世界展望
世界的な農作物の減収
◆ 最近,パナマの新聞,ザ・スター・アンド・ヘラルド紙は社説で,現在の食糧不足が深刻な状態にあることを明らかにした。幾つかの国では収量の減少が災厄的であることを指摘した後,同紙は次のように述べている。「この不足によって,新しい種子の人工変種や農耕技術による『緑の革命』まで中断された。厳しい作物不足はソ連,中国,インドなどの大量消費国をして,世界市場のどんなわずかな穀物をも買い占めさせるような事態をもたらした。これは穀物の価格をつり上げる結果になり,基本食糧を外国に依存している開発途上国に大きな負担をかけることになった。多くの国々の今年の収量がどれくらいになるかを予言するのはまだ早いが,世界の一連の食糧生産機構によってすでに引き起こされた被害から立ち直るには,10年間にわたってかなり良い収穫を上げる必要があるかもしれない。過去2年の災害に続いてもう1年同様な事態が起きれば,食糧の不足している国々の財源は厳しい危機に直面するものと思われる。進歩した農耕技術によって大きな益を受けていると考えられていた国の1つであるインドは,今年の1月に2億㌦相当の穀物を買い入れなければならなかった。インドはこの1回の買い入れで,自国の外貨準備高の5分の1近くを費やした。しかも現在までのところ,1973年が世界的に豊作の年となる証拠は全くない」。
性とアメリカのティーンエージャー
◆ 最近行なわれた調査によると,全米の13歳から19歳の年齢層の52%は性交の経験を持っている。ロバート・G・ソレンソンによる,「現代のアメリカにおける青少年の性意識」と題する報告は,600以上のインタビューとアンケートに基づいている。そのほとんどは,年間所得が1万㌦以上の家庭の子弟であった。若者たちが明らかにしたところによると,大多数の親は,妊娠を警告するほかは,性について子どもと話し合っていない。ティーンエージャーの性活動のほとんどは家庭で生じている。ある親たちは,自分の子どもがそうしたことをしているのを知っていても,戒めたり懲らしめたりしようとはしない。また,若者たちの見方や行動を知ろうとしないように努めているような親もいる。若者たちは,性に対する教会の態度は見当ちがいだと言う。「ソレンソンの報告は,老人たちが好むと好まないとにかかわらず,ティーンエージャーの性に対する態度や行為が…過去10年間に激変したことを明示するものである」と,一評論家は述べている。
農家の収益
◆ 食料品の値上がりは続いている。しかし農民の手にはいるお金はそのうちの何割ほどだろうか。1972年にアメリカ人が食料品に費やしたお金の平均33.4%が農民の手に渡った。これにくらべて,1971年は32.2%であった。残りは次のように分配された。小売商人,33.1%; 農産物加工業者,22.1%; 卸売商人,6.1%; 輸送会社,5.3%。農民が得る率はもちろん量と品目による。たとえば,1ポンド41.5セントの小売価格がついているチキンの場合,農民の手に渡るのは20セントである。しかし,38セントのモモのかんづめの場合は,農民が得るのは7セントほどにすぎない。
トラの保護計画
◆ インド政府は,国内に残っている1,800頭ほどのトラを救うために,トラの保護計画を開始した。1900年には40,000頭のトラがいた。射殺は,トラの減少の原因の一部をなすにすぎない。開墾やかんがい計画が進み,木材やパルプ用材を得るために森林が伐採されるので,トラやトラのえさになる動物が住みかを失っているのである。ソ連にいるトラは今では200頭以下で,マレーシア,ビルマ,タイなどにいるトラも,合わせて2,000頭ぐらいであろう。しかし,W・スチューワートはガーディアン紙の中で,インドのこの計画は容易なことではないだろうと述べている。「非常に多くの人間が助けを必要としている国で動物を助けるというのは困難な仕事である」。
カトリック教徒の疑問
◆ 教会が公に教える事柄に反対するカトリック教徒はますますふえている。アメリカ,フィラデルフィアの,聖ペテロ・セレンスティン教区の教区民1,200人を対象にこのほど調査が行なわれ,次のような結果が出た。司祭が妻帯者であってもかまわないという人,68%。義務づけられていなかったら,ミサに出席する者はほとんどいないだろうと言う人,63%。法王は不びゅうではないと主張する人,54%。彼らは聖書の明確な教えにも疑いをいだいている。「イエスの処女降誕は象徴的に見るべきであって,生物学的に見るべきものではない」と信じている人が55%を占めていた。
石油の成因
◆ 石油は微生物が徐々に化学変化してできたのだという説が100年ほど昔からある。しかし,そのように小さな生物から,これだけ大量の石油の生成がどうして可能だったのか,と尋ねる人は多い。L・ガウチャーは,「ケミカル・テクノロジー」誌に新説を発表した。「動植物が全く存在しなかったずっと昔には…石油は,以前もっともらしく言われていた量よりも大量に生成し得たと思われる。…有機体根源説のように,石油は今日と同様の地表の状態や大気の状態のもとで生成されたと仮定する代わりに私は次のように考える。つまり石油は,地球がまだ熱く,生物もまだいなかった時に,大気の成分の化学作用によって生成されたということだ」。化学技術者のガウチャーは,「油の雨」がこの混合物を地球上にもたらしたことを示唆している。
バプテスト教会の中の共産主義者
◆ 米ソ間の冷戦の「雪どけ」は,いわゆる正統派のキリスト教会にさえ影響をおよぼしている。ワシントン,D・C・にあるカルバリー・バプテスト教会は最近,講演者として,共産主義者のソ連人外交官を招いた。クリスチャン・センチュリー誌は,「われわれは南バプテスト派の兄弟たちの努力に拍手を送る」と述べた。
紙の需要の増加,コストの上昇
◆ 紙の需要は現在供給を上回りつつある。その結果,値段がしだいに上昇しており,注文も早くしなければならなくなった。環境問題のために多くの工場が閉鎖されたのも不足の一因となっている。製紙会社の中には,安い紙の生産を中止しているところもある。インダストリー・ウィーク誌はその理由を次のように説明している。「どんな種類の紙でも売れることを知っているので,生産者は利益をふやすために安い紙の生産を停止している」。
アメリカ人の観光熱
◆ 1972年に,ワシントン,D・C・にある国立博物館(スミソニアン学術協会)および国立動物園を訪れた者は合計2,000万人であった。これは最近出された,「1972年スミソニアン年報」の報告である。また同書の示すところによると,国会議事堂には毎年700万から1,000万の人が訪れる。ニューヨークのメトロポリタン博物館は年間約225万人,アメリカ博物館は320万人と言われている。カリフォルニア州にあるディズニーランドは,昨年950万人の入場者があったと言っており,フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドは,約700万人の客をもてなしたと述べている。また国立公園管理局の話によると,昨年,国立公園の公共施設を訪れた人の数は実に2億であった。
オーストラリアは徴兵を廃止
◆ オーストラリアでは徴兵制が廃止された。徴兵回避者は刑務所から釈放されるだろう。現役の徴用兵は,希望ならば直ぐに除隊を許されるかもしれない。徴兵法は廃止されてはいないが,政府は選抜を行なわないことになるだろう。
リトアニア共和国で懲役刑の宣告
◆ 鉄のカーテンの背後にあるソ連のリトアニア共和国で9人のエホバの証人が逮捕された。そのうちの4人には5年間の強制労働所での労役が言い渡された。他の証人たちはそれより軽い刑を宣告された。聖書研究用の文書を印刷し配布するための地下組織を作っているとの訴えがなされたのだ。リトアニア共産党の機関紙,ソビエツカヤ・リトバの報道によると,エホバの証人はソビエト全土で『非常に効果的に,聖書朗読ための秘密集会を組織し,文書をひそかに国内に持ち込み,それを複写し,配布している』。
従業員の盗み
◆ アメリカ,テネシー州,メンフィスのガーヅマーク社の調査部の部長,マーク・リップマンは40年近く,従業員の盗みについて研究してきた。同氏は,今日工場や事務所で働いている人の少なくとも半数は盗みをすると見ている。この種の窃盗罪は毎年15ないし20%ふえている。従業員の不正がそれほど広く浸透しているという事実を会社側が直視しようとしない場合,問題はさらに悪化する。そのような態度はどんなにすぐれた損害抑止策をも効果のないものにしてしまう。同氏は次のように語った。「それらの社員は非常に信頼されているため,彼らが盗みをしているという,われわれの提出した証拠を信じようとしない会社は多い」。また,犯罪者は雇用者が想像するような典型的な「悪人」ではなく,「結婚して,2,3人の子どもを持ち,中・高級住宅地に住み,近所の知人とトランプをし,教会に行き,上司から好かれているような平均的なサラリーマン氏である。また,彼はよく働く」。
拡大する同性愛者の教会
◆ 今から4年半前に,アメリカ,カリフォルニア州,ロサンゼルス市で,同性愛者を教会員とする宗派が創設された。それ以来,現在ではザ・ユニバーサル・フェローシップ・オブ・メトロポリタン・コミュニティ・チャーチとして知られているその宗派は増加し,アメリカの19の州に43,イギリスに1つの会衆を持ち,合計1万5,000人の教会員を有するに至った。さらに,同性愛者のその宗派は,68人の僧職者と125人の執事を任命し,40人の神学生を訓練している。それらの僧職者の中には2人のローマ・カトリック司祭,1人のギリシア正教会の僧職者,および1人の女性同性愛者の牧師がいる。同宗派はアメリカ・キリスト教会全国会議への加盟申請を計画している。
カトリック主義は依然衰退している
◆ ニューファンドランドの聖ヨハネ大司教管区の機関紙,ザ・モニターによると,同大司教管区の司祭の数は「深刻な減少」を見せた。38の教区にいる9万人のカトリック教徒に奉仕しているのは,現在わずか55人の司教管区僧職者だけである。また,神学生の数はわずか9人である。以前にくらべると急激な減少である。最大のローマ・カトリック教国であるブラジルも,僧職者の問題をかかえている。最近の調査が示すところによると,ブラジルの平信徒に対する司祭の割合は世界で最も低いほうに属し,平信徒6,000人につき1人である。1968年以来,この国の司祭の数は減少の一途をたどっている。教区司祭,修道士,およびカトリック系学校の教師と理事の合計は,人口約1億のこの国で1万5,000人をわずかに越えるだけである。多数の神学校や教区学校は閉鎖されつつある。ブラジルの首座大司教は,「危機だ」と嘆いている。
僧職者のアルコール中毒
◆ 最近,アルコール中毒に関する全米僧職者協議会は,アメリカの5万8,000人の僧職者の約12%が「やっかいな酒飲み」であることを指摘した。同協議会調整委員は次のように述べた。アルコール中毒は「俗人の間に広がっているのと同じほど僧職者の間にも広がっている。不幸なことではあるが,それが現状である」。女子修道院に関しても,「アルコール中毒は,人びとが想像する以上に広がっている」と,アルコール中毒防衛会の長期会員になった一修道女は述べた。