柔軟性 ― 産出的な宣教奉仕のかぎ
1. 1世紀のイエスの追随者たちから何を学べますか。
1 1世紀のイエスの追随者たちは,宣教奉仕において柔軟性を示しました。進取の気性と創意工夫を働かせて,できる限り多くの人に良いたよりを広めました。そして,神の霊がその努力を後押ししました。その結果,イエスが亡くなってから30年もしないうちに,良いたよりは「天下の全創造物の中で宣べ伝えられ」ました。―コロ 1:23。
2. パウロは,どのように相手に合わせて証言しましたか。
2 パウロの手本: パウロは,柔軟性の良い手本です。伝道の際,相手の関心事や考えを考慮に入れました。例えばルステラの人たちには,「天からの雨と実りの季節」について述べ,それを与えたのがエホバであることを話しました。(使徒 14:17)そこが肥沃で水の豊かな土地だったので,人々はパウロの言葉の意味をすぐにつかむことができました。また,テサロニケでは,神の言葉に敬意を抱いていたユダヤ人に宣べ伝えた際,聖書に直接言及しました。記録はこうなっています。「彼らと聖書から論じ,キリストが苦しみを受け,そして死人の中からよみがえることが必要であったことを説明したり,関連した事柄を挙げて証明したりし」た。(使徒 17:1-3)一方,聖なる書物になじみのないアテネの人々には,別の方法を用いました。王国の真理を伝えましたが,聖書からの直接の引用はしませんでした。―使徒 17:22-31。
3. パウロはどのように柔軟性を示して宣べ伝えましたか。
3 パウロはまた,人のいる時間に人のいる場所で宣べ伝えることによって柔軟性を示しました。例えばフィリピでは,仲間と共に「門の外の川のそばに出かけて」行きました。「そこに祈りの場所があると思った」からです。その結果ルデアに出会い,ルデアとその家の者たちは真理に入りました。(使徒 16:12-15)エフェソスでは,自分の予定を調整し,日中の一番暑くて静かな時間に,つまり多くの人が食事などのために仕事の手を休める時に証言したのではないかと思われます。(使徒 19:9,脚注)いつでもどこでも人がいれば,それが公共の場所であっても家から家であっても宣べ伝えました。(使徒 20:20)パウロはさらに,いつでも機会があれば良いたよりを伝えることによって柔軟性を示しました。例えば,ローマへの旅の途中でエホバについて話しました。(使徒 27:22-25)軟禁状態にある時も,訪れるすべての人に良いたよりを宣べ伝えました。―使徒 28:30,31。
4. 宣べ伝える時に,どのように柔軟な方法を用いることができますか。
4 宣べ伝える時に柔軟性を示す: 「王国宣教」や「論じる」の本には証言例が載せられています。とはいえ,それを用いることが求められているわけではありません。地元の区域に合った効果的な証言を自由に用いることができます。例えば,たいてい証言例には聖句が含まれていますが,キリスト教の背景のない区域では,最初の訪問で聖書を読まないのがよい場合もあるでしょう。ある人たちは,カードを準備して産出的な奉仕を行なっています。考えさせる聖句の言葉だけを記し,聖書の書名と章節は記しません。次のような言葉をカードに記します。「金銭に対する愛はあらゆる有害な事柄の根です」,「妻は夫に対して深い敬意を持つべきです」,「夫たち,妻を愛しつづけなさい。妻に対して苦々しく怒ってはなりません」。そして,家の人にふさわしいカードを選んで渡し,カードの言葉について感想を聞きます。家の人が聖書の原則に対して幾らかの認識を示したなら,その知恵の言葉が聖書からのものであることを伝えます。このような訪問の結果,聖書研究になることがよくあります。
5. 紹介する文書について,どのように柔軟性を示せますか。
5 さらに,紹介する文書についても柔軟性を示せます。日本のある開拓者の姉妹は,主婦には「満足のいく生活」のブロシュアーをよく用います。男性に会ったなら,経済や日常生活について扱った雑誌から話題を選ぶことがあります。高齢の方には,魅力的な楽園の絵を見せながら証言します。また,多くの奉仕者は,2011年3月の大地震後,配布するものを,その月の提供文書ではなく,自然災害を扱った雑誌や慰めとなる音信を載せた出版物に切り替えて柔軟性を示しました。
6. 真理を教える時,どのように柔軟性を示せますか。
6 教える時に柔軟性を示す: 関心を高めて聖書研究を司会する際にも,柔軟性が求められます。聖書研究用の主要な出版物は『聖書の教え』の本ですが,区域の多くの人が聖書に関心を抱いていない場合,最初は他の出版物やその一部を用いて,以下のような点について話し合う必要があるかもしれません。創造者はいるか。それはだれか。聖書は神からのものか。聖書はどのように益となるか。ある奉仕者は,初めに「幸せへの道」のブロシュアーを用いて話し合っています。あるいは,毎回の訪問で,「満足のいく生活」の第2部から一つの点を話し合って成功している人もいます。新たに発表された「神からの良い知らせ」のブロシュアーも研究を始めるのにとても良い道具です。関心を高めて聖書研究を始めるために,どの出版物でも,それが月の提供物でなくても,自由に用いてください。その後,ふさわしい時に『聖書の教え』の本に移行することができます。
7. 柔軟であるなら,どのように,より多くの人に良いたよりを伝えられますか。
7 より多くの人に良いたよりを伝えるために柔軟性を示す: わたしたちの多くは,自分の予定した時間に宣教を行なっています。しかし,王国の希望を伝えられるのはその時間だけでしょうか。柔軟であるなら,証言の機会をいつでも目ざとく見いだせます。例えば,バスや電車の中で隣に座った人にパンフレットを渡せるかもしれません。近所の人や職場の人や親族の興味を引きそうな記事がありますか。家から家の奉仕の途中で,そばを通る人にも良いたよりを伝えることができますか。人々が日中ほとんど家にいない区域もあります。では,その時間に公の証言を行なうことによって柔軟性を示せるでしょうか。比較的多くの人が自宅にいる晩の時間に家から家の奉仕を行なうよう自分の予定を調整できるでしょうか。
8. 宣教奉仕において柔軟であることが重要なのはなぜですか。
8 「対処しにくい危機の時代」である今日,人々は真理をまさに必要としています。(テモ二 3:1)ですから,王国の素晴らしい希望を伝えることは実に大きな特権です。ぜひパウロや1世紀の他の産出的な福音宣明者に倣い,宣教奉仕において柔軟であるようにしましょう。そうすることにより,真理にこたえ応じる「幾人か」を見いだせるでしょう。(コリ一 9:22)それは本当にうれしい経験となるはずです。さらに重要なこととして,エホバにとって大きな喜びとなるのです。―ルカ 15:7。