世界展望
「世の終わりの10年間」
◆ 『今の時代は他のどんな時代とも少しも変わらない』。少なくともこれはある人々の言い分であるが,幾つかの新聞に同時発表される特別欄の寄稿者マックス・ラーナーは異なった意見を持っており,次のように書いている。「一つだけ確かなこととして,高位者の腐敗の驚くべき発覚,エネルギーや食糧その他の資源の予想もしなかった新たな危機の同時発生,それに悲惨な戦争を起こしかねない危険地帯の問題などを考えれば,70年代の十年間は世界史上類例のない時代である。この70年代を世の終わりの十年間にしてしまい,またせいぜいのところ“生存があやぶまれた70年代”という名を歴史に記させるものとなる野蛮な出来事が続発するのを無視できる人は一人もいない」。
“不法な社会”
◆ アメリカで犯されている悪事の多くは“組織化された”犯罪のせいにされているが,ニューヨーク州立大学のドワイト・C・スミスの著わした新刊書「マフィアの持つ神秘性」は,大犯罪が実際に盛んになるのは一般の人々がそれを望むからであると論じ,こう述べている。「組織化された犯罪は社会的価値を脅かす力の産物ではあっても,その原因でないことは明白な事実である。我々が暴力を容認し,公正さ以上に個人的利得を重視し……富や権力そして自己満足を追求して自分たちのために喜んで法を曲げているかぎり……我々の社会はおおむね不法な事業を容認する所となるであろう」。
“砂塵あらし”の再来?
◆ 最近,アメリカのテキサス州の農業経営者の多くは,1930年代の“砂塵あらし”が盛り返しているのではなかろうかと恐れている。テキサス高原は約9万平方キロの広さがあり,アメリカでも屈指の食糧や繊維の産地の一つであるが,同地方における昨年の小麦の収穫高は豊作の年の生産高のわずか半分にすぎなかった。その原因の一つは天候不順であるが,それに加えて,同高原をうるおす広大な地下水脈であるオガララ帯水層が枯渇しつつあると言う説もある。テキサス水源開発委員会の理事H・バーレーはこう述べている。「世界的な貧困の恐怖はカクテルアワーの想像談義どころか憂慮すべき可能性の問題となっている」。
地球は異なっている
◆ 地球をその近くの惑星とは異なった存在にさせているのは何であろうか。最近のサイエンス誌の報告はこう述べている。「内惑星の中で地球だけが巨大な衛星を持っているが,それは地球の比較的定安した気象や,事によるとその強力な磁場をも説明するものとなるかもしれない」。その記事は次のようにつけ加えている。「アポロ計画の宇宙飛行士たちの報告によれば,宇宙から地球を眺めると,地球はその青い空と白い雲のゆえに,目にし得るものの中で断然最も魅力的な存在として映ずるとのことであるが,太陽系の他の惑星に関する情報が増えるにしたがってこの見解は確証される傾向にある」。
肥料としてのヘドロ
◆ 石油を原料とする肥料の価格が上昇しているため,代用品を求める農業経営者が増え,処理されたヘドロの需要は今や高まっている。「有機園芸」誌によれば,デンバー市では今やそのようなヘドロが農業用として用いられている。同誌はこう述べている。「現在,一日に500ないし600湿トンのヘドロが土地に施肥されている。これは一日につきだいたい90ないし100乾トン分の肥料に相当する」。デンバーの資源回復局長は,「これが二度と再び廃棄物と呼ばれなくなる日が来るであろう」と主張している。
女囚の同性愛者
◆ 1960年代に公民権運動の強力な指導者であったアンジュラ・デービスは,刑務所生活の一面を知って衝撃を受けたことを述べている。その刑務所の囚人はすべて女性であったが,夫婦や子どもおよび親族から成る“家族”が組織されていたのである。デービスはこう述べている。「この家族制度に関してわたしに最大の衝撃を与えたのは,その核心をなしていた同性愛である……それにしても,同性愛行為が刑務所生活にこれほど徹底的に浸透していようとは少しも知らなかったので,実情を見たわたしは衝撃を受けた……その家族制度の重要な要素の一つは結婚式であった。なかには,招待状を出し,正式の結婚式を挙げ第三者が“牧師”の役をしたりする非常に凝った式もあった」。
同僚の科学者からの圧力
◆ なかには,公には進化論を信ずると唱えながら,個人としては,事実は進化論を支持するものではないことを認める科学者がいる。そのような科学者はなぜ進化論の教えに固執するのであろうか。オクラホマ大学のエド・ブリック博士はその答えの一つを示しており,オービット・マガジン誌に同博士のことばが次のように引用されている。「科学者の間には専門職に伴う相当の“誇り”があり,創造を認めることによって自分の専門職にかかわる評判を喜んで危険にさらそうとする科学者は,それも特に生物科学の分野にはほとんどいないということを知らずにいる人は少なくない……例えば,ここオクラホマ大の大学院生の中にも……特殊創造説論者の立場を公に支持すれば出世を危うくすると,わたしに話した人もいる」。
動力源としての泥炭
◆ 石油危機以来,石油に代わる燃料として検討されてきたものの一つに泥炭がある。泥炭とは,石炭になる過程にあるとされている腐敗しかけた植物質のことである。世界の泥炭の半分以上はソ連にあり,同国には泥炭を燃料とした火力発電所が70余ある。フィンランドとアイルランドの両国も泥炭の大増産計画を持っている。ニュー・サイエンティスト誌によると,アイルランドでは泥炭の掘られた跡地が農地として開墾されている。世界の泥炭全埋蔵量の約14%を有する北アメリカでは,泥炭を燃料として開発する計画は立てられていない」。
「どちらが先に到来するか」
◆ 「社会の誠実さおよび道義の極度の退廃と極度の悪性インフレとのどちらが先に到来するかについては経済歴史学者は意見を異にしているが,その二者は同時に進行するように思える」と,アメリカン・ビューポイント協会の会長は述べた。広くはびこっている不正直と闘うために同協会は,「正直であることは馬鹿げたことでも愚かなことでもない」という考えを普及させる運動を始め,同会長はこう述べた。「我々は正直を社会的にも文化的にも『申し分のないこと』,気のきいたこと,できればまさに当世風の事柄にしたいと思っている」。
麻薬は撲滅されたか
◆ 1971年から73年にかけてアメリカ政府当局者は,麻薬関係の死者が1,726人から1,017人に減少したので,麻薬の乱用は『峠を越した』と考えていた。しかし,その喜びは長続きしなかった。1974年の最初の6か月間だけで麻薬による死亡者は700人近くに達し,7月から9月までの期間中前年同期に比べて死亡者の数は三分の二もの増加を示した。今や「我々はヘロインの使用が峠を越したなどとはもはや言えなくなった」と,米大統領府麻薬乱用防止局局長ロバート・デュポン博士は述べた。