世界展望
彼らは“平和”を語る
◆ 世界の指導者たちの会議として過去110年来最大のものが去る7月30日から8月1日までの間フィンランドのヘルシンキで開かれた。ヨーロッパの安全と協力に関する会議と呼ばれたこの会合は,参加各国が指針とすべき諸原則をまとめた宣言書の署名をもって終了した。ソ連共産党の指導者レオニド・ブレジネフは,この会議が世界平和に重大な貢献をするかどうかについて初日に尋ねられた時,次のように述べた。「私は平和と静けさがヨーロッパに行き渡ることを望んでいる。すべての国の民が平和に暮らし,他国の事柄には互いに干渉しないことを望んでいる」。平和という目標が,これから結ばれる協定によって達成されると思うかどうかについて再び尋ねられると,ブレジネフは,「そのとおりだと思う」と答えた。米国大統領ジェラルド・フォードも,「世界の平和」が,その協定によって促進されることを何よりも信ずる,と述べた。また,ブレジネフは,この会議の成果に関して席上こう述べた。「勝利者も敗北者もいない……地球の平和と安全を愛する者すべてにとって,この会議は益となる」。
むだの多い宇宙開発
◆ 米ソ両国の宇宙飛行士と観測装置をのせて最近行なわれたアポロ・ソユーズ宇宙旅行計画は,宇宙時代の一時期の終わりを画するものとなった。米国のアポロ計画は,今回をもって終了した。しかしUSニューズ・アンド・ワールド・リポート誌によると,「ほぼ10億㌦(約3,000億円)相当のロケットや宇宙船が倉庫に入れられつつあり,そうした装備のどれかがいつかまた宇宙を飛ぶ見込みはなさそうだ,と当局者は語った」。
2,000年以上も保存された遺体
◆ 考古学者は,最近,中国の中部地方にあるチンアンチェという町で,非常に良く保存された人体を発見した。三重になったひつぎの中で赤味がかった液体に浸されていたその死体は男性で,紀元前167年に埋葬されたものと思われる。炊事用具,衣服,くつなど500点以上の物品が,その同じ深い穴の中で発見された。その人体は,身長が163㌢,体重は52キロあると言われているが,非常に良く保存されているため,関節を動かすことができ,皮膚にはまだ弾力性があった。
足元にご注意
◆ ある公式の報告が示すところによると,米国カリフォルニア州に住む人で,ガラスの破片,カン入り飲料の引き起こしつまみ,その他の廃物などを踏み付けてけがをする人は,毎年30万人にも上る。
命知らずの賭博者
◆ 世界的に有名なラスベガスの賭博街は,最近同地を襲った鉄砲水のために泥の海と化した。二人がこの洪水で命を失った。ところが,「気まぐれなあらしの後,ひざ下まで来る水の渦巻くなかで,ズボンのすそをたくり上げた,はだしの賭博者たちがスロット・マシンにコインを入れ続ける姿の見られるカジノもあった」とニューヨーク・タイムズ紙は報じた。
“克服し難い”病気
◆ 世界保健機関(WHO)は,天然痘を克服したと主張しているが,その一方では,幾百万ドルも投じた19年にわたる闘いの末,いまだにマラリヤを克服できないでいることを認めている。ハーフダン・マーラー事務局長は次のように述べている。「我々は,世界的な規模での撲滅は可能であるとの虚勢を張り続けようとしたが……今や敗北を認めねばならない。失敗を認めるのは非常に難しいことであり,この組織に撲滅のための計画を前進させるだけの力がないことを認めるまでに随分長い時間がかかった」。
引き返す時を見分ける
◆ 山歩きを楽しむ人は少なくない。しかし,突然のあらし,強風,気温の低下などにさらされて体温の低下を食い止められず,低体温状態になる人が,夏でさえ毎年何百人を数える。米国ニューハンプシャー州のホワイト・マウンテンだけでも,過去一世紀の間に体温低下のために死んだ人が何十人もいる。登山者は,十分に食事を取り,最悪の天候に備えて身仕度し,天気が悪くなったら引き返すよう勧められている。
大アリ ― いつでも害虫?
◆ 南アメリカの大アリは,長い間害虫とみなされてきた。大アリは群れをなして行進し,種々の生き物や植物をむさぼり食い,非常に広い地域を荒らす,と言われている。しかし,最近エクアドルの森林を調査したこん虫学者たちは,大アリが主食として他のこん虫も食べることを発見した。エクアドルの村人に尋ねるなら,大アリの行進には良い面がある,と答えるだろう。これらの村人は,大アリが行進して来ると一日か二日の間自分の家を空けて出る。大アリが他のこん虫類を殺した後に,村人たちは自分の家に戻って来るのである。
自殺は他の人を危険にさらす
◆ 米国メリーランド州の国立精神衛生研究所の医師,H・レズニックによると,毎年およそ1万2,500人の罪のない人々が,自殺を試みた人の巻き添えになって死傷している。例えば,閉め切った車庫の中で自動車のエンジンをかけたままにし,一酸化炭素ガスを吸って自殺しようとする人の場合,そのガスが隣接した家々に漏れ,他の人たちを死なせたり害を与えたりする。ビルから飛び降り自殺をする人は,歩行者を死なせたり,重傷を負わせたりする。また,対向車に自分の車を故意にぶつける自殺者は,相手を死なせるか,不具にする。それに加え,自殺は家族の成員,特に残された子供に感情的な傷を与える。
風車による動力
◆ かつて米国の農場では,灌漑用の動力として風車が大きな役割を果たしていた。今でも農業地域には,旧式な風車が約17万5,000台残っており,その半分は使用可能であると言われている。エネルギーの費用が高くなるにつれて,風車が補足的な動力源として見直されてきた。発電用の風車はすでに生産が始まっている。工業用の大型風車の実験も行なわれている。
急増した私設の警備員
◆ ニューヨーク市における最近の調査は,私設の警備保障業が目覚ましく伸びていることを明らかにした。保安コンサルタントのシドニー・C・クーパーは,ニューヨークにはおよそ7万5,000人から10万人の私設の警備員がいると述べた。「その数字は,ニューヨーク市警察の警官3万人,輸送保安隊の警官3,200人,港安管理委員会の警官1,200人,公衆衛生局の警官240人を合計した数をはるかに上回っている」と,ニューヨーク・ポスト紙は述べている。私設の警備員は,商店,アパート,工場などで勤務しており,どこの町にも市街パトロールのために制服を着た警備員がいる。
断種の増加
◆ 米国では,避妊を目的として断種という手段を取る夫婦が少なくない。1965年には全体の12%だったものが,1973年には29%に増え,しかも断種を計画していると答えた人がほかに14%もいた。家族成長全国調査会によって行なわれたこの調査によると,こうした手術を受けた人は男性と女性がほぼ半数ずつであった。
危険な巡礼
◆ ナイジェリアの回教徒による伝統的なメッカ巡礼は,相当数の人に致命的な結果をもたらしていることが明らかになった。ラゴスのデイリー・タイムズ紙の伝えるところによると,「昨年,985人のナイジェリア人が,サウジ・アラビアで死亡したと公表された」。貧弱な宿泊設備,直射日光,飢え,不十分な医療施設などが原因で死者が出る場合が少なくないと言われる。デイリー・タイムズ紙は,いわゆる“巡礼者の旅を世話する業者”の無分別な行動にも責任があるとしている。
乳がんによる死亡者
◆ 世界保健機関の一調査は,現在,早期発見や手術の面で努力が払われているにもかかわらず,乳がんで死ぬ女性の数が以前より増加していることを明らかにした。この調査によると,アジア,アフリカ,ラテン・アメリカのほとんどの国では乳がんの死亡率の低いことがわかる。しかし西ヨーロッパや北アメリカでは,乳がんで死亡する人の割合は平均して25人につき1人である。「残念ながら,現在の治療法は,個々の患者に効果がある場合は決して少なくないが,乳がんの治療そしてこの病気で命を失う女性を救うという点で,全体的には何ら良い結果を得ていないようである」。同調査報告はこう述べている。北アメリカおよび西ヨーロッパでは,子供を母乳で育てることがあまり一般的ではない。これが乳がんの発生率を高くしている一つの要因と考える人も少なくない。
ハドリアヌス皇帝の古代の彫像
◆ 去る七月末,イスラエルのベイトシェアンで,あるアマチュアの考古学者は,ローマ皇帝ハドリアヌスの等身大のブロンズ像を発見した。ニューヨークの株式仲買い人でイスラエルを訪れていたモートン・ルベンタルは,彼が使っていた金属探知器の発信音に従って地面を掘り始めたところ,西暦二世紀の彫像の頭の部分がうつ伏せになっているのを発見した。その像は砕けてはいたが,再びつなぎ合わせるのは大して困難ではないと判断された。伝えられるところによると,その彫像は何万㌦もの価値があるらしい。その年代はまだ確かでないが,ハドリアヌス皇帝の治めていた西暦117年から138年の間の作品と推定されている。
過去30年間で最大の赤字
◆ 去る6月30日に終了した1975会計年度中,米国政府は442億㌦(約13兆2,600億円)という過去30年間で最大の赤字を出した。先の12か月間に,同政府の歳入は所得税その他の収入項目の形による2,809億㌦(約84兆2,700億円)であり,歳出は3,251億㌦(約97兆5,300億円)であった。同政府は過去18年間に16回の赤字を出したが,今会計年度の赤字は,戦時中の1945年以来最大のものである。
二つの公用語
◆ 南米のペルーには,現在,スペイン語とケチュア語の二つの公用語がある。ペルー,ボリビア,エクアドル,北アルゼンチン,およびチリに住む何百万人ものインディオたちは,インカ時代にアンデス山脈一帯に広がった昔の言語,ケチュア語を話す。去る六月の初め,ケチュア語はペルーの第二公用語となった。それでペルーは今,ラテン・アメリカ諸国で二つの公用語を持つ二番目の国となった。最初の国はパラグアイで,そこではおもにスペイン語とグワラニー語が使われている。
夜更かしの健康に及ぼす影響
◆ 多少の個人差はあるが,就寝時間が習慣的に遅い人は,そのために健康を害している場合がよくある。米国ニューオーリンズ・パブリック・サービス社によると,そのような人は,目が疲れる,聴覚が弱まる,普通以上に短気になる,憂うつになる,といった問題にぶつかる。そしてもう一つ大切なことだが,完全に衰弱してしまうことがある。昔のことわざに,「早寝早起きは富と健康と知恵のもと」というのがある。確かにこれを実行すれば,あなたは少なくとも今より健康になる,あるいは今の健康状態を維持できるはずである。