世界展望
エホバの証人と強制収容所
● リタ・サルマン,エマニュエル・フェイナーマン共著「クリスタル・ナイト」は,ヒトラーの強制収容所の歴史をドキュメントでつづっている。これは主にユダヤ人に対する迫害について述べた本であるが,収容所内にいたエホバの証人に関しても幾らかの情報を提供している。その内容は次のようなものである。
「他のバラックから離れた所に,懲戒処置のための特別の隔離バラックがあった。それらのバラックに入れられていた人の大半は,ヒトラーに敬礼することや軍務に服することを拒否した,茶色[実際には紫色]の三角のバッジを付けたエホバの証人であった。彼らの中には平和主義の宗教的信念を放棄することを拒否したために死刑にされる者が少なくなかった。
「第三帝国の歴史家たちは,国家社会主義政権に対するドイツ教会の“抵抗”ぶりを誇張してきたかもしれないが,ナチに逮捕されたエホバの証人5,911名の殉教に触れた人はないと言ってよい。2,000名を超えるエホバの証人が強制収容所内で命を失っている」。
2,250名のユダヤ人が収容されていたブーヘンワルト強制収容所での生活を描いた後,同書は「300ないし400人のエホバの証人」がその収容所におり,「彼らはユダヤ人をとりわけよく助け,配給のパンを彼らに分け与えることさえした」と述べている。
金銭と兵器
● 「国際間の兵器売上げ高は10年以上,上昇を続けてきたが,このところ横ばい状態で,減少の傾向をたどり始めたことも考えられる」と,ウォール・ストリート・ジャーナル紙は述べている。なぜだろうか。一因としては「市場への過剰供給」が挙げられており,さらに「外国に対して重い債務があることや物価が低下したと……それに過去の購買熱で兵器庫がいっぱいになり,兵器に対する食欲が満たされたこと」などが挙げられている。ストックホルム国際平和問題研究所は,昨年の世界の主要兵器の輸出を約135億㌦(約3兆2,400億円)と見ている。
兵隊を称賛する法王
● 「法王ヨハネ・パウロ2世は今日,軍務に服することはキリスト教と矛盾しないと述べ,24か国から来た兵隊たちに,諸君は自らを安全と自由のための公僕と考えることができると語った」と,ニュージーランドのオークランド・スター紙は伝えた。法王はさらに,「親愛なる兵士諸君,諸君の職業の倫理性は,国内の平和のために,さらには国際関係における平和のために仕えるという理想と結びついている」と述べて兵隊を称賛した。
分裂している「合同」教会
● トロント・スター紙は「合同教会,同性愛者の叙任をめぐって大きく分裂」という見出しを掲げた。「一部の人々が同性愛行為を罪とみなし,カナダ最大のプロテスタント宗派は依然道徳規準を保っているのかどうかと尋ねている」ために,この問題に関する意見は大きく分かれている。「同性愛自体は叙任の障害にはならないと結論した[以前の]報告書」を受理するか却下するかは総会が決めることになっている。
オタワのエマヌエル合同教会聖歌隊の指揮者,リー・ラングナーは,教会は同性愛者を牧師に叙任して聖書から逸脱してしまったから,教会を辞める決意をしたと語った。このような「劇的な手段」を取った人はあまりいなかったが,教会にきた手紙の10通に1通は,もし総会の会議で同性愛者を牧師に叙任する案が採択されたら教会を辞める,という脅しの手紙だったという。
花嫁代償
● ソロモン諸島のテモツ州政府は,「花嫁の代償の最高額は600㌦(約14万4,000円)とする」という法令を出した。なぜこういう措置が取られたのだろうか。近くのパプアニューギニアが「妻の代償を3,000㌦(約72万円)に値上げした」からである。この法律によると,花嫁の代償として600㌦を超える額を支払う者には3か月の懲役と90㌦(約2万1,600円)の罰金が科されることになっている。
性行動と肝炎
● 米国ジョージア州,アトランタにある疾病対策センターのジェームズ・メイナード博士によると,肝炎ウイルスB保菌者として名簿に載せられる人々の数がカナダでは年間2,000人,米国では2万人の割合で増えている。全世界では保菌者は約2億人とみられている。世界の肝臓ガン患者の80%は慢性肝炎がもとでガンになっており,「慢性肝炎は,知られている主要なガンの原因としては喫煙に次いで2位である」と,メイナード博士は付け加えている。
メイナード博士によると,この肝炎は主に性関係を通して広がり,感染の危険は性行為の相手の数と正比例する。同博士はまた,個々の同性愛者は毎年25%の感染の危険を冒している,と断言している。同性愛者の85%は40歳になるまでに感染していることを種々の調査が示している。
小切手を書くアメリカ人
● アメリカ人は昨年400億枚以上の小切手を書いた。金融業界が出した数字によると,それは1日に平均1億枚を超える小切手になる。当座預金を持つアメリカ人は1億3,000万人と報告されている。昨年振り出された400億枚の小切手の総額はどれほどだろうか。それは1兆㌦(約240兆円)を超える額であった。
文鮮明はなぜ有罪判決を受けたか
● デトロイト・フリー・プレス紙の伝えるところによると,統一教会の教祖である牧師,文鮮明は,「1982年に虚偽の所得申告で有罪の宣告を受け,懲役1年6か月,罰金2万5,000㌦(約600万円)を言い渡された」。文鮮明は米国最高裁まで上告したが最高裁は上告を却下した。銀行預金が文鮮明の名義になっているので,その預金は文鮮明のものであり,したがって課税対象になると政府は言う。文鮮明の服役期間は1984年7月20日から始まった。
世界の砂漠の拡大
● カナダ,モントリオールのガゼット紙が伝えるところによると,「1年に600万㌶の土地が砂漠化し,さらに2,100万㌶の土地が不毛の地と化しつつある」。国連環境計画が砂漠の拡大阻止を目ざしているにもかかわらず,世界の砂漠は新しい地域を広範囲に呑み込もうとしている。そうした地域は主としてサハラ,中東,東南アジア,中南米およびオーストラリアで,8億5,000万人ほどの人々が,侵食する砂漠の影響を受ける。問題は,「土地の誤用と使いすぎ,過度の放牧,樹木の伐採,過度の耕作,お粗末な灌漑などにある」。
ベイリウム精神安定剤
● 「[英国では]毎年推定700万人がベイリウムその他いわゆる“おだやかな”精神安定剤を服用する」と,ロンドンのデーリー・メール紙は伝えている。ベイリウム精神安定剤は1959年に作られ,筋肉弛緩剤としては「リブリウムの10倍の効果がある」と言われていた。それを服用すると激しい感情的苦痛が除かれ,通常の生活を続けることができると考えられていた。
しかし同記事はさらに,「精神安定剤は20世紀の生活の残酷さを緩和するどころか,人々,とりわけ女性をとりこにすると言われている」と述べた。ウルフソン臨床薬理学ユニットの推測によると,4か月間ベンゾディアゼピンを服用した患者の約4分の1はそれに頼るようになる。その影響としては,不眠,不安,抑うつ状態,恐怖に襲われること,吐き気,目がかすむこと,筋肉痛などが挙げられている。
箸のジレンマ
● 日本の若者の中には,箸の正しい使い方を知らずに育っている人が多い。ニューヨーク・タイムズ紙が伝えた通り,文部省の報告書は,調査の対象になった小学生で,箸の正しい使い方を知っていると答えた生徒はわずか48.4%であったことを示している。事態を憂慮した警視庁は新規採用者たちに対してエチケットと箸の使い方の特訓を行なっている。また,2万円ほどの授業料を出せば,3か月間の箸の使い方の講習を受けることができる。“練習箸”― 指の置き場所を子供たちに教えるための輪が付いている ― なるものが考案され,飛ぶように売れているとか。この問題を調査したある大学教授は,30歳以下の日本人の3分の1は箸の使い方はあまり上手ではないと見ている。
新しい電話番号
● ニューヨーク市には1984年9月1日から電話の第2の市外局番ができた。ニューヨーク電話局部長補佐のチャールズ・ハーンドンは,「目ざめよ!」誌に次のように語った。「ニューヨーク市では,加入者線[電話番号]のあきが次第に少なくなっています。第2市外局番ができたらニューヨーク市の加入者線の数は倍になるでしょう」。市外局番が一つだけでは,1985年の初めまでには新しい番号の需要のほうが供給を上回ることになる。現在のところニューヨーク市には420万の電話番号がある。1.7人に付き一つの割合になる。
ニューヨーク市,ブルックリン区の新しい市外局番は718である。(以前は212。)つまり,9月1日から,ブルックリン,クィーンズまたはスタテン島以外の場所からエホバの証人の世界本部へ電話をかけるには,まずダイヤルの1を回し,それから市外局番の718,そして625-3600の番号を回さなければならないということである。
無視される難民
●ニューヨーク・タイムズ紙の伝えるところによると,「難民担当官たちは,船で国外に脱出しようとしているベトナム人を,通りすがりの船舶が助けずに行ってしまう傾向が強くなっているといって,そのことに心を痛めている」。最近,少なくとも40隻の船が近くを通過しほんの9㍍のところまで来た船も幾隻かあったのに,それらの船は南シナ海を横断しようとしている1隻の船のベトナム難民の嘆願を無視したようである。その結果,船に乗っていた84人の難民のうち68人が飢えと渇きと病気で死亡した。難民担当官の話によると,そばを通る船の船長は,難民を最寄りの港まで連れて行ってそこで降ろすとなると時間を失うのでそれをしたがらない。それをするだけで四,五日かかる場合が多い。
変わりゆく中国
● 「中国の農村地帯である河北省に住む,ジェット機で遊びに出かける50人の人たちが,出国ビザと,国内では使い切れない大金とを携え,来週東京へ飛ぶ予定である。新生中国の農村の人々が自費で休暇を外国で過ごすのはこれが初めてである」と,トロントのグローブ・アンド・メール紙は伝えている。旅費はカナダドルに換算して3,530㌦(約63万5,400円)。中国における「平均年収の[ほぼ]20倍」である。どうしてそのようなお金が出せるのだろうか。同記事によると幾人かの農民は,「鄧小平の政府によって集団による穀物の栽培から解放されたため,養鶏,トラクターの修繕,籠の製作などの副業で豊かになった」。