未知の事は多い
世界中の研究者は,鳥が非常な長距離をどのようにして飛べるのかという疑問を長い間考えてきた。一面において鳥は海岸線や山脈のような地形の特徴を目印にして飛ぶらしい。しかし明らかにそれ以上の事が関係している。渡り鳥は時として大洋を飛び越え,あるいは陸地の目立った特色を見分けられない夜間にも飛びつづけるからである。どのようにそれをするのだろうか。
1950年代にドイツの一科学者は,ある種の鳥が太陽の位置を指針として使うことを実験によって明らかにした。実験の示すところによると,空を運行する太陽の見かけの動きの修正を可能にする生物時計さえも鳥に内臓されているらしい。
夜間の渡り鳥は星を使うようである。ある鳥は一つまたは一群の星を見定め,それに対し一定の角度を保って飛ぶ。太陽によって方角を定める昼間の渡り鳥の場合,夜になると,内臓された時間の感覚によって,星に対する飛翔の角度を修正する。別の鳥は,ちょうど人間が北斗星に沿って目を移しながら北極星を見つけるのと同様,星の不変の並び方を使うらしい。
このようにして飛ぶ渡り鳥の驚くべき能力について,動物生態学の准教授スチーブン・エムレン博士は次のように述べている。「このような研究を指摘して,動物の移住に関する神秘が解明されたと結論する人も多いがそれは間違いである。現在の理論では,動物がどのように,あるいはなぜ,別の方角ではなくてある一つの方角を選ぶのかが明らかでない。また最近の証拠によれば,星と太陽の手がかりはある種の渡り鳥にとっては不可欠でないとさえも考えられる」。それである種類の鳥は夜間全くの曇り空でも,あるいは雲の層の間を飛んでさえ,方角を間違えずに飛べるらしい。エムレン博士はこうつけ加えている,「これは鳥が天体を頼りに飛ぶという事を否定するものではないが,鳥には方角を定める手がかりが他にもあることを確かに示している。これらの手がかりが何であるかは分からない。ひょっとすると鳥は風を手がかりにしているかもしれず,ある種類の鳥は地球の磁場によって方角を定めるのかもしれない。最近の研究からみて,どちらにもその可能性がある。おそらくいつかは明らかになるであろう。…我々にはまだ分からない事が多い」。