あなたの味覚をそそるピクルス
日本の「目ざめよ!」通信員
ピクルス! あるいは“漬物”と聞くと,あなたは何を思い浮かべますか。日本に住んでいる方なら,食事の終わりに出るたくあん漬けを思い浮かべることでしょう。アメリカに住んでいる方なら,トマス・ジェファソンが次のように書いた時,彼が何を考えていたか想像できるはずです。「バージニアの暑い日には,サリーおばさんの地下室の階段の下に置いてある香ばしい香りのするびんの輝く底からマスを釣り上げるかのように取り出す,香辛料のきいたピクルスにしくものはない」。
漬物というと,わたしたちは大抵果物や野菜を考えますが,カナダのユーコン地方では,酢や白ワインに漬けたとなかい,へらじか,ワピチ,くまのことを考えます。ハワイの人たちは,魚のさけに玉ねぎとトマトを加え,それをレモンジュースに漬けてピクルスにします。冷蔵庫に入れて1時間半ほどたったころが食べごろです。日本人は生のさばに塩を当て,酢に3時間程漬けます。そして,おろした大根としょうが,酢としょう油を添えて出します。よだれが出そうですか。
ピクルスの作り方
ピクルスの起源はペルシャ人にまでさかのぼります。ですから,現代のイラン人がどのようにピクルスを作るかを見ることにしましょう。それをご自分で作る場合には,次のものが必要になります。白かぶ6個,ビート小2個,水カップ2杯半(0.7リットル),白酢1杯半(0.4リットル),塩,茶さじ2杯半(12ミリリットル),にんにく4個。かぶを指の長さぐらいに細く切って,一晩水に浸しておきます。次にそれを洗って,水を切ります。それから,ビートや残りのものと一緒にガラスのびんに入れてふたをします。三日間,室温の中に置き,冷やしてから食べます。(かぶの代わりにカリフラワー,セロリ,にんじん,熱湯につけて皮をむき,薄く切ったなすを使ってもよい。)これでお分かりのように,このピクルスは食べておいしいだけでなく,ビートがかぶをピンクに染めるので,見た目にもきれいです。同じ作り方でインド風ピクルスを作ることもできます。それには,つぶしたからし種茶さじ1杯(5ミリリットル),カレー粉大さじ1杯(15ミリリットル),チリ粉茶さじ1ないし2杯(5ないし10ミリリットル),しょうがの粉末一つまみ,赤砂糖半カップ(0.1リットル)を加えます。
日本の漬物の中で一番よく知られているのは梅干しでしょう。梅干しは朝食の時に温かいごはんやみそ汁と一緒に食べます。
梅干しを作ってみたいと思われますか。では,傷のない青梅4キログラム,塩800グラム,赤じその葉400グラムを用意します。日本では6月に梅干しを作りはじめます。まず,梅を一晩水につけます。次に水を捨て,塩を加えます。梅を瀬戸物かガラスのかめに入れてふたをし,比較的軽い重しをします。汁がふたまで上がってきます。七月になると,しその葉が程よいころになるので,それに塩をふりかけ,手でもんで,葉から出る最初の汁を捨てます。次にそのしその葉を梅の入っている漬け汁に浸し,絞ります。そして,しその葉を梅の上に約一か月,つまり葉から出る赤い色が梅の中に浸透するまで載せたままにしておきます。それから梅としそを取り出して,三日間天日に当てて干します。その際,毎晩梅を漬け汁に戻してやります。天日で干すのは色を鮮やかにするためです。三日後に梅を漬け汁に戻してさらに十日間漬け,その後,ほとんどの汁を取り出します。残った汁は,かぶ,大根,しょうがなどを漬けるのに使うこともできます。
きゅうりを漬ける
アメリカで最も一般的な野菜のピクルスといえば,疑いなくきゅうりでしょう。きゅうりのピクルスの作り方には何百種類もあり,多くの家庭では何代にもわたって受け継がれてきた独得の作り方があります。
しかし,世界のどこにいても簡単にできる作り方が一つあります。新鮮で固い小さいきゅうりだけを選び,一晩冷水に浸し,水気をふき取ります。きゅうりを木のたるか大きな土器,またはガラスびんに入れ,それにくろふさすぐりの葉数枚とさくらんぼ,からしの種とイノンドの小枝を加えます。おおよそ水5リットルに対し海塩120グラムの割合で,きゅうりと木のふたがかぶる程度の量の水を煮立てます。
湯が冷めたら,それをきゅうりの上に注ぎ,最初に目のあらい薄地の綿布を掛け,板を載せ,きれいな石をその上に置きます。その容器を暖かい所に約1週間置いてから,涼しい場所に移します。ピクルスは約十日か2週間で食べられるようになります。1週間置きぐらいに重しとふたを取って洗い,水面の上のあわや,かびを除きます。
作る時に注意する点
味の良い漬物ができるかどうかはあなたの腕しだいです。ハーブや薬味を使うか使わないかは,大抵人それぞれのやり方によって違います。しかし野菜の量に対する塩と酢の割合は,作り方に示されている量を正確に守ったほうが無難です。
どんな塩を使うとよいでしょうか。ピクルスには食卓塩は向きません。漬物の汁が濁ります。ヨウ素塩を使うとヨウ素でピクルスが黒ずんだ色になります。ピクルス用の塩または純度の高いグラニュー塩だけを使うようにしてください。
酸度4ないし6パーセントの上等のりんご酢か白酢を使うのが最善です。決められた量より決して少なくしないことです。ちょっと酸ぱいなと思ったら,砂糖をもう少し足します。ぱりっとした感じがなくならないよう,よくみょうばんを加えますが,ぶどうの葉でも同じ効果が得られます。
言うまでもないことですが,切った面が広ければ広いほど,味は早くつきます。でも,調味料は控え目に使いましょう。一度入れたら減らすのは不可能ですから,危険を犯すより,少な過ぎるほうがまだましです。
国によっては,食気を進め,消化液を刺激するために,食前にピクルスを食べるところもありますが,日本人は,漬物は消化を助けるのに大層役立つので,朝食をも含めて食後にいつも賞味すべきだと言います。ともあれ,ピクルスをいつ,何のために食べるかは別としても,世界じゅうのほとんどだれもが,香りの強いもの,ぴりっとするもの,酸味のあるもの,薬味の入ったものが生まれつき好きなようです。