世界展望
大学の限られた価値
◆ 「大学へ行くことは時間とお金の浪費だ」と,「今日の心理学」誌の最近号の一記事は述べている。その記事を書いたキャロライン・バードはこう述べている。「全米旅行をして種々の大学で講義をした際,教授や学校管理者に率直な意見を求めたところ,学生のうちまじめに学業に取り組んでいる者は全体の25%に満たない,と彼らが推定しているのを知り,驚かされた。残りの学生にとって大学は,良くて社交センターあるいは寝かせてある酒樽のように,不活発な学生を収容している制度,悪く言えば若者の家,あるいはあと数年間世の中の荒波にもまれないで済む刑務所のような所に過ぎない」。
肝炎と輸血
◆ 最近,米国の国立保健研究所が発表したところによると,輸血に伴う肝炎は,一般にA型(流行性)およびB型(血清)と呼ばれる肝炎の二つの型のいずれとも関連のない,未知のウィルスによって起きるのかもしれない。同発表によると,このウィルスは,注意深い血液検査をした後でもなぜ患者が重い肝臓病にかかるかを説明するものとなるかもしれない。
患者が“否”と言う場合
◆ 宗教上の理由のゆえに医療上の助言を受け入れられない患者に対して,医師は過度に批判的になるべきだろうか。オーストラリア,パースの一婦人科医は否と答え,こう述べている。「患者に対する自分の取扱い方に何らかの制限が加えられることを知らされたとすれば,医師にはそうした患者を扱うことを拒む正当な権利がある……一方,患者の見解を尊重して,そうした制限を受け入れる用意のある医師もいるかもしれない。ほとんどの場合,悲劇は起こらない。悲劇が起こったとしても医師に責任はあり得ない。また,患者に対して批判的になったところで,何の益にもならない」。
胎児殺し
◆ 米国イリノイ州の一婦人は,腹部を銃で撃たれたが,負傷しただけですんだ。しかし,検査の結果,妊娠9か月になる胎児が殺されたことが明らかになった。最近,陪審員は,銃を撃った男には殺人の罪があるという判断を下した。それでは,妊娠4,5か月の妊婦が胎児を堕胎させる場合,それが殺人でないなどとどうして言えるのだろうか。
救命艇の倫理 ― 医学版
◆ 人口問題に対処するための異常な提案を目にすることがいよいよ多くなっている。“救命艇の倫理”を採用して,富んだ人は自分自身を救うため,貧しい人に食物を与えないよう提案する人もいる。今や,アフリカのある国の政府機関の一医師は,病人を治療してはならない,と言っている,その医師は,中央アフリカ医学ジャーナル誌上で次のように述べている。「人間であふれそうになっている世界において,不必要に人命を救うことは,絞首刑に価する刑事犯罪とみなされるべきである」。
金銭だけが目的ではない
◆ 米国における犯罪の増加の原因は,最近の不況にあると,しばしば指摘されている。しかし,ボストン・サンデー・グローブ紙は次のように述べている。「だが,この仮説は,比較的好景気だった1960年代に犯罪が着実に増加した理由や,1974年に景気の良かった地域で犯罪が増加した理由を説明してはいない。例えば,1974年にヒューストンでの失業率はわずか3.6%であったにもかかわらず,凶悪な犯罪は11%も増加した」。
最も増加している犯罪
◆ 米国で最も早く増加している主要な犯罪と言われているのは何だろうか。それは強姦でも殺人でもなく,放火である。1975年度のこの犯罪による損害は,明らかになった分だけでも10億㌦(約3,000億円)を超えると考えられている。そして,その損害額は毎年10ないし15%ずつ増加している。増加の理由は様々だが,最もよく知られているのは,保険金の支払いを受けるために家屋に放火する,いわゆる“保険金目当ての放火”である。こうした放火が増加している一因は不況にあると言われている。
理不尽な進化論
◆ 発生上の突然変異によって進化が起きたという説は,ここ数か月の間に大変疑問視されるようになった。科学者たちは,人間とチンパンジーから採取した44種の異なったタンパク質を比較すると,その99%以上は同一であるとの結論を出した。ゆえに,人間とチンパンジーは親類であるというのが彼らの説である。ところが,もっと密接な関連があると考えられる二つの生物を比べると,どのようなことになるだろうか,ニューヨーク・タイムズ紙はこう述べている,「解剖学的にも生態の面でも似ている二種のカエルの間には,人間とチンパンジーの間に見られるタンパク質の相違よりも,30ないし40倍も多い相違が見られる」。
背中の痛みを和らげる
◆ 背中の痛みを予防できるような運動や特別な寝相があるだろうか。ジョージ・ワシントン大学の整形外科学の教授ヘンリー・L・フェファー博士は,次のように答えている。「もし,すべての人が毎日,泳げるなら,それに越したことはない。散歩も悪くない。重い物を持ち上げる必要はない……横向きになって体を丸くして寝るか,背中を伸ばすためにあお向けになってひざを立てて寝たほうが楽になるように思われる」。
火事の際に逃げ場のないロック・コンサート
◆ 自分の子供が騒乱の中でけがをしたり,麻薬や悪い交わりにさらされたりすることを恐れて,子供たちをロック・コンサートに行かせない親は少なくない。米国内でも有名な一劇場でロック・コンサートが開かれた時のこと,同劇場を訪れた特別欄寄稿家マイク・ロイコはデトロイト・フリー・プレス紙上,子供たちをロック・コンサートに行かせないもう一つの理由を付け加えている。「我々は,劇場内の至る所で非常口の錠が下ろされ,ある出口などは鎖まで掛けられているのを見た……公会堂の南側から外に通ずる12か所のとびらのうち,8か所には錠が下ろされていた」。14歳から18歳までの年齢層からなる若者たちの大半は,マリファナを吸っていた。「禁煙の規則は彼らには通用しないようであった。こうした何百本ものたばこのうちのどれかから引火したり,どこかの気違いが煙幕弾でも投げ込んだりしようものなら,若者たちはいったいどこへ……殺到するのだろうか」。ロイコは,その劇場の閉ざされた状況の下では,「長髪の子供たちはまるでたき火のまきのように折り重なって焼け死ぬことだろう」とも述べた。
命を救うベルト
◆ 現時点において,車が衝突した場合,死を免れる最善の方法は何だろうか。「1969年以来,西部ニューヨークで……3万件の事故を対象に行なわれた調査の結果,腰および肩の安全ベルトを着用していた約500人の運転者中,死亡事故は一件もなかった」とマシン・デザイン誌の報道は述べている。この調査は,2万8,000件の事故を対象に行なわれた過去のスウェーデンの調査の結果を確証している。スウェーデンでの調査は,「時速100㌔以下で衝突した場合,腰と肩の三点ベルトを着用していた運転手で死亡した人は一人もいなかった」ことを示している。
住み慣れた環境
◆ 最近日本では,母親の心臓の鼓動や母胎内の様々な音を録音したLPアルバムが飛ぶように売れている。日英両国のテレビでその録音が再生されると,その音が新生児をなだめるのに効果のあることを親たちは報告した。その録音技術を開発した日本の医師は,自分の行なった実験で403人の幼児がその音を聞いて平均41秒以内で泣きやんだ,と述べている。そのうち三分の一余が眠りについた。その音は,生後2か月までの幼児に効果があると言われている。
“私設”警察
◆ 『一般の市民は,今や公の警察官よりも私設警備員と,より多くの個人的な接触を持つようになっている』とニューヨークの刑法学者は述べている。また,米国法執行援助局の当局者は,「一年間に私設警備員のために支払われる金額が警察の予算よりも多いことを各種の調査は示している」,と述べた。
二人の主人
◆ フィリピン,マニラ市のザ・タイムズ・ジャーナル紙は,最近地元のカトリック司祭に,その司祭の教会と土地の異教的な秘術とが一見調和していることについてインタビューした。クイアポ司祭館のモンシニョール・エトルイステは,「二人の主人に同時に仕える」ことを自分が人々に許すのは,カトリック教会自体の態度と一致している,と述べた。「わたし自身,それらの人々が[カトリックの]9日間の祈りが終わるとまっすぐ“マンフフラ”[占い]のところへ飛んで行くのを見ている」と述べたエトルイステはまた,次のように付け加えた。「わたし自身,神秘学を扱った書物を数多く持っている」。
たばこのもたらす別の害
◆ 紙巻きたばこは人の健康に害を及ぼすだけでなく,別の面でも有害である。紙巻きたばこの密売は利益が大きい上,危険が少ないので犯罪者たちを引き付けている。なぜだろうか。米国のある大手のたばこ会社の販売部長はこう述べている。「我々が紙巻きたばこを売り渡してから後,それがどこへ行こうと我々の知ったことではない」。また,ビジネス・ウィーク誌は,「警察当局,たばこ会社,および消費者の大半が共通して」そのような態度を取っている,と報じた。密売者たちは,たばこ消費税の低い,たばこ生産州で紙巻きたばこを仕入れ,それを税金の高い州に輸送する。その差額が利益となり,トラック一台分で,2万ドル(約600万円)余にもなると言われている。
滑空の危険
◆ ハング・グライディング(たこにつかまって滑空するスポーツ)は急速かつ異常な人気を集めている。滑空する人は,たこにつかまって気流に乗るのである。米国ではこのスポーツの愛好者数は1972年には200人であったが,現在1万1,000人にまで増加し,たこは毎月1,000個の割合で売れている。米国整形外科学会のスポーツ医学分科会で,アーサー・E・エリソン博士は最近その危険性に関して忠告した。カリフォルニア州だけでも毎月平均1人の死者が出ている。ある治療センターには滑空中の事故で負傷した対麻ひ患者が6人入院している。同センターの医師は安全規制を確立するよう提案しているが今のところ何ら規制されていない。
科学がもたらした矛盾
◆ 最近,著名な科学歴史家ローレン・C・アイズレーは次のように警告した。「人類が次の世紀まで生き残るためには,科学技術がいつの間にか地上にもたらした」― 人口爆発や公害に始まり,軍備競争やエネルギーの浪費に至るまでの ―「破壊的な力を制御する方法を科学技術によって開発してゆかねばならない」。同氏はまた,「こうした荒廃のすべてが科学技術の成功に根ざしている……ということは,科学時代最大の矛盾である」と述べた。
ガンの治療費
◆ 伝えられるところによれば現在,米国でガンの患者を治療するために,一年間に70億ドル(約2兆1,000億円)余の費用がかかる。この金額はガンの研究に費やされる予算の10倍以上に上る。米国には約130万人のガン患者がいる。