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目ざめよ! 1979
目79 10/22 19–21ページ

病害に見舞われる英国の田園地帯

英国の「目ざめよ!」通信員

英国では,毎日2万本のニレの木が枯死しています。1968年以来,1,100万本のニレが枯死したものと推定されています。どれもオランダニレ病の名で知られる植物病の犠牲になったのです。

“オランダ”の名を冠してはいても,この病気がオランダで最初に発生したというわけではありません。そのような名が付けられたのは,この植物病の初期の研究が主に同国で行なわれたことによります。オランダニレ病は中部ヨーロッパから北米に伝わったものと一般に考えられています。そして,現在の流行は1968年にこの植物病に冒されている北米産の木材が英国に持ち込まれたことに端を発していると思われます。しかし,この植物病について論じる前に,ニレそのものについて少し調べてみましょう。

英国諸島に生育している六種のニレのうち長い間数の上で優勢だったのは,イギリスニレ(コモンエルムやフィールドエルムの名でも知られている)と広葉のセイヨウハルニレの二種です。イギリスニレの樹幹は,節やこぶがたくさんあり,太くてごつごつしています。樹皮の表面は非常に粗く,全面に深い筋が寄っています。この木は地面のすぐ近くまで小枝が密生しているのですぐに見分けがつきます。セイヨウハルニレは,幹の下の方に小枝を生やしておらず,幅の広い大きな葉を付けています。セイヨウハルニレはイギリスニレほどごつごつしていないため,この二種類のうちではより優雅な感じを与えます。

ニレの木には現在でも木材として利用価値があります。家具職人は,イギリスニレの幹にできるごつごつしたこぶを高く評価します。珍しい脈状のしま模様や筋の付いた木材が得られるからです。しかし今日では,主にパレットやボール紙,坑道の支柱,ひつぎなどに用いられています。しかし,イギリスニレの最も重要な働きは景観を作り出すことに大きく寄与してきたことにあります。ニレは並木にされたり単独で植えられたりします。英国の樹木の中でも特に丈の高い木の一つです。

オランダニレ病とは何か

オランダニレ病はカビによる植物病で,甲虫(Scolytus destructor)が媒介します。この甲虫は卵を産む前に,病気にかかっていない木を一週間ほど食べます。この時期に,甲虫の体に付着していたカビの胞子がこすり落とされ,病気にかかっていない木の導管に入り込みます。カビの反応のせいで,ニレはしだいに弱り,落葉と毒素の影響で最後には枯死してしまいます。ニレがひどく衰えると,甲虫は樹幹の皮の中に入り込み,そこで卵を産みます。翌年の春に甲虫が発生し,再び同じことが繰り返されるのです。

オランダニレ病の典型的な徴候で外から見て分かるのは,それまで青々としていた葉が黄色や茶色に変色していくことです。生長の早い若枝が曲がり,その枝が枯死しつつあることを示すこともあります。小枝の皮をはぐと,一番外側の導管に黒ずんだ長い条斑の付いているのが分かります。これらの病症はしろうとにもすぐに見分けることができます。しかし,この植物病には二つの種類があって,一つは強く,もう一方は弱い種類です。両者を区別するのは容易ではありません。弱いほうの病気にかかっても普通は木が枯死することはありませんが,強いほうの病気の場合は,前者の二倍の早さで広がり,幾百万本ものニレの木が枯死します。英国に入り込んでからこれまでの10年間に,この植物病は英国全土で猛威をふるい,コーンウォールニレとハンティンドンニレを除くあらゆる種類のニレが次々に枯死しています。1977年の末までに,英国で生育している2,300万本のニレのうち1,100万本が枯死しました。ニレの木が九割がた枯死している郡が少なくとも一つあります。これは同郡のすべての樹木の五割に相当します。

ロンドンには,特にりっぱなニレの古木の植えられている美しい公園が数多くありますが,これらのニレの木も大きな被害を受けました。リージェンツパークでは,1977年の一年間だけで,残っていた500本ほどのニレの木のうち,約100本を切り倒さねばなりませんでした。国内の他の場所におけると同様ここでも,病気に感染した木に薬剤を注入する試みが行なわれましたが,この悪性の植物病の前には,このような方法もほとんどききめがないようです。

植物病との戦い

最近まで,オランダニレ病の被害の回復を計る長期的方策は,枯死したニレの代わりに,抵抗力のある新品種のニレを移植することしかありませんでした。短期策は残っているニレをできるだけ保護することに主眼が置かれており,この種のまん延防止策の代表的なものに『防疫伐採』があります。防疫伐採を効果あるものにするには,感染後直ちに樹木を切り倒し,その樹皮を焼かなければなりません。枯死した木は,翌春甲虫が卵を産んでカビをまき散らすまでに伐採しておかねばなりません。大抵の場合,そのような措置は取られないので,翌春にはさらに100万本のニレの木がこの病気に感染することになります。残念ながら,大したことも行なわれず,時期も後手に回ったため,防疫伐採の成果は上がりませんでした。

最近用いられるようになった防御法に防カビ剤の使用があります。これを病気になっていない木の根元付近に注入すると,防カビ剤は樹液に運ばれて枝のすみずみに達し,カビを抑制します。この注入処置の価格は樹木一本当たり5ポンド(約1,900円)ほどで,毎年この処置を施す必要があります。しかし,結果の示すところによると,この方法は高さ12㍍までの木にしか効果がなく,個々のニレによってその効き目が異なります。

時には,ニレ同士の根がくっ付いていて,カビが地下で木から木に移ることがあります。化学薬品を利用した防壁で,そのような木を分離することができます。これを行なうには,直径2.5㌢,深さ60㌢の穴を15㌢間隔で数本掘り,そこに土壌殺菌剤を注入します。この処置の効果は数年間持続しますが,これには多額の費用を要し,一本の木について最低12ポンド(約4,400円)かかります。価値のあるニレの場合にのみこれは実用的です。

再植林のための努力

今日では,生物全体の生態系の均衡を保つ上で,樹木が欠かすことのできない重要な役割を果たしているという認識がしだいに深まりつつあります。ニレが往年のように生い茂ることになりますか。もしそうだとすれば,どのようにして? 個人よりも公的な植林計画が各地で行なわれています。しかしこの場合,ニレではなく,ライムのような生長の早い樹木が植えられます。ある地域では,1975年までに,17万本以上の木が植えられましたが,その中にニレは一本もありませんでした。現在までのところ,ニレの悲劇を食い止めようとする対応策は,山火事に庭園用の散水ホースで立ち向かう程度の効果しか上げていません。

政府が補助金を支給しているにもかかわらず,農夫や土地所有者の間には新たな木を植えるのを渋る傾向がありますが,それも無理のないことです。なぜでしょうか。現在の法律の定めるところによると,木を四本植えても,そのうちの三本は税金の形で実質的に政府のものになってしまうからです。そのため,1975年には,計画された再植林の企ての少なくとも90%が取り消されました。

ロンドンにある,ものみの塔協会の支部事務所の敷地でも,樹木の病害の影響が見られます。敷地の中の木を30本近くも切り倒さなければなりませんでしたが,その中にはニレが多数含まれていました。また,ヤチヤナギも犠牲になりました。しかし最近,強力な再植林計画が進められてきました。一部でへいの代わりをする100本を超す針葉樹に加えて,敷地の全域に200本以上の木が植えられました。それには,キハダカンバ,アメリカスズカケノキ,ユーカリ樹,ナナカマド,カエデが含まれています。しかし,損なわれた景観を取り戻すには,かなりの時間を要するものと思われます。

ここ何か月かの間に,生態学者は田園地帯の周辺でニレの古い根から吸根が伸びているのに気付き,胸をなでおろしています。これがしだいに生長して,均衡を回復する助けになるかもしれません。しかし現時点で,それが確実に生長すると断言するのは時期しょう早というものです。

一方,オランダニレ病は依然として猛威をふるっています。コンスタブルやゲーンズボロ,ターナーといった画家の描いた昔の絵によってありありと目に浮かんでくる英国ののどかな田園地帯は,この植物病のせいで恐ろしいまでに損なわれてしまいました。かつての誇り高い樹木が葉を落としている姿は保護政策の失敗を告発しているかのようです。

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