菜園作りはいかがですか
市場の食品の値段は上がる一方です。この問題に対処するために菜園を作る家庭がしだいにふえています。ギャラップ調査の示すところによると,アメリカでは1973年に1,080万の菜園がありました。これは前年の30%増加に当たります。
しかし,菜園の増加は経済上の理由だけによるものではありません。事務の仕事をする人たちには,畑で働いて『土に楽しむ』ことが,快適な気分転換になるのです。人びとが菜園作りに関心を向けるもうひとつの大きな理由は,もっと栄養があって味のよい野菜を食ぜんに上せようということにあります。
畑があると子どもたちのためにもよいことは確かです。責任感や,自分にまかされたものをきちんと世話をする必要を教えるのに役だちます。種々の植物を見分けることを学ぶので,子どもの知識は広くなり,地球という人間の住みかを美しく飾る植物の種類が非常に多いことに子どもは目を開くでしょう。
では,自分で菜園を作るにはどうしたらよいでしょうか。ヒントや実際的な提案がいくつかあります。まだご存じなくて実行しておられなければ,これらのヒントや提案は,初めて菜園を作る人にでも役だち,多量の収穫に成功することもあります。
畑の大きさ
まず最初に畑の大きさを考えなければなりません。大家族を持つ人の場合,新鮮な野菜を安く得るにはかなり広い畑が必要です。しかしその人には,ぜひともしなければならない仕事や注意を払わねばならない他の責任もあるかもしれないので,その畑がはたして,つぎ込む時間とエネルギーとお金に見合うだけのものを生産するかどうかを考えてみなければなりません。そうなれば,最初考えていたよりも狭い土地を選ぶことにもなるでしょう。菜園の大きさが,手にはいる土地の大きさによっても決まることはもちろんです。
広い裏庭があれば,日当たりのよい,野菜がよくできる便利な場所が見つかるでしょう。畑が家に近ければ近いほど,家族が日中ちょっとしたひまに畑をのぞくでしょうから,ゆきとどいた世話ができます。
余裕のない環境に住んでいる人たちでも,やりくりすれば畑が持てます。車道に沿った狭い細長い土地が耕せるかもしれません。あるいは壁に沿って,またはテラスの上に,四つ目がきを作って豆やトマトをはわせることもできます。移動住宅に住む人は,トレーラーの日当たりのよい側のふちの下を耕して作物を作ることができます。町のアパートに住む人は,屋上に箱を置いたり,ウインドウ・ボックスを利用したりするとよいでしょう。進取的な人は別の方法で栽培地を見つけました。ある家族は地方新聞に,菜園にする土地を貸してくれる人はいないか,広告を出しました。そして何通かの返事を受け取り,最後に家からほんの2,3ブロック離れたところにある,非常に肥沃な広い土地を選びました。
しかし実際には,大きな菜園よりも小さな菜園のほうが産出的な場合があります。なぜかといえば,よく選ばれた小さな土地は土が良いかもしれないからです。
土について
土には本来三つの型があります。野菜の栽培にいちばん適しているのは壌土です。なぜなら壌土には腐植,つまり死んで腐敗し土にもどった生物からの有機物が多量に含まれているからです。壌土は黒く,柔らかでもろい土です。保水力がある一方排水もよく,掘り起こすのもかなり容易です。
他の二つの基本的型の土壌である粘土と砂土はそれほど肥えていません。いっしょうけんめいに働き,養分を施すなら,たいていなんらかの野菜は作れます。たとえば粘土のことを考えてみましょう。この土は普通は色が薄く,非常にこまかい粒子でできています。これらの粒子は固結して排水を悪くします。しかし,砂,泥炭ゴケ,骨粉や他の養分を混入すると,野菜の栽培に適した土になるかもしれません。
粘度と反対の性質を持つあらい構成の砂土も同様に余分の働きを要求するかもしれませんが,ある野菜は砂土でまちがいなく育ちます。たとえばアスパラガスなどは実際にいくぶん砂の多い土を好みます。あなたの畑の土はおそらくこの三つの基本的種類の土が混じり合ったものでしょう。どんな土質にせよ,苗木屋さんは土のいちばんよい扱い方について適切な助言を与えてくれるでしょう。
たとえ最良の土壌であっても,正しく扱うときにのみ多くの作物を産出するのです。そのいちばんよい方法についてはさまざまな意見があります。野菜を栽培する人の多くは,春に種をまく畑なら,前の年の秋に部分的に準備をしておくのが理想的だと言います。もし踏みぐわで30㌢ほどの深さに土をよく掘り返しておくなら,冬の間に湿気が土に浸透します。肥料も同時にすき込みます。こうすれば土の改良になります。
しだいに盛んになっている,有機肥料で菜園を作る運動は,化学肥料を避けることを勧めます。動物の糞尿やたい肥aだけを肥料として使うのです。かつては有機肥料は農家でしか手にはいりませんでしたが,今日では加工された有機肥料が化学肥料と同じほどたやすく苗木屋で入手できる場合があります。
また都市に住む人のなかには,わずかの代金で,あるいは無料で,有機肥料を手に入れる方法を発見した人もいます。ほとんどの町には馬小屋や動物園があって,畑を作っている人たちが動物の糞を肥料として持って行くのを許してくれることがよくあります。それから加工された軟泥ですが,これも刈り取った草や麦わらと混ぜるとよい肥料になります。下水処理場に行けば手にはいるかもしれません。美しいゴルフ場の多くに使われている肥料は実は,商標を付され,高い値段で売られている軟泥にすぎません。
植付けをする時期になって土地の準備をするなら,仕事が少しきつくなるでしょう。草を抜かねばならず,土地がかわきしだいすき返すこともしなければなりません。加工された肥料も施すでしょう。この時期にうまや肥を施すと,植物が焼けるおそれがあるので賢明ではありません。すき返したら表面を平らにならして,水たまりができないようにしておきます。
栽培地が決まり,土についての知識をある程度得たなら,次には何を植えるかを決めることができます。
野菜の選択と植付け
種のカタログをたんねんに読むと,どんな土質の畑でも,植えられる植物の種類は非常に多いことがわかります。家族が好む野菜を植えたいと思うのは当然でしょう。その野菜の選択にさいして子どもたちの希望も入れられるなら,彼らは畑作りにいっそう関心を持ち,作物の世話をすることにも協力的になるでしょう。しかし他にも考慮に価する事がらがあります。
市場で買うと通常高い野菜とか,使う度数の非常に多い野菜などを植えるのはどうでしょう。ある人たちはトマトを植えます。トマトがその地方で高いことも事実ですが,そればかりでなく用途が非常に広いからです。生のままサラダに入れられ,かんずめやジュースにすることも煮ることもでき,ソース用のピューレやペーストにすることもできます。
また植える野菜をうまく選ぶと,あとになってそれらの野菜はある種のこん虫を防ぎ,相互に保護しあいます。たとえば豆とジャガイモは畑の中で良い「仲間」になります。なぜでしょうか。豆はコロラド・ジャガイモ甲虫を追い払い,ジャガイモは豆の葉を食うテントウ虫を追い払うからです。トマトとアスパラガスを並べて植えるのも賢明です。
栽培地,その大きさ,そして植える野菜の種類が決まったなら,畑のどの部分にどの野菜を植えるかを紙の上に書き出し,一応の計画を立てます。そのさいに,異なる種類の野菜の列の間の必要な間隔を考慮に入れます。ハツカダイコン,レタス,ニラ,早できのキャベツなどの野菜は早く食べられるようになるので,取りやすい便利な箇所に植えるようにします。またトウモロコシのような大きな植物は,小さな植物から必要な太陽の光を奪わないような場所に植えます。
さて計画に従って植付けを行ないますが,注意して正しい間隔に,正しい深さに種をまいていきます。(この記事にのせられている表はこの点で役にたつでしょう)植え付けたあとは,定期的に見まわる必要があります。
畑の手入れ
週に一度くわを入れると雑草を防ぐことができます。またこれによって畑の表面に薄いほこりのおおいができます。これは保水に役だちます。土がぬれているときには耕さないのが賢明です。土のかたまりができ,それがかわくと固くなるのです。植物の根に近いところをくわで打つときには根を傷つけないように気をつけます。
水やりについていえば,普通なら週に1回か2回たっぷりやるのがいちばんよいようです。10㌢から15㌢の深さにまで水が浸透するようにすぶぬれにするほうが,少しずつ何度もやるよりはよいのです。少しの水をたびたびやるやり方は逆効果をきたし,養分を吸収する根を地面の近くに浮き上がらせてしまうことがあります。しかし植物の根は太陽に焼かれないように地中に深く入り込んでいなければなりません。したがって正しい方法で水をやることは,健康な作物に育てるのにとてもたいせつなのです。
野菜を栽培する人びとにとってひとつの大きな問題は害虫です。比較的に安全な粉末殺虫剤がいく種類か市販されています。注意書き通りに使用すれば,植物だけでなく,人間やあいがん動物にも害はないでしょう。しかしこの場合も,いわゆる「自然の方法」で害虫を駆除することを好む人がふえています。
中には安全な憤霧液を自分で作る人もいます。たとえば,細長いからいトウガラシを数本ひいて粉にし,それに等量の水と,(付着をよくするために)皿洗い用の洗剤を少量加えます。これは葉をたべる害虫を退けます。糖蜜を50倍の水で薄めて憤霧する人もあります。ひきつぶしたタマネギ,ニンニク,ハッカ,ゼラニウムの葉,アサツキ,ハツカダイコン,トウガラシ,カリフラワーの種などいろいろな物を混ぜて調合液を作る人もいます。
菜園作りを楽しんでください
時がたつにつれあなたの努力は報われます。つまり野菜が姿を現わします。育ちすぎないようによく見守ってください。豆などは適当な時期にとるとおいしいのですが,つるに長く置きすぎると固くなり,サヤインゲンなどはよけいに筋ばってきます。
植付けを行ない,辛抱づよく世話をして育てた野菜を摘んできて,家族がそれをおいしそうに食べるのを見ると大きな満足を覚えます。野菜を作る人のほとんどは,この満足こそ,菜園作りのもたらす最大の報いだと考えています。
[脚注]
a たい肥の作り方は,「目ざめよ!」誌の1970年11月8日号24ページにのっています。
[14ページの図表]
普通の園芸作物
列と列の 株と株の
種の深さ 間隔 間隔
野菜の種類 (センチ) (センチ) (センチ)
リマ豆 2.5 75~90 7.5~10
サヤインゲン 2.5 60~90 7.5~10
ビーツ 1.3~2.5 30~45 10~15
芽キャベツ 1.3 60~75 30~45
キャベツ 1.3 45~60 30~45
ニンジン 0.6~1.3 30~45 7.5~10
カリフラワー 1.3 45~60 35~45
トウモロコシ 2.5~4 45~75 45~60
レタス(結球するもの) 1.3 30~45 20~25
エンドウ(早でき) 2.5~5 45~60 10~12.5
ハツカダイコン 1.3 30 4~5
ホウレンソウ 1.3 30~37 7.5~10
トマト(支柱を使う) 0.6~1.3 90 40~45