世界展望
お偉方の犯罪
● 米国にはホワイトカラーによる犯罪の波が押し寄せており,罰金を科されたり,価格操作・贈収賄・不正なリベート・脱税・公害などの重罪のとがめを受けたりする会社や管理職員が次第に増えている,とUS・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌は述べている。過去10年間に,米国の大手500社のうち,少なくとも一つの重罪のとがめを受けたり,ゆゆしい違法行為のために民事訴訟で違約金の支払いを命じられた会社は115社に及んだ。会社の首脳部が道徳的な面で敏感であると会社は法律を遵守するが,首脳部が金銭に飢えていると,「捕まることこそ本当の罪だ」がモットーになる。
会社の犯罪の費用を最後に払わされるのはだれだろうか。消費者である。その額は年間,推定2,000億㌦(約50兆円)に達する。「義なる者が多くなると,民は歓び,邪悪な者が支配を行なうと,民は嘆息する」という昔からの原則は,会社の首脳部にも適用できる。―箴言 29:2。
フォークランド紛争の副産物
● フォークランド危機の経済的副産物の恩恵にあずかろうと,商魂たくましい人々は英国の書籍売店に急ごしらえの紙表紙本<ペーパーバック>を次々と送り込んだり,ゲームを開発したり,テレビのドキュメンタリー番組を企画したり,その戦争を下敷きにして創作した話を映画化したりしている。英国の一航空会社は,フォークランド諸島の戦場へのセット旅行を始めた。直ちに手に入る利益に対するこの渇望はオーストラリアの海岸にも押し寄せており,その地にあるメルボルンのザ・サン紙はこう報じている。「戦争に対する大衆の関心が高まると,軍用機や軍艦に関する書籍の売上げも増大する。戦争ゲームの需要も増えている」。放射性降下物退避所の注文がブームを呼んでいることも注目を浴びており,メルボルンの一つの会社では,自社の帳簿に退避所の未処理注文が50件載せられている。
失業するヨーロッパ
● 1,100万人のヨーロッパ人が失業しており,1985年までにはそれに400万人が加わるであろう,と欧州共同市場の社会問題担当の理事は推測している。そして英国の失業問題は,雇用に関する統計が初めて記録された1886年以来,最大の規模に達している。ロンドンのザ・リスナー紙の論説によると,この失業者の洪水を以前のものと異ならせているのは,現在のグループには,専門職の熟練した労働者が含まれていることである。「失業の世界」と題する本はこう主張する。「仕事が極度に減少してゆくため,80年代半ばまでに失業問題は世界のどこにでも広く見られる状態の一つとなるであろう。……ヨーロッパ人の6分の1は失業しており,3分の1は最近失業を経験したことがあり,また80%の人々の生活は,友人や家族が職を失うことから影響を受けるであろう」。
ダウン症候群の手術
● イスラエル人の心理学者,ロイベン・フォイエルシュタイン博士は,ダウン症候群の子供たちを余り目立たなくさせるための方法として,形成外科手術を提唱している。1977年以降二人のドイツ人の形成外科医が「フランクフルトの聖マルクス病院でダウン症候群の3歳から24歳までの子供たち250人以上に手術を行なってきた」と,ニューヨーク・タイムズ紙は述べている。1時間半にわたる1回の手術で,「医師たちは一般に,子供たち各人の突き出た舌のサイズを小さくし……耳を頭の近くに持ってゆき,垂れ下がった下唇を上にあげ,まぶたの軸を変え」たが,目に見える傷跡は残らなかった。この手術をしても子供たちの外観が全く正常に戻るわけではないが,「子供たちが人間として見られ,社会的に受け入れられやすくなる機会を与える」とフォイエルシュタイン博士は語っている。
喫煙で少年をしのぐ少女たち
● ベルギー,カナダ,デンマーク,フランス,ギリシャ,オランダ,イタリア,ニュージーランド,ノルウェー,スウェーデン,スイス,西ドイツ,米国,ウルグアイの十代の少女は,同年代の男子と同じほど,あるいはそれ以上たばこを吸うことが,WHO(世界保健機関)の調査で明らかになっている。WHOは22か国を調査し,幾つかの例外はあるものの,喫煙が十代の若者全体の間で増加していることを突き止め,女性に対する次のような警告を発した。「女性の喫煙の増加は,以前にも増して多くなっている経口避妊薬の使用と相まって,後年,脳血栓や脳出血,それに冠状動脈の病気などの,循環器系の疾患が生じる可能性を高める」。
巨大なイカが捕まる
● ニュージーランドのオークランドで発行されているスター・ウィークエンダー誌の報道によれば,ニュージーランドのクライストチャーチ沖128㌔の海で操業していた1隻のトロール漁船が,2.5㌧もある巨大なイカを網にかけた。このイカは体長8.5㍍,その足は3.8㍍あり,吸盤は正さん用の皿ほどの大きさで,目の直径は60㌢もあった。このトロール漁船の一人の乗組員は,「あんなイカは今まで見たことがない」と語った。このイカは海に投げ返された。
宗教における同性愛者
● カナダ連合教会は,「肯定する<アファーム>」と名付けられた,男女の同性愛者から成る全国的グループを結成した。これで,カナダにおいて全国的な男子同性愛者の組織を支援する主要な宗教団体の数は三つになった。ほかの二つとは,「忠誠<インテグリティー>」というグループを抱える聖公会と,「威厳<ディグニティー>」といわれるグループを持つローマ・カトリック教会である。「肯定する<アファーム>」は同性愛者の僧職者の叙任に関する決定を下す際に連合教会を援助する。しかし,トロント・スター紙の伝えるところによると連合教会の中には,同性愛者の叙任は聖書の原則と矛盾するという声もあり,彼らは「同性愛者と公言する悔い改めない人々の叙任は聖書の証しに反する」という陳情を教会に行なった。
キングサイズの問題
● 世界で最も統治期間の長かった君主(61年),ソブーザ2世国王の死は,スワジランドという小王国に二つの大問題を残した。その一つは,葬式の際に隣国レソトの王,モシュシュ2世が,「アフリカ最大の指導者の一人」,また「平和の人」と評したこの人物の代わりを探すことである。ソブーザ国王の善良な特質は,エホバの証人など迫害を受けている少数派のグループを擁護する点などにしばしばうかがわれた。
二つ目の問題は,そのような後継者を王の600人の子供から選ぶことである。同国王は自分の王座の継承者を具体的に指名することなく急逝した。アフリカ最後の支配王朝の一つの元首であったこの人は,100人の妻を残している。そして継承問題をより複雑にしているのは,スワジランドの人々の20%が,王家の名前をもって任じていることである。
東ヨーロッパを覆う公害
● 幾年もの間共産主義者たちは,環境汚染を資本主義のもたらす結果とみなしてきた。しかし現在,産業公害は東ヨーロッパ全体に広がり,深刻な問題を引き起こしていると伝えられている。ポーランドの川の半数は危険なほどに汚染されているという。このことに促されて同国の政府出版局はこう言明した。「この点に関する状況は,国内のある部分においては深刻を極めており,生態学的な災厄が近づいているという声がささやかれるほどである」。加えて,チェコスロバキアのプラハでは,石炭炉と家庭用ストーブが出す亜硫酸ガスの水準が,世界保健機関の定める最大許容量の3倍に達している。東ドイツは,公害の主要な源として,化学物質および自動車の排気ガスに加え,石炭の燃焼を挙げている。ハンガリーの行楽地,バラトン湖には,その汚れた水をきれいにするため幾百万ドルものお金がつぎ込まれている。
祈りのための磁石
● メッカの方角に向かって毎日祈らなければならない幾億というイスラム教徒にとって,どの方向に向いたらよいかという問題が生ずる。英国に本社のある会社が,ある特別な「祈りのための磁石」を開発することによって問題を解決した。その磁石は世界中のどこにいようと,メッカの方角を探知するために用いることができる。この磁石は大変大当たりし,注文が殺到している。ある会社などは,自社が作った,祈りの際に用いるひざ敷きの角に縫い付ける磁石を100万個も注文してきた。
“虫の部屋”
● エール大学ピーバディ自然博物館には不思議な“従業員”がいる。それは虫である。エール大学は過去20年にわたり,展示の前に「内臓を除去し,乾燥させた動物の骨格から肉を取り去る」ためにシデムシを用いてきた,とパレード誌は述べている。動物学者たちの間では,動物の小さく込み入った死体をきれいにする面では人間よりも甲虫のほうが良い仕事を行なえることは昔から知られていた。これらの昆虫労働者が小さな死体をきれいにするには数時間しか掛からないが,大きな死体になると数日掛かる。動物たちの死体は,この虫たちの住んでいる縦1.2㍍横2.4㍍の博物館地下室に運び込まれる。この虫たちは食物について好き嫌いを言うだろうか。そういうことはないが,蛇よりも海生動物のほうが好まれる。だれがそれを非難できるだろうか。
初産を済ませた母親の感情
● 初産を済ませた母親の気分は,我が子への高揚した気持ちから,憂うつで心配な気持ちにまで大きく揺れ動く,とカナダ,トロントの産後計画の看護婦,キャシー・コームは述べている。産後の最初の6週間は,初産を済ませた母親にとって感情的に最も困難な時期である。柔軟性とユーモアのセンス,それに他の人々からの理解と支えが,問題に対処する上で母親の助けになる。コームはこう述べている。「私が観察した最大の問題の一つは,女性が万事を完全に行なおうと非常に真剣になることです」。トロント・スター紙によると,コームの提案には次の点が含まれる。「最初の数週間,女性は家事を成り行きに任せ,赤ちゃんに添い寝をする時間を取るべきである。よく食べ,赤ちゃんと昼寝をする時には電話の受話器を外し,物事をすべてその場その場で取り扱うようにすべきである」。
信仰心に欠けた宗教教師たち
● 公立学校で宗教を教える120名の教官に教会からの認定を付与するに当たり,ドイツ連邦共和国レーゲンスブルクの司教は,同国全体にわたって,「宗教を教える教官たちの中にさえ信仰の欠如」が見られることについて警告を与えた。フランケンポスト紙によると,同司教はトリールの司教区で行なわれた調査の「驚くべき」結果を根拠にこの訓戒の言葉を発したが,その司教区では公立学校の制度内で宗教を教える司祭の40%,平信徒の70%までが,「もはや教会の教義の基盤の上に立っていない」。この「信仰の欠如」は,トリールがドイツのカトリック教の拠点とみなされている事実からすると,一層顕著なものになる。
ルター派の信者が武器の凍結を支援
● 世界の緊張がますます高まっているため,幾百万もの人々は核戦争の脅威が増し加わっていることにはっきり気付くようになっている。解決のため,宗教の支援を受けた政治運動に期待をかける人は少なくない。例えば,230万人の信者を抱えるアメリカ・ルーテル教会と,290万人の信者を抱えるアメリカにおけるルーテル教会は,「地上から核兵器を廃絶すること」を唱道する同じ決議を承認した。両教会は,世界の核兵器の蓄積をとどめるだけではなく,核兵器の性能を下げることを求める「平和への要求」を採択した。両教会は,米国が「ソ連や他の国々に呼び掛け,我々と共にミサイルの核弾頭の数を凍結し,それを徐々に減少するよう」勧めている。