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目ざめよ! 1977
目77 2/22 9–11ページ

苦くて飲みにくい薬

ザイールの「目ざめよ!」通信員

「どうやらマラリアのようですね」と医師は診断しました。ひどい腹痛と頭痛がするので,私もその診断を認めざるを得ませんでした。医師はすぐに液状のキニーネを注射してくれた上,その後数日間に服用するキニーネの量について指示を与えてくれました。うれしいことに,その治療は効を奏し,間もなく私は元通り元気になりました。

このような経験や自分がキニーネの主産地に住んでいるということから,私はこの物質に対して興味を持つようになりました。熱帯のマラリア多発地帯に住む幾百幾千万もの人々は,毎日のように,苦いキニーネの錠剤を飲んでいます。しかし,キニーネとは一体何ですか。この物質はどこから得られるのでしょうか。それにはどんな効用がありますか。私はそのような点について調べてみることにしました。

起源を知る

キニーネはキナノキの樹皮から抽出された物質です。キナノキは,16世紀にスペイン人が南米にやって来たとき,アンデス山脈の東側の斜面に自生していました。探険家たちは,原住民がキナノキの樹皮を薬として用いているのを知りました。やがて,これらのヨーロッパ人もキナ皮をかむようになりました。それは味の良いものだったでしょうか。とてもそうは言えませんでした。この樹皮は,苦くて,いやな味がしました。しかし,それをかむことには解熱作用がありました。

やがて,この薬をもっと飲みやすくするために,キナ皮から薬効のある物質を取り出す別の方法を見いだす努力が払われました。ヨーロッパ人がキナ皮について初めて知った時から数年して,キナ皮を一定期間ぶどう酒につけておくと,薬効成分がぶどう酒の中に溶け出すということが発見されました。こうして,この成分はキナ皮から抽出され,薬用に供されました。そのほうがこの薬のずっと飲みやすい服用方法であったことは明らかです。薬の苦味は,ぶどう酒の味で中和されるか,さもなくば隠されたからです。しかし,抽出が困難であった上に,キナ皮はすべて南米から取り寄せなければならなかったために,キニーネは裕福な特権階級にしか手の届かない薬でした。

19世紀の半ばになると,南米のキナノキは絶滅にひんするようになりました。しかし,キナノキはジャワ島で裁培されるようになり,その結果,長年にわたってインドネシアがキニーネの主要な生産国となりました。熱帯の他の国々も,マラリアに対処するために,キニーネを生産してきました。ザイール共和国のキブ地区にキナノキが伝えられたのは1938年のことでした。近年,この地区は,大量のキニーネを産出するようになりました。

キナノキの植林地を訪問する

ザイールに住む私たちは,確かに,キニーネについてさらに多くを知るのに恵まれた立場にあると言えます。ザイール東部にあるキブ湖沿岸のゆるやかに起伏した緑の田園地帯には,キナノキの大植林地が整然と並んでいるのです。こうした植林地の一つをご一緒に訪問してみましょう。

案内をしてくれた,植林地の経営者は,まず最初にキナノキの苗を見るのが一番良いと説明しました。そこで,まず苗床を見ることになりました。苗床に行くには,キナノキの林や植林地帯の間の曲りくねった道を通って,谷底まで下りて行かねばなりません。そこは苗床に最適の場所です。周りの丘から洗い流されてきたため,土壌は非常に肥えています。絶えず水を供給する小川も流れている上,その辺りは温暖で,よく守られています。

谷の中央には,草でできたへいで囲まれた土地があります。その中には,やはり草でできた,低くて細長い覆いの列が並んでいます。それらの覆いすべては,片側が空いていました。しかし,正面には袋地が下がっていて,適量の光線が入ってくるようになっています。そうした覆いの一つをのぞいて見ると,幾千ものか弱い苗が苗床一面を覆っているのが見られます。苗床の土の準備が整うと,その上に種がまかれ,種は発芽します。幅1㍍,長さ数㍍の苗床各々にまかれる種はわずか2㌘ですが,その2㌘の中には4,000ないしは5,000の種子が含まれています。その種1㌔が700㌦(約21万円)もすることがあるとの説明を案内役の人から聞いて,私たちはあっ気に取られてしまいました。しかし,その種1㌔の中には,100万粒もの種子が含まれていると聞いて,幾分納得がゆきました。

芽生えたばかりの苗木に水をやる際には,まだか弱いその植物を痛めることがないよう,霧状にして水がまかれます。苗木の高さが10㌢になると,最初の植え替えが行なわれますが,それでもなお太陽光線や強い雨からは守られます。木が芽生えてから1年半たって初めて,それらの苗木は覆いの全くない土地に最終的に植え替えられます。

私たちは苗床を後にし,丘を登り,植林地そのものへと向かいました。これまで見てきた植林地すべてが,丘の斜面,時には非常に険しい斜面に位置しているのはなぜなのか,私たちは不思議に思いました。すると案内役の人が,キナノキは大量の水を必要としてはいるものの,土壌が水浸しになるのをきらうということを教えてくれました。ここキブ地区ではその気候のおかげで,年間雨量が約2,000㍉に達し十分の降雨があり,さらに丘陵地帯の斜面は排水に打ってつけです。私たちの訪れた植林地の標高は,海抜約2,000㍍にも達します。

若木は各列とも1㍍間隔に植えられていて整然と並んでいます。真っ直ぐ前を見ても,横を見ても,植林地を斜めに見渡しても,若木がきちんと列を成して並んでいるのが見られます。

収穫されるのは樹皮であって,いかなる果実でもありません。樹齢が三年目か四年目になると,樹皮の収穫が始まります。この時点で目指すことは,キニーネを抽出するために,キナノキからできるだけ多くの樹皮を採取することです。収穫は,毎年枝や木を切ることによって,大抵12年目まで続きます。ついでながら,木が切り倒されても,その代わりに若木を植え,もう一度最初からやり直さねばならないという訳ではありません。切り株はまたすぐに若枝を出し,そのうちの三,四本は伸びるままにされます。こうしてキナノキは,樹皮を生産し続けるのです。

植林地にある道の一つを歩いて行くと,陽気な小鳥のさえずりが,騒々しい音で徐々にかき消されてゆきました。さらに進んで行くと,その音のしている所に行き着きました。そこでは,周囲の村々から集まって来た若い婦人や少女たちが道端でひざまずいているのが見られました。皆忙しそうに,キナノキやその枝から樹皮をはいでいるのです。各々一つの大きな石を前に置き,長さ50㌢ほどの棒を手にしています。男の人たちが婦人たちの下にキナノキを運んで来て,扱いやすい長さに切ります。婦人は,キナノキかその枝を石の上に置き,樹皮がはがれるようになるまで棒でたたきます。それから,樹皮をそっくりはがし,大きなシートの上に注意深く積み上げてゆきます。一日の終わりに,この樹皮の目方が量られ,束にして勘定がなされます。働いた婦人には,後ほどその量に基づいて賃金が支払われます。

次いで樹皮は大きなコンクリートの乾燥場に広げられ,男の子たちが,邪魔になるだけで価値のない,葉や木片を集めます。乾いた樹皮は,大きな袋に詰められ,加工工場へと出荷されます。

キニーネの抽出

次に,その地の加工工場を訪れ,樹皮から実際のキニーネを抽出するところを見学するよう取り決めました。その大半は化学処理なので,詳細な点すべてには触れないことにします。まず,トラックに満載された袋すべてが下ろされ,その目方が量られます。異なった植林地からの積荷は,それぞれの見本の分析が終わるまで,別々の場所に置かれています。キニーネの含有量は,5%から10%まで様々です。

キニーネの含有量がはっきり分かると,樹皮は粉砕機の中へ送られ,粉のように細かくされます。それが済むと,樹皮に化学的な処置が施されます。様々な過程を経るに従って,炭酸ナトリウム,硫酸,そして苛性ソーダなど種々の化学薬品が加えられます。こうしてついに,キニーネがのり状になって姿を現わします。出てきたそののり状の物質は,近代的なクリーニング店に見られるような脱水機の中で,回転乾燥されます。

キニーネの様々な用途

キニーネの大半は,この基本的な形のまま,世界各地に輸出されてゆきます。そして輸出先で,それぞれの国や製薬会社独自の必要に応じて,さらに加工されるのです。私たちが見学した化学工場では,一年間に,2,500㌧ものキナ皮を処理し,120㌧ないし150㌧のキニーネを産出します。ザイールで必要とされるキニーネのすべては,この工場で加工処理され,さらにかなりの量のキニーネが輸出されています。

キニーネの用途は,マラリアやその他の病気の治療に限られているわけではありません。キニーネには感光性があるので,写真用のフィルムを製造する際にも使われます。ビール,中でもピルゼンビールを作る際に,キニーネが用いられることもあります。キニーネの用途について言えば,苦い錠剤を飲まずにキニーネを服用しようとして,アルコール飲料をトニック・ウォーター(炭酸キニーネ水)で割る人もいます。

最近,キニーネを生のままで使うことはますます少なくなってきました。しかし,一方ではキニーネの誘導体の使用は増大しています。塩基性のキニーネによる治療を受けている人は,目,耳,そして胃などに副作用があることに気付くかもしれません。キニーネ誘導体を用いるなら,そうした問題は起きません。

しかし,キニーネ,およびそれと似た物質について,ワールドブック百科事典は,次のように述べています。「今日でも医師は,相変わらずキニジンを用いて,ある種の不整脈を治療し,矯正しようとしている。キニジンの化学式はキニーネと同じであるが,分子中の原子の配列だけが異なっている。医師たちは,キニジンやキニーネが,胎児に異常をきたすこともあると考えている。ゆえに,妊産婦は,医師に相談することなしに,これらの薬剤を服用するべきではない」。

地球の人口の約三分の一がマラリアに冒されていると推定され,特に南北両アメリカ,アジア,アフリカ各大陸の熱帯地方ではその発生が著しく,毎年200万人前後の人がマラリアのために死亡すると考えられています。1975年,世界保健機構は,マラリアを撲滅するために同機構の行なってきた計画が失敗したことを発表しました。ですから,キナノキの赤茶色の樹皮が,衰弱をきたすマラリアの影響を緩和する上で,依然として大きな役割を果たしてゆかねばならないということに疑問の余地はありません。いずれにしても,ご一緒に見学旅行をすることによって,マラリア患者がこの苦い錠剤を少しでも容易に飲めるようになることを願ってやみません。

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