世界展望
アルゼンチンに差しこむ“光”
◆ 「文明社会の光が,少しずつではあるが,再びともされるようになっている」。これはアルゼンチンのブエノスアイレス・ヘラルド紙の社説に載せられた一文である。この社説は,アルゼンチン市民のある権利を再度容認したアルゼンチン最高裁判所の最近の三つの判決に注意を喚起している。そのうちの一つの判決文は,「(親の宗教上の信念に従い)国旗敬礼を拒んだかどで放校処分に付された二人の小学生には復学の権利が認められる」と述べている。ヘラルド紙の報道によれば,この判決の結果,約一千人のエホバの証人の子供たちが復学できる見込みがあるという。この子供たちは「地方の教師たちによって全国の学校から追放された。その教師たちは全国教育協議会の一般決議を[誤って]解釈し,子供たちに対して愛国主義的な象徴物や建国の父たち,国家をたたえる特定の日に敬意を示すことを強要した」。
最高裁判所は,政府当局が『専横な方法で,協議会の決議を踏み越えた』として,上訴裁判所の判決を却下した。同社説は次のように論評している。「最高裁判所の判例に倣い,政府側がエホバの証人そのものに対して,同じように分別のある,すぐれて寛大な,そして憲法に断固のっとった考え方をする必要性を認識するよう願うのは,高望みであろうか」。
ディスコの弊害
◆ オーストラリア,ブリスベインのソーナー研究所の聴覚学者によって行なわれた公の実験キャンペーンが済み,聴覚専門家のダグラス・クス氏は,ロック・コンサートやディスコ施設で耳にするような『耳をつんざくポップス・ミュージックのせいで,十代の若者たちは,慢性的で治療不可能な聴力障害を引き起こすようになっている』と説明している。同氏は次のように述べている。「これら若い人々は,自分がやがて聾者になることに気づかない場合が多い。彼らは一対一で話すときには異常なく聴けるが,群衆の中や騒音の中では耳がよく働かない。彼らは共鳴の高調波を失っている。この神経末端の聴力障害は,悪化の一途をたどっており,ほとんど例外なく治療不可能である」。
ブラジルでも,リオ・グランデ・ド・スールという南部の州の医学専門家が二か月に及ぶ研究の末に,ディスコテックの音楽が「回復不可能な[耳の]病気」の原因となり得ることをさぐり当てた。彼らはまた結論として,ディスコの照明によって『角膜や水晶体や網膜に傷が付く』可能性があり,このような場所における光,音,「騒然とした雰囲気」によって『若い人々の記憶力や集中力には有害な影響が及びかねない』と述べている。この州の安全局は,ディスコテックにおける光や騒音の許容量を定める計画であると伝えられている。
母親の声が最高
◆ 赤ちゃんはいつごろから母親の声を聞き分けるのだろうか。ノース・カロライナ大学の一心理学者は,生後三日未満の赤ちゃんについて,この点を見定める方法を考案した。その学者は150人以上の新生児をゆりかごの中に入れ,その耳に小さなイヤホーンを取り付けた。そのイヤホーンを通して,子供向けの本を読む,録音された女性の声が流れることになっている。子供がある一定の割合でおしゃぶりを吸えば,その声は赤ん坊の母親のものであり,そうでないなら,その声の主はだれかほかの人ということになる。「赤ん坊の大部分 ― 少なくとも85% ― は自分の母親の声を好んだだけでなく,一日中[少し間隔をおいてであるが]おしゃぶりを吸うという行動を示し続けた」とこの研究者は述べている。そして赤ちゃんは「まだ胎内にいる時でさえ」母親の声の響きを聞き分けることができるのではないかと推測している。
“預言者”の金もうけ
◆ ケニアの宗教の一派であるサバイナ教の約150人の会員は,去年の12月の定められた日に世の終わりが到来すると説いたその宗派の“預言者”の言葉を信じ込んだ。予定日の前日,彼らは最後の食事に集まり,終わりを待った。そのとき,“預言者”は,“パラダイス”ではお金を必要としないので,自分の息子がそれを処分すると称してお金を息子に手渡すよう信者に告げた。「その宗派の会員たちは世の終わりを見なかっただけでなく,お金を手渡して以来,預言者の息子の姿を見かけなくなった」とトゥー・ザ・ポイント・インターナショナル誌は述べている。
弁護士のジレンマ
◆ 弁護依頼人が偽証していることが分かった場合,弁護士はどうすべきだろうか。米国弁護士会の代表者委員会は,ジョージア州アトランタにおける冬季年次大会でその問題を考慮した。ニューヨーク・タイムズ紙は次のように報道している。彼らは「依頼人が偽証をしないよう,あらゆる努力を払って説得することを弁護士に義務づける指針を(設ける決定を下した)。そしてもしその説得が失敗した場合には,その問題から手を引くようにすべきである」。しかし同紙の指摘するところによれば,「昨年,連邦上訴裁判所は,まさにこれに該当する状況から手を引いた弁護士について,弁護依頼人から公正な公判手続をはく奪したとする判決を下している」。
アマゾン流域の未知のインディアン
◆ ブラジルのカリプナ・インディアンは,今まで知られていなかったインディアンの一部族,カピバリ族の存在を報じている。オ・エスタド・デ・サンパウロ紙によれば,これらのインディアンたちはかつて一度も白人と接触したことがなかった。五つの大きな河とアマゾンのジャングルがその地域の文明化を阻んでいる。全国インディアン協会は,冬期の豪雨があがった後の三月に,この人々と会う計画を立てており,同協会の一役員の話によれば,3,000人以上のインディアンはいまだにほとんど顔を見せることがなく,他のインディアンの話だけでしか様子は分からないという。
フットボールでの負傷
◆ 過去20年間に,頸椎(首の骨)の病気や慢性四肢麻痺が学生たちの間で急激に増加した。ペンシルバニア大学体育医学センターのヨセフ・トルグ博士の話では,その主因となっているのはプラスチック製の新しいヘルメットである。このヘルメットには非常な耐久性があって頭が保護されるため,選手は盲信を抱き,タックルやブロックをするときに頭で敵方を連打すること,つまり“スペアリング”を思い切り行なっている。しかしプラスチックのヘルメットで頭がい骨は安全に保護されるものの,頭を動かす首の骨はそうではない。これらの病気が学生の選手の間でひんぱんに生ずるのはなぜだろうか。学生の選手たちはプロの選手をまねる傾向があるからである。しかしマイアミ大学医学部のアーサー・パール博士は,こう述べている。「優れた訓練を受け,隆々とした筋肉と太い首を持つプロ選手は,若い人たちがうまくできない事でも上手に行なえるのである」。
文明化がフンザの人々に与えた衝撃
◆ 中国のシンチャン・ウィグル自治区とパキスタンを結ぶ,手に汗握る新しいカラコルム高速道路は,かつては僻地だったフンザ渓谷を通っている。その谷間の住人については,いたって健康で長生きするというほとんど伝説的とも言える評判がある。ザ・ウォールストリート・ジャーナル誌の特別欄執筆者レイ・ビッカーの言葉によれば,新しい道路と“文明化”により,フンザの人々の事情も変わりつつあるという。この山間の住民がはつらつとした健康を保てるのは,その質素な自然食品と体を使うことが原因だったが,「フンザの人々の多くは,事情が許すなら,今はキャンディーだけで生活するだろう」とビッカーは述べている。この点を示すため,ビッカーは次のような経験を挙げている。
「バルティットから山歩きにでかけた時の昼食の際,フンザ人の案内人は,一缶のハインツのベークトビーンズを昼の食事にした。……彼はその食事の最後にキャラメルを六個も食べ,もう一つを口にほおばり,それから草むらの上に座って山歩きが再開されるまでたばこを吸っていた。たばこは山歩きの呼吸力を減ずると言われたとき,その人は肩をすくめ,『今はバスがありますよ。もうそんなに歩く必要はないでしょう』と語ったのである」。
世界の四分の一の人々は忘れられている
◆ 世界の貧困の問題は解決の方向に向かっているだろうか。国連食糧農業機関のエドワード・サウマ事務局長は最近,「貧困はすべての開発途上国に根強く残っているのみならず,実際にほとんどの国で増大しつつある」と答えている。さらに100か国以上から出席した食糧問題の政府関係者に次のように語った。「農業地帯の10億を超える人々が全くの貧困と欠乏の生活を強いられているのは悲劇的な時代錯誤である。4億5,000万人以上がひどい栄養失調に苦しんでいる」。
ワクチンの実験台に最適の人
◆ 米国,アリゾナ州フェニックスにある米国伝染病センターの実験室では,血清肝炎の新しいワクチンの予備テストのために被験者を必要としていた。アリゾナ・リパブリック誌の医学記事編集者が説明しているように,血清肝炎は「輸血や汚染された皮下注射器,汚れた歯科用器具,性交によって伝染する」。だれが被験者として最適だろうか。コロンビア大学公衆衛生学部の疫学教授ウォルフ・スツムネス博士は次のように答えている。「性行為の相手を選ばないという点で右に出る者がないのは同性愛の男子である。そのため,この病気は彼らの間に非常に多い。彼らはその事も病気の不快な結果をも承知しているので,フェニックスとニューヨークにある彼らの団体を通して,被験者の役割を買って出た」。
教会の児童福祉事業に不正行為
◆ 教会の運営する児童福祉事業には,世間一般の福祉事業によく見られる貧欲や悪幣がないだろうか。ニューヨーク・マガジン誌の言葉を借りて答えるならば,「[ニューヨーク]社会福祉事業部,児童特別部門に保管されている[すべての]事業所からの償還記録の会計検査,調査報告,分析を見ると,悪質な不正管理や貧欲の様子が明らかになる」。会計検査には「カトリック・チャリティーズ,プロテスタント福祉事業連盟,ユダヤ教博愛事業連盟などの有名なグループと結びつきのある」団体が含まれていた。「児童福祉団体の中でも悪らつを極めたグループの中に,七,八年間も監査を受けていない団体があった」ことにニューヨーク誌は注目している。なぜそのようなことが起こるのだろうか。関係する宗教団体の政治力のためである」と同記事は述べている。
八歳の犯罪者
◆ 米国,フロリダ州ローダーデイルの警察当局では,八歳の非行少年がすでに“札つきの犯罪者”かどうか判断に苦しんでいる。「彼を救うことができるかどうか分からない」と,州の係官は語っている。この少年は五か月足らずのうちに八回逮捕され,ごく最近では車を盗んで一週間に二回も逮捕された。
強力な微生物
◆ 米国,ペンシルバニア州ピッツバーグで40以上のビルが基礎の下の床岩の膨張によって,かなりの損傷を受けた。どうしてそんな事があり得るのだろうか。原因は顕微鏡でしか見えないバクテリアである。サイエンス・ニューズ誌は次のように述べている。「ティオバチルス・フェロオキシダンスが泥板岩中の黄鉄鉱を食べて硫酸を分泌した。次いで硫酸が岩石中の石灰と反応して石膏の結晶を作り,[今度はそれが成長して]一平方インチあたり一万ポンド[一平方センチあたり700キロ]もの圧力を[出し],……岩石を動かし,膨張させた」。
ビタミンCとガン
◆ 福岡市の一病院の外科医長は,ガン末期の患者の命がビタミンCによって延びると言明している。回復の見込みなしと判断された99例のうち,44人には毎日1.5グラム,55人には29グラムのビタミンCを四年間にわたって投与したところ,「1978年8月現在で,ビタミンC投与後に生き延びた平均日数は,二番目のグループが201日であるのに対して,一番目のグループはわずか43日であった」と東京の英文読売に報じられている。同医師の話によると,大量に投与されたグループの中の五人は三年後の今も存命している。この結果はノーベル賞を受賞した化学者ライナス・ポーリングの得た結論に酷似していると言われる。ポーリングが一年前にスコットランドで末期のガン患者のグループにビタミンCを与えたところ,彼らはビタミンCを与えられなかった患者の四倍も長く生きたという。