世界展望
十代の外科医
◆ バングラデシュでは急速な人口増加を抑制する手段として,しばしば不妊手術が用いられている。そこで働く篤志看護婦によると,同国では,今十代の若者でさえ,輸卵管結紮という女性の不妊手術を大々的に行ない,成功を見ているという。同看護婦は英国の「模範看護」という本の中で,若い人の中には読み書きができない人もいるが,患者が局部麻酔をかけられ,腹部手術を受けている間に輪卵管を切断したり結んだりする訓練を受けている,と書いている。
呼吸も気がめいる
◆ 「メキシコシティーの全住民は高度の大気汚染により肺の問題を抱えている」と法医学部門の地方局長は語っている。1977年に7,500の死体を解剖したところ,この事実が明らかになった。同市にある六万の工場や150万台の自動車が毎日,650㌧の汚染物質を地方の大気中に吐き出すと言われている。2,30年前の型の多数の車から吐き出される排気ガスが汚染の少なからぬ原因である。
肥満は始まっているか
◆ 全米保健統計センターの調査では,アメリカの男子の平均体重は,一番最近に行なわれた十年前の調査の時より約1.8㌔増加している。女子の平均体重の増加は約0.45㌔である。さまざまな年代をとってみても,男子は平均約9.0㌔から13.6㌔,女子は約6.8㌔から13.6㌔太り過ぎであるという。心臓疾患,糖尿病,呼吸障害などが太り過ぎの結果としてしばしば生じる。
一番速い列車
◆ 東京の英文読売の伝えるところによると,日本の国鉄は「世界初のリニア・モーターカーのテスト走行に成功」した。磁石の反発力を利用して列車は浮上し,一本のレールの上を前進した。普通の列車の最高時速が約300㌔に限られているのに対して,この列車には軌道の摩擦がないため時速約500㌔のスピードが出せるようになる。この高速列車が価格の面で,従来の鉄道,航空機と自由競争することが望まれている。
音楽それとも狂気?
◆ 最近英国のロックグループが札幌で公演した際,2,000人の,金切り声をあげるファンが押しかけ,19歳の少女が押しつぶされて死亡した。負傷者も大勢いた。「私の見たところでは,最前部から17,8列あたりまでの人々が将棋倒しになった」と警備員は話している。
過失による死
◆ カナダの医学雑誌,「保健部門の重要性」の述べるところによると,「予防措置や協定にもかかわらず,血液銀行の犯した管理もしくは技術上の過失は,深刻な輸血不適合反応や死という結果をもたらしている。このような過失による死亡率は米国の場合,1,000件の輸血につき一人の割合である」。
同誌はさらにこう述べている。「輸血が一度施されると,不適合な血液を体外に移すことは実質的に不可能なので,輸血による過失は他の薬物療法の場合より重大な結果を招く」。同誌の説明によるとこのような間違いを防ぐ一つの方法は「一単位の輸血を正当とする理由に」特別な注意を払いながら,輸血の総数を減らしてゆくことである。
異常出産
◆ 米国テキサス州アマリロ市で,出産の三週間前から意識を失っていた母親が健康な赤ちゃんを最近出産した。医師の話では母親は心臓発作に襲われ,脳に大きな損傷をうけて昏睡状態に陥ったという。その母親は発作後も集中医療を受け,生き続けている。
最大の映画制作者
◆ アメリカにおける最大の映画制作者は断然連邦政府である。約2,300本の映画とテープが毎年約五億㌦(約1,250億円)の費用をかけて生産されるという。テレビガイド誌の伝えるところによると,映画の題の中には「燃料ポンプの取り外し」,「弓のこ第三部」,「病院での清掃: モップでふく方法,二つのバケツを使う方法」,「柱に登り,そこで働く」といったものがある。「口腔衛生 ― あなたの歯をきれいにしてください」と題するものを含む,歯のみがき方に関する12本の映画も利用できる。政府の映画が不必要に重複していてむだが多いとの不平の声が政府内部からあがっている。
“だれにとっても益になってきた”
◆ アメリカ医学協会誌の伝えるところによると,米国,アーカンソー大学のメディカル・センターでは輸血なしで行なわれる人工股関節手術が今はごく当たり前のことになっている。医師団を率いる整形外科の教授は,患者の血圧を下げ,出血を減らすために,麻酔学者が化学的な技術を用いていると説明している。この方法はエホバの証人のために開発されたもので「エホバの証人と共に働くことはだれにとっても益になってきたとはっきり言えると思う。我々は多くの事を学んでいる。我々はこの技術を,整形外科及びその他の手術を経験しているエホバの証人以外の患者にも適用してきた。なぜならそれはより優れた形の麻酔だからである。それに相当量の血液を失なわずに済むことも理屈にあう。また輸血反応も避けられる」と同教授は語った。
大やけどを生き残る驚異
◆ 新華社通信が伝えるところによると,上海の外科医はほぼ全身にやけどを負った婦人の命を救った。そのやけどのうち,第三度火傷が94%を占めていた。去年の六月,工場の火災により,36歳の婦人がやけどを負ったが,そのあと医師たちは患者の頭皮や足の裏の皮膚を使用して約3日に1度,皮膚移植手術を進めた。「新しい皮膚が順調に婦人の全身を覆いつつあり,彼女は歩行練習を始めている」と同通信は述べている。ロイター通信の示すところによると「西洋医学では第三度火傷が80%を超えた人を救った例はまれである」。
あなたの体はだれのもの?
◆ 米国ニュージャージー州の上級司法裁判所は最近72歳の老人について,医師たちが命の危険を唱えたとしても自分の両足切断に関しては自分で決定できるという主旨の判決を下した。その判決はこう述べている。彼は「結果がどうなるとしても,両足切断に関して同意する,または拒否する権利を有している」。病院側はエホバの証人たちに強制的に輸血を受けさせようとしてしばしば行なうように,手術を強行するために裁判に持ち込もうとした。
強制的な“施し”
◆ 米国ミズーリ州,カンザス市のキリスト教女子青年会(YWCA)の一女子職員が,慈善運動に10ドル(約2,500円)しか寄付しなかったとの理由で解雇された。毎月,一時間の労働賃金を寄付するというYWCAの方針に照らしてみると,同職員は少なくとも27ドル60セント(約6,900円)を献金すべきであった,と上司は語っている。同職員とその夫は自分たちの通っている教会の教育資金として,より多額の寄付をすることに決めていた。夫はこのように感想を述べている。「一定の金額を支払えない仕事についていると,つい愛の気持ちから施しができなくなりますよ」。ニューヨークのYWCA本部は寄付の最少要求額などはないと否定している。
たばこの災いが増大
◆ 最近のサイエンス・マガジンの報告によると,たばこを吸う婦人の乳汁にはニコチンが蓄積されるという。ある研究者はニコチンの蓄積は乳腺内に生じ,そこでがんが発生すると述べている。婦人が一本のたばこを吸ってから15分もたたないうちに,ニコチンが乳汁の中から見いだされた。
新英国医学誌の報告では,喫煙者は頭痛,疲労,失神などをもよおす多血球血症という病気に非常にかかりやすいという。その病気は血液を通して体内に供給される酸素量を減少させる。「この病気にかかった人々はだれもが窒息症状を起こす」と報告は述べている。同誌の関連した記事の中には次のように言明されている。「サッカリン,放射能,食品汚染,フレオン推進剤,石綿,その他社会や政府の多大の関心を呼び起こした,我々の周囲にある数多くの潜在的な毒物と比べても,喫煙は公共衛生上の害として,はるかに危険である」。
責任を負わせる
◆ イリノイ州,シカゴ市の市議会は最近,自分の子供が蛮行に走った場合,両親がその代価を払うことを要求する法令を採択した。賛同した一人の人はこの法律は“親の怠慢”と戦うことを目的としていると語った。ニューヨーク・タイムズ紙によると,既に同じ法令が実施されている周辺部では「蛮行が著しく減少したと報告されている」。
病気の子供を寝かすことは必要か
◆ 「子供の症状に一々大騒ぎをし,寝かせたり,薬を飲ませたり,学校を休ませたり,とるに足りない症状が見られるたびに医者を呼んだりするなら,子供は死ぬまで自分の健康を過度に気にする人間になってしまう」と英国,シェフィールド大学の小児医学の教授,ロナルド・イリングワース博士は書いている。同博士は,熱があっても起きることを許される子供が,ベッドで寝ている子供たちと同じ位早く回復するようだという病院での研究結果を引き合いに出してこのように主張した。「水ぼうそう,おたふくかぜ,はしか[風しん],百日ぜき[伝染性単核症],かぜ,下痢,咽喉カタル,頭痛,せき,喘息,腹痛などの場合でも,子供たちが起きていたいと考え,元気に起きられるなら,私はベッドに寝かせる理由はないように思う。はしかで熱の出た子供は普通ベッドの中にいたがるものだが,起きたいと思ったら直ちにそうさせてやるべきである」。もちろん,これは一つの見解に過ぎない。
ぜいたくな海の旅
◆ 客船クィーン・エリザベス二世号は一月の半ばに90日間の大平洋航海に出たが,それはその船の経験した航海の中でも最も長期間の,そして最も豪華な旅だった。5万8,000㌔に及ぶ航海中に,1,400人の乗客が食べ興じたキャビア,えび,シャンペン,その他のごちそうは何㌧にも上る。1,000人の乗務員,690人の音楽家,ナイトクラブの120人の芸人,217人の講演者が彼らを楽しませ,満足させた。このような航海を行なうためどの位のお金が必要とされただろうか。二つの新しい,一連の屋上家屋の各々が16万㌦(約4,000万円)の値うちがあったことは一つの目安になる。
アメリカのスポーツ精神
◆ フロリダ州の一高校のフットボールコーチは,自分のチームに必勝の精神を教え込むため,試合前の激励演説に際し,生きたかえるの頭をかみ切っていると告白している。同コーチは「生徒たちはそうするのをとても喜ぶ」と語ったが,当局はそれを禁止した。
ニューヨーク・タイムズ紙によると,マサチューセッツ州の父兄たちは,自分たちの8ないし10歳になる子供たちのホッケー競技に真剣になり過ぎているようだ。同紙はこう伝えている。「他の父兄に荒々しい言葉を吐く人がいたり,匿名の脅迫状がコーチに送られ,裁判ざたになったりしている。ある親は他の親を起訴するといっておどしている。……少なくとも一度はある親同士でなぐり合いを演じた」。