世界展望
確証された,世界の崩壊
● 国連環境計画が最近出版した637ページから成る報告書は,世界の状況が極めて悪化していることを確証するものとなっている。トロント・グローブ・アンド・メール紙はこう述べている。「世界の環境を10年間観察したその報告は,漠然とした疑惑を集めたものではない。それは,注意深く実証された,社会及び自然界の病弊に関するカタログである。そのカタログは,人類が一つの惑星というよりも自らが作り上げた悪夢の中に生きているかの印象を与える。……その報告に集められているのは,病める,人口過密の世界に住むノイローゼ気味の人々が,空気と水を汚染し続け,かつまた互いを殺害するために一層効果的な方法を考案する姿に関する描写である」。
この報告に収められた統計には次のようなものがある。全世界の軍事費は,毎分100万㌦(約2億5,000万円)に上っている。陸地と大気を汚染する核実験は,1週間に平均約1回の割で行なわれてきた。打ち上げられた人工衛星全体のうち軍事目的をもたないものは15%に過ぎない。過去10年間に,飢えと栄養失調を経験した人は4億5,000万人,ふさわしい清潔な飲料水に事欠いた人が6億5,000万人,今もって文盲の人は8億人に上る。800万人が難民となり,毎年5歳未満の子供およそ1,000万人が栄養失調で死亡している。空気や土地や水の汚染は着実に広がり,先進国では薬物の乱用や性病や肥満も同様に広く見られる。同時に発展途上国では,栄養失調,そしてマラリア・コレラ・脳膜炎・デング熱などの病気が広がっている。
この報告の中には一つだけ良いニュースがある。それは天然痘が根絶されたことである。
宇宙の汚染
● 「人間が冒険を行なう所ではどこでも,その後にがらくたやくずが残される」。米航空宇宙局のウイリアム・D・ヒバードはこう語り,次のように付け加えている。「宇宙も例外ではない。そこではくず同然の物体が多数飛び回っている」。現在のところ,1万から1万5,000の大きな物体,何億という数の小断片が宇宙内を猛スピードで飛んでいるものと推定される。それらのがらくたは,宇宙内での爆発で生じたもの,あるいは使いものにならなくなった人工衛星,使用済みの燃料タンク,ロケットの機体などである。宇宙のごみが年に11%も増加していることは,人類を脅かすものとなっている。宇宙のくず同然の物体,とりわけ放射性のがらくたが地上に落下する恐れがある。宇宙内での衝突事故も不可避と考えられており,ほかには説明がつかないような,人工衛星の事故が幾らかすでに見られる。それらの物体は宇宙を時速何千キロものスピードで移動するため,どんなに小さな断片でも宇宙船に穴をあけることができ,損害をもたらしたり傷を負わせたり,死をもたらすことさえある。宇宙内を掃除するための解決策は,すぐには得られそうもない。
音楽と妊娠
● ここ数か月間に,妊娠した婦人は,たばこ,アルコール飲料,コーヒーなどについて警告を受けてきた。現在では,大きな音の音楽に対する注意が与えられている。インドのタラマニにある,基礎医療科学大学院のS・カメスワラン博士は,「ジャズ,ロック,ポップス,および他の音の大きな音楽は,おなかの赤ちゃんのために避けるように」と述べている。母親が妊娠初期の何か月間か大きな音にさらされると,胎児に損傷の生ずることがあるというのが同博士の意見である。ザ・ヒンズー紙の報告によると,おなかの赤ちゃんに大きな音が有害な影響を与えることについては,詳しい調査によって裏付けがなされている。妊娠したマウスを使ったある実験室における研究では,2,500サイクルで80デシベルの音を1時間につきわずか10分聞かせただけで,その子孫のすべてに先天的な欠陥が生じた。騒音はおなかの赤ちゃんだけではなく,成人にも有害であるとカメスワラン博士は述べている。騒音のレベルが90デシベルかそれ以上の所で1日中働く人は,数年のうちに耳が聞こえなくなる可能性が強い。
偽札造りを助ける科学技術
● 完全に近い偽札が,現代の科学技術の助けを借りて製造されている。ロンドンのデーリー・テレグラフ紙の報道によれば,パリで一堂に会したヨーロッパの警察署長たちに対し,「新しいシステムによって製造された偽札を見分けるのは至難の業であるとの警告が与えられた」。明らかにされた最新式の方法は,レーザー光線カラー走査機によって造られる石版印刷用の版を使ったものである。偽札の紙幣の色は本物と見まがうばかりで,しかもその偽札は上質であった。この方法には技術と特別な装置が必要であるが,偽札を製造するのに近代的な複写機を用いる場合はそうではない。新しいカラー複写機では,紙幣の両面を同時に,正確に複写することができる。複写機を使える立場にあり,ふさわしい用紙を使うなら,だれでも様々な商店で十分通用する紙幣をすぐに刷り上げることができる,と警察署長たちは告げられた。英国の紙幣の偽札はその欠陥を検出できるが,米国のドルの偽札の場合は大きさも色もすべて同じためそれが比較的困難である。偽札が大量に製造されたなら,関係諸国家の経済が脅かされるのではないかと恐れられている。
“怪物”雲
● 長さ2万1,000㌔,厚さが少なくとも3㌔はある火山灰の雲が数か月前に発見された。それは,バハカリフォルニア半島から伸び,太平洋,インド洋をまたいでサウジアラビアに及んでいる。これは3月29日に生じたメキシコのエル・チンチョナル火山の爆発後に生じたものである。この雲は2万㍍以上も上空にあるため,調査する飛行機も近付けなかった。科学者たちの言葉によると,この雲には5年にわたって地上の気候を変え,干ばつや熱波を引き起こす力があるという。さらに,地上の熱を逃がさないようにして気温を上げたり,地上に届く太陽光線の量を減らして気温を下げたりする可能性があるとも言われている。
森林内のマリファナ
● 森林地帯は今なお青々としているが,その緑も次第に大麻,つまりマリファナの採れる植物に代わりつつある。政府直轄地におけるマリファナの栽培は,米国とカナダ両国,それも特にカリフォルニア州とブリティシュコロンビア州で徐々に増加している。人里離れた所にある,森林を切り開いた土地では,マリファナの採れる植物が慎重に栽培され,他の商業用穀物と同じように手入れがされている。公有地が選ばれているのは,その場所が辺ぴで近付きにくく,その不法な作物の所有者がだれであるかも判明し難いからである。昨年の収穫の推定価格は,ブリティシュコロンビア州で1億2,800万㌦(約320億円),カリフォルニア州で10億㌦(約2,500億円)で,マリファナが主要な農業生産物となっていることが分かる。政府の一当局者はこう述べている。「マリファナを栽培している所では,どこでも犯罪率が上昇している。ピストル強盗,殺人,暴力団の内部抗争などがある」。ウォール・ストリート・ジャーナル紙に報道されているように,米国の国有林における犯罪は,1969年以来3倍に増加した。栽培者たちは現在,より発覚しにくい,また生産高を増すことができる新しい雑種に転向し始めている。
分べん用椅子
● 最も健康によく,また効果的で,自然な出産法とはどんなものだろうか。多くの産科医の意見によると,人間の骨盤の構造から見て,それは座ること,あるいはしゃがむことである。現代になるまでは,その方法が出産に際して最も広く用いられていた。出産を助けるため,様々な文化圏で『出産用掛け椅子』あるいは産み台が用いられた。(出エジプト記 1:16参照。)最近のこと,ある会社が調整可能の現代的な分べん用椅子を製造したが,その椅子を使えば,母親は自分の子供を産むために最も快適な姿勢をとることができる。この椅子を使えば,分べんの際の筋肉の収縮が強くなりその痛みが弱まるだけでなく,母親が自分の子供の出産に手を貸すことも,その出産を見ることもできる。出産が多くの場合非常に早まるため,製造者は現在赤ちゃんが床に落ちるのを防ぐための安全トレーを椅子に取りつけている。
最高の知能指数
● 平均知能指数が最も高いのはどの国民だろうか。北アイルランドのアルスター新大学のリチャード・リン博士の研究によると,それは日本人である。この研究が示すところによると,日本人の平均知能指数は第二次世界大戦後急速に上昇し,現在では111になっている。ちなみに米国の平均知能指数は100である。リンの研究はこう述べている。「知能は経済面での成功の決定要素である。……日本人の知能指数が優れていることは,第二次世界大戦後の期間に日本が極めて高度の経済成長率を示したことの顕著な要因になったものと思われる」。日本人の知能指数がこのように急激に上昇したのはなぜだろうか。最も信ぴょう性のある説明としては,栄養状態の向上といった環境的な要素の改善が挙げられる,とその研究は述べている。
超人的な探知機
● 刑務所内に麻薬や他の禁制品を持ち込ませないようにすることは,刑務所の職員にとって常に問題となっているが,そうしたものを持ち込ませないために様々な方法が試みられてきた。最新の方法は,アレチネズミと呼ばれる非常によく訓練されたネズミのチームである。「我々が研究したものの中で,ある程度正確な結果が出たのは,この方法だけである」と,カナダの更生局のスポークスマンは語っている。オンタリオ州の連邦刑務所において,6万㌦(約1,500万円)の費用を掛けた実験が初めて行なわれる。入口の箱の中に隠れているアレチネズミのチームが,刑務所に入る訪問者や囚人たちのにおいをかぐ。麻薬が検出された場合に,ネズミは赤いランプのつくレバーを押すよう訓練されている。さらにネズミたちは,アドレナリンの分泌量の多い場合を察知でき,やはりこれも同じように点灯して知らせる。アドレナリンの分泌量が多いのは,人が何かを隠し持っていることを示唆する場合があるからである。何かを隠し持っていると考えられる人々はその後検査を受けるか,刑務所に入ることを拒否される。アレチネズミの鼻は敏感で,食事にも訓練にもお金が掛からないことから,犬よりも好まれている。
自滅する
● 地球上には,わずか25ないし30羽のコンドルしか残っていないと推測されている。米国カリフォルニア州南部で明らかにされた概要から判断すると,コンドルは進んで自滅への道をたどっているようである。一つがいのコンドルが巣を造った所を,鳥類学者たちが注意深く観察した。大型のこの2羽の鳥は,3月に自分たちの卵の世話をどちらがするかで夫婦げんかをし,小競り合いをするうちにその卵は巣からたたき出され,つぶれてしまった。科学者たちはがく然とした。卵は普通18か月に1度しか産み出されないからである。しかしうれしいことに,その後すぐに新しい卵が産み付けられた。次いでまた悲劇が起こった。わたりがらすがコンドルの巣に降り立ったのである。侵入者を追い払おうとして,その2羽のコンドルはまたもや卵を巣からたたき出してしまった。それは下の岩に落ち,わたりがらすに食べられてしまった。
中国の高速自動車道
● 万事が計画通りに行くなら,1985年に中国には近代的な高速自動車道が初めてできることになる。この高速道路は広東<カントン>と香港<ホンコン>ならびに澳門<マカオ>をつなぐ。今のところ道路が旧式なため,広東・香港間の荷物の運搬は,鉄道,船,飛行機によって行なわなければならない。香港から澳門に旅行する人々は,中国を走る高速道路経由で行くほうが,現在の水中翼船を用いる方法より簡単で速いことに気付くであろう。新しい高速道路では時速約95㌔から145㌔を出すことができ,道幅も最終的には4車線から6車線にまで広げられる。10年以内にはその通行料で元が取れるものと期待されている。