犠牲を払いますか
利己心に駆り立てられるこの世界にあって,犠牲を払うという考えは蔑まれています。しかし,去る11月10日に海外からの訪問者を迎えて行なわれた,エホバの証人の千葉大会ホールの献堂式では,犠牲を払うこと,それも神に犠牲をささげることが強調されました。この大会ホールは,東関東のエホバの証人が週末に聖書からの教えを受ける大会を開くための教育施設です。
千葉大会ホールは,95人の専属の働き人をはじめ,幾百人ものエホバの証人の手で建てられました。建設に携わった人たちは,自分の時間と労力を惜しみなくささげ,関東地方のエホバの証人の諸会衆は,資金の面で計画を支援しました。その結果,写真に見られるような立派なホールが完成しました。
献堂式のプログラム
プログラムの冒頭で,大会ホール建設の経緯が説明されました。計画が立てられてから完成までに6年ほどの歳月を要しましたが,大会ホール関係者はその時間がむだではなかったことを明らかにしました。建設の途上で,エホバの証人が世界各地で採用しているティルト・アップ工法が導入されたからです。設計変更という犠牲が払われましたが,その結果,簡素でも耐久性のあるホールが少ない工費で完成しました。
次いで,海外からの訪問者の一人,韓国支部のドン・スティールが,韓国でティルト・アップ工法を採用する際に,建設中の千葉大会ホールを見学したことが役立った,と述べました。また,ものみの塔協会の本部で奉仕するジョージ・カウチは,皇居や万里の長城や自由の女神など,人々に良く知られるようになった建造物とは異なり,このホールはエホバ神への崇拝の中心地として知られるようになる,と話しました。しかし,石や木材やセメントでできた建物そのものがエホバ神について語るわけではありません。「この建物を生きたものにするのは,あなた方です」と,カウチは聴衆に向かって語りました。そこで施される聖書教育により,人々がクリスチャンの人格を示すようになるゆえに,エホバ神への崇拝の中心として好ましい仕方で知られるようになるのです。
最後に,「神を喜ばせる犠牲」と題する献堂式の話がエホバの証人の統治体の成員,ダニエル・シドリックにより行なわれました。献納するとは神に贈り物をすることで,それには犠牲が求められます。シドリックは,ごくわずかな寄付をした貧しいやもめの話に言及し,やもめのしたことが2,000年後の今日でも覚えられているのは,豊かな中から捧げ物をした裕福な人と異なり,やもめが自分の持つ暮らしのもとすべてを犠牲としてささげたからである,と説明しました。(ルカ 21:1-4)ダビデ王が神よりも人の数に頼るという罪を犯した後,イスラエルに神罰が下された時の出来事も話の中で取り上げられました。ダビデは疫病を食い止めるために,神の命令に従って異教徒のアラウナの土地を買い求め,そこに祭壇を築いて犠牲をささげました。アラウナが無償で土地を提供しようとすると,ダビデは,「いや,わたしは必ず代価を払って,それをあなたから買うことにします。費用もかけずに,わたしの神エホバに焼燔の犠牲をささげることはしません」と,答え応じました。(サムエル第二 24:1-25)この出来事から,神への捧げ物には代価が求められること,そして犠牲を払うならエホバを愛し,エホバに依り頼むよう教えられるという教訓が与えられました。
千葉大会ホールは,喜んで自分の時間や労力を犠牲にした人々の労苦の結晶です。代価を支払った犠牲として大会ホールをエホバに献納するのは出席者一同の願うところでした。完成した大会ホールを神に献納する動議が提出され,合計2,064名の出席者は拍手をもって賛意を表わしました。次いで献堂の祈りがささげられ,千葉大会ホールはエホバ神への崇拝のために専らささげられた建物となりました。
特別集会
翌日,幕張メッセを本会場として,全国57か所を電話回線で結んで,特別集会が開かれました。シドリックはそこでも主要な話し手として奉仕し,「あなたの信仰と希望を生きたものに保ちなさい」と題する話をしました。話の冒頭で,「これは信仰治療に関する話ではない」と,断わってから,シドリックは希望と信仰が脳に働きかけ,免疫の仕組みと関係のある化学物質が作り出されることを科学者の言葉から示し,希望と信仰が病気を克服するのに役立つことを例示する数々の経験談を取り上げました。合計22万4,086人の聴衆は,この話を聴いて,聖書に基づく希望を人々に伝えることにより,「唇の実」を犠牲としてエホバ神にささげ続けるよういよいよ励まされました。―ヘブライ 13:15。
[14ページの図版]
G・カウチ
D・シドリック