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  • 世界的なインフレが起きているのはなぜか
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目ざめよ! 1974
目74 3/8 17–23ページ

世界的なインフレが起きているのはなぜか

第二次世界大戦以来,地上のほとんどすべての国が,継続的な物価騰貴,すなわちインフレーションと呼ばれるものによって災いされてきました。今日見られるきわめて特異な現象は,インフレーションが世界じゅうで同時に進行していることです。そのようなことはかつてありません。

しかも,インフレの速度が加速度的な傾向を帯びており,そうした傾向にある国が次々と増えています。こうした世界的なインフレが起きているのはなぜですか。物価の騰貴がやみ,いや,物価が低下し,低い水準で安定するというような希望が存在するでしょうか。

基本的な理由

インフレはいろいろな理由で起こります。その一つは,物資の不足です。供給量の少ない消費物資をなんとか自分の手に入れようとして,人々は売り手の要求するより高い代価を支払うようになります。そして,今日の世界全体を見ると,食糧をはじめ,かなり多くの品目が供給不足の傾向にあります。

しかしながら,インフレの最も基本的な理由の一つは,政府が,税金その他の形で所得する以上のお金を使うことにあります。インフレのこの基本的な理由を探ってみるのは興味深いことです。それが,長年の間,多くの国で,インフレの主要な原因となってきているからです。この点に関し,ワールド・ブック百科事典はこう述べています。

「過去200ないし300年にわたる紙幣や銀行制度の発展に伴い,国家予算における超過支出を主要な原因とするインフレが起きてきた。政府が歳入を超えた支出をするさいにこの赤字状態が生じる」。

赤字状態でも,政府はなんとかしてその計費を払わなければなりません。どのようにしてこれを行なうかは政府の形態によって異なります。多くの西欧諸国が行なう一つの方法は,国債を発行して国民から資金を借りることです。しかし,それだけでは負債をまかないきれないのが普通です。

それで,よく行なわれるのは,政府が国の中央銀行もしくは国立銀行から資金を借り入れることです。それらの銀行はどこからお金を持って来るのですか。政府の認可のもとに債券を発行し,あるいはただ紙幣の印刷を増やすのです。銀行は一定の利子をつけてそれを政府に「貸し付け」ます。そして,結局は,納税者が,税金のかたちで,借り入れ金とその利子を支払うように求められます。

国によっては,赤字状態の埋め合わせのために中央銀行を介さないところさえあります。そうした国の政府はただ,国の印刷機関に,紙幣を余分に作るように指示を与えます。こうして作られる新しいお金が,赤字分の支払いに当てられます。

しかし,政府が現実価格の裏付けを持たない紙幣を国の経済の中に余分に注ぎ込めば,入手しうる物資を得ようとするお金がそれだけ多くなります。これは物価を上昇させます。これは競売しているのに似ています。その競売に臨んでいる人たちの持つお金が多ければ,それだけ高い値が付けられることになります。

インフレについて,アメリカ経済研究協会は次のように述べました。

「四半世紀の間,世界の主要な通貨信用機構は,各の購買手段[紙幣]を膨張させてきた。産業開発の進んだ国々の中で,その先頭に立ってきたのは米国である。

「事実,米国は,購買手段を国内流通用に過度に発行するという点で先頭に立ってきただけでなく,そのインフレ気味の購買手段を,贈与・貸与・投資などのかたちで,大量に国外に送り出し,外国の中央銀行を含め,多くの外国人がドルを大量に保有するようになった。しかも,それらの人々は,一片の紙きれに金と同等の価値があるとの幻想をいだいて労したのである」。

米国の場合

インフレ化という点で「先頭に立ってきた」のは米国ですから,この国の金銭の使い方がどのようであったかは注目に価します。

過去43年間の米国政府の収支状態を見ると,そのうち36年は支出超過になっています。つまり,その期間の八割以上にわたって,収入以上の支出をしてきたのです。

結果として,1972会計年度に,米国政府の負債は,4,270億㌦に達しました。これは歴史上最大の負債であり,しかもその負債額は終始増大しています。それが返済されるとまじめに考えている人はいません。この負債に対する利子の支払いだけでも,年々230億㌦を上まわるのです。

長期間にわたるこうした超過支出には当然悪い結果が伴いました。つまり,定常的なインフレです。

なぜそれほど赤字になるのか

すでに見たとおり,超過支出はインフレを導きます。そして,超過支出が生じるのは,政府が歳入以上の支払いをするからです。しかし,今の時代の多くの国の政府がそうした限度を超えた支出をするのはなぜですか。

その主要な理由の一つは戦争です。多くの国の国家予算の中で,最大の比率を占めているのは軍事費です。米国の場合,軍事支出は,年々750から800億㌦に上っています。

しかし,戦争は物を破壊します。それは富を作り出す働きはしません。平和時においてさえ,軍備はなんら現実的に価値のあるものを生み出しません。それどころか,それはすぐに廃れてしまい,新しいもの,しかも,たいていはさらに費用のかかるものと取り換えねばなりません。なるほど,そうした支出によって人々の働き口が作り出されることは確かです。しかし,それは大きな負債をも作り出すのであり,真の意味で国家の富を増すことにはなりません。

むしろそれは,他のはるかに勝った目的のために用いられるべき活力を吸い取ってしまう寄生虫に似ています。例えば,米国がその軍事費に当てる750ないし800億㌦が何か平和目的に投じられたとすれば,その益はどれほど大きいでしょうか。同じことはソ連や世界の他の国についても言えます。それによってもたくさんの仕事が作り出されるのであり,同時に,どれほど多くの都市が建て直され,どれほど多くの家が新築されうるかを考えてください。医療,交通,公園や保養施設,さらには貧困や汚染の除去という面でどれほどの進歩がなされうるかを考えてください。

例え

戦争や膨大な軍事支出が国の経済にどんな影響を与えるかをさらに知るために,隣り合って生活している二つの家族を例えにして考えてみましょう。どちらの家族もりっぱな家と家財を持ち,月々の支払いをすませるに十分な収入を得ています。

さて,それら二家族が互いに対して不信感をいだくようになったとしましょう。一方の家族は防備のために銃を買います。他方の家族も同じことをします。これは,双方が,より大きな,より高価な武器を買い入れるという追いかけごっこになります。しかし,その支払いに当てるだけのものがないために,それら家族はそれぞれに借金をします。

やがて,それら両家は実際に「戦争」し,双方の家財を破壊します。そうした破壊は両家族の生活水準を向上させるでしょうか。そういうことはないはずです。

その「戦争」ののち,両家は再建に当たらねばなりません。それでも互いに対する疑いが残っているために,さらに高価な武器を買い入れてゆきます。そのすべてをまかなうために,またその日その日の生活をしてゆくために,両家はさらに借金を続け,負債の返済の見込みからは遠く離れてゆきます。

さて,それら両家族の生活の水準はほんとうに向上しているでしょうか。そのようなことはありません。真の意味での富は何も増し加えられていないからです。むしろ,武器を買い,「戦争」の被害を修復することに伴って,両家の生活水準はマイナスの影響を受けます。他の物資を購入すべき資金を犠牲にしなければならないからです。また,他からたくさんの資金を借り入れて自分の望む物をなんでも購入するとき,自分たちの生活が向上しているかのように感じるかもしれません。しかし,やがて債権者たちが返済を要求するとき,真のすがたがさらけ出されるでしょう。

国家についても同じ

これと同じことが,はるかに大きな規模で,今日の世界の国々に起きてきました。諸国家は戦神を支持して出血を続けてきました。

繰り返された戦闘によって,諸国家は莫大な量の富と資産を破壊してきました。戦争のない時でさえ,しだいに費用のかさむ武器と軍隊とを維持していくために,さらに多くの富が消費されました。

そのすべての支払いに当てるため,また自分たちの望む他の事がらに費用を当てるため,たいていの国は歳入を超えた支出をしてきました。その結果はインフレです。一観察者はニューヨーク・タイムズ紙上にこう書きました。

「インフレの原因として多くのことが指摘される中で,その根本原因となっているのは,多額の軍事支出,および,税の歳入によってそれをまかないきれないことである。……

「金銭と物資から成るこの莫大な財産の相当の部分がわれわれの国内経済からは失われ,国内の人間生活上緊急に求められる事がらに対して資金が否まれる一方で,インフレの火にはたきぎが加えられている」。

政府が歳入以上のものを支出することに加えて,近年では,国民の多くもそれと同じことを行なっています。人々は自分の欲するものを手に入れるために,あちこちと走り回って借金をしています。借り入れたものを使っているしばらくの間,暮らし向きは楽であるかもしれません。しかし,債権者に対して清算をしなければならない日が必ず来ます。

そして,銀行をはじめとする金融機関からこうして借り入れることによって,それだけよけいに紙幣が“作り出される”ことになります。また,銀行事業の性質として,銀行はそこに預け入れられた額の何倍もの額を貸し付けてゆくことができます。そして,たいていの商取引きは現金ではなく小切手でなされていますから,小切手勘定を通して巨額の紙幣が“作り出される”ことになります。

しかし,こうした超過支出のすべてによって,出回っている物資を追い求める通貨の量が多くなります。政府の超過支出と加わって,これがインフレの傾向にいっそうの拍車をかけることになります。

米国の場合,こうした超過支出はどの程度にまで進んでいるでしょうか。この国における政府と民間の負債総額はなんと二兆㌦に達しています! これは国民全体の年間総所得をはるかに上まわっています。しかも,この債務額は年々急増しているのです。

海外支出

しかし,さらに別のことがあります。事態をいっそう不安定にしている別の要素は,海外支出です。

国際規模で見る場合,米国は常に,自分の所得以上のものを外国で支出してきました。結果として,幾百億㌦の対外負債をかかえこみました。

ビジネス・ウイーク誌はその点をこう描写します。「あまりに多くのドル紙幣が作り出された結果,世界市場には,巨大な額に上る,未消化の差引き勘定がたまった」。この「未消化の差引き勘定」を一千億㌦と見る人もいます。

なぜ米国はそれほどの膨大な負債を海外に積み上げたのですか。「経済教育ブルテン」誌1972年5月号はこう答えます。

「第一に,何年もの間,米国政府は,国外において,自国が所得する以上の米国通貨や債券を払い出してきた。その大々的で過度に寛大な対外援助計画や,諸外国における大きな軍事支出を通して,米国は,外国政府や外国中央銀行,また多くの個人の手中に,そうした対米支払請求権を残した。……

「第二に,米国は著しい,そして長期にわたるインフレ状態を続けてきた。……それは30年以上にわたる。そうした状態の結果……[米国製品の]価格が著しく上がり,多くの米国製造業者は世界市場における競争力を失った」。

もちろん,そうした海外支出が所得とほとんどつりあうような時期もあります。しかし,過去何十年間にわたる米国の海外支出の全体的傾向は,その国内支出の傾向と同じです。ほとんど一貫して,収入以上の支出をしてきました。

こうして,国の内外で超過支出を続けてきた結果として,米国政府は国の中にも外にも巨大な負債をかかえ込みました。そうした負債はどのようにして返済されるのですか。いつかそうした傾向が逆になり,所得が定常的に支出を上まわる時期も来るだろうというのがかつての期待でした。そうすれば,負債は徐々に減退するはずです。しかし,そのようなことは起きていません。むしろ,その逆のことがずっと起きています。それで,実際のところ,どのようにしてこうした負債は返済されることになるのでしょうか。

ある時期には,金がその答えとされました。

金 ― それが果たしてきた役割

幾千年もの間,人は,何かを買おうとする場合,それと対応する価値の物を携えて行かねばなりませんでした。つまり,そうした時代には,物と物とを交換しました。

のちに,ある品物が他の品物以上に価値のあるものとして珍重されるようになりました。それは金です。金は独特の特性を備えています。金は腐食変質することなくいつまでも保存することができます。また,美しい装飾品,硬貨,その他のものを作ることができます。

したがって,やがて金が最良の“通貨”となり,どんな場合でも人々に受け入れられるものとなりました。紙幣が登場した時でも,それは,たいていの場合,ほんとうのお金というべき金によって裏打ちされていました。紙幣が一定量の金といつでも交換できるかぎり,人々は紙幣を信頼しました。

米国もある時期には“金本位制”を敷いていました。人々はドル紙幣を持って行けば,いつでも金と交換することができました。紙幣のほうがずっと扱い易かったので,人々は紙幣を手にすることを好みました。それは“金と同等の価値”を保証されていましたから,人々はそれを使用することに安心感をいだいていました。

その後,1929年の大恐荒が始まりました。米国政府は,支出が歳入を上まわるようになり,大きな赤字をかかえるようになりました。そのため,1933年,同国政府は,国民に対して紙幣と金との交換を停止しました。また,すべてのアメリカ人に対して,紙幣と交換に,金貨や金塊を引き渡すことが命じられました。こうして政府は,国家の金保有を保護し,紙幣に不安を感じて金を求める国民によって国家の金保有が消失してしまうのを防ぐ措置を講じました。

それでも,同国の法律は,国内に流通する紙幣4㌦に対して実際の金1㌦分を保有することを政府に求めました。これは一種の抑制措置であり,政府が紙幣を発行しすぎて,紙幣の価値がその額面の四分の一に相当する金の値よりも下がってしまうことを防ぐものでした。

最後の抑制策も除かれる

しかし,1968年には,それも変更されました。政府は,通貨価値を支えるための,額面の四分の一の金に関する規定を廃止する法律を通過させました。その結果の一面について,米国経済研究協会は次のようにその見解を述べました。

「連邦準備券[米国紙幣]に対する金保有要求が1968年初めに取り除かれたことによって,インフレ進行抑制策の最後のなごりが除かれ,わずかに残っていた米国通貨と金との結び付きも断たれた。

「以来,ドルの交換価値は米国通貨管理者の指令下にコントロールされているが,それら管理者はもはや金による統制のもとにはいない」。

こうした抑制措置が取り除かれたのちの経過を見ると,政府は「インフレ傾向を助長する不断の政治的圧力に終始屈し」ています。

加えて,硬貨の中に含まれていた銀はすべて取り除かれました。したがって,米国の通貨制度全体が,実際の価値による裏付けから完全に切り断たれたことになります。

こうしたことすべての結果として,政府の発行する通貨はすべて信用によって受け入れねばならないことになりました。しかし,「経済教育ブルテン」誌はこう述べます。

「現在の米国の通貨信用制度は,ほごになった約束の上に立っている。

「ここで約束と言うのは,今は流通しなくなった連邦準備券に記載されていたもの,つまり,その紙幣の『持参者の要求があれば…ドルを支払う』という約束である。そして,そこで言う『一ドル』とは,純金一オンスの35分の1と,法律によって定められていた。

「ほごとなってしまった約束は,永続的な通貨信用制度の基幹としては適切なものではない」。

かつて,米国紙幣には,その表面に,「持参者の要求があれば」その額面に相応する真の貨幣(金もしくは銀)と引き換えるとの誓約がありましたが,今ではそのかわりに,「この紙幣は公私のあらゆる債務に対する法定の監守者である」と記載されています。永年の間,真の通貨(金もしくは銀)の代わりにすぎないとされていた証書が,今ではそれが通貨であると宣言されています。しかし,危機の時に,人々は,紙きれと金のどちらを信頼するでしょうか。

外国人も断わられる

米国人は金とドル紙幣との交換をできなくなっても,外国人はまだ交換をできました。金は依然として,国際取引きにおける政府間の決済通貨とされていたからです。それは,西欧諸国がずっと以前に合意した取決めです。

しかし,米国内における定常的なインフレのために,世界の人々は米国ドルに対する信頼を失うようになりました。そのため,多くの人がドル紙幣を金と交換するようになりました。こうして,米国の国庫からは徐々に金が流出してゆきました。どのような事態になったかを下に記します。

年 米国の金保有高

1950 約22,820,000,000ドル

1960 約17,804,000,000

1970 約11,072,000,000

1971年までに,米国の金保有状態ははなはだしく悪化しました。その時,外国人は総計550億㌦に上るドル紙幣を保有していたのに対し,米国政府の金保有高はわずかに100億㌦ほどに低下しました。そして,ドル紙幣を保有する外国人は,米国の国庫にわずかに残る金に殺到して,恐荒状態が現出しかねない状勢になりました。

1971年8月,米国は強硬な処置を取りました。“金の窓口”を閉鎖して,海外の債権者に対する金の支払いを一時停止したのです。海外取引きに伴うドル紙幣を金とだ換するという約束の履行を拒んだのです。他の国々は大きな衝撃を受けました。

これは何を意味していましたか。ある観察者たちは,米国が国際取引きにおいては破産を宣言したのと同じことであるとしています。世界の通貨市場がここ数年の間いっそう不安定になっているのは,一つにはこうした理由によります。また,ヨーロッパ“自由”市場における金の相場が,ある時期に,一オンス35㌦から100ドル以上に急騰したのもこうした理由によります。

通貨にはどういうことが起きるか

起きた事がらを要約すると,西欧経済体制の基盤とされてきた米国は,多くの経済専門家がその通貨価値の低下とみなす,次のような段階を取ってきました。つまり,(1)同国市民に対し紙幣と金(もしくは銀)との交換を取りやめた,(2)同国市民が装身具類や古銭以外の形で金を所有することさえ禁じた,(3)国内に流通する貨幣に対する金による裏打ちをいっさい取りやめた,(4)外国人がドルを金に交換することを拒んだ,(5)所得以上の支出を続けて膨大な負債を積み上げ,それを覆うために紙幣の発行量を増やしてきた。

資金を借り入れることによって経済に刺激を与えうることは確かです。月に十万円の所得のある人がさらに毎月十万円借り入れて生活を続けてゆくなら,もとよりその生活はしばらくの間は楽なものでしょう。国家についても同じことが言えます。所得を超えた支出を続けることによって一時的には経済を刺激することができるかもしれません。しかし,それは大きな負債と激しいインフレとを導きます。

また,個人にあてはまる経済上の法則はおおむね国家にもあてはまります。人は自分のまいたものを刈り取ることになります。無謀な支出に対しては,遅かれ早かれその決済をつけなければならない日が来ます。個人にしても国家にしても,自分の力を超えた支出を続けるなら,やがて破産は避けられません。その法則に例外はありません。

一方,金,銀,その他の貴金属類を紙幣の裏打ちとしていつまでも用いることはできないようです。人口は増えますから,それに伴って流通する通貨の量も増えなければなりません。しかし,地球から掘り出すことのできる金の量には限りがあります。したがって,金(もしくは銀)によって裏打ちされていない紙幣に対して人々が信頼を失う一方で,それら貴金属類が,登場してくるすべての通貨を裏打ちしきれない,というジレンマが存在します。このジレンマこそ,今日の通貨の不安定性のもととなっています。

それはどこに向かっているか

いずれにしても,抑制力がしだいに少なくなり,大きな負債をかかえる国が多くなっています。そうしたところでは,負債の支払いのために紙幣が余分に発行される場合が少なくありません。ある経済学者の指摘したとおり,個人でそうしたことをする人がいれば紙幣偽造の罪を問われます。

ある書物はなんの裏付けもなしに発行される通貨について,それは,「ギャングの地下室で印刷される紙幣と同じように無価値なまがいものであり,違っているのは,当局者はそうした権限を有しているのに比べ,ギャングはそれを有していないというだけのことである。しかし,痛ましいことに,経済に与えるその影響は全く同じである」と述べました。

こうした点について,広く知られる経済学者ミルトン・フリードマンはニューズ・ウイーク誌にこう書いています。

「たとえ断続的であろうとも,過去一世紀半以上の間,経済学者たちは二つの命題を理解してきた。第一は,通貨を十分に印刷発行することによってどれだけでも望むだけの[経済]活動を起こすことができるという点である。しかし第二は,その終局的な結果として通貨価値が低落するということである。

「アメリカ社会は第一の命題は学び取った。第二の命題については,かつては知っていたはずであるが,今ではそれを忘れている。経験によってそれを再び学ぼうとしているかのようである』。

これは,アレクサンダー・ハミルトン財団発行の「銀行業」という本の中で数年前に与えられた次の警告と同じものを含んでいます。

「幾つかの政府は,金その他の正貨でだ換を行なう約束や意図を持たずに紙幣を発行し,それを,あらゆる債務の支払いに対する法定の監守者であると,ただ宣言してきた。

「こうして政府の単なる命令のもとに通貨と宣言された紙片は法定不換紙幣と呼ばれる。……

「法定不換紙幣の試みはすべて災いに終わっている。それを試みる政府はそれを余分に発行する誘惑に抗しきれないからである。その結果は,その通貨の価値が下がり,やがてすっかり価値を失ってしまうことである」。

経済や政治の分野に見られるあらゆる証拠は,今日の事態もこれと同じ方向に進んでいることを示しています。多くの政府は,真に価値あるものの裏付けを持たない紙幣を発行しています。「[この種の通貨]の試みはすべて災いに終わって」おり,今の時代は例外になるとする根拠は存在しません。

[17ページの図版]

インフレの一原因は,物資の供給が少なくなって価格が上がっても,人々がなおそれを買い求めることにある

[22ページの図版]

1971年,金の窓口を閉鎖した米国は,国外取引きに伴うドルを金とだ換するという約束の履行を拒んだ

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