世界展望
“プリント配線回路の正確さ”
◆ 胎児が発達途上にあるとき,微小な中枢神経組織から神経線維が成長し,結合すべきふさわしい組織や筋肉を必ず捜し出す。ニュー・サイエンティスト誌はこの現象を「発生学上の大きな謎の一つ」と呼んでいる。カリフォルニア大学の研究者たちは,「筋肉組織自体,[伸びてきた様々な神経線維のうちから]ちょうど良いものを選ぶことによって,神経線維に協力しているのかもしれない」という点をごく最近になって発見した。この情報は,「胎児がその神経組織と体内の標的となる組織をプリント配線回路のような正確さをもって連結できる理由を説明する上で大いに役立つ」と同誌は述べている。しかし研究者たちは,この“プリント配線回路の正確さ”を設計した方については説明を加えなかった。
ビキニ島からの帰還
◆ アメリカ内務省の報告によれば,ビキニ島の人々はつい最近,汚染が除かれたと思われる自分たちの故郷の島へ戻ったが,再度その島を立ち退かなければならないだろう。10年前アメリカ原子力委員会は,以前行なわれた23回にわたる核実験によって生じた「放射能は実質的に残っていない」と断言した。しかし最近の政府の調査は,同島の井戸水の中に放射性物質であるストロンチウム90とセシウム137が含まれていることを明らかにした。それは人々の目につくところともなっている。地元で栽培されたココナツ,バナナ,パンノキの中に放射性物質が含まれているため,住民たちがもう一度別の島へ移住できるようになるまで,食糧は船で運び込まなければならない。
10代の若者の道徳とガン
◆ 米国では10代の若者の妊娠率が,五年間に33%も増加しているが,この急上昇と平行して,子宮頸部のガンが10代の人々の間で広くみられるようになった。「10代の人の子宮頸部組織は,男性の精液の中に含まれているような,害を及ぼしうる物質の影響に対して抵抗力が弱いようである」とサン・ディエゴ市の婦人科医,トーマス・スレート博士は語っている。デューク大学,ガン総合センターのウィリアム・クリースマン博士はこの見解に同意し,15-17歳の少女の子宮頸管は,ガンを引き起こす物質に対して特に抵抗力が弱いと述べている。さらに「青年の性交と子宮頸部ガン」と題する研究が明らかにしたところによれば,性的な活動が盛んな少女は,もう少し大人になるまで性的な活動を差し控えようとする女子と比べると,子宮頸部ガンに二倍もかかりやすいようである。
古代人の方がよく知っていた
◆ エジプト政府は,ケオプス王のピラミッドの小規模な複製を,古代の工法によって建造しようとした一日本人の活動を中止させた。(1978年7月22日号の「目ざめよ!」誌31ページをご覧ください)その計画に着手するかしないうちに数々の問題がその前に立ちはだかった。その一つは,ピラミッドの建造で需要が増したため,石灰石の値段が急騰したことだが,土台の建造にコンクリートは不可欠であった。おまけに石を運ぶ木製の旧式なそりは故障し,労働者はなかなか集まらなかった。その上,手で切り出した三㌧もあるピラミッドの石のあるものは寸法が合わなかった。エジプトの新聞,アル・アーラム紙によると,その工事は「できそこないの様相を呈している」。
はとの“看護兵”
◆ プラスチックの容器に入った生物の組織や血液の標本を運ぶため,伝書ばとが用いられ,英国,デボンポート病院からプリマスにあるフリーダム・フィールズ研究所までを通っている。夜間や霧の深い日に飛ぶことはないが,はとは3㌔の距離をいつもわずか4分で飛翔する。ちなみにタクシーでその医学標本を運搬する時には12分かかる。なぜ伝書ばとは日中だと迷うことがないのか,不思議に思われるだろうか。パレード紙はその一つの理由として「それはただ研究所のはと小屋で自分を待っているつがいの一方がいることを知っているからだ」と説明している。
アルコールと火災による死
◆ 米国メリーランド州で行なわれた死体解剖の研究は,同州でここ六年間に発生した火災による死者のうち半数が,一酸化炭素中毒に原因があったことを明らかにしている。デトロイト市のフリー・プレス紙は意味深くも「火事の犠牲者の30%は死ぬ前に法律的には酩酊の状態にあった」と述べている。
ただの年寄り
◆ エクアドル南部,ビルカバンバにあるアンディーン村は,村人たちの中に140-150歳になる老人たちがいると言われ,強い関心を集めてきた。しかし最近の研究で,その村には96歳以上の人は一人もいないことが明らかになった。例えば,バプテスマ,結婚,死についての記録を入念に調べてみた結果,127歳だと言っていた男子がただの92歳だったり,96歳だと教えてくれた老婦人が81歳に過ぎなかったりした。非常な長寿が報告された主な要素は,同一の名前が何度も繰り返し用いられたため,バプテスマの記録が年齢を計る目安として信頼できなかったことにある。研究者の一人であるバークリー市,カリフォルニア大学のシルビア・H・フォアマン博士は,「ビルカバンバの人々の寿命は世界の他の場所に住む人々の寿命とほとんど変わりがなく,違いがあるとしてもごくわずかである」と語っている。
象のレース
◆ スリランカで競馬は禁じられているが,過去10年間にますます多くの旅行者たちがその国の象のレースに引き寄せられてきた。特に新年を祝う行事の期間には,このレースに「ダンス,火渡り,馬車の競走などの色彩豊かなお祭り騒ぎが加わる」とトゥー・ザ・ポイント・インターナショナル誌は報じている。同誌は加えて,「大規模な象のレースが[計画されたのは]訪問客の関心を引くためだけでなく,彼らのお金が目当てでもあった」と述べている。
カイコの新しいえさ?
◆ 絹製品は,普通桑の葉を常食としているカイコに依存している。しかし新鮮な桑の葉が手に入るのは一年のうち限られた時節だけであり,しかもその保管には桑農園の運営と同じように多くの経費がかかる。しかしえさの中に桑が入っていないと,カイコがまゆを作る量は減少するものとみられ,その紡ぐ糸の平均重量も低下する。ところが最近,京都大学農芸化学科の山田康之氏と岡本朝夫氏が,人工的に桑の細胞を培養することに成功した。英国のニュー・サイエンティスト誌の述べるところによると培養されたこれらの細胞は「それが光を当てて培養されたものでありさえすれば,完全に申し分なく桑の葉の代用物になった」という。光を当てずに培養した無色の細胞と比較すると,これらは緑がかっており,「そこに含まれる葉緑素の量が本物の桑の葉のわずか1%だったにもかかわらず,カイコは人工的な細胞を好んだ」。人工的なえさよって「良質の絹が多量に生産される」と報告されている。それで培養されたえさの原価そのものは割り出されていないが,その細胞はカイコの飼育に必要な経費を軽減するであろうと研究者たちは述べている。
へんとうせんは除去すべきか
◆ 米国の医師は毎年約百万人のへんとうせん摘出を行なっているが,それは多くの場合,子供の患者の咽喉炎が再発しているからである。最近,ピッツバーグ大学医学部のジャック・L・パラダイスと他の研究者たちは,咽喉炎の発作が再発する子供65人について調査を行なった。子供たちは一年だけを取ってみると最低七回咽喉炎を患っているが,二年連続では最低年五回,三年連続になるとその最低発作回数は年三回になる。調査の結果によると,これらの子供たちのうちその後も同じ頻度で咽喉炎を再発したのはわずか17%に過ぎないようである。そのため研究者たちは,咽喉炎を再発するというだけの理由で子供のへんとうせん摘出を行なうことは,多くの場合理にかなっていないようだという結論を下している。
リリパットの小人
◆ 英国の風刺作家ジョナサン・スウィフト(1667年-1745年)が著した「ガリバー旅行記」の中には,リリパットという想像上の島の小さな住人について記されている。しかし西ドイツのハスロッホの近くにあるリリパットは架空の町ではない。それは1971年に遊園地の一部として建てられたが,それを建造したのは「興行師の小人たちのグループで,彼らが必要としていたのは,巡業の間,自分自身の家と呼べる所だった」とトゥー・ザ・ポイント・インターナショナル誌は述べている。そこにあるものはすべてが小人たちに適した大きさで,そこに住んでいる小人たちはドイツだけではなく,英国,ハンガリー,スウェーデンからも来ている。彼らは専らくつ屋,洋服屋,大工などの仕事をしている。最近,身長がわずか78㌢しかない23歳になる世界一の小人が,自分の小柄な兄弟姉妹と共にそこに移り住んだ。三人ともトルコのイズミル市近郊から呼ばれてきた。
苗木に免疫性を与える
◆ 人間のワクチン接種は長年にわたり広く実施されてきた。今日ではこの同じ原理がトマトの苗木に関して実験的に適用されている。英国のニュー・サイエンティスト誌によれば,西スコットランド農業大学の科学者たちは,「苗床で苗木に接種処置を施すことにより,ユーロクロスBB種のトマトの実が,病気の原因となるタバコ・モザイク・ビールス(TMV)を持った有害品種にならないよう保護することに成功した」。ワクチン接種を施したトマトはTMVに冒されたものに比べると,一苗につき平均0.68㌔も多量に実をつけた。その記事は「普通の商業的な状況の下では,温室からTMVを除去することは不可能だ」と述べている。それで苗木に免疫性を与えることによって経済的な恩恵がもたらされることになろう。
世界の文盲
◆ ユネスコ(国連教育科学文化機関)の元副長官ジョン・フォブスの行なった概算によると,世界には文盲の人が八億人いるという。パレード誌は同氏の言葉を次のように引用している。「三人の成人につき一人は読み書きができず,書面での簡単な計算もできない」。
「感電死の危険を冒さないでください」
◆ 日本の九つの電力会社によって構成されている連合会は動力線に引っ掛かったたこを回収するために年間約2億5,000万円を費やした。英文毎日によれば,1977年中,この仕事に割り当てられた人は9,912人に及ぶ。同連合会は,動力線に近い所でたこ上げをしないように呼びかける一方,もしたこが電線にかかったなら電力会社に電話するようにと子供たちに促している。人々は「感電死の危険を冒さないでください」との警告を受けている。
塗料と光
◆ 少しでも電気代を安く上げ,少しでも多くの光を得たいなら,部屋を塗装する時に明るい色を使うと良いだろう。もし天井を白く塗るなら,ワット数の小さい電球で間に合うかもしれないとチェンジング・タイムズ誌は述べている。同誌は次のようにも説明している。「例えば明るい青で壁を塗れば,光の75%は反射して部屋の中に戻ってくるが,中位の明るさの青の場合だと40%少ししか反射しない」。