世界展望
わびしい“児童年”
◆ 国連児童基金(ユニセフ)は,1979年の“児童年”の間,発展途上国の子供たちに十分な食事が与えられなかったことを指摘した。ユニセフの報告が示すところによると,これらの国々の2億人の子供たちは栄養失調に陥っており,5歳以下の子供の年間死亡者1,500万人のうち半数は栄養失調が原因であると考えられている。これらの国々で毎分誕生する100人の子供たちのうち,15人は1年も生きずに死亡する。小学校を卒業するのは40%足らずにすぎない。インディアン・エクスプレス紙の論説は,このユニセフの報告について論評し,児童年は「たちの悪い冗談」と化してしまったと遺憾の意を表した。インドでは,来年「約250万の子供たちが栄養失調によって盲目になるだろう。現在,少なくとも1,200万の子供たちが物乞いをしていると言われる」と同紙は説明している。
“病院側の新しい見解”
◆ サウスオーストラリア州のアデレード市にあるフリンダーズ医療センターでは,経費節約と患者の益を図る手段として,輸血の利用頻度を大幅に減少させた。「輸血処置におけるこの変化には,輸血の必要性に関する病院側の新しい見解が反映されている」とアデレード・ニューズ紙は伝えている。病院の一代表者は次のように説明した。「過去においては,ただそこにあるからという理由で医師が血液を用いる傾向があった。しかし,多くの人々は,どんな輸血にも危険がつきまとうことに気づいていない。我々は輸血をできるだけ安全なものにしているが,輸血は異物を体内に入れることであり,アレルギー反応を引き起こしたり,血液を汚したりする危険が常にある」。
この同じ医師は,その新しい方針の別の利点について次のことを指摘している。「手術に関する新しい技術も助けになってきた。ある手術では,患者の出血が以前よりも少なくなるからである。とはいえ,当の患者が輸血に伴う危険を認識しなければならない。患者の多くは,手術後に壮健になるには輸血が必要だといまだに考えている。それは全くの事実無根だ」。
懲らしめが禁じられる
◆ ドイツ連邦共和国はスウェーデンと足並みをそろえ,今年の1月1日に,子供たちを懲らしめる親の権威に制限を加えた。(1979年9月22日号の「目ざめよ!」誌,27ページ参照)子供たちが不従順な場合,親たちは平手で打つような「侮辱的なしつけ方」を採用してはならないとされている。もし親がこの新法を破ったなら,子供は親を家庭裁判所に連れてくることができる。政府は,子供が平手で打たれると「人間としての威厳がそこなわれる」と論じているが,この新法にある,「人間としての威厳」は子供のわがままと置きかえても何らおかしくはない。
爆竹による死者
◆ 中華人民共和国では,今年の初めに鉄道で爆発事故が頻発し,1月の終わりまでにその数は6件に達した。新華社通信によれば,6番目の爆発は旅客列車の中で起き,20人が死傷し,車両は破壊された。以前,山東<シャントン>省の駅の待合室で4万4,000本の爆竹が爆発した事件は,最も大規模なものだったと言われる。当局者はその対応策として,乗客に対し,可燃物や爆竹の持ち込みを禁止した。
親を非難する法廷
◆ 米国カリフォルニア州に住むある母親は,17歳になる息子の寝室でマリファナを見つけ,それを家にやってきたロサンゼルスの警察官に手渡した。少年の父親は息子の部屋を捜索する許可を警察官に与え,警察官はさらに9袋の麻薬を発見した。ところがカリフォルニア州最高裁判所は,令状のない捜索は違法であり,麻薬密売人と見られている者の不利になるような仕方でその証拠物件を用いることはできない,という裁定を下した。この裁定は,後に連邦最高裁判所によっても支持された。同州の法務長官はこう論評している。「親にとって,子供たちが家庭内において犯罪行為に携わらないようにすることも,多くの場合,法的に許されないことになるだろう」。
望まれている,『聖書に関する歯切れの良い答え』
◆ ドイツで刊行されているプロテスタント教会の「ビュルテンベルク福音共同新聞」は,その一記事の中で,エホバの証人について次のように述べている。「ものみの塔の教えには,あらゆる質問に対する答えがある。それは真実のエホバの証人がどのように考え,行動すべきかを指摘している。これこそ,多元論的な今の社会に住む多くの人が,特に歯切れのよい答えを欲している凡人が探し求めているものだ。我々の教会は信仰の問題において歯切れのよい答えを勇気をもって与えているだろうか。それとも,人の質問や探求に対して極めて複雑な,したがって歯切れの悪い答え方しかしていないだろうか」。ドイツのルーテル教会が会員に与えていないものを,エホバの証人は確かに得ている。それは,強い信仰を築くための質問に対する聖書的な歯切れのよい答えである。
“スウェーデン人にとって陰うつな日”
◆ スウェーデン政府は昨年の末に,酒とたばこにかける税金を強硬に引き上げ,ストックホルムの新聞は上のような見出しを掲げた。伝えられるところによると,6か月間に6万人以上が泥酔を理由に逮捕されたが,当局者はこの税引き上げがこうした一般的傾向に歯止めをかける一助となることを願っている。ゲーテボルク警察の話によると,頼もしいことに,普通は一日25人の逮捕者があるのに対し,税の引き上げがあった後は「4人の泥酔者を逮捕したに過ぎなかった」。
ぶどう酒は吸収を速める
◆ 米国バークリー市にあるカリフォルニア大学人間栄養研究所では,ミネラルの吸収に及ぼすぶどう酒の効果に関する研究を最近行なった。6人の男子が食事に際し,ぶどう酒,脱アルコール化したぶどう酒,アルコール水溶液,脱イオン化したただの水のいずれかを75日間にわたり飲用した。研究が明らかにしたところによると,カルシウム,リン,マグネシウム,亜鉛,鉄などのミネラルは,食事に際してぶどう酒を飲用した場合,吸収が速くなる。ミネラルの吸収を速めた決定的要素はアルコールだろうか。そうではなさそうである。普通のぶどう酒と脱アルコール化したぶどう酒が同じ様な成果を上げたのに対し,アルコール溶液には効き目がなかったからである。吸収を速めるのはグラス一杯のぶどう酒に含まれる他の幾百もの成分の一つに違いないと研究者たちは考えている。
肝硬変に薬草療法
◆ 新華社通信からの報告は,肝硬変の患者は中国の薬草で治せる,ないしはほぼ間違いなく快方に向かうと述べている。7年の実験期間中に105人の患者が薬草による治療を受けた。全治した患者は67人,著しく回復した人は14人,快方に向かった人は17人,変化のなかった人は7人だった。中国における薬草による調合剤は,現在肝炎の患者を治療するために用いられている別の薬から開発された。
喫煙によって生ずる相違
◆ 全米相互生命保険会社は,10万5,000人の保険契約者を対象にした,喫煙者と非喫煙者の比較研究を発表した。研究の結果,喫煙者は非喫煙者の2.6倍も命にかかわる事故を起こしていることが判明した。一般的に言って,喫煙者の方が,2倍以上も事故を起こしやすく,病気になりやすい。その研究はさらに,喫煙者が9倍も自殺しやすいことを明らかにした。
サマリア人と律法
◆ ハーバード大学のセム語学教授フランク・M・クロスは,エリコの北部にある洞窟で発見されたパピルスの巻き物の断片を復元して翻訳した。その断片は西暦前4世紀のものと言われている。アレキサンドロス大王の支配に反逆し,同大王の兵を逃がれていたサマリア人の貴族がこの巻き物を洞窟の中に持ち込んだのである。この巻き物は,奴隷や財産の貸借と売買に関する契約を収めた商取引上の法的文書であった。
クロスは次のように記している。「これらの奴隷契約は,ヘブライ人の奴隷たちを7年目に解放すべきであると定めた聖書的な命令に言及していない。その命令はサマリア人が主要な宗教経典として用いたモーセ五書に記されている」。同教授の推理によると,神の律法に対する敬意が見られないのは,「裕福なこの貴族が,自分たちは律法より勝っていると考え,それを無視していた証拠である。彼らは自分たちの奴隷を解放したいと思わなかった。奴隷たちを永久に自分のもとに置きたいと願っていた」。
砂糖づけになっているアメリカ人
◆ 米農務省によれば,ほとんどの加工食品や飲料に砂糖がはいっているため,アメリカ人が消費する砂糖を現在の4分の3以下に抑えることはまず難しいと言う。現在同省は,妊婦,子供に母乳を与える母親,学齢前の子供たちのための連邦食糧計画に基づいて配給される穀類に含まれる砂糖の量を最高21%までと規定しているが,これは決して少ない量とは言えない。
数学上の発見
◆ ソ連の無名の一数学者による最近のある発見が世界の数学者の間で驚きをもって迎えられている。これまで,複雑な問題に解があるかどうかを確かめるには一般に精密な計算を行なう必要があったが,L・G・カチアンの発見したその方法を用いると,そうした計算を行なわずにコンピューターにこれを判定させることができる。数学者たちはこの発見が簡明であることに驚いている。ベル研究所のコンピューターの専門家ロナルド・L・グラハム博士は次のように語った。「これには重要な教訓がある。自分にできないというだけの理由で,それが難しい問題であるとみなすべきではない。自分では気づかないだけで,まさに鼻先に易しい解決があるのかもしれない」。
問題の核心
◆ ローマの司教総代理ユーゴー・ポレッティ枢機卿は,ほかならぬローマが司祭と資金の不足に悩まされていることを示す報告を出した。「教区教会さえも無い教区がローマに68を数える。また教区のあるものは3万人から8万人の住民を擁する途方もない大きさに達した」と同枢機卿は不平をかこっている。司教管区の経済状態が,年間100万㌦(約2億4,000万円)近いバチカンの援助にもかかわらず,「重大な危機の局面を迎えている」ことにもポレッティは注目している。財政困難の理由のひとつを指摘して,枢機卿は次のように嘆いている。「生活を保証されているうえに毎月40万リラ(11万3,000円)を自分の好きな事に使っている司祭たちのことを考えると,苦悶は深まるばかりである」。生活費のほかにこれだけの“小遣い”を持っている人がどれだけいるだろうか。
“代用血液”
◆ 日本の科学者は,サルが自分の血は2パーセントだけになっても命を保つことができるという“代用血液”を案出した。ネズミは血液の90パーセントをこの代用血液と入れ替えても生き延び,2週間もしないうちにネズミ自身の血液は正常なレベルにまで自然に回復した。「本物の血液を使う輸血と比べた場合,代用血液の利点は,それを受ける人の血液型とは無関係に与えることができ,また病気に感染する危険もない点にある」と,サイエンス・ニューズ誌に報じられている。用いられている化学物質は,代用血液が「正常な濃度の赤血球が運ぶよりも多くの酸素」を運ぶことを可能にしていると同誌に述べられている。日本のこの処方に従って作られたものには,従来の他の同様な過フルオロ化合物を用いた代用血液の場合とは異なり,高度に乳化された液中の,えり抜きの過フルオロ化合物なので,体内に蓄積しないという利点があると言われている。
節約家のブタ
◆ イリノイ大学の動物学実験室は,実験用の豚が,機会を与えられるならエネルギーを節約する,と報告している。豚小屋の壁にはスイッチが取りつけられており,それを押すと,3分間,赤外線の熱が放出される。スタンレー・カーチス博士によれば,好奇心の強いこの動物はたいてい10分以内にスイッチを見つける。そしてスイッチを押す場合には,自分の脂肪を使いつくさなくても暖かく過ごせる程度に温度を保ち,それ以上に温度を上げることはない。
ヨガは宗教
◆ ミシガン州控訴院は,ヨガを宗教ではないとしたミシガン税務裁判所の結論とは反対にヨガは宗教であり,免税の対象になるとの判決を下した。「ヨガは宗教であることを示す,あまたの証拠が法廷において提出された」と判決文に述べられている。
恐怖の反動
◆ ブラジル・ヘラルド紙は,社説の中で,怒りに燃えた群衆が強盗の容疑者二人をリオデジャネイロの郊外で殺害した事件について論評した。その社説はこう告げていた。こうした地域共同体は「恐怖と不安にむしばまれると怪物と化してしまう。現在のブラジルは神経過敏の状態にある。市民は,路上にいる時はもとより,家の中にいてさえ安心していられないからである。殺人の恐怖が絶えずつきまとっている」。