ポルノという名の疫病 ― あなたはお気づきですか
ひそやかに人を冒す疫病があなたとご家族を脅かしています。早くも幾百万という人々がその影響を受けています。それは,原子炉の事故によって生じた,目に見えなくとも確実に死をきたす降下物のように,事態の進展を人々が十分に理解しないうちに,ひそやかに住民全体に降りかかります。その疫病とはポルノです。
人々はこの疫病について誤解しているので,危険に気づかないまま,病気が確実に広がってゆくのを眺めているだけです。例えば,これが大都市だけの病気であると考えるなら,あなたもご家族もその病気に冒されやすくなるでしょう。今日この病気は小さな町でも猛威を振るっていますし,家庭,学校,図書館,刑務所,職場などにも入り込んでいます。
ご家族の皆さんを脅かしているものを製作している,あるいはそれと関係しているのは“好色な中年男”だけだと考えるのも,的外れです。ボーイスカウトの指導者,弁護士,俳優,実業家,僧職者,それに13歳未満の子供まで,読者には思いもよらない人たちがこの疫病に関係していると言われてきました。
有害なこの病気の保菌者となっているのは,雑誌,本,映画,テレビならびに有線テレビの番組,ビデオテープやビデオゲーム,音楽,広告と,枚挙にいとまがありません。読者が加入している電話会社でさえ保菌者となっているかもしれません。“テレホンポルノ”のサービスを行なっているところもあるからです。“成人向け”の映画館,ビデオショップ,書店なども急増しています。
かつてセックス産業の業界紙は,「1979年の米国には,マクドナルドのレストランの3ないし4倍も多くの成人向け書店が……あった」と誇らしげに書きました。あなたはこの疫病がこれほどはびこっているとは考えておられなかったかもしれません。しかし,この事実は,この疫病がいかにこっそりと,しかも執ように広がってきたかを物語っているにすぎません。
もちろん,ポルノは20世紀だけの疫病というわけではありません。春画はごく古い時代から存在していましたし,古代の文化には神殿娼婦や男根像の崇拝が付き物でした。ローマ帝国の時代の堕落したポンペイの町では,ポルノ的な絵画が特色となっていました。ポルノには長い歴史があるのです。
利益を得るために広く伝染させる
現代が昔と違うところは,この病気が急激に伝染したため,ポルノが有利な主要産業の一つになってきたことです。ポルノの製作者は近代的な装置を利用して莫大な量の商品を作り出し,それを疫病の域に達するほど世界の市場に充満させています。次に挙げる驚くべき数字はそのことを反映しています。
カナダ ― シャテレーヌ誌は,カナダにおけるポルノの売上高を「年間約60億㌦(約9,600億円)」と算定しています。「カナダにおけるポルノと売春」という刊行物の報告は,「年間約5億㌦(約800億円)」が組織犯罪へと流れている,と述べています。オタワの警察署長の推定によれば,警察当局に毎年押収されるポルノ文書だけでも,2,000万㌦(約32億円)余りの額に上るということです。
米国 ― カリフォルニア州司法局は,同州の1978年におけるポルノは「年間40億㌦(約8,000億円)の利益の上がる企業」であったと評価しました。別の報告には,「主だった十種類のポルノ雑誌」から年間4億7,500万㌦(約760億円),「成人向け」の映画館からは年間3億6,500万㌦(約584億円)の利益が上がったことが示されています。ニューヨーク市のタイムズスクエアにある,ある「成人向け」書店は1日に1万㌦(約160万円)の収益を上げることができます。同市の一テレホンポルノにより,電話会社だけでも1日当たり3万5,000㌦(約560万円)の利益を得ています。アメリカの12を超える大都市で営業しているこうした“サービス”会社1社には,1日平均50万件の申し込みがあります。
商品に内密な性質のものが含まれているだけに,正確な数字を把握するのは簡単ではありませんが,ある情報筋によると,北アメリカのポルノの売上高は「ビデオを除いても,年間120億㌦(約1兆9,200億円)ないし500億㌦(約8兆円)に上る」ということです。
ほかの国々 ― 1984年,日本の「繁栄するセックス産業」は「十代の少女向けの露骨なセックス雑誌」で書店をあふれさせました。政府はそれらの出版物を書店から追放するため,敏速な処置を講じました。莫大な利益を上げているスウェーデンのポルノ産業は,「露骨なポルノ雑誌を[月に]50万冊」売っています。インド,マレーシア,ブルガリアでも,若者たちに対するビデオポルノの影響が感じられます。また,AP特電によれば,中国では「容易に手に入る」わいせつな読み物などが急増しているため,政府は1985年に同国におけるポルノを禁止しました。
明らかにこの疫病は身の回りの至る所で猛威を振るっています。それがいとも容易に家庭に入り込んだり,あるいは街角のどんな店ででも手にしたりできるような形で存在していることを知っていただきたいと思います。
しかし,ポルノに「疫病」というレッテルを貼るのは本当に正当なことでしょうか。ポルノが有害であるという証拠はありますか。正直なところ,ポルノがあなたやご家族の皆さんにとって現実の脅威であると言えるでしょうか。厳重な検閲を行なったり,禁令を出したりするのは,自分の好きなものを読んだり見たりする権利を拘束することではないでしょうか。