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目ざめよ! 1978
目78 5/8 24–27ページ

石こう細工が衰えつつあるのはなぜですか

米国オレゴン州ポートランド市の市役所では,それは大理石のように見え,ニューヨーク市のトレーダー・ビック・レストランでは竹のように見えます。またフランスのベルサイユ宮殿では,人間の姿やキューピッドや花を描き出しています。それは一体何でしょうか。

この特異な材料は,しっくいのことで,それ自体最初は,形のない液体です。そして,この材料と関係のある古代の工芸は,しっくい塗り,つまり壁や天井にしっくいを塗り装飾を施す石こう細工です。

水と混ぜ合わせたしっくいは,流して成型したり,着色したり,織り目をだしたりできますし,こてで塗ったり,みがいたりすることもできます。その事について言うならしっくいが固まったときには,石を彫るようにして彫刻することができます。ウィリアム・ミラーが次のように書いたのも不思議ではありません。「しっくいは,代々にわたって芸術作品を伝えるための,最古の,また最も強力な手段である」。

しかし驚くことに,しっくいはめっきり使用されなくなってきました。かつては世界的に普及したものの,今では工芸面でのしっくいの需要はそれほどありません。現在,多くの国々の石こう細工人は,厳密な製造予定表に従って働き,近代建築の飾り気のない平らな壁の表面を造り出すために,大きなポンプ式機械でモルタルを塗ります。

そうです,簡単な壁塗りの場合でさえ,しっくいの人気は衰えてきました。1920年代には,米国で新築される住宅すべての95%以上がしっくいで上塗して内装されていたと考えられています。ところが今では,それはおよそ5%にまで減少しました。

なぜそれほど減少したのでしょうか。その昔ながらの仕事の内容をよく観察すれば答えが得られるに違いありません。

丹念な仕事

ギリシャ語に由来する英語のプラスター(しっくい)という語には,字義どおりには「塗る」という意味があります。しかし,簡単な定義だからといって,それがぞんざいな,あるいはいい加減な仕事だと考えてはなりません。一人前の石こう細工人とみなされるまでには,こて,直定規,鋳型,木ごて,その他の道具といういわば“野獣たち”を“飼い慣らし”,使いこなせるようにならなければならないのです。昔は,徒弟が,衣食住やその他の必需品を俸給として当てがわれて,七年もの間親方の石こう細工人のもとで年季奉公をしたものです。当時の石こう細工人の中には,彫刻を施すことや鋳造すること,原型を造ることや丹念に織り目を出すこと,また,今では一般に使われていないような仕事の他の面について知っている人がいたのも不思議ではありません。

原料からしっくいを造るのも石こう細工人の仕事の一部でした。例えば,建国間もないころの米国では,ペンシルバニア州の丘の斜面に切り開かれた炉がよく見られました。そうした炉では石灰と石こうとで造るしっくいの主な成分である石灰石と石こうを燃やすために火がたかれ,人が番をしていました。今日,大きな工場ではその製法は改良されていますが,製造段階はそのまま残っています。

炉の熱によって,石こうの化学構造は破壊されます。それから,焼けた石こうは細かな白い粉にすりつぶされます。最後に,粉の細かさや焼け工合,その他の特徴によって,そのしっくいは,彫像や造形芸術品のための鋳型用のしっくいとして用いたり,砂やその他の材料と混ぜ合わせて,他の種類のしっくいを造るのに用いたりします。非常に広く知られている材料の一つは,焼き石こうで,それは壁のつぎ当てや修繕用として造られる,速く固まる石こうのしっくいです。

しかし,石灰石を使用に適した状態にするには,焼いてすりつぶして後にもう一つの段階が必要です。水化,あるいは消和と呼ばれる過程で注意深く水が加えられます。そうすれば,今や石灰と呼ばれる水化した石灰石は,仕事場で他の材料と混ぜ合わせるばかりになります。凝固させるために幾らかの石こうと混ぜ合わせた石灰のしっくいは,今日,内装の仕上げの薄い塗りに広く用いられています。

前世紀になってようやくポートランド・セメントしっくいが登場し,それら二種類の主要なしっくいにもう一つの重要な種類が加わりました。このしっくいは,全くといっていいほど水を通さないので,それを用いて優れた石目塗りしっくい,つまり外装用セメントを造ることができます。

歴史上の多くの用途

恐らく皆さんは,しっくいが歴史の上で誉れあるものとして記録されてきたことをご存じないでしょう。初期のヘブライ人やバビロニア人はしっくいのことを知っていました。(レビ 14:42。ダニエル 5:5)中には,ギリシャ人がこの古代の仕事の初期の完成者であった,と言う人々もいます。その出来が非常に見事だったので見物人たちは壁に自分の姿が映っているのを見ることができました。ギリシャ人が石こうで仕上げた厚板は,テーブルや鏡にも使用されました。

しかし装飾に関して言えば,ルネッサンス時代に石こう細工を盛んにしたのは,イタリア人でした。当時建てられた宮殿を見物する場面を想像してください。

宮殿の中に足を踏み入れたなら,石こう細工の見事な装飾を楽しんでください。鋳造した葉やつたやその他の植物の形で上品に飾られている突き出た肋材が,高い天井を長方形や円形の区画に分けています。建物は,石こう細工の仕切りや盾,帯飾りや窓の桟,バラ形装飾や花輪などで満ちています。様々な部屋や中庭を通り抜けると,石こう細工の題材,精巧な帯状装飾,鋳造した彫像,化粧しっくい細工の噴水など,いずれもその宮殿を石こう細工の名所としているものが目に入ります。

そうです,イタリア人は自分たちの建物を飾るのが好きでした。しかし,彼らはそのすばらしい製法や技術を秘密にしておくよう気を配りました。しかし,秘密は漏れるものです。1851年にイタリアを旅行していた英国人の一建築家が見たような,より基本的で重要な秘密は,恐らく他のだれも行き当たったことがないでしょう。

石こう細工の秘けつ

その英国人は,ピサの墓地で,老齢のイタリア人が装飾用の工芸品を修理するのに使っていた細かい石灰を見て感銘を受けました。しかし,彼がその石灰に関する秘法を老人から聞き出したのは,ぶどう酒を一びん飲みながら説得してのちのことでした。

そのイタリア人は彼を古い城跡へ連れてゆき,木のたるの並んでいるかび臭い地下室へ降りてゆきました。老人はポケットからかぎを取り出すと,そのかぎで最初のたるを軽くたたきました。かぎで底の近くをたたくまでたるはうつろな音を出しました。「ほれ,だんな! わしのじいさんだよ。じいさんはもうそろそろおしまいだ」と老人は言いました。老人は次のたるも同じようにたたいてゆきました。「ほれ,だんな! わしのおやじだ。おやじはまだ半分残っているよ」。三番目のたるはほとんど一杯でした。すると老人は向きを変えて自分の胸を指さしながら,「これがわしだ」と誇らしげに言いました。そして最後のたるのところで,老齢のイタリア人は半分以上入っているたるを見ると笑いをこらえきれずに,「これはわしの子供たちの分だよ」と言いました。

何の事かさっぱり分からなかった建築家は,その意味を説明してくれるよう頼みました。石灰石の最も純粋な形である,白大理石の彫像を焼いてその破片から作った古い石灰がそれらのたるの中に入っているのだとイタリア人は説明しました。その石灰は,地下室の湿気の中で徐々に消和してゆきました。その人が先祖から受け継ぎ自分の子孫に伝える石灰こそ,その家の家宝だったのです。

ヨーロッパの他の地域の石こう細工人はそのような方法で石灰を熟成させることをしていなかったので,英国人はそのことを知って喜びました。しかし,さらに重要な意味を持つ事柄を知ってその英国人は感銘を受けました。イタリア人の間では,石こう細工は単なる職業以上のもの,つまり世襲財産だったのです。最良の製法と技術が父から子へと慎重に伝えられてゆきました。

このようにして石こう細工は盛んになりました。では,それが衰えていったのはなぜでしたか。

経済上の要因

1600年代に英国で始まりやがては世界の大半の地域へと広がった産業革命の影響が,どれほど広範囲に及ぶかを知っていた人は恐らくいなかったでしょう。石こう細工など,大事にされてきた家内業が,工場の流れ作業のために見捨てられてしまうことなど,だれが予想したでしょうか。しかし,まさにそのような事態が起こったのです。工場では短期間に金銭上の収益が得られ,訓練はほとんど必要なかったからです。

それから第一次世界大戦がぼっ発しました。兵器や機械の製造に没頭した産業は規格化と大量生産によるコストダウンをこれぞとばかりに見せつけました。職人の不足,賃金の高騰,インフレ,改良された工場生産方式またその他の関係した理由のために,建築物は別の方法で組み立てられるようになりました。建設技術は,芸術的な技能というよりも,時間を節約して組み立てる方法に変わってゆきました。こうした理由で,デザインはごく簡素なものとなりました。装飾的な天井や天井蛇腹,装飾物などは過去のものとなりました。

また全般的に,芸術家や熟練した職人に頼ることもなくなりました。やがて,鏡板材やドライウォール(石こうでできている,紙で裏打ちした人工の板)のような,壁塗りの代用品が,より安価で取り付けが容易なため,おおむねしっくいに取って代わるようになりました。しっくい業を支持していた「壁と天井」という雑誌は,1969年に,それまでの十年間に言及し,こう述べました。「我々の産業のために費やされた幾百万㌦という助成金にもかかわらず,ある特殊な分野,つまりドライウォールが我々の製品の15倍も多く使用されてきた」。

なぜそれほど急激に増加したのでしょうか。国際壁天井請負業者技術委員会の副委員長ロバート・L・ホイットルは次のように答えています。「高い賃金と,従来のしっくいの限られた用途のために,この産業は崩壊したも同然である。モルタルの手塗りを頼むと米国の大半の地域では一日80㌦(約2万円)を上回る賃金を支払わねばならないので,それほど高価ではなかった建築の仕上げ塗りが,わずかな人しか頼めないぜいたくなことになった」。

それにもかかわらず,コストを下げようとする努力が払われてきました。モルタルの手塗りという伝統的な方法に代わって,今では,大きな“吹き付け器”でしっくいがモルタルの上に吹き付けられ,その後を職人たちがきちんと平らにします。さらに,軽いしっくいや,防音効果のある特殊なしっくいも開発されました。ほかにも著しい進歩が見られました。ドライウォール型の基部の上に濃度の高いしっくいを薄く一度塗った製品が出回るようになり,このしっくいの使用量は1975年には前年に比べて30%も増加し,毎年増加を続けています。こうした傾向はしっくい業を苦境から救うものとなると見る人は少なくありません。

有利な点と不利な点

しかし,ある人々にとっては驚きとなるような要素があります。壁塗りの研究により明らかにされたところによると,しっくいの最初の費用と維持費,また寿命の点などを他の代用品と比較すると,従来のしっくいが一般に,より経済的であることが分かります。

もしそうであれば,なぜしっくいはもっとよく用いられないのですか。理由は簡単です。代用品は最初の費用が安いからです。また,取り付けにかける時間も少なくてすみます。高層アパートの建築業者は,新しくて軽い材料の方が鉄骨の節約になるという点にも気付いています。また,部屋を貸すような場合,そうした材料が使ってあればずっと融通がききます。しっくいで造られている場合より容易に,壁を改造したり配置変えしたりできるからです。確かに,近代的な方法には著しい利点があります。

しかし,不利な点もあります。近代建築の質や技能が低下していることを嘆く人は少なくありません。この点は,公共の建物に最もよく現われています。石こうの装飾を施した古い建物は取り壊され,往々にして建築的な魅力に欠ける,より大きな建物が建てられるのです。

1910年に建てられたニュージャージー州(米国)ハドソン郡裁判所の例を考えてみましょう。その建物には,至るところに円形大広間や芸術品がありました。ところが,1966年にその建物は取り壊されオフィスビル形式の大きな建物が造られました。その建物について,ニューヨーク・タイムズ・マガジンはこう述べています。「古い建物は300万㌦(約7億5,000万円)で建ったが,新しい建物は1,400万㌦(約35億円)かかった。これは建築費の急騰に関して多くを物語っている。300万㌦あれば,緑色の,また青味を帯びた淡灰色のイタリア産大理石[石こう細工の装飾も含めて]が買えたのに,半世紀後には,1,400万㌦で紙のように薄いベニヤ板とプラスチック,またブリキ板のように見えるアルミニウムしか買えなかった」。このような例はいくらでも挙げることができます。

もちろん,ドライウォールや最新のしっくい材料や,他の壁塗りの材料のいずれを使っていようと,近代建築の質が昔のものと比べて必ずしも劣っているわけではありません。新しい建築様式の方が,古い建築様式の凝りすぎた装飾よりずっと良いと考えて,新しい建築様式を好む人も少なくありません。また,現代の建築術が提供してくれる,より安価な住居の恩恵を受けている人も大勢います。

しかし,近代建築に関するわたしたちの見方がどのようなものであれ,過去の石こう細工が現在の経済体制の下では二度と大規模に行なわれないことをわたしたちは知り,その優れた点を高く評価することができます。石こう細工は衰えゆく技術ではありますが,非常に優れた建築技術の一つとしていまだに存続しています。

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