マーティーはどこか悪いのだろうか
まだ2歳にしかならないマーティーは絶えず動き続ける機械のようで,片時も座っていることができませんでした。真夜中まで床に就かず,朝は朝で早くから目を覚まし,すぐにでも飛び出そうと待ち構えているのです。してはいけない事をしただけでなく,何もかも壊してしまうようでした。筋肉の協働作用がうまくいかず,いつも自分の足につまずき,物にぶつかっているほどでした。周りの人々はマーティーの母親に,「男の子だから仕方がないですよ。そのうちよくなります」と言ったものです。
ところが,よくならなかったのです。5歳の時マーティーは,他の5歳児と比べて,自分の思っていることを言い表わすのにかなりの困難を覚えていました。自分の頭の中で考えをまとめる点で問題がありました。6歳になっても,アルファベットの文字を書くことができず,色を識別できませんでした。学校に入ると,問題はさらに増えました。じっとして座っていることができず,短い時間でも,グループ活動に注意を集中できないようでした。それでも学校の先生は,マーティーのことを,感覚の鋭い男の子で,正しいことをしようと一生懸命努力している,と評価しました。
マーティーはまた,少しのことですぐに気を散らされてしまいました。台所から洗面所まで手を洗いに行くのにも,途中でほかの事柄を色々せずにはいられず,洗面所に着いた時には,何のためにそこへ行ったのか忘れているといった有様でした。
そして,かんしゃくを起こすことがありました。ありったけ,しばしば驚くような仕方で怒りを表わし,けたたましい叫び声を上げ,じだんだを踏むのです。マーティーの両親がマーティーに何かをするように求める場合,それは必ず同じ事柄でした。きちんと聴いていなかったのです。しばしばおしりをたたきましたが,それも役に立たないようでした。マーティーの母親は途方に暮れていました。
悪い子なのでしょうか。いいえ。知恵遅れなのでしょうか。いいえ。それでは,知能が平均以下なのでしょうか。いいえ,実際のところマーティーの知能はごく普通です。では,何が問題なのでしょうか。実は,マーティーは学習困難症なのです。
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お子さんは学習面で問題を抱えていますか