世界展望
力のない国際裁判所
◆ 国連の国際司法裁判所は,最近,イランとアメリカの間の人質問題の解決を委託された。設立されてからこれまでの35年間に同裁判所で審理された事件は45件に過ぎず,判決が下された事件はわずか14件,正式に勧告的意見が与えられた事件は16件であった。「同裁判所は,国際連盟によって設けられた常設国際司法裁判所を継承し,それをしのぐことになっていた」とニューズウィーク誌は述べている。もっとも常設国際司法裁判所も訴訟事件を扱ったことはほとんどなく,「連盟と同様,戦争の阻止や一触即発の状態にある紛争の解決に見事に失敗した」。国連に加盟している151か国のうち国際司法裁判所の管轄権を受諾しているのは43か国に過ぎず,しかも“留保”を残している場合が多い。ニューズウィーク誌によれば,「今日,愛国主義が非常に広まっている」ことを考えるなら,「同裁判所の記録が貧弱であっても決して驚くに当たらない」。
「高速道路における最大の脅威」
◆ 交通事故による死亡の主な原因はスピードの出し過ぎにあると考えている人は多い。しかし,アメリカ全国高速道路交通安全局のジョアン・クレイブルック局長は,最近,飲酒運転を「アメリカの高速道路における最大の脅威」と呼んだ。同女史によれば,「アメリカの高速道路で起きる致命的な衝突事故の約半数にはアルコールが関係しており」,一台の車だけが関係している衝突事故の場合,「死亡者の65%以上は法律的に許される範囲内ではあるが,酒を飲んで運転している」。飲酒運転による死亡者数は毎年2万5,000人に上るものと推定されており,「その約3分の1はつきあいのために飲む人々だが,残りは手に負えない飲酒家である」とクレイブルック女史は語っている。
聖骸布にあやつられる
◆ 最近,アメリカ人の一企業家はトリノの聖骸布を使ってひともうけできると考え,その影像を描いた“奇跡の布”の広告をタブロイド版の全国新聞に載せた。熱っぽい宣伝文句は次の通り。「ほぼ2,000年間保存されてきたこの奇跡的影像は,あなたのために不思議な力をすぐに発揮します。さあ,ほかの人が経験した奇跡をただ読んでいるには及びません。あなたもご自分でそれを経験できるのです」。その“宗教的な”記念品はどんな“奇跡”を行なうというのだろうか。広告ははっきりとこう語っている。特に,「これを持っていれば,ビンゴ・競馬・トランプ・カジノその他の賭け事で勝てます。宝くじを買うときにはこれを持っていってください。富くじ競馬に出かけたり,コンクールに出場したりするときには,この布で参加用紙にさわってください」。このような愚かしいことが行なわれるのも,聖遺物崇拝が原因である。
反テレビ同盟
◆ ドイツ連邦共和国のミュンヘン市内及びその近辺に住む約160の家族が反テレビ同盟を結成した。テレビを見る“くせを直す”のが難しいことを認めたこれらの人々は,テレビに映し出される,彼らの言葉で言う“駄作”に抵抗するため,テレビ受像機を売却するか,地下室や屋根裏にしまいこんだ。この同盟の設立者で50歳になるパウロ・ホラーは次のように語っている。「この運動に約千家族が加わるようになれば,我々は放送網に対抗し,その劣悪な番組の計画について発言できる力を持てるようになる」。ホラーは,「今や我々は,以前のようにスポーツをし,読書に帰り,互いに話し合うことさえしている」とも語った。
医学界初のケース
◆ 南アフリカのケープタウンで,医師たちは10歳児の眼球から芽を出した種を除去するという珍しい手術を行なった。1976年のこと,この少年は草むらで遊んだ後に,何かが目の中に入ったと母親に訴えた。さまざまな治療を施したにもかかわらず目の痛みは取れず,周期的にはれ上がった。しかし最近専門家たちが顕微鏡で検査したところ,芽を出したばかりの小さな緑色の種が発見された。植物学者もそれを確認している。医師はその後むずかしい手術を行ない,その草の種子を除去したが,少年の目には後々まで残る傷は付かなかった。
子供が親と縁を切る?
◆ 昨年,子供の権利に関するスウェーデン政府の特別委員会が,体罰は違法であるとの勧告を行なった。この勧告は法律に組み込まれた。そして今度はその同じ委員会が,子供に親と縁を切る権利を付与するよう唱えている。同委員会の議長は次のように述べた。「親と口論する6歳の子供が家を出,両親と縁を切ることができると言っているのではない。しかし養家にいる3歳の子供は,もし生みの親が子供に何の関心も示さなくなったら,その親との関係を断つことができるだろう。同様に,男友達と同棲するようになった16歳の少女も,もし両親がその関係を良しとしないのなら,両親との縁を切る機会を得ることになろう」。
幸福な人ほど長生き
◆ 「ニューイングランド医学ジャーナル」誌上で報道された40年に及ぶ研究は,「穏やかな心は人体の命である」という聖書の箴言の言葉を確証しているようである。(箴 14:30,新)研究者たちは188人の男子の身心両面の健康状態を40年間観察し,良い気質を持ち,幸福な人は,そうではない人々よりも長く,より健康な人生を送っている,と述べている。
交通事故による死者が再度増加
◆ 1978年の最終的な数字によると,米国内の交通事故による死者は,5万3,600人を上回った。全国の交通事故による死亡者数が5万人の大台を超えたのは5年ぶりのことである。この増加の原因としては次のようなものが挙げられる。時速55マイル(89㌔)の制限時速を無視する人が多い。安全ベルトを使用しなくなった。道路の悪化。軽トラックや貨物自動車(バン)が多く使用されるようになり,衝突の際に死者が出やすくなった。オートバイのヘルメットに関する法律が緩和もしくは廃止された。原動機付自転車の普及。
事故死する若者が増加
◆ ジュネーブの世界保健機関の報告によると,交通事故で死亡する若者の数は,過去15年間に2倍以上になった。ポルトガルの増加は約300%,アメリカはほぼ2倍,イングランドとウェールズでは55%だった。道路上で死亡する若い女性が増えており,調査の対象になった30か国のうち4分の3以上が,50%を超える増加を報じている。世界保健機関の調査は,死亡率の増加した要因はアルコールの乱用であると断言している。例えば,イングランドとウェールズで死亡した30歳以下の運転者のうち,40%の人々の血液中に,許容量以上のアルコールが含まれていた。その調査は,若い運転者たちについてこう述べている。「彼らは運転においても,酒においても,酒を飲んで運転することにおいても未熟である」。
騒音は血圧を上げる
◆ 大きな騒音に絶えずさらされていると,聴力障害をきたすだけでなく,血圧も上がることを示唆する幾つかの実験が,西ベルリンの連邦保健局によって行なわれた。ある瓶工場の労働者は,平均95デシベルの騒音にさらされていた。耳栓をつけて数日間過ごしたところ,彼らの血圧は下降した。しかし耳栓を取り外すと血圧は再び上昇した。最後には心臓自体も損なわれるのではないかと推測されている。
誉れを受ける王国会館
◆ 米国ユタ州のローガン市は,同市の栄誉になるものとしてエホバの証人の王国会館を挙げた。同市の特別委員会は次のように書き送ってきた。「わたしたちが……今月栄誉を与えるものとして,皆さんの愛すべき崇拝の場所,王国会館を選んだことをお知らせできるのは大きな喜びです」。なぜだろうか。同委員会は述べている。「皆さんの魅力的で良く手入れの行き届いた建物,その庭全体にわたって草花や樹木が十分に考え抜かれて用いられていること,西部にちなんだ興味深い物品が独特な仕方で用いられていること,これらは特筆に価するものです。皆さんが払っておられる環境の美化に対する努力は,近隣の大勢の人々だけではなく,わたしたちの市全体にとって優れた模範です」。
最後に笑うハイエナ
◆ ケニア,ナイロビのデーリー・ネイション紙の報道によると,ある宗派が設営した“都市”の近くでハイエナが悩みの種になっている。200ないし300人から成るこの集団は,自派の死者を丘の斜面の洞穴に埋めると言われている。これが食物をあさるハイエナをおびき寄せるのだが,ハイエナは同宗派の慣行をうまく利用してきた。レポーターのフィリップ・ワンガルワ氏はこう述べている。「死後三日目,死者が『天に取り上げられ』たかどうかを見るため聖女たちが出掛けて行ったところ,骨はなくなっており,彼女たちは喜びのあまり歌を歌いながら“都市”へ戻ってきた」。同氏の説明によると,「ハイエナの『笑い声』」は,“埋葬”後の夜遅くまで,“都市”を見下ろす丘で「聞くことができる」という。
インフレに襲われる中国
◆ 20年以上の間,中国における消費者物価は,他の国の物価が急騰しているのに対し,比較的安定を保っていた。ところが,「中国建設」誌が述べているように,中国政府は幾つかの物品について小売価格を上げるようになった。豚肉,牛肉,羊肉<マトン>,魚は33%,卵は32%上昇した。しかしその報道によると,「穀類,食用油,木綿製衣類,石炭などの日用必需品の価格は据え置かれており,家賃,水道代,電気代,交通費,毎日の消費財の価格にも変更がなかっ(た)」。
過度の飲酒による死亡者数
◆ 35歳未満の男子がアルコール飲料を過度に摂取した場合,肝臓よりも脳が冒されやすい,とデンマークの医師団は結論付けている。21歳から35歳までのアルコール常用癖を持つ人のうち深刻な脳障害の兆候を示したのは60%だったが,肝臓に障害をきたした人は20%だった。脳を冒されたアルコール中毒患者は物忘れがひどく,精神的に疲れやすく,精神を集中させたり推論したりすることに困難を覚え,他の人と同じようには早く学べないことをテストの結果は示している。
エネルギー危機で家族のだんらんが回復
◆ 家族いっしょに足を暖める昔ながらのこたつが,寒さをしのぐために日本の家庭で再び用いられるようになった。政府がエネルギーの節約のために冬の室内の温度を最高摂氏16度までとするように勧めたので,一家でだんらんすることが再び行なわれるようになった。近代的なこたつには,低いテーブルの裏に発熱部分が取り付けられており,家族はその下に足を入れてふとんを掛ける。そして食事をしたり会話や読書やゲームをしたりして一家だんらんを楽しむ。
子守り歌代わりの音
◆ 企業的精神に富む一部の人々が,子供が母親の胎内で聞く音を幼児に再び聞かせるおもちゃのくまを売り出した。妊婦の子宮から録音したその音は,フロリダのある病院の育児室で試験的に使用されたが,そこの育児室長は,「今まで聞いたことがないほど退屈な音です。働いている人たちはその音のために気が狂うほどです」とぼやいた。ところが,赤ちゃんたちは,母親の骨盤部の動脈を流れる血液の鼓動を聞きながら15秒ほどで眠ったと言う。
中国の犯罪
◆ 中華人民共和国の公安相によれば,同国の少年犯罪は1960年代初頭以来10倍に増えた。それでも,西欧の基準からすれば,中国の2億1,000万人の学童に対する少年犯罪の率はまだ低い。新華社通信は,少年犯罪の増加の大きな原因として10年間にわたる中国の「文化大革命」を指摘し,「文化大革命」により,子供たちは「殴打・破壊・略奪が革命的な行為であると考えられるような風潮の中で育てられ,反抗は正当化されると教えられた」と述べている。
あり余るほどの財産
◆ 南ドイツ新聞によれば,ドイツ連邦共和国において景気のよい金融会社7社がルーテル教会に,また5社がローマ・カトリック教会に所有されている。「それを誇る人々がいる一方,自分たちの成功を恥ずかしそうに隠そうとする人々もいる。もっともそれは完全に隠しおおせるものではない」と,同紙は述べている。ドイツのルーテル教会とカトリック教会は国の税金の援助を受けている。したがって,南ドイツ新聞の主張によると,両教会は,必要度に応じてお金を支給するというように税法が変わり,現在のように一定の率でお金を受け取れなくなることを恐れている。