どんな時にも冷静さを保ち，エホバと組織を信頼する

1. 冷静さを保つとはどういうことですか。（テモテ第二 4:5，脚注）

気持ちを乱されるような状況にぶつかると，エホバや組織への信頼を試されることがあります。そうした状況を乗り越えるために，どんなことができるでしょうか。冷静さを保ち，目を覚ましていて，信仰を持ってしっかり立つことが必要です。（テモテ第二 4:5と1番目の脚注を読む。）冷静さを保つ人は，穏やかでいることができ，物事を筋道立てて考えます。また，エホバと同じ見方ができるように努力します。それで，感情に流されることはありません。

2. この記事ではどんなことを考えますか。

² 前の記事では，エホバへの信頼を試す状況のうち，会衆の外から来るものについて3つ取り上げました。この記事では，会衆内で生じるかもしれない状況を3つ考えます。（1）仲間から傷つけられたと感じる時，（2）矯正を受ける時，（3）組織の中での変更に付いていくのを難しく感じる時です。こうした状況にぶつかる場合，どうすれば冷静さを保ち，エホバと組織を心から信頼し続けることができるでしょうか。

仲間から傷つけられたと感じる時

3. 仲間から傷つけられたように感じる時，どう思うかもしれませんか。

³ あなたは，仲間から傷つけられたように感じたことがありますか。その相手は，長老などの責任を委ねられている兄弟だったかもしれません。きっとその兄弟は，あなたを傷つけるつもりはなかったことでしょう。（ロマ 3:23。ヤコ 3:2）でも，あなたは傷つき，そのことについて考えて夜も眠れなかったかもしれません。「兄弟があんなことをするなんて，これは本当に神の組織なんだろうか」とさえ思ったかもしれません。でも，そうした考え方をするなら，サタンの思うつぼです。（コリ二 2:11）エホバや組織から離れてしまうことになるかもしれません。では，兄弟姉妹から傷つけられたように感じる場合，どうすれば冷静さを保ち，ふさわしくない考え方を避けることができるでしょうか。

4. ヨセフがひどい仕打ちを受けても冷静さを保てたのはなぜですか。ヨセフの例から何を学べますか。（創世記 50:19-21）

⁴ 腹を立ててはいけない。ヨセフは10代の頃，兄たちからひどい仕打ちを受けました。兄たちはヨセフのことを嫌っていて，中には，殺してやりたいと思っている人さえいました。（創 37:4，18-22）やがて兄たちは，ヨセフを奴隷として売り飛ばしてしまいます。その結果，ヨセフはその後13年もの間，とてもつらい経験をしました。それで，「自分はエホバに愛されていない」とか，「エホバから見捨てられた」と考えてもおかしくありませんでした。それでも腹を立てるのではなく，冷静さを保ちました。兄たちに仕返しをするチャンスもありましたが，そうするのではなく，兄たちに愛を示して許しました。（創 45:4，5）そうすることができたのは，ヨセフが物事を筋道立てて考えていたからです。ヨセフは自分のつらい状況のことばかり考えるのではなく，エホバがどんなことを望んでいるのかについてよく考えました。（創世記 50:19-21を読む。）何を学べますか。誰かからひどい仕打ちを受けるとしても，エホバに対して腹を立てたり，エホバから見捨てられたと考えたりしてはいけません。つらい状況の中でエホバがどのように助けてくださっているかを考えるようにしましょう。そして，仲間の不完全さを愛で覆うようにしましょう。（ペテ一 4:8）

5. ミケイアス兄弟はひどいことをされたと感じた時，どのようにして冷静さを保ちましたか。

⁵ 現代の例を考えてみましょう。南アメリカで長老として奉仕しているミケイアス兄弟は，責任を委ねられている兄弟たちからとてもひどいことをされたように感じました。b その時のことについて，兄弟はこう言います。「それまでに経験したことがないほどのストレスを感じ，とても怖くなりました。夜も眠れず，自分にできることは何もないと感じて涙があふれてきました」。でも，兄弟は冷静さを保ち，感情に流されないようにしました。聖なる力や忍耐するための力を求めて，何度も何度もエホバに祈りました。そして，出版物を調べて，助けになりそうな資料を探しました。兄弟の手本からどんなことを学べるでしょうか。兄弟や姉妹からひどいことをされたと感じるとしても，穏やかでいるようにし，良くない考え方に負けないようにしましょう。私たちは，兄弟姉妹がどうしてそんなことを言ったりしたりしたのかを必ずしも知っているわけではありません。それで，相手の立場に立って考えられるように助けてください，と祈りましょう。そうすれば，きっと悪気はなかったのだと考えて，仲間を許すことができるようになるでしょう。（格 19:11）エホバは私たちの状況をよくご存じで，忍耐できるようにしてくださいます。（代二 16:9。伝 5:8）

矯正を受ける時

6. エホバが愛の気持ちから矯正を与えてくださるということを覚えておくのが大切なのはなぜですか。（ヘブライ 12:5，6，11）

⁶ 矯正を受けると，つらく感じるものです。でも，つらい気持ちにとらわれていると，その矯正を軽く見て，「自分には当てはまらない」とか「厳し過ぎる」と考えるようになるかもしれません。そして，エホバが愛の気持ちから矯正を与えてくださっている，という大事なことが見えなくなってしまいます。（ヘブライ 12:5，6，11を読む。）また，感情に流されるままにするなら，付け込む隙をサタンに与えてしまうことになります。サタンは，私たちが矯正を受け入れず，さらにはエホバや会衆から離れていくことを願っています。では，矯正を受けた時にも，どうすれば冷静さを保つことができるでしょうか。

7. （ア）挿絵から分かる通り，ペテロは矯正を受け入れた後，エホバからどんな務めを委ねられましたか。（イ）ペテロの例からどんなことを学べますか。

⁷ 矯正を受け入れ，改善する。イエスはペテロに対して，ほかの使徒たちの前で矯正を与えたことが何度かありました。（マル 8:33。ルカ 22:31-34）これはペテロにとって，とても恥ずかしい思いをする経験でした。それでもペテロは，イエスに従うのをやめることなく，矯正を受け入れ，自分の失敗から学びました。エホバはそのようなペテロに報いを与え，会衆での大きな責任を委ねました。（ヨハ 21:15-17。使徒 10:24-33。ペテ一 1:1）ここからどんなことを学べますか。矯正を受けた時には，恥ずかしい気持ちにとらわれるのではなく，それを受け入れ，改善しましょう。そうするなら，自分のためにもほかの人のためにもなります。そして，エホバや仲間のためにいっそう多くのことを行えるようになるでしょう。

8-9. 矯正を受けたベルナルド兄弟は，初めはどう感じましたか。考え方を改める上で，どんなことが助けになりましたか。

⁸ モザンビークのベルナルド兄弟の例を考えてみましょう。兄弟は，長老として奉仕する機会を失いました。初めはどう感じていたでしょうか。「その矯正が気に入らなかったので，とても腹が立ちました」と言っています。兄弟は，会衆の人たちからどう思われるかを気にしていました。そして，こうも言っています。「矯正に対して正しい見方をし，エホバや組織をもう一度信頼できるようになるまでには，何カ月かかかりました」。では，兄弟はどのようにして正しい見方を取り戻したのでしょうか。

⁹ ベルナルド兄弟は考え方を改めました。こう言っています。「長老として奉仕していた時，ヘブライ 12章7節を使って，他の人がエホバからの矯正に対する正しい見方を持てるよう助けていました。それで，こう考えました。『この聖句を当てはめる必要があるのは誰だろう。エホバに仕えている人全員だ。それには私も含まれている』」。また兄弟は，エホバと組織への信頼を取り戻すために，別の点でも努力しました。聖書を読んでじっくり考える時間を増やしました。兄弟姉妹からどう見られているかが気になりましたが，一緒に伝道し，集会でコメントするようにしました。やがて，兄弟は再び長老に任命されました。私たちも矯正を受けた時には，ベルナルド兄弟のように恥ずかしさを乗り越え，助言を受け入れ，改善しましょう。c （格 8:33; 22:4）そうするなら，エホバと組織を心から信頼し続けることができ，エホバは必ず祝福してくださるでしょう。

組織の中での変更に付いていくのを難しく感じる時

10. 古代イスラエルにおいて，エホバに対する人々の信頼はどんなことによって試されたかもしれませんか。

¹⁰ 組織の中での変更によって，エホバと組織への信頼が試されるかもしれません。注意していないと，エホバから引き離されてしまうことさえあります。モーセの律法によって生じた変化から古代のイスラエル人がどんな影響を受けたか，考えてみましょう。律法が与えられる前は，家族の頭が祭司の役目を果たし，家族のために祭壇を作り，エホバへの犠牲を捧げていました。（創 8:20，21; 12:7; 26:25; 35:1，6，7。ヨブ 1:5）しかし，律法が与えられた後，家族の頭はこの特別な務めを果たすことができなくなりました。エホバは，アロンの家系の者が祭司として犠牲を捧げるよう取り決めたからです。もし家族の頭が，アロンの家系の者ではないのに祭司として行動したなら，死刑になりました。d （レビ 17:3-6，8，9）この変更のせいで，コラやダタンやアビラムや250人の長たちは，モーセやアロンの権威に逆らったのかもしれません。（民 16:1-3）確かなことは分かりませんが，いずれにせよ，コラたちはエホバへの信頼を示し続けませんでした。私たちも，組織の中での変更によってエホバや組織への信頼を試されることがあるかもしれません。そのような場合，どんなことができるでしょうか。

11. レビ族のコハト氏族の人たちの手本からどんなことを学べますか。

¹¹ 組織の中での変更を心から支持する。古代イスラエルが荒野を旅していた時，コハト氏族の人たちは特別な務めを与えられていました。宿営が移動するたびに，コハト氏族の人たちが契約の箱を運び，民の前を行きました。（民 3:29，31; 10:33。ヨシュ 3:2-4）それはとても素晴らしい務めでした。しかし，イスラエルが約束の地に住むようになると，事情は変わりました。契約の箱をあちこちと運ぶ必要はなくなりました。ソロモンの時代には，コハト氏族の人たちは歌い手や門番の務めを与えられていました。倉庫を担当した人たちもいました。（代一 6:31-33; 26:1，24）それでも，コハト氏族の人たちが不平を言ったとか，先祖のような目立つ仕事を要求した，という記録はありません。どんなことを学べますか。エホバの組織の中での変更が生じた場合，それが自分に影響を及ぼすものだとしても，心から支持するようにしましょう。どんな務めを与えられても，喜んで果たしましょう。与えられる務めによって人の価値が決まるわけではない，ということを忘れないでください。私たちがエホバと組織に従うことは，エホバにとって何よりも価値があることなのです。（サム一 15:22）

12. ザイーナ姉妹は，ベテルから野外に戻ることになった時，どう感じましたか。

¹² 中東のザイーナ姉妹のことを考えてみましょう。姉妹は，23年余りベテルで奉仕していましたが，割り当ての変更の知らせを受けました。野外に戻ることになり，大切にしていたベテル奉仕ができなくなりました。姉妹はこう言っています。「すごくショックでした。『自分は役立たずなんだ』と感じ，『何か悪いことをしたのだろうか』という思いが頭から離れませんでした」。残念なことに，会衆のある人たちからも，「ちゃんとやっていれば，ベテルに残れたんじゃないの？」と言われました。それで，姉妹はとても傷ついてがっかりし，しばらくの間は毎晩泣いていました。それでも，姉妹はこう言っています。「組織とエホバの愛を疑うことは絶対にしない，と思いました」。では，どのようにして冷静さを保ったのでしょうか。

13. ザイーナ姉妹は，良くない感情を乗り越えるためにどんなことをしましたか。

¹³ ザイーナ姉妹は，良くない感情を乗り越えることができました。どのようにでしょうか。出版物を調べ，自分が経験しているのと同じような問題を扱った記事を読んだのです。特に，「ものみの塔」2001年2月1日号の「落胆しても立ち直れます！」という記事がとても役に立ちました。その記事には，聖書筆者のマルコが割り当ての変更を経験して，同じような気持ちと闘ったかもしれない，ということが述べられています。ザイーナ姉妹はこう言っています。「マルコの手本は，がっかりした気持ちを乗り越える上でまさに私が必要としていたものでした」。また姉妹は，孤立したり自分を哀れに思ったりするのではなく，友たちと一緒に時間を過ごすようにしました。姉妹は，エホバの聖なる力が組織を通して働いていることや，教え導いている兄弟たちが深く気遣ってくれていることに気付きました。そして，エホバのための活動を前進させることが組織にとって一番大事なことなのだ，ということにも気付きました。

14. ブラド兄弟は，どんな変更に応じることをつらく感じましたか。何が助けになりましたか。

¹⁴ ブラド兄弟は，スロベニアに住む73歳の長老です。兄弟は，自分の会衆と他の会衆が統合されて，使っていた王国会館が閉鎖されることになり，つらく感じました。こう言っています。「あの美しい王国会館がなぜ閉鎖されるのか，理解できませんでした。最近改装したばかりだったので，なおのことショックでした。大工の私は，新しい備品も作ったんです。それに，統合に伴っていろいろな調整が求められますが，私のような年配の者たちにとっては，付いていくのが大変です」。それでも，兄弟は決定を支持しました。何が助けになったのでしょうか。こう言っています。「エホバの組織が決めた変更に応じるなら，必ず祝福されます。そうすることは，将来のもっと大きな変更に私たちを備えさせるものとなります」。あなたも会衆の統合や割り当ての変更を経験して，つらい思いをしていますか。エホバはあなたの気持ちをよく分かってくださっています。決定を支持し，エホバと組織を心から信頼し続けるなら，必ず祝福を味わえます。（詩 18:25）

どんな場合にも冷静さを保つ

15. 会衆内で問題が生じる時，どうすれば冷静さを保てますか。

¹⁵ この体制の終わりが近づくにつれ，会衆内でもさまざまな問題が生じることでしょう。そうした問題は，エホバに対する私たちの信頼を試すものとなるかもしれません。ですから，冷静さを保つ必要があります。仲間のクリスチャンから傷つけられたと感じるとしても，腹を立てないようにしましょう。矯正を受けた時には，恥ずかしい気持ちにとらわれるのではなく，それを受け入れ，改善しましょう。また，エホバの組織の中での変更が自分に影響を及ぼすとしても，心から受け入れ，指示に従いましょう。

16. どうすればエホバと組織を信頼し続けることができますか。

¹⁶ 問題が生じても，エホバと組織を信頼し続けることは可能です。でも，そのためには冷静さを保つ必要があります。穏やかでいること，物事を筋道立てて考えること，エホバと同じ見方をすることが必要なのです。私たちと同じような問題を乗り越えた聖書中の人物の手本について学び，じっくり考えましょう。助けを求めてエホバに祈ってください。会衆から決して遠ざかってはいけません。こうした努力をするなら，どんな問題が生じても，サタンが私たちをエホバと組織から引き離すことはできないでしょう。（ヤコ 4:7）