハズ(15:32-16:20)。ヨタムは清い崇拝を行ないますが,高き所はそのまま存続させます。その子アハズはエホバの目に悪いことを行なって,隣のイスラエルの王たちに見倣います。イスラエルとシリアの王たちによる攻撃を受けたアハズは,アッシリアの王に援助を要請します。そこでアッシリア人は彼を助けにやって来て,ダマスカスを攻略します。アハズはそこへ行ってアッシリアの王と会います。そこに礼拝のための祭壇があるのを見,アハズは同じ型にしたがってエルサレムに一つの祭壇を立てさせ,エホバの神殿の銅の祭壇の代わりに,その上で犠牲をささげはじめます。その子ヒゼキヤは彼の後継者としてユダの王となります。
25 イスラエルはどのようにして捕囚の身に陥りますか。それはなぜですか。
25 イスラエルの最後の王ホシェア(17:1-41)。今や,イスラエルはアッシリアの支配下に置かれます。ホシェアは反抗して,エジプトの助けを求めますが,その治世の第9年にイスラエルはアッシリアにより征服され,人々は捕らわれの身となって連れ去られます。こうして,10部族で成るイスラエル王国は終わりを告げます。それはどうしてですか。こう記されています。「イスラエルの子らが……彼らの神エホバに対して罪をおかし……たからである。こうして,彼らは糞像に仕え続けた。それについてエホバはかつて彼らに,『あなた方はこのような事をしてはならない』と言われたのである。それゆえ,エホバはイスラエルに対して大いにいきり立ち,彼らをみ前から除かれた」。(17:7,8,12,18)アッシリア人は東方から人々を連れて来て,この国に定住させます。それらの人々は依然として自分たちの神々を崇拝してはいますが,『エホバを恐れる者』となります。―17:33。
26,27 (イ)ユダのヒゼキヤはどのようにエホバの目に正しいことを行ないますか。(ロ)エホバはアッシリア人を引き返させることにより,どのようにヒゼキヤの祈りに答えられますか。(ハ)イザヤの預言はさらにどんな成就を見ますか。
26 ユダの王ヒゼキヤ(18:1-20:21)。ヒゼキヤはすべてその父祖ダビデがしたことにしたがって,エホバの目に正しいことを行ないます。彼は偽りの崇拝を根絶し,高き所を打ち壊し,モーセが造った銅の蛇をさえ壊します。なぜなら,人々がそれを崇拝するからです。アッシリアの王セナケリブは今やユダに侵入し,防備の施された都市を数多く攻略します。ヒゼキヤは巨額の貢ぎ物をもってセナケリブに手を引かせようとしますが,セナケリブは使者ラブシャケを送り,ラブシャケはエルサレムの城壁の所まで上って来て,降伏を要求し,民すべての聞こえる所でエホバを嘲笑します。預言者イザヤは,『エホバはこのように言われた。「恐れてはならない」』と語って,セナケリブに対する破滅の音信をもって忠実なヒゼキヤを元気づけさせます。(19:6)セナケリブがおびやかし続けると,ヒゼキヤは次のようにエホバに嘆願します。「それで今,私たちの神エホバよ,どうか,彼の手から私たちを救ってください。地のすべての王国が,エホバよ,あなただけが神であることを知るためです」― 19:19。
27 エホバは利己的なところのないこの祈りに答えられますか。エホバはまず,イザヤを通して,「万軍のエホバの熱心」が敵を追い返すことになるという音信を伝えます。(19:31)それから,その同じ夜,エホバはみ使いを遣わして,アッシリア人の陣営で18万5,000人を討ち倒させます。朝になってみると,『彼らはみな死がいとなっています』。(19:35)セナケリブは敗北を喫して戻り,ニネベに住むようになります。そこで,その神ニスロクはまたもや彼にとって何の役にも立たないことを示します。というのは,セナケリブが身をかがめて礼拝をしている時に,イザヤの預言が成就して,彼は自分の息子たちに殺されるからです。―19:7,37。
28 ヒゼキヤはどんなことで有名ですか。しかし,彼はどんなことで罪をおかしますか。
28 ヒゼキヤは病んで死にそうになりますが,エホバは再びその祈りに留意され,その寿命をさらに15年延ばされます。バビロンの王は贈り物を持たせて使者たちを遣わすと,ヒゼキヤは大胆にもその宝物庫をことごとく彼らに見せます。そこでイザヤは,ヒゼキヤの家の中にあるものはみな,いつかバビロンに運び去られることを預言します。その後,ヒゼキヤは死にますが,彼はその力強さと,エルサレム市内に水を補給できるようにするために造った地下水道で有名です。
29 マナセはまた,どんな偶像崇拝を始めますか。エホバはどんな災いを予告されますか。マナセはさらにどんな罪をおかしますか。
29 ユダの王,マナセ,アモン,およびヨシヤ(21:1-23:30)。マナセはその父ヒゼキヤの跡を継ぎ,55年間治めますが,エホバの目に悪いことを大規模な仕方で行ないます。彼は偽りの崇拝に用いる高き所を修復し,アハブがしたように,バアルのために祭壇を立て,聖木を造り,エホバの家を偶像崇拝の場所とします。エホバは,サマリアに対して,『それをすっかりぬぐって,ひっくり返して』行なったように,エルサレムに災厄をもたらすことを予告されます。マナセもまた罪のない者たちの血を「おびただしく」流します。(21:13,16)その子アモンが彼の跡を継ぎますが,アモンも2年間悪いことを行ない続け,ついに暗殺者たちにより討ち倒されます。
30 ヨシヤはなぜ,またどのように心をつくしてエホバに立ち返りますか。
30 人々は今やアモンの子ヨシヤを王とします。その31年間の治世中,ヨシヤは「その父祖ダビデのすべての道に歩んで」,短期間ですが,ユダが滅びに突入するのを食い止めます。(22:2)彼はエホバの家の修理を始め,そこで大祭司は律法の書を見つけます。その結果,エホバに対する不従順のゆえにその国民に滅びの臨むことが確証されますが,ヨシヤは忠実さのゆえにその滅びは彼の時代のうちには臨まないと告げられます。彼はエホバの家と全国から悪霊崇拝を一掃し,その偶像破壊活動をベテルにまで広げ,そこで列王第一 13章1節と2節の預言の成就として,ヤラベアムの立てた祭壇を破壊します。そして彼は再びエホバに対して過ぎ越しを祝うことを始めます。こう記されています。「彼のように,心をつくし,魂をつくし,活力をつくして,モーセのすべての律法にしたがって,エホバに立ち返った王は彼の先にはいなかった」。(23:25)それでも,エホバの怒りはマナセの違反のゆえになおも燃えます。ヨシヤはメギドにおけるエジプトの王との会戦の最中に死にます。
31 ヨシヤの死後,ユダはどのように後退しますか。
31 ユダの王,エホアハズ,エホヤキム,およびエホヤキン(23:31-24:17)。ヨシヤの子エホアハズは3か月間治めた後,エジプトの王によってとりことして連れて行かれ,その兄弟エリヤキムが,その名をエホヤキムと改められて,王座に就けられます。彼はその父祖たちの誤った道に従い,またバビロンの王ネブカドネザルの臣下となりますが,3年後にその王に反抗します。エホヤキムが死ぬと,その子エホヤキンが治めはじめます。ネブカドネザルはエルサレムを包囲し,これを攻略し,イザヤによって『エホバが話された通りに』,エホバの家の宝物をバビロンに運び去ります。(24:13; 20:17)エホヤキンとその臣下の幾千人もの人々は追放の身となってバビロンへ連れ去られます。
32 どんな劇的な出来事が重なって,エルサレムとその地は荒廃するようになりますか。
32 ユダの最後の王ゼデキヤ(24:18-25:30)。ネブカドネザルはエホヤキンのおじマタヌヤを王とし,その名をゼデキヤと改めます。彼はエルサレムで11年間治め,エホバの目に悪いことを行ない続けます。ゼデキヤはバビロンに反抗します。そこで,ゼデキヤの第9年にネブカドネザルとその全軍が上って来て,エルサレムの周囲に攻囲壁を築きます。18か月の後,都は飢きんのために荒廃します。それから,城壁は打ち破られ,ゼデキヤは逃げようとしましたが,捕らえられます。その息子たちは彼の前で打ち殺され,彼は盲目にされます。その翌月,エホバの家や王の家を含め,都の主な家々はすべて焼かれ,都の城壁は取り壊されます。生き残った者たちの大半はとりことしてバビロンに連れ去られます。ゲダリヤはユダの田舎の地方に残っている少数の身分の低い者たちの上に総督として任じられます。ところが,彼は暗殺され,人々はエジプトへ逃げ去って行きます。こうして,西暦前607年の第7の月以降,その地は完全に荒廃したまま横たわります。列王記第二の最後の言葉は,バビロンの王がエホヤキンに対してその捕囚の第37年に恵みを示したことを述べています。
なぜ有益か
33 列王記第二の中には,わたしたちの従うべきどんな優れた模範が収められていますか。
33 列王記第二はイスラエルとユダ両王国の致命的な衰微を扱ってはいますが,エホバとその正しい原則に対する愛を示した個々の人々をエホバが祝福されたことを示す,多数の実例で輝いています。あるシュネム人の女は,彼女よりも前のザレパテのやもめのように,神の預言者を親切にもてなしたことで豊かな祝福を受けました。(4:8-17,32-37)後にイエスが同様の奇跡を行なうことになっていた通り,エリシャが20個のパンで100人の人々を養った時,必要なものを常に備えるエホバの能力のほどが示されました。(列王第二 4:42-44。マタイ 14:16-21。マルコ 8:1-9)エホナダブが,バアル崇拝者たちを撲滅するところを見るために,エヒウの兵車に乗って一緒に行くよう招かれて,どのように祝福を受けたかに注目してください。それに,どうして祝福を受けたのでしょうか。なぜなら,彼は熱心なエヒウを迎えるために出て来るという点で,積極的な行動を取ったからです。(列王第二 10:15,16)最後に,謙遜さと,エホバのみ名や律法に対する正しい敬意を表わすという点で,ヒゼキヤやヨシヤの示した見事な模範があります。(19:14-19; 22:11-13)それらはわたしたちの従うべきりっぱな模範です。
34 列王記第二は公式の僕たちに対する敬意に関して,また流血の罪に関してどんなことをわたしたちに教えていますか。
34 エホバはご自分の公式の僕たちに対する無礼な態度を決して容認されません。例の非行者たちがエホバの預言者であるエリシャを嘲笑した時,エホバは速やかに報復されました。(2:23,24)その上,エホバは罪のない人たちの血を尊ばれます。エホバの裁きはアハブの家に重苦しくとどまりましたが,それは単にバアル崇拝のためだけでなく,その崇拝に伴った流血行為のためでもありました。こうして,エヒウは「すべてのエホバの僕たちの血のためにイゼベルの手に」復しゅうするよう,油そそがれました。裁きがエホラムに対して執行された時,エヒウはそれが「ナボテの血とその子らの血」のためであるというエホバの宣告を思い起こしました。(9:7,26)同様に,ユダの破滅を最終的に動かぬものとしたのは,マナセの血の罪でした。マナセは偽りの崇拝を行なって罪をおかしたことに加えて,『エルサレムを端から端まで血で満たしました』。マナセは後にその悪い歩みを悔い改めたとはいえ,血の罪は残りました。(歴代第二 33:12,13)偶像崇拝をことごとく除き去ったヨシヤの良い治世でさえ,マナセの治世以来持ち越されてきた共同の血の罪を除き去るものとはなりませんでした。何年も後に,エホバはご自分の刑執行者たちをエルサレムに攻め上らせ始めた時,それはマナセが「罪のない者の血でエルサレムを満たした。それでエホバは許しを与えようとはされなかった」ためであると言明されました。(列王第二 21:16; 24:4)同様に,イエスは西暦1世紀のエルサレムが滅びうせなければならないことを言明されましたが,それはその祭司たちが預言者たちの血を流した者たちの子らで,『地上で流された義の血すべてが彼らに臨む』ことになるからでした。(マタイ 23:29-36)神は罪のない人たちの流された血,とりわけ「神の言葉のために……ほふられた者たちの魂」の血のために復しゅうすることを世に対して警告しておられます。―啓示 6:9,10。
35 (イ)エリヤ,エリシャ,およびイザヤは真の預言者であることがどのように確証されていますか。(ロ)エリヤに関連して,ペテロは預言について何と述べていますか。
35 エホバは誤ることのない確かさをもって,ご自分の預言的な裁きを成就されますが,このことも列王記第二の中で示されています。3人の主要な預言者,すなわちエリヤ,エリシャ,およびイザヤのことが注目されています。それら各々の預言者の預言は著しい成就を見ていることが示されています。(列王第二 9:36,37; 10:10,17; 3:14,18,24; 13:18,19,25; 19:20,32-36; 20:16,17; 24:13)エリヤはまた,山上での変ぼうの際に預言者モーセと大いなる預言者イエス・キリストと共に現われて,真の預言者であることが確証されています。(マタイ 17:1-5)その出来事の壮大さに言及したペテロは,こう述べています。「したがって,わたしたちにとって預言の言葉はいっそう確かなものとなりました。そしてあなた方が,夜があけて明けの明星が上るまで,暗い所に輝くともしびのように,心の中でそれに注意を払っているのはよいことです」― ペテロ第二 1:19。
36 エホバはなぜご自分の民に憐れみを示されましたか。胤の治める王国に対するわたしたちの確信はどのように深められますか。
36 列王記第二に記されている出来事は,偽りの宗教を行なう者すべて,また罪のない人たちの血を故意に流す者すべてに対するエホバの裁きは絶滅であることをはっきりと示しています。それでも,エホバはご自分の民に対して,「アブラハム,イサク,ヤコブとの契約のために」恵みと憐れみを示されました。(列王第二 13:23)エホバはその民を「その僕ダビデのために」生き長らえさせたのです。(8:19)エホバは今日,ご自分に頼る人たちに同様の憐れみを示されます。聖書の記録とその数々の約束を振り返ってみるとき,「ダビデの子」,すなわち約束の胤であるイエス・キリストの王国を,何と深められた確信を抱いて待ち望めるのでしょう。その王国のもとでは流血や邪悪なことはもはやないのです。―マタイ 1:1。イザヤ 2:4。詩編 145:20。
-