フィリピンのごちそう
フィリピンの「目ざめよ!」通信員
国際的な性格と趣を持つ都市,マニラでは,あらゆる種類の外国料理が食べられます。その住民は,さまざまな人種の人々で構成されており,その文化は,いろいろな文化を合成したものということができます。インドネシア-マレー人種に,中国人・スペイン人・アメリカ人はもとより,他のいろいろな人種の血が混じった結果,フィリピンの人は東洋人であるにもかかわらず,アメリカ的な愛称や,スペイン系の姓を持っており,タガログ語・英語・多少のスペイン語は言うに及ばず,80以上の方言が用いられています。
こうした背景や文化からすれば,さまざまな味覚を楽しめるのは当然でしょう。たとえば,エスカベケ,つまり,魚の甘酢煮という中国料理,牛肉のメカド,つまり,ビーフソーテというスペイン料理があります。フィリピン料理でニラガング・マノクという,トリ肉の煮込みは,フランス料理のポートー・フーのなごりですし,ホットドッグやハンバーガーも賞味できます。
これら外国料理の多くは,すっかりこの国になじんでいますが,簡素なフィリピン料理は,今なお人々に喜ばれています。なかでも,アドボはお国自慢の料理の1つといえるでしょう。それはどんな料理ですか。干したこしょうの実や,独特のかおりを出すために少し砕いたニンニクで強烈な風味をつけた,トリとブタの切り身の組み合わせたものです。同時に,フィリピン産の酢も加えます。初めてこの料理を出されると,その強烈なかおりのため,閉口なさるかもしれません。しかし,食べてみると,味覚のほどに驚かされるにちがいありません。
パパイトもしくはピナパイタンという料理は,フィリピン北部から伝わったものです。その料理法を知ると,初めての人がその名前の響きから連想するよりはるかにおいしい料理であることがわかるでしょう。1頭のヤギにチョウセンモダマの葉をいっぱい食べさせ胃を掃除して,ほふります。次にヤギを火にかざして,表面が黒くなるまで焼きます。皮をこすって,きれいにしたら,赤身の肉片といっしょにきざみ,胆汁を絞り出して,香料で風味をつけ,バジと呼ばれるサトウキビの発酵汁で作った,この地方独特の火酒を添えて供します。
南部ではキニラウという料理が珍重されます。これは,好みの大きさの角切りにした生の魚を,酢で2,3度洗い,タマネギ・ショウガ・フィリピン原産のコショウのさや・きざんだニンニクなどを加え,レモン汁と酢をかけて,まぜたものです。食塩やココナツの乳汁を加えてもよいでしょう。
フィリピン人の歓待の象徴は,レコンすなわち,子豚のまる焼きです。どんな理由で会食をするにしても,楽しい食卓の中央に,バナナの緑の葉を敷いて,豚のまる焼きが載せられていないと,ほんとうの会食とはいわれません。
ルソン島中部出身の主婦は,創意と機知に富む女性として知られています。家計の許す範囲内で,しかも,主人を存分に喜ばす料理を作れるのです。たとえば,ありふれたカモテ,つまりサツマイモでも,ジャガイモ同様に用いられ,葉も野菜同様に利用され,サラダにしたりします。葉はしばしば魚や肉といっしょに料理されます。それに,薄く切ったトマトやタマネギ,また,ゆで卵そして酢を添えると,カモテはおいしい食べ物に変わります。
バナナもたいへん好まれるもののひとつです。熟したバナナはすばらしいデザートになります。熟していないバナナは,堅ゆで,フライ,まる焼き,甘煮などにしたり,ココナツの乳汁を加えて料理したりします。
料理の仕方は多種多様です。土製のなべ類で料理したもののほうが味がよいと言う人は少なくありません。イロイロという所ではさらにこっていて,トリ肉のビナコルを料理するのに,青竹が用いられます。材料を全部中に詰めると,あいた口をレモンの葉でふさぎ,それらの竹筒を,中味がこぼれないように詰めた口を上にして,燃える石炭の上に傾斜させてかざします。
干し草の豊富なブラカン地方では,カボブのバーベキューの場合のように,トリ肉を竹のくしに刺します。しかし,バーベキューの場合とは違って,竹のくしの根本を地面に刺して立て,その上にバケツか大きなカンをかぶせ,その上やまわりに干し草を積んで,火をつけると,10分ほどでこんがりと焼けます。
他の国の人々の食べ物を賞味するのは興味深いことですが,人々をじかに親しく知るのは,さらに喜ばしいことです。あなたの近所には外国の人がいませんか。そうした人々に会うよう努力してはいかがですか。