世界展望
国際戦争ゲーム
● 武器には国境がない。例えば,最近のフォークランド紛争では,英国南大西洋機動部隊はフランス,イスラエル,英国製の航空機の襲撃を受け,米国やドイツで建造された艦船や潜水艦,さらには英国製の空母艦に攻撃された。フランスで設計されたエクゾゼミサイルは英国とアルゼンチンの双方によって使用された。カナダのグローブ・アンド・メール紙はこう伝えている。「要するに,フォークランド戦争は軍需産業によって引き起こされているのである。軍需産業によって地上では毎年5,000億㌦(約115兆円)もの兵器がやたらに生産されるようになっている」。米国軍備管理・軍縮局の局長ユージン・ロストウは,国際的な武器の売買を「世界の治安の崩壊とそれに伴って世界の各地で広まる無政府状態,恐れ,恐慌状態などの度合を表示する体温表」になぞらえた。
依然としてなくならない,世界の飢え
● ストラスブールで最近開かれたヨーロッパ会議の席上,地上の8人に一人,つまり5億3,000万人が飢えに苦しんでおり,毎年幾百万人もが死ぬ定めにあることが明らかにされた。国連食糧農業機関がまとめた統計によれば,開発途上国におけるその割合はほぼ4人に一人(23%)になる。同会議のスポークスマンは,このような窮状をもたらした原因として穀物生産の縮小と軍備競争を挙げた。オーストリアの社会学者ヨハン・ビントスタイクの指摘によれば,1979年にアフリカが輸入した小麦の総量の価格は18億㌦(約4,140億円)になるが,それは原子力潜水艦1隻の建造費を2億㌦(約460億円)下回る額である。同会議は,国際食糧価格の安定化,食糧援助の増加,食糧配分の効率化,土地の改革,および開発途上国においてたばこやコーヒーなどの換金作物ではなく主食の生産をさらに増やすことを呼び掛けた。
高い生活費
● ニューヨークの国際ビジネス社の調査によると,ナイジェリアのラゴスは生活費が最もかかる都市として,世界各地の84の都市の中の筆頭に位置している。ラゴスは前年第一位であった東京を抜いた。この調査では,特定の食品,アルコール飲料,たばこ,衣料品,家庭用品の価格,および娯楽費と交通費が考慮の対象とされた。パリ,ロンドン,ニューヨークといった都市は上位10位にも顔を出していない。生活費が高い順に上位12の都市を挙げると,次の通りである。1. ラゴス,2. 東京,3. オスロ,4. ジャカルタ,5. バグダード,6-7. アビジャンおよびヘルシンキ,8. 台北<タイペイ>,9. チューリッヒ,10-12. ジュネーブ,シンガポールおよびテヘラン。
海洋にある巨大な滝
● ソ連の新聞セルスカヤ・ジズンが伝えるところによると,レニングラードの極地研究所の科学者たちは「海洋にある」巨大な「滝」の調査を行なっている。この滝は弧状のグリーンランド-スコットランド海嶺に位置しているが,この海嶺は大西洋と北極海を分ける海底の幾つもの突起から成る。北極海の海盆の冷水が海中の激しい流れとなって大西洋の底深くまで断崖に沿って流れ落ちている。落差は3,000㍍にも達すると言われている。流れる水の総量は15万立方㌔以上と推定されており,世界中のすべての河川を流れる水の総量をはるかに上回る。この巨大な滝は,大西洋の南の端に至る全大西洋の海水の循環に重要な役割を果たしているものと考えられている。
子だくさん
● アフリカにおける出生率は世界のどの大陸よりも高い。アフリカでは,一人の女性が平均6.4人の子供を産む。ケニアではその数は8.1人,アルジェリアでは7.3人,ニジェールでは7.1人,モロッコでは6.9人,ガーナとリベリアでは6.7人,スーダンでは6.6人である。中東の幾つかの国でも出生率は非常に高い。ヨルダンでは7.8人,シリアでは7.2人,イラクとクウェートでは7.0人である。出生率が世界でも低い国々は次の通りである。ドイツ連邦共和国,1.4人。オーストリア,1.6人。イタリアとスウェーデン,1.7人。米国,1.8人。キューバ,ドイツ民主共和国,フランス,英国,1.9人。
安全なたばこはない
● たばこはどれぐらいまでなら「実質的に安全」なのだろうか。スキクウェスト誌の最近の調査によれば,「実質的に安全」とされるたばこの量は「200分の1本という微量であろう。この量は多くの公共の場で非喫煙者が吸い込まされるたばこの煙の量より少ない。しかもこの量でも,非喫煙者が吸い込むたばこの煙よりずっと厳しく規制されている他の様々な発ガン物質と同じほどの危険性がある」。
移動する北極点
● 地磁気上の北極点は1831年に発見されて以来,800㌔ほど北へ移動した。北極点はこれまで絶えず移動してきた。ジェオ誌はこう伝えている。「現在のところ,北極点は毎日だ円形を描いており,1年に約24㌔の割合で北へ移動している。この動きは,溶けて液状になった地球の中心核に生じる電流によるものである」。
子供のうつ病
● 子供の時期は何の心配もなく,幸せであるとしばしば考えられるが,米国国立精神衛生研究所は,子供の5人に一人までが「ある程度まで深刻な抑うつ状態を経験しているものと思われる」と報告している。抑うつ状態にある子供は一般に内向的であるため,表面に現われる明らかな不行跡のほうを心配する親は問題を見過ごしがちである。抑うつ状態が長引くと,睡眠や食習慣,活力レベル,学業に対する関心,他の日常活動にも影響が及びかねない。これによって重大な身体・精神面の健康問題が引き起こされることもある。精神医学の助教授スーザン・エルボウは,この元凶として,テンポが早く,競争の激しい今日の社会と家族の二重生活を挙げた。二重生活というのは,「親が他の活動に没頭していて,長期にわたる子供の必要を無視する」生活のことである。離婚,子供の虐待,家族の者の死,病気,廃疾なども原因の一部に挙げられている。