信仰の記念碑

今から42年ほど前，戦後の焼け野原の神戸の地に5人の宣教者たちが到着しました。その時，関西地方には聖書の音信を他の人に宣べ伝えていた人はほとんどいませんでした。何もないところから出発し，日本人から「わかりまへん」を連発されながら，宣教者たちは敗戦で拠り所を失った人々に慰めを与える聖書の音信をたゆむことなく宣べ伝えました。その結果，神戸および東京から日本全国にその音信は伝わり，1991年9月には16万人を数える大勢の人々がそれら礎となった宣教者たちに加わって良いたよりを伝えていました。

神戸にやって来た最初の一群の宣教者たちの中に，ロイド･バリーとその妻のメルバがいました。二人は四半世紀にわたって日本で奉仕したのち，ニューヨークにある，ものみの塔聖書冊子協会の本部で奉仕するようになりました。去る11月，二人は日本を1週間にわたって訪問しました。兵庫県市川町に完成をみたエホバの証人の兵庫大会ホールの献堂式に参加するためです。1,600人余りを収容するこの建物は，聖書教育の大会を開催するためのホールです。この建物は，関西の西部および中国地方の東部のエホバの証人により毎週利用されるでしょう。

ホールの建設

兵庫大会ホール完成までの6年にわたる歳月の道のりは平坦なものではありませんでした。1985年11月に滋賀県水口町に完成した聖書教育ホールの献堂式にやはりロイド･バリーが出席した際に，関西地方にもう一つの大会ホールが必要とされていることが話し合われました。その後，約100件もの物件を調査し，最終的にこの市川町西川辺の地が選ばれました。

20代の若い人々からなる建設チームは，町の人々に明るくあいさつをし，積極的に善を行ないました。造成のための土砂の搬出に際して道路に泥が落ちればすぐにそれを掃き清めました。町の人々の耕うん機や車が溝に落ちれば，進んで手助けをしました。クリスチャンとしては当然のこうした行為を目にして当初はこの建設に好意的でなかった人々の態度も変化し，エホバの証人に関して良い評判が聞かれるようになりました。（ペテロ第一 2:12）建設が完了し，町役場を訪問したとき，町長は大会ホール委員たちに，「エホバの証人の教育の成果はその目の輝きに見られます。人々の人格に表われています」と，称賛の言葉を述べました。また，大会ホールを見学するために訪れた近所の寺の一住職は，「エホバの証人はうそをつかない，正直な人々だ。自分の宗教は冠婚宗教になってしまって情けない」と，率直な感想を語りました。

この建物は建設に携わった一人一人の働き人の信仰の記念碑と言えます。実際，この建設を物心両面で支えた人々の自己犠牲の精神が積み重なって兵庫大会ホールが完成をみたのです。

特別集会

翌11月3日に，阪神甲子園球場を本会場として，全国77か所の会場を電話回線で結んで，特別集会が開かれました。ロイド･バリーが主要な話し手として，「希望によって歓びなさい」と題する講演を行ないました。その話の中で，バリーは初期のころ大阪の宣教者の家を訪問した際，甲子園球場で開かれたオペラを聴きに来た思い出を話しました。エホバの証人の会衆が大阪に一つもなかったその当時，バリーは広い球場を眺め，『ここで大会を開けるようになったら良いのに』と思ったとのことです。しかし，この日，本会場に集まった4万4,702人の聴衆を前にして，バリー自らが特別集会の話をしていたのです。これは，これまでに日本のエホバの証人が開いた大会で1か所に集まった人の数としては空前の最高数でした。ロイドおよびメルバ･バリーにとって，感慨無量であったに違いありません。そして日本全国で電話回線により，合計25万7,530人がその話に耳を傾けていたのです。この数も，やはり最高数でした。どれをとっても，戦後，神戸の焼け野原に立った献身的な宣教者たちにとって，その信仰の記念碑的な出来事と言えました。

しかし，そのすべては人々の心を動かし，大きな増加と建設を可能にしてくださった，生ける神エホバにより可能になりました。その賛美のすべては，エホバ神に帰されなければなりません。エホバの証人が引き続き信仰のうちに王国を宣べ伝えるとき，これら信仰の記念碑は，エホバ神の最高至上権の立証へ向けての一里塚に過ぎなかったことが後日明らかになることでしょう。