世界展望
胸の悪くなるビデオ
心臓切開手術の最中の患者が心拍停止で死亡する。革命家が銃殺隊に処刑される。囚人が電気いすの上で死ぬ。国立公園の管理人がワニに食い裂かれて死ぬ。これらは最近,貸しビデオで見ることができるようになった現実の場面の一部である。「死の表情」と銘打った,3巻一組みのこのビデオは,人の死んでゆく様子を克明に映し出す,身の毛もよだつようなフィルムである。このビデオに対する一般の人々の反応はどのようなものだろうか。米国バージニア州のバージニアビーチにある一ビデオ・ショップの店員は,同州で発行されている「バージニアン-パイロット・アンド・レジャー-スター」紙に,「このビデオがうちの店でたなざらしになることはまずありません。入荷するとすぐ借りに来る人がいるからです」と語った。ビデオの内容に反感と怒りを抱いた一視聴者は,このビデオを一掃するよう地元のビデオ・ショップに呼びかける運動を繰り広げた。その女性はこのビデオに関して「ひどくポルノ的な作品です」と感想を述べた。
高くつく防犯対策費
万引きによる小売店の被害額が年間約300億㌦(約4兆8,000億円)にも上るため,米国で万引き対策を講じる企業が増えているのも無理はない。そうした対策の一つに,ターゲットと呼ばれるEAS(電子部品監視)製品がある。プラスチック製の円盤を衣料品などに取り付けたり,「人間の髪の毛のように細い磁気ファイバー」あるいは「電子回路を,使い捨ての値札に組み込んだり」する方法がある。客が店に代金を支払う時は,店員が“ターゲット”を取り外すか,その機能を解除することができる。この装置を採用している店に来た客は,“ターゲット”の機能が正しく解除されていない場合に警報を発する設備を通らなければ外に出られない。この装置の売上高はすでに1億5,000万㌦(約240億円)に達している。
風邪の新しい治療法
ノルウェー人のきこりが風邪を引きにくいと言われるのはなぜだろうか。オラブ・ブレンデン博士によると,その答えは,彼らが吸い込む薪の煙にある,とロンドンのタイムズ紙は伝えている。風邪のウイルスは十分な量の酸素がなければ繁殖できない。しかし,ウイルスの繁殖はビタミンBやCによって防ぐことができ,さらにポリフェノールも同様の働きをすると考えられている。これらの物質は,ノルウェー産の薪の煙にも含まれており,鼻腔の粘膜に供給される酸素の量を制限する。これら3種類の成分を含んだ点鼻薬をノルウェー空軍の職員300人が試用したところ,風邪の完治率は82%だったと伝えられている。「要は,風邪の初期症状が認められたとき,つまり,鼻腔の粘膜上皮がウイルスに少しも冒されないうちにこの点鼻薬をさすことである」と,研究主任のアントン・ロダール博士は力説している。ノルウェーでは今年からこの点鼻薬が市販されるようになった。
ファクシミリで神頼み
日本では,名門校を目指す生徒たちが科学技術を駆使して神頼みを行なっている。どのようにするのだろうか。朝日新聞によれば,電話機に接続したファクシミリに生徒が住所,氏名,学年,志望校名を書き込むのである。次いで,その情報は神社に送られ,その場に待機する神主により一回3,000円の料金で読み上げられ,祈願がなされる。神社の側としては,「できることなら参拝してほしい」ということだが,学問の神を祭る神社として日本では最も人気の高い,九州の太宰府天満宮の当局者の説明によると,同神社の周辺に,一回2万円もの手数料を取って祈願を代行する抜け目のない業者が現われた。神社と関係のない人々によって参拝が営利目的に利用されることを嫌った太宰府当局は,「ファクシミリでも心は通じる。効果は同じ」との結論を下し,もっと安い料金でサービスを始めた。
生き残りカード
雪崩に遭った人を発見することは,長い間スキーヤーと登山者の共通の関心事だった。様々なタイプのトランシーバーはあるが,値段が高く,ある種の電池式トランシーバーは比較的重く,かさばるため,使用する人はほとんどいない。しかし,フランスの研究者の一チームは,生き残りカードという新しいアイディアに取り組んでいる。カードはスキーヤーや登山者一人一人の胸と背中に付ける。値段はわずか数ドルで電池も要らず,大きさはクレジット・カード並になる。生き残りカードにはどのような機能があるのだろうか。フランスの日刊紙「ル・フィガロ」によれば,カードは鏡のような役目を果たし,無線信号の一部を反射して,かなり強力な送信機を備えた救助隊のもとに送り返す。研究者たちは試作品を使ったテストで,すでに深さ9㍍ほどの雪に埋もれた人を探り当てることに成功している。
政府が盗難に遭う
最近行なわれたカナダ政府の資産調査によって,政府の所有財産に毎年300万㌦(約4億8,000万円)ないし400万㌦(約6億4,000万円)分の損害の生じていることが明らかになった。それらの物品は公式には紛失物として説明されているが,「恐らく盗難に遭ったもの」と考えられている。トロント・スター紙の報道によれば,紛失物の中には,アルコール飲料,カラーテレビ,タイプライター,電気スタンド,ディクタフォン,35ミリのカメラ,オーバーヘッドプロジェクター,計算機,船外発動機,冷蔵庫などがある。政府が遭った別の形の盗難として,カナダの失業保険制度を不正に利用しようとした人々がだまし取った,ほぼ6,000万㌦(約96億円)のお金がある。グローブ・アンド・メール紙は,「18万458件の不正行為があった」と伝えているが,幸いにもそうした損害のうち「3,230万㌦(約51億6,800万円)は取り戻すことができた」。
泣き声にも違いがある
母親は自分の子供の泣き声と他の人の子供の泣き声を聞き分けられるだろうか。ロンドンのサンデー・タイムズ紙は,それは可能であると述べている。しかし,パリのピティエ・サルペトゥリエール病院の小児精神科医,アラン・ラザルティゲ博士の調査結果によると,母親の直感はさらにその上を行く。母親は泣き声の高さから,子供が泣いている理由 ― 空腹なのか,おもらしをしたのか,怒っているのか,具合いが悪いのか ― を判断することもできる。赤ちゃんが泣き声を上げる原因としては最も多い空腹の場合,その泣き声は270ないし450ヘルツの高音になり,大きさは80ないし85デシベルに達する。同博士によれば,痛みがあるときや怒ったとき,また欲求不満を感じたときの泣き声や,楽しいときの声にも同様に固有の音響学的特徴がある。ある種の病気に対しては子供の泣き声が診断に役立つかもしれない,と同博士は述べている。
退役軍人とテレビの戦争場面
テレビ番組やニュース番組には,暴力や戦争の場面が必ず出てくる。特に映画には戦争を美化する傾向がある。しかし大抵の場合,戦争のむごさと恐ろしさを経験してきた退役軍人は,放映されるそうした場面を楽しいとは感じない。第一次世界大戦の退役軍人で現在90歳のスタン・ノースは,セントルイス・マガジン誌に,「射撃のようなくだらないシーンになると,私はテレビを消します」と語った。なぜだろうか。「とても見ていられません。思い出したくないのです」と,ノースは説明している。
慢性不眠症
アイルランド,ダブリンのイブニング・プレス紙は,慢性不眠症にかかった男性が9か月間眠れず,遂に死亡したことを伝えている。イタリアのボローニャ大学医学部の神経学者ルガレシ教授はその死因について説明し,視床,すなわち脳と体の間で情報をやり取りする大脳神経回路が損なわれる珍しい病気だったと語っている。情報の伝達が断たれ,「脳中枢はスイッチを切ることのできないモーターのようになった」。死亡した人は必死でその病気と闘ったが,1822年以来,一族で14人目の睡眠不足の犠牲者となった。この件に関するルガレシ教授の報告は,重症の不眠症患者に影響を与えていると思われる遺伝現象と視床の役割に他の科学者の注意を促すものとなった。ルガレシ教授は,「我々はその病気の仕組みを知ってはいるが,それを阻む方法は持ち合わせていない」と語っている。