宣べ伝えるための助けとなる出版物
イエスが弟子たちに,行って宣べ伝えるよう命令された時,弟子たちはイエスの指示の意義を十分には理解していなかったようです。(マタイ 10:7)弟子たちは従順にイエスの模範に従い,『都市から都市,村から村へと旅をし,神の王国の良いたよりを宣べ伝えまた宣明し』ました。(ルカ 8:1)それは宣べ伝える努力の小さな始まりでしたが,やがて大きく広がり,王国の良いたよりは全地の人々の注目を浴びるまでになりました。
クリスチャン会衆の初期の時代,その宣べ伝える業は基本的に口頭で行なわれました。キリストの弟子たちは,耳を傾ける人にはだれにでも語りかけました。「彼らは毎日神殿で,また家から家へとたゆみなく教え,キリスト,イエスについての良いたよりを宣明し続けた」のです。―使徒 5:42。
神の後ろ盾があったことは,彼らがしるしを行なえたという事実に表わされました。(使徒 14:3)多くの人は身体的にいやされ,その後もとどまって霊的ないやしの言葉に耳を傾けました。その結果,「主を信じる者が……加えられていった」のです。―使徒 5:14-16。
今日,良いたよりを広める
使徒たちの死とともに,いやしや異言の賜物は存在しなくなりました。しかし,この事実は,イエスが弟子たちに与えられた任務に何かの変化をもたらしましたか。そのようなことはありませんでした。イエスは弟子たちに,「すべての国の人々を弟子と(する)」ように告げておられました。弟子たちがそうする時,イエスは「事物の体制の終結の時までいつの日も」弟子たちと共におられるのです。(マタイ 28:19,20)今日,わたしたちが事物の体制の終結の時に生活していることを示す聖書的な証拠は歴然としています。イエスは,弟子を作る業において弟子たちと共におられるというご自身の約束を果たされましたか。証拠からすると,その答えは然りです。
単に口頭だけで何十億もの地の住民に到達するということは,人間の見地からすれば不可能な業でしょう。それで,人々が家で読める聖書文書という形で,助けが備えられてきました。例えば,1879年,一群の熱心な聖書研究者たちは,神の王国の音信を他の人々に伝えたいと思い,現在では「ものみの塔」誌として知られる聖書雑誌,それに聖書的な話題を扱った冊子などの文書の生産を始めました。文書を生産するため,最初は印刷業者が用いられました。1920年までには,借りていたビルに独自の印刷機を設置するようになり,1927年までには独自の工場を建てて聖書や書籍,小冊子,雑誌,冊子を印刷するようになりました。それらの文書は,イエスが弟子たちに与えられた任務の遂行を助けたいと願った人々の使用に供されました。
印刷に関係したこの冒険は必ず失敗するという反対者たちの言葉にもひるまず,ものみの塔協会は世界中の多くの国で印刷工場の操業を始めました。昨年だけでも,6,300万冊以上の聖書,書籍,小冊子,それに5億8,200万冊以上の雑誌が200余りの言語で生産されました。
出版された文書には,人々の霊的な必要を満たす上で,計り知れない価値がありました。特定の見解や信念を持つ人々に到達することを意図して印刷された書籍もありました。何百万という若者たちは「わたしの聖書物語の本」や「あなたの若い時代,それから最善のものを得る」などの本に感謝しました。「あなたの家族生活を幸福なものにする」という本は,家族の絆を強める点で,また夫と妻に互いに対するより深い愛を示すよう教える点で大きな価値がありました。真理を自分のものとすることを望む新しい人々にとって,一つの助けは「唯一まことの神の崇拝において結ばれる」と題する書籍でした。この本を読む人々は,自分と神との関係についてもっと深く考え,推論させられることに気づきました。
しばしば“青い爆弾”と呼ばれてきた本,「とこしえの命に導く真理」は,幾百万もの人々の生活に計り知れない影響を及ぼしてきました。今後どれほどの人がこの本から聖書の真理を学び,神に仕えるよう促されるか,それは時間がたってみなければ分かりません。
現在,イエスの指導のもとで良いたよりを宣べ伝える業に携わっている人々は,「あなたは地上の楽園で永遠に生きられます」の本から助けを得ています。幾百万もの人々と聖書研究が行なわれており,自分の生活を聖書の規準に調和させている研究生も少なくありません。
例えば,ニューヨーク州に住む68歳の男性は,コロラド州に住む実の兄弟と接触を持ちました。そのコロラドの男の人がものみの塔の文書を読ませようとその男性に送ったところ,その人は送られたすべての本をただちに読み,一人の証人が家を訪問した時,喜んで『永遠に生きる』の本を研究し始めました。この人は生涯を通し高価で由緒ある鉄砲の収集をしていましたが,エホバに仕える者はもはや戦いを学ばないというところを読んで,経済的に大きな損失となったにもかかわらず,ただちにその鉄砲を売り渡しました。(イザヤ 2:4)さらに,ヘビー・スモーカーの生活を53年間も続けましたが,これがエホバの不興を買うことを読んで知り,すぐさま喫煙をやめました。(コリント第二 7:1)研究を通して,良いたよりを他の人々と分かち合うべきであることを学ぶと,取るものも取りあえず支度をして,息子と嫁,さらには孫たちに話をするため,彼らの家を訪問しました。客用の寝室に入ると,何とうれしいことに,テーブルの上には『永遠に生きる』の本があったのです。嫁もその本を研究していました。しかしどのように話を切り出したらよいものかと気をもんでいたのです。二人ともすばらしい霊的成長を遂げました。
スペインでは,エホバの証人の集会場がカトリック教会のとなりに建設されました。司祭は激しく怒り,証人たちの集会場がそこに建つことを知っていたら,その土地を買って使わせないようにしたものを,と言いました。この王国会館の一つの窓に『永遠に生きる』の本が展示され,会衆の成員が毎日1ページずつめくりました。町の人々は立ち止まって新しいページを読むようになりました。その結果,多くの人が関心を示すようになり,聖書研究が始まりました。そうです,その本は,無言のうちに効果的な証しを行なっていたのです。
良いたよりを広めるための雑誌の役割
「ものみの塔」誌の第一号が1879年7月に発行された時,印刷されたのはわずか6,000部でした。それでも,それを読んだ小さなグループの人々は,その内容を他の人々に熱心に語りました。今日では,350万人を超えるエホバの証人たちが毎号1,300万部印刷される雑誌を活用し,神の王国を人類の唯一の希望としてふれ告げています。
この雑誌は,種々の聖書的主題を説明する面で大きな助けとなってきました。「ものみの塔」誌に現在連載中の記事は,イエスの生涯と宣教を際立たせてきました。そして,福音書の重要な記述を思いに描き,理解を深めるよう,幾百万もの人々を援助してきました。
「ものみの塔」誌と「目ざめよ!」誌の特別な連載記事は,若い人たちの心を動かすように作られています。「神のことばは生きている」という連載記事は多くの原則を教え,人々が考えている数々の問題を明瞭にしました。「若い人は尋ねる…」という連載記事は,現実の生活で生じる疑問を取り上げ,問題の多いこの時代に若者の思考と行動を正しく導くため,聖書的な裏づけのある実際的な答えを提出してきました。エホバの証人たちが雑誌を提供する際にこれらの記事を強調すると,非常に好ましい反応が返ってきます。
しかし,特別な主題に関する記事に加えて,「ものみの塔」誌の主菜と言えるのは,すべての真のクリスチャンの信仰と確信を強化する主要な記事です。聖書に基づくそれらの記事は,この事物の体制の終わりが近いことを示す納得のゆく証拠を提出し,聖書預言の成就を論じ,クリスチャンが時を考慮してどのように生活すべきかに関して,心を探る助言を提供します。こうした知識に満たされて,クリスチャンは学んだ事柄を宣べ伝える活動に用いるよう決意しています。
この事物の体制の終わりが到来する前に,どれほどの期間この宣べ伝える業が続けられるのか,わたしたちには分かりません。しかし,エホバの証人によって印刷され配布される出版物は,指導者イエスから与えられた任務に従うクリスチャンたちにとって,引き続き大きな助けとなってゆくに違いありません。