若い人は尋ねる…
信じるに値するものがありますか
「学校に一緒に行っている子たちは,政治も,ほかの何もほとんど信じません」と,米国カリフォルニア州の高校1年生アン・リンは語りました。では彼らにとって重要なのは何でしょうか。「きれいになること ― すてきな髪型,有名デザイナーのジーンズ,お化粧です」。この答えに共鳴する十代の若者たちの声は米国全土から揚がっています。あなたの友だちも物事をこのように見ていますか。
あなたは,米国の若者の死因の第2位を占めているのが自殺であることを知っていましたか。どうなっているのでしょうか。ある大学の研究が最近明らかにしたところによると,米国の高校生の多くは,自分の人生をむなしく無意味なものと考えています。両者のつながりが分かりますか。あなたは自分の人生をより意義深いものにしたいと思っていますか。
他の国の十代の若者も同様の考え方をしています。フランスの新聞ル・モンドはフランスの「若者の間に見られる内にこもる傾向と運命論」について述べています。日本の一調査が明らかにしたところによると,日本の若者のうち,同胞の福祉のために自らの利益を断念する人は20%に過ぎませんでした。調査の対象になった若者の大部分は,自己の利益よりも社会の利益を優先するという日本人の伝統的な信念をもはや受け入れていませんでした。
米国ニューヨーク市に住む十代の少女,ジューンはこう語っています。「自分の言うことを本当に聞いてくれる人は一人もいないというような疎外感をすぐに感じてしまいます。私が好きなのは,だれともなじめない若者に関するレコードです。その若者は家族にも先生にも,だれにも自分の気持ちを分かってもらえません。自分の周りには見えない壁があるように感じているのです。それは自分のことではないかと思う時があります」。
ロック音楽に目くじらを立てる大人は少なくありません。しかし事実からすれば,こうした音楽は概して若者の欲求不満や懸念をそのまま如実に表わしているのです。カリフォルニア州のある十代の少女は最近の流行歌の一つを取り上げてこう語りました。「この歌の題は,全く無意味な音節でできています。この歌詞が言わんとしているのは,若者の耳に入ってくる年上の世代の人々からのお説教も,やはり無意味な言葉のられつに過ぎないということです。だれも大人の言うことを信じません」。
政治家が世界を核戦争の瀬戸際へと追いやり,爆弾を造り続けているというのに,若い人がどうして政治を信じられるでしょうか。宗教はどうでしょうか。ギャラップ調査によると,若者の40%までが,すべての僧職者の個人としての正直さと倫理観について,「普通程度」から「極めて低い」という評価を下しています。若い人々が警戒して,何物も信じまいとすることに何の不思議があるでしょうか。
基本的な質問に答える
今は立派な青年になっているデービッドも動乱の1960年代には十代でした。デービッドは次のように回想しています。「大学生だった私は世界の状態,それも戦争のことが非常に気懸かりでした。それほど信心深い方ではありませんでしたが,ある晩ヒッチハイクをしながら,神がいるなら,地上のすべての災いの理由を理解できるようにどうか助けてくださいと祈ったことを今でも覚えています」。
「自分の祈りに実際に答えが与えられるとは思ってもみませんでした。しかしその晩私を車に乗せてくれたのは私と同じ年頃のエホバの証人でした。私たちは戦争に関する聖書の見方について話し始めましたが,私が興味を抱いていることを見て取ったのでしょう,その人は私を自分の家に連れて行ってくれました。そして夜中まで話し込みました。
「私は,自分が心をひどく悩ませていた世界の諸問題そのものについて聖書が預言していたことを知り,びっくりしました。私はマタイ 24章を読みましたが,そこには,戦争のぼっ発,その後の食糧不足,地震,世界的な不法の増加などを特徴とする一期間に関するイエスの預言が記されています。それは確かに20世紀のことを描写しているように思えました。
「こうしたことが聖書に書いてあることを知って私は驚かされました。結局のところ,聖書は宗教儀式の本に過ぎず,目先を変えるために幾つかの話やたとえ話があしらわれているものだとばかり思っていたのです。そのエホバの証人はその晩私に1冊の聖書をくれました。そして,私はそれを通読し始めました」。
信仰の根拠を見いだす
この十代の若者が読んだ書物はその生活を変えました。「私はイエスのエネルギッシュな人柄に心を打たれました。私の通っていた教会では,イエスは人々の罪を許すためにご自分の時間を費やした受身の性格を持たれる人物だという印象しか受けませんでした。聖書の中でイエスは,果敢な指導者,宗教的な偽善を恐れずに容赦なく暴く人,両替人を神殿から追い出す行動の人として描かれています。ここに私が信じることのできる指導者がいたのです。
「もう一つ分かったことは,エホバ神のお名前とそのご性質です。私の通っていた教会では神がだれかについてずっと混乱していました。私も混乱していました。神はずっと遠くにいる,ばく然とした存在で,名前さえありませんでした。その主要な特質は,教会が信心深げに,“すべてを包み込む愛”と呼んだもの,悪を含め万事むとんちゃくに受容することだったように思います。ある日,イザヤの預言を読んでいて,神が皮肉を言われることに気付き驚かされたのを思い出します。神が物事に関する明確な意見を持っておられ,ユーモアのセンスさえあることが分かりました。そして単なる第一原因ではなく,エホバという名を持たれる真実の人格神であられることを悟ったのです」。―詩篇 83:18。
「こうしたことすべてを十分に理解するには時間が必要でした。私の頭の中はそれまで大変混乱していました。エホバの証人から,神は間もなく悪を終わらせるという聖書の約束を示された時には,それを受け入れ難く感じました。それはおとぎ話のようで,話がうますぎて真実とは思えませんでした。
「ところが,非常に実際的な人生観が示されている伝道之書を読み,聖書はおとぎ話の本ではないという確信を得ることができました。私は地元のエホバの証人の会衆で会った人々から深い感銘を受けました。もちろん彼らは不完全ですが,生活を大きく変革させていました。証人たちは兄弟愛を唱道するだけではなく,無私の愛から隣人を訪問し,助けになる聖書研究を申し出ることによってそれを実践していたのです。会衆は私にまでクリスチャン愛を示してくれました。最も重要なこととして,彼らには確かに信じられるものがあり,それが人生の目的を与えるものとなっていました。私はそれがうらやましくてなりませんでした」。
あの寂しい道での祈りから3年がたち,この若者はエホバの証人になりました。「聖書を勉強するまでは,神への信仰は失ったと思っていました。しかし本当は,信仰とはどんなものなのかを知らなかったのです。十分な教育を受けたと思っていましたが,聖書に関する無知はひどいものでした」。
あなたはどうですか
あなたがこの世の政治指導者や宗教指導者に幻滅を感じているとしても,そう感じるのはあなた一人ではありません。しかし落胆したからといって,人生に真の目的を与え得る信じるに値するものの探究をやめてはなりません。なぜ世の中にはこれほど多くの戦争,残虐行為,苦しみがあるのか理解したいと本当に思っていますか。エホバの証人は聖書から満足のゆく説明をすることができます。あなたの人生はむなしく無意味なものに思えますか。それは目的に満ちたものになり得るのです。エホバ神は,あなたが有意義な人生を見いだすよう助けることに関心を持っておられます。そうした助けを誠実にエホバ神に願い求めてはいかがですか。それからその祈りに一致して行動し,自分の聖書を読み,それを理解するためにエホバの証人の助けを求めるのです。
信じるに値するものがありますか。確かにあります。それについて早く知ればそれだけ,幸福になれるのです。
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『私が好きなのは,家族にもだれにも自分の気持ちを分かってもらえない若者に関するレコードです。それは自分のことではないかと思う時があります』
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若い人々は,世界を核による滅びの間際にまで追いやっている体制をどうして信じられるだろうか
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この人は聖書に書かれている事を知って驚かされた。それは自分の通っていた教会で教えられる事柄からは予想もつかないことだった