世界展望
リオの生体移植
● 死後に移植するよう自分の体の重要な臓器を提供する人はいるが,最近ブラジルのリオデジャネイロの貧困にあえぐ住民たちがすぐにでも移植できる角膜や腎臓を高額で販売するという宣伝を行なっている。そうした宣伝を出したある男性はこう述べた。「とても簡単なことだ。一方に,金はあるが目の見えない人がおり,もう一方に自分のような,視力はあるが金のない者がいる……3年前は,今のサラリーの半分だったが今よりも暮らし向きはよかった」。そのような臓器の売り値は,3万㌦(約660万円)から4万㌦(約880万円)に及ぶことがある。
ワシントン・ポスト紙の報道は,ブラジルにおけるこの慣行を,貧しい人が乏しい収入を補うために売血するという「長年にわたる論争点の新しい妙案」と評している。そうした売血の結果として,「ブラジルでは輸血が血清肝炎の最大の原因となっている」とポスト紙は伝えている。「ガイゼル元大統領は汚れた血液のため,最近病気にかかった」。
解決されたピグミーの“なぞ”
● ピグミー族の背が低いのはなぜだろうか。「現在に至るまで,その身長の低い理由はなぞとされてきた」とニューヨーク・タイムズ紙は述べている。ところが米国フロリダ大学の科学者たちは最近,ピグミー族の血液と他の民族の血液を比較し,疑似インシュリン成長要素(IGF-I)と呼ばれるあまり知られていないホルモンが不足していることに気が付いた。ピグミー族の血液に,比較的よく知られている人間の成長ホルモンは通常の量含まれていたが,IGF-Iの量は通常の3分の1しかなかった。「医師たちはIGF-Iが成長をつかさどる主な要素であるとの学説を立てているが,その正確な働きはいまだに不明」とニューヨーク・タイムズ紙は伝えている。
すい星が太陽に衝突
● 何らかの天体が太陽と衝突した最初の記録は,一つのすい星が推定時速100万㌔で,燃え盛る太陽と衝突した約2年前の記録である。その衝突を観察したのは,ソルウインドと呼ばれる人工実験衛星だけで,その間のデータが最近分析された。「すい星が太陽とぶつかった時に放出されたエネルギーは,米国が1年間に用いるエネルギーの約1,000倍はあったと我々は考えている」とソルウインド研究チームの主任科学者ドナルド・J・マイケルズ博士は語っている。
宇宙のがらくたによる危険
● 米国航空学及び宇宙飛行学協会(AIAA)によると,地球の周りを回る軌道上に現在ある幾千個もの物体や破片は,将来の宇宙船にとって真の脅威となるかもしれない。宇宙は広いとはいえ,人工衛星や他の宇宙計画にとって有用なのは「操作上重要な軌道」だけであり,そこに様々ながらくたが集中している。AIAAによると,豆つぶほどの大きさの断片でさえ,時速幾千㌔ものスピードで飛んで来ると,宇宙船に甚大な被害を及ぼすことになりかねない。この団体は,がらくたの数を制限する協定の締結を呼び掛けている。
加えて,いわゆる地球静止軌道(通信衛星が地球上からは一点にとどまっているかに見える赤道上3万5,900㌔の円軌道)は非常に混雑しているため,用をなさない宇宙船は除き去らなければならない。「活動中の人工衛星と,計画通りの場所にもはやとどまることのできない古い漂流物とが衝突する実際の危険が見え始めている」,と全米太洋大気管理局全国地球衛星部門の人工衛星操作を担当する責任者は語っている。
水に浮かぶ工場
● アルゼンチンは最近,水に浮かぶ世界初の日本製石油化学工場を受け取った。船上の工場を持つこの巨大なはしけは名古屋を出港してから8週間後に,バイアブランカに停泊し,そこで今後年間12万㌧のポリエチレン樹脂を生産すると言われている。工事期間は予定よりも3か月早く8か月で終わり,陸上の建築工事よりも約1年短かったという話である。日本のその同じ会社は既に3年前,ブラジルでパルプ工場を建造しており,その後にもバングラデシュの発電所,アブダビのホテルを造っている。造船所という環境では重機や専門技術がいとも容易に活用できるため,この種の工事は工程が早く,安い経費で行なえると言われている。
宗教的暴動
● 最近ある週末に,パキスタンのカラチでシーア派のイスラム教徒とスンニ派のイスラム教徒の宗教的な行列が出会い,互いに先に出ようとして激しい暴動が火を噴いた。AP通信によると,その争いやその後に起こった投石事件により行進に参加していた宗教家のうち100人以上が負傷したと言われる。同国政府は,違反者は即刻処刑という罰則を伴った,夜間外出禁止令を出さねばならなかった。
成果を見たギリシャの禁煙運動
● ギリシャの愛煙家の19%近くが,過去2年間にその常用癖を克服したと伝えられている。16歳以上で現在たばこを吸う人は約44%いるが,2年前にはそれが54%だった。これは関係機関が協力して繰り広げた政府の禁煙運動の成果である。毎日行なったテレビによる公告,各家庭に送られた印刷物,公の場所での喫煙に対する厳しい罰金などが減少に一役買っていたと言われる。
ヨーロッパにおける自殺
● 国際自殺予防協会によると,ヨーロッパにおける死因の第3位は今のところ自殺である。その団体のパリにおける会議で提供された情報の示すところによれば,自殺以上にヨーロッパの人々の命を奪っているのは,心臓病と自動車事故だけである。ベルギーでは,1977年から1979年の間に自殺の件数が30%増加したとのことである。
“シュノーケルを使う”象
● 米国テキサス州のゲーンズビルにあるフランク・バック動物園が,同地域を襲った1週間に及ぶ洪水で水浸しになった時,その動物園を管理していたビンス・レイノルズにとって気懸かりだったのは13歳になる象の安否だった。しかしその後「象のかすかな鳴き声が聞こえ」,驚いたことにその象の鼻だけが見えた。象は鼻をシュノーケルのようにして空気を吸い,身を守るためにその鼻を木にからみつけていたのである。自発的に救援活動に携わった幾人かのカウボーイがこの巨大な動物を助け出してから,レイノルズは,「象は疲れ果てているだけだった」と語った。
オカルトの「ゲーム」
● 「これはいわゆるゲームと呼ばれているが,この箱の前面には肉太の文字でこう書き記すべきである。『健康に関する警告 ― これはあなたの精神面及び身体面の健康をはなはだしく損なう可能性があります』」。英国の精神科医リチャード・ウインターは,今一流の商店で販売されているあるゲームに関しこう言明した。この“オシリス”と呼ばれる占いゲームは,エジプトの神話に登場する神の力をその基盤にしているとされている。しかしウインター博士はこう警告している。「私は,こうしたゲームに手を出したために深刻な問題を抱えた人を幾人か扱ったことがある」。またロンドンのデーリー・メール紙も,精神科医ケネス・マッコール氏の「語ったところでは,10年以上前に世に出たものの,後に抗議に遭って姿を消した同様のゲームの影響を受けてきた患者を同氏は今なお治療しているとのことである」と伝えている。
奇妙な協力者
● UPI通信の報道によると,米国ロードアイランド州のプロビデンス市にある「カルメル山の聖母マリア・カトリック教会」の主任司祭が,「密輸を行なったとしてマイアミで告発された国際労働組合の役員たちに関する法的経費の支払いを助けるため,募金運動を推し進めている」とのことである。高位僧職者の署名の付された募金の手紙が組合員に送られたが,それは政府当局には閉口するという不満を訴える手紙だった。UPIによる報道によると,暗黒街のメンバーとおぼしき人を含む,組合の役員及び他の19人が,「組織犯罪の顔役に幾百万㌦というお金をつぎ込むための陰謀を企てた」罪で告発されている。その司祭はこう述べている。「私はその手紙に述べられている見解には同意する(が),一人の人物,一つの大義,一つの陳述,もしくはどんな言葉にも束縛されたいとは思わない」。
英国の労働者は不足しているか
● 英国の労働者はストライキをしない時,西ヨーロッパや米国の人々よりも週の労働時間が長めであると報告されている。ところがロンドン・タイムズ紙によると,それは同国の生産性や経済の安定性を増し加えることにはなっていない。その記事が言及している一研究は,英国の製鉄工が1㌧の鋼鉄を製造する間に,日本の製鉄工は5.5㌧の鋼鉄を造り上げることを示している。さらに,英国の製造業の生産性は1975年から1981年の間に9%上昇したが,その同じ期間中に米国の生産性は21%,日本の生産性は45%上昇している。
暴力の余波
● タイに多量に存在する米国製の武器が,暴力の波を引き起こし,それが今タイ全土を覆っている。その武器は,ベトナム,ラオス,カンボジアといった国の共産軍に敗北を喫した幾千もの兵士たちが持ち込んだもので,最終的に「犯罪組織や個々のギャング団員の手に渡った」とニューヨーク・タイムズ紙は述べている。その結果として殺人が日に50件という数に達し,武器を使う強盗や婦女暴行の事件が7分ごとに起きるようになった。M-16歩兵小銃やM-79擲弾筒を使いこなすガンマンは,雇われれば仕事を行なう。そして暗黒街まがいの殺人が,日常茶飯事となっている。
『第六感?』
● 科学者たちは,特定のハチ,チョウ,ハト,バクテリアなどが“第六感”とも言うべき磁性を有していることを突き止めた。鉄と酸素の化合物である磁鉄鉱がそうした動物の脳や体の他の部分で発見されている。ハチや伝書バトを使った実験では,周囲の磁場にそうした動物たちが敏感に反応することを示す結論が得られている。このことから,これらの生物が,曇りの日など他の方法が使えない場合に地球の磁場を感知し,それを助けに渡りを行なうと考えられるようになっている。イルカは,磁気を帯びた物質を備えるものとして最初に発見された哺乳動物であるが,イルカに磁気“第六感”があるかどうかはまだ実証されていない。
宿命論的な生活様式
● 「人間のガンの40ないし60㌫近くは,生活様式の要因,特に喫煙と栄養に関係している」。こう述べているのは,米国保健協会のガン研究者,ギャリー・ウィリアムズ博士である。既に損傷が加えられているので,たばこをやめ,あるいは食習慣を改めても意味がないと考え,「ある人々は宿命論的な態度を抱いている」と同博士は指摘している。この博士の言葉によると,これらの人々は自らを欺いている。「15年間禁煙すれば,(肺ガンにかかる)危険性はたばこを吸わない人と同じレベルに戻る」。この博士が推奨しているのは,「喫煙をやめること,食事の際に摂取する脂肪の量を適度に保つこと,摂取する繊維の量を増やすことである」。
レーザー光線で潰瘍を治す
● 出血する潰瘍を治そうとすると,多くの場合,ふところ具合に大きくひびくだけでなく,大手術,胃の一部を切除すること,2週間の入院などが必要とされる。ところが,デーリー・テレグラフ紙の報道によると,現在英国ロンドンのある病院で,医師たちは,「これまで10件のうち9件が成功に終わった」10分間のレーザー光線治療法を用いている。それは,「血管が閉塞して出血が止まるよう,一定量のエネルギーで患部を熱する」方法である。この技術を開発したスティーブン・ボーン博士は「この治療法は特に,老齢の人,体の弱い人,あるいは大規模な腹部手術に耐えることができない他の病気を持った人などに有益である」と語っている。