遅れないでください!
「遅刻は最高経営責任者の慢性的な問題となっている」。USAトゥデー紙はそのように報じ,2,700人を対象にした調査に基づいて,「最高経営責任者は会議の6割に遅刻している」と述べています。
ビジネス界では,遅刻は礼儀に欠けた行為以上のものとみなされます。8万1,000人の求職者を対象にしたある研究は,「遅刻や無断欠勤による時間の損失は,収益損失のおもな原因である」と結論しています。もちろん,遅刻が問題となるのはビジネス界だけではありません。中学・高校の校長を対象にしたある調査は次の点を明らかにしています。「規律に関連した問題で,最も深刻かつ頻度が高いのは,生徒の遅刻である」。
創造者は,人間が時間を意識するよう意図されました。神はわたしたちが時間を計れるように「二つの大きな光体」つまり太陽と月を据えられました。(創世記 1:14-16)今日,わたしたちは時計を使い,分刻み秒刻みで時間を計ることができます。しかしそうした技術にもかかわらず,多くの人は,仕事や学校,また他の重要な約束に遅れないようにするのは大変だと思っています。
時間が足りないというのが,やはり問題なのでしょうか。もちろん,仕事と家族のことで忙しく,圧倒されそうになる場合もあります。とはいえ,仕事を持つワンダ・ロスランドという母親はこう述べています。「時間が足りないと愚痴を言うのはやめました。だれでも1日に24時間しかないことに気づいたからです。よくよく考えてみて分かりました。現代の世の中では,時間がないというよりもむしろ,邪魔が入ることや気が散らされることが多すぎるのです」。
5人の子どもの母親であるレネーaというエホバの証人についても考えてみましょう。レネーはこう述べています。「子どもたちがまだ幼かったころ,学校やクリスチャンの集会の準備をさせるのは大変なことでした。それでも,時間に遅れることはありませんでした。ところが子どもたちが成人した今,遅刻という悪い習慣が身についてしまいました」。あなたにもそういう悪い習慣がありますか。そうであっても直すことは可能です。幾つかの提案をご覧ください。
● 結果を考える。いつも遅刻していても,あまり深刻な問題だとは思わないかもしれません。しかし聖書の次の言葉を考えてください。「死んだはえは塗り油作りの油を臭くし,泡立たせる。少しの愚かさも,知恵と栄光ゆえに貴重な存在となっている者に対して同じ働きをする」。(伝道の書 10:1)そうです,他の人への配慮を欠いてしまうという「少しの愚かさ」を示すなら,教師あるいは雇い主のあなたに対する評価に傷が付くかもしれません。
マリーという女性は地元の大学の授業を受けていて,クラスメートの何人かが「時間に無頓着で」,よく授業に遅れて来るのを目にしました。「でもみんな,すぐに改善しないといけなくなりました。二人の教授は時間に厳しく,学生が数分遅刻するだけで欠席扱いにしたのです。そして欠席が重なると単位をもらえませんでした」。
遅刻ばかりしていると,友達や同僚の間であなたに対する評価が下がるかもしれません。ジョセフという中年の男性は,何十年も前に知り合いだったある仲間のクリスチャンについてこう語っています。その人は教え手としての能力ゆえに敬われていましたが,一つの困った欠点がありました。ジョセフはこう述べています。「彼は遅刻ばかりしていました。本当にいつも遅刻するんです。でも気にしているようには全然見えませんでした。その人の遅刻はジョークのタネにされていました」。最近,周りの人はあなたのことをいつも遅れて来る人だと言っているでしょうか。もしそうであれば,あなたの良い特質はおそらく見過ごされてしまうでしょう。
● 他の人のことを考える。遅刻は礼儀にもとり,他の人の気を散らします。しかも,自分が優越感を抱いているという印象を与えかねません。あるビジネスマンは,企業幹部の多くが会議によく遅刻する理由を説明し,「ほとんどの人は自分が偉いと思っているのです」と述べました。対照的に,クリスチャンは他の人が自分より上であるとみなして行動します。(フィリピ 2:3)さらに黄金律を適用し,自分にして欲しいと思うことを他の人に行ないます。(マタイ 7:12)待ちぼうけを食うと,いらいらするのではないでしょうか。そうであれば,他の人を待たせないようにしましょう。
● 時間を上手に管理する方法を学ぶ。あなたは物事をいつも後回しにして,ぎりぎりになってから慌てて行ないますか。スケジュールを詰め込みすぎて,ごく短時間で多くのことを行なおうとしますか。伝道の書 3章1節にある「何事にも定められた時がある」という原則は助けになるでしょう。物事に「定められた時」を設けるなら,それを順序立てて行なえるようになります。
まず最初に,やらなければならないことをすべて書き出します。次に,フィリピ 1章10節の原則に従います。つまり,「より重要な事柄を見きわめ」ます。そうです,優先順位を定めるのです。絶対にしなければならないことは何ですか。後回しにしても問題ないことは何でしょうか。最後に,やり終えるのにどれだけの時間が必要か,またいつそれを行なえるかを見極めます。現実的な見方をするようにし,わずかな時間に多くのことを詰め込まないようにします。
ドロシーという女性は,両親の教育のおかげで時間を守ることができています。こう述べています。「クリスチャンの集会に夜7時半までに行かなければならないとすると,母はその1時間45分前から準備をさせました。夕食を食べて,食器を洗い,着替えて,車で集会場所へ行くための時間です。生活の中で時間を守るということが当たり前になっていました」。予期せぬ事柄を考慮に入れ,余裕を持たせるのは賢明です。ドロシーはこう述べています。「最近のことですが,集会に行く前に何人かを車で迎えに行くことになっていました。ところが,途中でタイヤがパンクしてしまいました。でも,パンクを直した後も時間があり,その人たちを乗せてあげることができました。車のトラブルや渋滞を考えていつも時間に余裕を見ておきます」。
● 他の人からアドバイスをもらう。聖書は箴言 27章17節でこう述べています。「鉄はまさしく鉄によって研がれる。同じように,ひとりの人が他の人の顔を研ぐ」。この原則に調和して,あなたと似た状況に置かれていながら,いつも時間を守っている人と話してみるのはどうでしょうか。多くの場合,有益なアドバイスがたくさん得られるでしょう。
記事の初めに登場したレネーは,これからは遅刻しないようにしたいとの決意を抱いており,こう述べています。「最近,改善する努力を払うことに決めました。簡単ではありませんが,進歩はしています」。あなたも進歩できます。正しいものの見方を保ち,努力することによって,あなたも時間を守れるようになれます。
[脚注]
a 名前は一部変えてあります。
[24ページの図版]
遅刻ばかりしていると,雇い主に悪い印象を与えかねず,他の人への配慮の欠如を示すことにもなる
[25ページの図版]
自分で物事をよく組織するなら,時間を無駄にしないで済む