人間の動物との出合い
ふさわしい扱いを受ける動物と虐待される動物
TLCの益
コレステロールをたくさん摂っている場合でも,TLC(“優しい世話”)は心臓病にかかる危険を少なくするのに役立つでしょうか。少なくともウサギに関する限りはそのようです。オハイオ州立大学の研究者たちは,ウサギを二つのグループに分けて実験を行ない,どちらのウサギにも全く同じえさが与えられました。一方のグループのウサギには“優しい世話”が与えられ,他方のグループのウサギは普通と同じように世話しました。TLCウサギについて一人の研究者はこう語りました。「1日に四,五回出掛けて行って声をかけ優しく抱いてやっただけだが,ウサギたちはうれしそうだった」。どのような結果になったでしょうか。同大学医学部外科の助教授フレッド・コーンヒル博士は,「通常の世話がなされたウサギの大動脈には,TLCウサギの場合よりも,アテローム性動脈硬化[コレステロールの蓄積]が2倍も多く認められ,中には3倍という例もあった」と語りました。この実験は,ストレスが心臓病の一因になるかもしれないという他の研究結果を裏付けているように思えます。愛ある世話を受けたウサギはストレスを感じることが少なかったようです。同じことは人間についても言えるに違いありません。
水をむだにしない
聖書時代から,砂ばくで生き残れるかどうかは人間とラクダがいかに協力してゆくかに依存していました。ラクダはどうして砂ばくの生活にこれほど適しているのでしょうか。
水分を失いにくいことが大きな要素となっています。人間は体の水分の10%を失うと死んでしまいます。ところが,ラクダは水分を30%失っても生きてゆけます。人間は熱くなるとすぐ汗をかきますが,ラクダの体はなかなか熱くならず,汗もほとんどかきません。人間の腎臓はラクダの腎臓よりもずっと多くの水分を排出します。しかしこれがすべてではありません。
寒い日に,自分の吐いた息の水分が白くなっているのに気付いたことがあるでしょう。水蒸気があるということは,息を吐き出すたびに水分を失っていることを意味します。ところが,ラクダの場合はそうではないのです。ラクダには,息を吐き出す際に水分を失わないようにする特殊な能力が備わっています。一体どのようにそれを行なうのでしょうか。
1枚の紙をゆるく巻いて巻紙状にしてください。そして,その中に息を吹き込むと,ちょうどラクダの鼻の内側のようになります。しかし,ラクダの鼻にある“巻紙”は紙でできているのではありません。表面が特別に水を吸収しやすくなっている粘膜でできています。
吸い込んだ空気は粘膜の表面から水分を奪い去り,粘膜を冷たく乾燥した状態にします。ラクダが息を吐き出すと,肺から出てきた温かい水分は鼻から外へ出る前に粘膜に吸収されます。このようにしてラクダは,本来なら失われてしまう水分の実に68%を失わずにすむのです。
奪われたハンドバッグが戻って来る
最近のこと,ラトガーズ大学で動物学を専攻している博士課程の一女学生が1匹のカメを沼地に放そうとしました。カメの背中に発信器を取り付けてその電波を捕らえ,産卵中のカメの動きを調べようと考えたのです。ところが,交差点で信号待ちをしていたところ近付いて来た見知らぬ男に車の中のハンドバッグを引ったくられてしまいました。その中にはカメに取り付ける発信器が入っていました。そのため直ちに,その女学生と動物学の教授は受信装置のスイッチを入れました。跡をたどってゆくと,ハンドバッグは盗まれた所からほんの数ブロック離れた所にある空家の裏にありました。現金以外はそっくりそのまま残されていました。ハンドバッグが戻ったので,発信装置は本来取り付けられるはずだったところ,つまり沼地のカメの背中にすぐに取り付けられました。
ジョギングをするブタ
ブタまでが今流行のジョギングに励んでいます。ジョギングと脂肪分の多い食物が心臓病に及ぼす影響を調べるため,アリゾナ州立大学の研究者グループは実験にブタを使うことにしました。ストレスに対する感受性など,心理学的特性が人間によく似ているというのがその理由です。ブタのジョギングの目標は1日2マイル(3.2㌔)とされました。しかし,研究用の18匹のブタすべてがジョギングをするわけではありません。6匹はブタらしく,食べては寝る生活をしています。他の6匹は子ブタの時にジョギングを始めました。そして残りの6匹は体重が150ポンド(68㌔)になった時,ジョギングを始めました。ロス・コンソウルは,ジョギングをするブタについて,「最初の1周ほどは夢中で走るが,ほとんどのブタはその後励ましてやらねばならない」と語っています。農業用の長い二股フォークで時々突いて予定の距離を走らせます。農学の助教授ジョージ・セペリッチは,「研究の最中にブタにビールやピザをごちそうする者はいないでしょう」と語って,ジョギングの研究にブタが選ばれた別の理由を明らかにしています。最終的な結果はまだまとめられていませんが,これまで明らかになったことによると,ジョギングを行なうブタはより精力的で,不機嫌になることが少ないようです。
「涙にさようなら」だれのこと?
昨年10月号のサイエンス・ニューズ誌は次のように伝えていました。「『涙にさようなら』という文句のシャンプーのコマーシャルを覚えているだろうか。製品が目を刺激するかどうかに関するデーターの大半はドレイズ・テストによって得られる。第二次世界大戦中にこれを開発した食品医薬品局の研究者の名前にちなんでそう呼ばれるこのテストでは,先天的に色素の欠乏したウサギの角膜に液状の被検体を直接落とす。そして,試験液を注入した目とそうでない目とを比較しながら,発疱,病変,組織に生じる他の損傷などの反応を調べて記録を取る。漂白剤その他が目の炎症を引き起こさないことを十分に確証するため,多数のウサギがひどい苦痛を味わわされている」。
米国動物愛護協会を中心とする諸団体が各研究所に圧力をかけて,ドレイズ・テストに代わる人道的な試験方法を採用するよう勧めています。「それが極めて非人道的なテストである」ことを米国環境保護局のジム・ロロフも認めています。ロロフの語るところによると,検査技師はこの試験をしたがりません。「腐食性の化学物質の場合,極めて残忍」だからです。皮膚試験で高い腐食性が認められた物質についてはドレイズ・テストを行なう必要がないことに,ロロフは同意しています。