「満足のいく生活」のブロシュアーを用いて進歩的な研究を司会する
1 「満足のいく生活」のブロシュアーによる聖書研究が進むにつれ,聖書の教理面を研究生と考慮することになります。研究司会の際,この部分をどのように扱うかは,研究生の霊的な進歩に大きく影響するでしょう。どうすればこのブロシュアーを用いて進歩的な研究を司会することができるでしょうか。
2 イエスの教え方に倣うことが鍵となります。多くの情報を与えて聖書研究生を圧倒しないようにし,簡潔平明な教え方を目指しましょう。分かりにくい要点を例えを用いて説明したり,質問を用いて考えを誘導したりして,研究生の心を動かすようにしましょう。(「ものみの塔」誌,2002年9月1日号,第3研究記事を参照してください。)以下の方法は,兄弟たちが実際に用いているものです。
3 第4部: 2節には銀河が猛スピードで遠ざかっていることが示されています。ある奉仕者は,風船の例えを用いて次のように説明しています。
「ここに膨らませていない風船があります。この風船にマジックインキで点を二つ書いてみましょう。膨らませると二つの点の距離はどうなりますか。同じように,二つの銀河が互いに離れて行っているというのは宇宙が膨張していることを示しているのではないでしょうか。だれかあるいは何かがその過程を始動させたはずですし,全宇宙の引力に打ち勝つほどの強い力が必要ではないでしょうか」。
4 このように話し合ってから,イザヤ 40章25,26節を共に読みます。そうすれば,宇宙を始動させただれかがいる,という結論に導くことができるでしょう。
5 3節のタンパク質に関する説明は,「王国宣教」2003年1月号,折り込み,14節にあります。ある奉仕者は16ページの挿絵の上にある説明に注目し,次のような例えを用いています。
「タンパク質は平面ではなく立体のジグソーパズルのようなものだと専門家は言っています。__さんの家にもジグソーパズルがかけてありますね。小さな子どもには組み立てるのは難しいですね。300ピースぐらいなら少し大きくなった子どもにも作れるかもしれません。でも,1,000ピース,2,000ピースとなると,大人でも苦労しませんか。平面のジグソーパズルを作るにも,発達した知能が必要ですね。では,何万ものアミノ酸というピースから成るタンパク質という,立体のパズルを考案するためには途方もなく高度な知能が必要ではないでしょうか」。
6 第5部: ある奉仕者は,1節に入る際,第2部を思い起こしながら次のように述べます。「__さんにとって本当の友人とはどんな人でしょうか。相手が困っているときに,励ましてくれたり,賢明なアドバイスをしてくれたりする人かもしれませんね。イメージしにくいかもしれませんが,神はわたしたちの友になってくださいます。聖書は,神がご自分の友にあてて書いた励ましとアドバイスの手紙です」。
7 上のように述べてから,第2部の聖書の原則を当てはめて生活を改善できた例について話し合うことができます。こうした方法で推論するなら,聖書の原則に対する感謝の気持ちを持つ人が,神の友になるよう導くきっかけを作ることができるでしょう。
8 第6部: ある奉仕者は,1節を考慮するとき,第2部で取り上げられた聖句のうちかなりのものが箴言と伝道の書であり,ソロモンが霊感を受けて記したことに言及します。それから本文に注目しながら次のように話し合います。
「ソロモンはたぐいまれな知恵を持っていました。また強大な権力や巨万の富を思いのままに用いることができました。ソロモンは人の幸福について何と述べたでしょうか。[伝道の書 2:11と12:13を読む]」。
9 3節には,エホバはただ地の管理人にするという目的で人間を創造されたのかと問いかけています。ある奉仕者は,ここで身近な例えを用いて,「__さんが結婚して子どもを持ったのはなぜでしょうか。家の仕事をしてもらったり,老後の保険になってもらうためでしたか」と尋ねます。
10 このように尋ねると,大抵の人は,「幸福な家庭がほしいから」などと答えてくださいます。「エホバも同じように考えておられます」と述べて4節を共に考えます。4節からエホバが人間と意思を通わせ,温かい家族関係を築くことを意図しておられたことに言及します。
11 5,6節では,神との強い絆と永遠に生きることとの関係を説明するため,ある奉仕者は次のように話し合いました。
「__さんにはかわいい子どもさんがおられますね。子どもが生まれたとき,80年生きるとしてこの子との付き合いは50年か60年だとか,この子が自分より先に死んでゆくこともあるかもしれないとは考えませんね。できればずっと一緒にいたいと思うのではないでしょうか。[研究生は,子どもが自分より先にいなくなるなんて考えられないと答える。] では永遠に生きるエホバ神が親であるなら,子どもがわずか70年か80年で死んでしまうのは道理に合っているでしょうか」。
12 上記のように推論し,永遠に生きることの意味について考えるよう導きました。それから「ではエホバ神が意図したように人が生き続けられるという証拠が身近にあるでしょうか」と問いかけ,5節に入ります。5,6節を考慮した後,「神が人間の幸福な生活を意図しておられたのに現実は全く違いますね。一体何が問題だったのでしょう」と述べ,次回7部から考えるように勧めました。
13 上に挙げた家族に関する例えは第6部で一貫して用いることができますので,家の人の記憶に残りやすいでしょう。一方,温かい家族関係をはぐくんでこなかった人には理解しにくいかもしれません。中には次のように反応する人もいます。「神との個人的な関係,そのようなことは理解できない。あなたは神を信じている。わたしは信じていない。しかしどちらも,おいしい物を食べ,太陽の光を浴び,美しい夕焼けを楽しんでいる。神を信じていても信じていなくても同じではないか」。
14 ある奉仕者は,このような研究生の考えを少しずつ神に向けるため,次のように推論しました。
「__さんが宅配便で果物を受け取ったとします。まず何を確かめますか。[家の人は,だれが送ってくれたかを確かめると答える。] そうですね。果物はおいしくて,わたしたちを幸せな気持ちにしてくれます。でもそれ以上に,送ってくれた友人が,自分を忘れないで気遣ってくれたと感じ,その友人との関係が本当の意味でわたしたちを幸福にしてくれるのではないでしょうか。だれが送ってくれたかには関心はない,果物がおいしければそれでよいのだ,と反応するなら残念ですね。しかし,ほとんどの人はそのような生き方をしているのではないでしょうか。おいしい物を食べ,太陽の光を浴び,美しい夕焼けを楽しんでいる,それで十分だ,それをだれが贈ってくれたかには関心がない,というわけです。それでもやはり,贈ってくれた方との温かい関係が,本当の意味でわたしたちを幸福にするのではないでしょうか」。
15 次のように話し合った奉仕者もいます。
「すぐ隣近所に住んでいるからと言って,だれにでも自分の心の奥底にある感情を話すということはないですね。でも心を許せる友人との間なら,早く話したくて待ち切れなくなることがありませんか。電話などお金と時間が多少かかるとしてもそうですね。感情を分かち合い,理解を示し合うとき,満足感を覚えます。アダムは神とこのような関係を持っていました」。
16 第7部: 6節を考慮する際,創世記 3章から幾つかの節を読み,23,24ページの挿絵から話し合うことができます。本来幸福を増し加えるはずなのに,ストレスの主要な原因となっている家族と仕事の問題がここから始まったことを説明します。この機会に第1部に言及するのも効果的です。
17 7,8節では,わたしたちが,アダムとエバから罪と死を受け継いだことについて書かれています。多くの日本人にとって,犯罪を犯していない自分が罪人であることを理解するのは難しいことです。ある奉仕者は,罪という概念について次のように説明しています。
「__さんは知り合いのだれかが悲惨な状況にいることを聞いたとき,かわいそうだ,何とかしてあげたいと感じるでしょうね。でも,同情心を感じたものの,実際に助けるのは少し負担だと思い,行動を起こさずじまいだったということはないでしょうか。あるいは,何かのことで感情を害されたとき,そこまで言おうと思っていなかったのに,感情に負けて言うべきでないことを言ってしまい,後悔したということはないでしょうか。__さんの同情心はどこから来たのでしょうか。わたしたちが神と同じ像,つまり特質を与えられているからですね。せっかく感じた同情心を妨げてしまったもの,言うべきでないと分かっていたことを言わせたものは何でしょうか。神がご自分の特質を反映するよう創造してくださったのに,それを完全に反映できないこと,聖書はこれを罪と言っています。わたしたちは生まれたときから罪を受け継いでいるので,神の特質を完全に反映しきれません。いくら努力しても自分や他の人を,もっと重要なこととして,わたしたちの創造者をがっかりさせてしまいます。わたしたちが本当の意味で満足のゆく生活が送れない理由はこの罪にあるわけです」。
18 第8部: 1,2節から,受け継いだ罪と死がどれほど忌まわしいものかを説明する場合,兄弟たちは25ページの写真から話し合っています。
「危険な作業をしている子どもたちですね。重い病気にかかることも少なくないようです。南アジアなどの地域では,わずか8歳か9歳の子どもが,親の借金の返済のためにこのような重労働を行なっているそうです。一生奴隷のように働いても借金を減らすことさえできません。わたしたちの置かれている状況もこれとよく似ています。[1,2節を考慮し,わたしたちも自力で罪と死の奴隷状態から抜け出すことができないことを話し合う。それから,第7部の挿絵を振り返りこの状態の悲惨さを考慮する]」。
19 5節でイエスの贖いについて説明する際には,25ページの写真から次のように推論することができます。
「親が不正行為を行ない,大きな借金を抱えたため,その肩代わりとして3人の子どもたちが奴隷労働を行なうようになったとしましょう。一人の人の不正のために子どもたちが皆苦しみます。そこに父親の兄が現われて,財産を投げ打ち,父親の借金をすべて支払ってくれました。子どもたちを自分の家に引き取り,愛情をこめて,そして正しい道に進むよう育ててくれました。その愛にこたえ応じた子どもは,父親とは違う歩みをはじめ,幸福な生活を送ることができました。贖いもこれと同じです。イエスは自分の完全な命を犠牲とし,人類を罪と死への奴隷状態から買い戻すのに必要な代価を払ってくださいました。わたしたちが正しい道を歩むよう言葉と手本で導いておられます。その愛に応じる人は,幸福な生活を送ることが可能になります」。
20 進歩的な研究を司会するという目標に向かって取り組む: 研究の際,はっきり分かる益や祝福を具体的に示すことと,霊的な面を教えることとの間に平衡を保つ必要があります。聖書を学べば良い夫婦になる,ストレスが軽減される,人間関係がよくなるというのは,聖書の教えを学び当てはめることによって得られるすばらしい祝福です。しかし,より重要な事柄,神の魅力的な特質,神が人間を創造した目的,神との友情を築くこと,受け継いだ罪と贖い,神の王国などについて教える必要があります。
21 研究生に霊的な事柄を教えるのは,確かに挑戦でしょう。しかし,この記事で取り上げたように,ブロシュアーを巧みに用いるなら,そのような霊的な面についても分かりやすく教えることができます。例えや質問を用いて研究生の心を動かすようにしましょう。そうすれば,研究生は学んでいることに対する感謝と認識を抱き,少しずつ信仰を持つことができるようになります。皆さんすべてが,進歩的な研究を司会する喜びにあずかれますように。