世界展望
核戦争の勝者はいない
◆ 米国バージニア州で開かれた核戦争防止国際医学者会議の席上で,ヨーロッパ,日本,ソ連から参加した医師たちは,『核戦争に生き残るための計画は水泡に帰す』という点で意見の一致を見た。死亡者が膨大な数に上るので,その中には,犠牲者の治療に当たれる医療関係者のほとんどが含まれてしまうからである。ソ連の心臓学者であるE・チャゾフはこう述べている。「軍事関係者および政府関係者の一部,それに科学者たちでさえ,核軍備競争の脅威を減少させ,核戦争によって生じ得る結果を最小限に食い止めようと努力している」。医師たちの立場を要約してチャゾフはこう述べた。「核戦争に勝利を収めることができるとか,局地的な核戦争が可能だとか,核の全面戦争という事態に至っても人類と生物は生きながらえることができるとか言う意見を耳にする。これは,……払いのけなければならない幻想である」。
乳児の突然死を解明する手掛り
◆ 医師にとって,乳児急死症候群(SIDS)は長い間のなぞだった。明らかな理由もなしに,一見正常な乳児が大体睡眠中に死亡する。この問題を8年間にわたって研究した一医師は,この致命的な病気は,妊娠期間中の母親の喫煙や重度の貧血症と関係があると述べている。米国のペンシルバニア州ハーシェー市にあるハーシェー医療センター病理学部門の部長,リチャード・L・ネイエ博士は,「妊娠期間中の重度の貧血症は胎児がSIDSにかかりやすくなる原因となり」,妊産婦の喫煙も,新生児がこの病気にかかりやすくなる原因であると言明している。同博士の説明によれば,突然死する乳児はかつて異常の全くない子供であるとみなされていたが,呼吸など重要な機能をつかさどる延髄の部分に慢性的な異常の見られることが理解されるようになった。ネイエ博士はこう述べている。喫煙が一つの要因であると判明したことによって,「誕生前の子供に送られる酸素の量の不足が問題として提起された。SIDSによって害を受ける部位は,より多くの酸素を必要としている」。
マイクロ波に関する判決
◆ 米国ニューヨーク州の労働者給与査定局は,一労働者の死因が,電気通信用の有害なマイクロ波に長時間さらされたことであるという以前の裁判官の判決を支持した。同局はニューヨーク市電話局に対し,この労働者の未亡人に2万8,000㌦(約616万円)を支払うよう命じた。この人はエンパイアステートビルディングで,テレビの中継装置を管理する責任者として8年間を過ごしていた。裁判官は,この従業員がマイクロ波を長時間浴び過ぎたために「脳が変質し,体組織が破壊され,動脈硬化が促進された」という判決を下していた。
若年層のカトリック教徒の態度
◆ 10歳から30歳までのカトリック教徒を対象にしたコロンブス騎士会の世論調査は,基礎的なカトリックの教えの多くに対して反感を抱く人が少なくないことを明らかにした。この調査によって,90%の人々が産児制限に関する同教会の立場に反対し,89%が,再婚と離婚した人々に関する同教会の立場に異議を唱えていることが明らかになった。法王の不謬性を信じていると述べた人はわずか25%で,毎週ミサに出席している人は37%に過ぎなかった。
イースターの大騒動
◆ キリスト教世界の諸教会は,「平和の君」であるイエス・キリストの復活を記念する復活祭を祝っているが,ニューヨーク市のセントラルパークで年に1度行なわれる“イースターの卵狩り”は平和とはほど遠いものだった。人込みの中に投げ込まれた賞を手に入れようと幾千人もの人々が夢中になったため,大混乱が生じた。たくさんの人が押し倒され,6人が負傷し,幾十人もの子供たちが親からはぐれてしまった。一人の婦人は,「私は人々が踏みつけられているのを見ました」と述べ,こう付け加えている。「人々は泣き叫び,悲鳴を上げていました。大変な騒ぎで,まるで世の中全体の終わりが来たかのようでした」。一警察官は「人々は狂ってしまった」と述べた。こうした風潮は,イエス・キリストと関係のある事柄より,イースターが異教に起源を持つ事実と調和している。
全世帯の3分の1が犯罪の被害に遭う
◆ 米国司法省によると,昨年,犯罪の被害者が出た家庭は,全米で3世帯に1世帯の割合に上り,しかもその数は徐々に上昇しつつある。婦女暴行のあった世帯は6%,自分の家以外の場所で何かを盗まれた世帯は14%,強盗に遭った世帯は17%に達している。さらに全世帯の2%が車を盗まれた。この報告は結論として,「すべての米国人は,以前には存在しなかったほどの危険に直面している」と述べている。
攻略される教会の建造物
◆ 1981年の2か月間で,米国ニューヨーク市ブルックリンにある教会や会堂が,平均20時間に1件の割合で強奪に遭い,破壊された。そうした行為の多くは,像を倒したり,礼拝堂を打ち壊したり,ステンドグラスの入った窓を破ったり,壁にまんじや落書きを書いたりするという軽べつの念を表わす行為である。危害の大部分をもたらしたのは,宗教に対して敵意を持ち,映画,テレビのショー,ロック音楽のコンサートなど,周囲にあるものから絶えず暴力の影響を受けていた問題児である,と当局者は指摘している。若者の間で麻薬やアルコール中毒が広がっていることも一つの要因として考えられている。
イスラム教の基準が変更
◆ 幾世紀もの間,正統的なイスラム教では,婦人の顔はベールで覆わなければならなかった。その中には,実際の結婚式まで男子は自分の花嫁を見ないという風習も含まれていた。ところが最近サウジアラビアのコーラン解釈者会議で,正式に婚約した婦人は将来の花婿に自分の顔を見せてもよいという裁決が下った。この裁決には次のようなことも含まれている。「自分の娘あるいは姉妹に対し,その婚約者に顔を見せることを禁ずる男子は,罪を犯す者として裁かれるであろう」。この基準は,ペルシャ湾一帯で,新聞の第一面の見出しをにぎわせた。
警官が買い物客を護衛
◆ 米国ニューヨーク市のコニー・アイランド地区の年配の買い物客たちは,成功率の高いある実験に深く感謝している。それは,同地区の犯罪発生率が高いために,買い物に行きたくても怖くて行けない年配者のために,週に二日,午前10時から午後2時まで一人の警官が護衛を行なうというものである。警察の2台のバンが近所のショッピングセンターまで彼らを送り迎えした。警察官は彼らが車に乗る場所とショッピングセンターで警備を行なった。一人の警察官は,ある年配の婦人が示してくれた感謝の念を次のように説明した。「今までこんなにたくさんキスをしてもらったことはありません」。
人工の皮膚
◆ 米国のボストン市にあるマサチューセッツ総合病院の医師たちは,やけどによって損なわれた皮膚のあとに人工皮膚を用いることに成功したと伝えている。牛皮,サメの軟骨,および合成樹脂で作られたこの人工皮膚は,全身の50ないし90%を覆う第3度のやけどをした10人の患者に用いられた。その医師団の責任者であるジョン・F・バーク博士は,これがなければ10人のうち3人は「恐らく命を失っていたであろう」と語っている。患者の中には,抗体を抑えるために薬を必要とした人は一人もいなかった。したがってこの新しい皮膚は命を奪うような病気を引き起こす危険を増し加えることはない。バーク博士は,この人工皮膚が拒絶反応を起こすことなしに,いつまで体に付いていられるかを断定するのは時期尚早であるとしながらも,それが一生もつのではないかと考えている。
枯渇する脳
◆ 毎年行なわれる進学適性検査(SAT)で高い得点をあげる高校生は,次第に姿を消しつつある。「1972年から1980年の間,SATの言語領域に関し,800点満点のうち650点以上を取った学生の数は,46%減少した」とUS・ニューズ・アンド・ワールド・リポート誌は報告している。昨年テストを受けた100万人近い学生たちのうち,650点以上を取ったのは2万9,019人に過ぎなかった。8年前の1972年には,その数は5万3,794人だった。
「自由」それとも束縛?
◆ 英国の権威ある医学誌ザ・ランセットに最近,「性の自由化がもたらした生物学的影響」と題する記事が載った。そこには次のように記されている。「毎年,淋病の新しい患者が2億5,000万人,梅毒の新しい患者が5,000万人ほど発生している。性行為の際に伝染する他の病気の患者はこれよりさらに多いものと思われる」。同誌には,「一時期,性病[STD]の抑制は我々の手の届くところにあるように思えたが,近年になってそれはおぼつかなくなってしまった」という嘆きの声が記されていた。近年になってどうしてそれができなくなったのだろうか。ザ・ランセット誌は次のように説明を加えている。「今や西欧社会では,婚前の性体験が一般に抵抗もなく受け入れられている。テレビ番組や映画はますます露骨になり,人々は以前ならポルノとみなされていたような映画を今では見ている。そのため,人々は性的に大胆になりつつある。……性の自由化が女性やその赤ん坊にもたらした生物学的な悪影響は,20世紀の後半の嘆かわしいすう勢である」。
消えた“中立”という言葉
◆ 最近のポーランド危機に当たって,ローマ・カトリックの一司教が労働組合と政府の間の調停に直接携わったが,その後リスボンの日刊紙ディアリオ・デ・ノティシアスは「仲裁と中立」と題する社説を掲げた。社説はその仲裁行為に全般的に好意的であったが,ポルトガル人の論説委員は次のようにも述べた。「俗権と宗教的権力,教会と政治 ― 両者の境界は常にばく然としており,その度合いはますます強くなっているように見える。……短期的にまた長期的にどんなことが起きるにせよ,同教会によるこの仲裁の反響はバチカンの語彙から“中立”という語が消え失せたことを物語っている」。
詰め込み宿
◆ 大阪で宿泊する旅行者は,従来のホテルとは違った,経済的なホテルに泊まることができる。このホテルでは,客を幅と高さが1.5㍍,長さが2㍍の2段重ねの睡眠用“カプセル”に泊めている。このカプセルは「初め洗たく機か乾燥機のように見える」と,ウォール・ストリート・ジャーナル誌は伝えている。それでも見た目の美しさよりもホテル代を半分以下に切り詰めることに関心を持つ泊まり客で,このホテルはほぼ毎晩満員の盛況である。同様のカプセルを備えた宿泊施設が名古屋と東京でも営業を始めたとのことである。
高くつくスピードの出し過ぎ
◆ 南アフリカでスピード違反をして捕まると,「ガソリンの浪費」というかなり重い罪を犯したとして裁判所に出頭を命じられる。召喚状には次のように記されていた。「被告人はスピード制限を越えて車を走らせるため,不当もしくは不法に燃料を浪費した」。こうしたガソリンのむだづかいに対する罰金は最低で2万5,000円,最高では53万円にもなると言われている。